ハーゲン(英雄)

登録日:2014/01/30 Thu 11:48:29
更新日:2023/12/05 Tue 01:28:36
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ハーゲンとはゲルマン系の英雄伝説に姿を見せる英雄のことである。


【概要】

ジークフリートの伝説に必ずと言ってもいいほどに登場する人物であり、物語によって色々と内容が異なるが、基本的にジークフリートの敵役と言えるポジション。そんな立ち位置のせいか、物語によっては女性関係で振り回されがちなジークフリートより魅力的な人物になったりする。
その起源については詳細は明らかになっていない。が、伝説の内容からゲルマン民族移動の頃あたりだとは思われる。
以下、代表的な伝説におけるハーゲン像について適当に。
一応ネタバレ注意。













【各伝説における特徴】


○エッダ・サガ

  • 名前はヘグニとなっており、グンナル(グンター)とは実の兄弟で、グットルムという弟もいる。
  • シグルズ(ジークフリート)とはグンナルともども義兄弟の誓いを立てる仲であり、グンナルがシグルズの暗殺と財産を奪う相談を持ちかけた時も誓いや今までの恩を理由に最初は反対した。てかグンナルがブリュンヒルドに唆されてることを見抜いており、「これだから女は・・・」と言いたげな態度をとっている。
  • しかし最終的には「誓いのせいでダメなら、義兄弟の誓い立ててないグットルムに殺させれば良くね?」というグンナルの提案に乗る。それでいいのか・・・
  • フン族の地では戦いの末に捕えられ心臓を抉り出して殺されたが、どこぞの海賊王よろしく処刑の際にも笑いっていたという。また抉りだされた心臓は全く震えてなかった(恐怖を感じてなかった)という豪傑に相応しい態度を見せた。


○ウァルター物語(ワルタリウス)

  • 9世紀から10世紀にかけて成立したラテン語の詩。なので名前はラテン語読み。
  • シグルズ伝承の総まとめ「ヴォルスンガ・サガ」やドイツにおける傑作「ニーベルンゲンの歌」、日本ではややマイナーな「シドレクス・サガ」が13世紀の成立らしいので、この作品は比較的初期のハーゲン像を表している……かもしれない。
  • ハーゲンはフン族の国で暮らしていた時期があり、この物語は祖国に帰ってからニーベルンゲンの歌の時代までの間に相当する。
  • 主人公ウァルターはフン族の国から財宝と乙女を手に脱走したが、財宝目当てのグンテル(グンター)に狙われてしまう。また財宝か。
  • 友情に篤いハーゲンは、ウァルターと戦いたくないので「話し合って財宝だけ分けてもらっては」「あいつ滅茶苦茶強いですよ」「実は今朝、悪い夢を見たので戦わないほうがいいです」とあれこれ説得するも聞き入れられず、身を引いて戦いを見守ることに。
  • 結局、ハーゲン以外の部下はウァルター一人で殲滅。ハーゲンはそれでも諦めないグンテル(やや足手まとい)と共にウァルターと交戦し、ウァルターが右腕を、ハーゲンが右目を失ったところで和睦した。片手片目を潰しあった直後なのに和気藹々とジョークを飛ばし合うあたり、流石の豪傑っぷりがうかがえる。
  • ウァルターの脱走を僅かな手がかりから見抜いたり、有利に戦うための戦略を講じたりと、ところどころで頭のいい描写がある。ニーベルンゲンの歌の前半でジークフリートを嵌めた知謀と、後半で発揮した武勇の両方がうかがえるエピソードである。
  • 後述のとおり、このエピソードはニーベルンゲンの歌でも何度か言及されている。あのクライマックスは青春を過ごした古巣との壮絶な殺し合いだったということを念頭に置くと、ニーベルンゲンの歌に対する見方が変わるかもしれない。


○シドレクス・サガ

  • こちらでも名前はヘグニ。ジークフリートを暗殺したり、仕返しを恐れてクリームヒルトを警戒したり、予言のおかげで開き直ってフン族の地で大暴れするなど大筋はニーベルンゲンの歌とあんま変わらないが、細かい違いはチラホラ。
  • グンナル達とは兄弟だが異父兄弟であり、母親が妖精の間に作った子供。今風に言うとハーフエルフ。そのことで侮辱を受けることも。
  • ウァルターとの戦いで片目を失った設定が採用されている。あちらでは短剣で切り裂かれたが、こちらでは獣の骨を投げつけられて失明したことになっている。また、その時点ではまだフン族の軍に所属している扱い。
  • フン族の地では最後まで生き残り、ディートリッヒと最後の決闘するが、互いに罵り合った結果キレたディートリヒが口から炎を吐きだしたためにハーゲンは大火傷を負い敗北した。
  • その後、もう長くないことを悟ったハーゲンは最後の頼みとして一晩過ごす女性を頼む。これは聞き届けられ、ハーゲンはその女性を孕ませ財宝の隠し場所とフン族への復讐を託して死んだ。その願いは産まれてきた息子によって果たされることになる。


○ニーベルンゲンの歌

  • 名前はハーゲン。トロニエのハーゲン。
  • グンター達とは兄弟関係ではなく家臣。父はアードリアーンといい、ハーゲンはフン族の地で人質として預けられヴァルターという人物と共に育てられていた。なのでフン族は彼のことを良く知っている。ヴァルターは別に伝説が存在し、その伝説での出来事が下敷きになっているセリフもちらほらある。
  • その生い立ちゆえか世の中のことに通じており、また若い頃はライン河で最も優れた船乗りだったという。
  • 獰猛だの冷酷だの残忍だの酷い言われようであり(まあ幼子を殺したりと実際そうなんだが)、外見も恐ろしげで初対面では大体悪い印象を持たれている。
  • だが友情に厚い一面もあり、辺境伯のリューディガーが諸事情で敵対してもなお誠実な心を示してくれた時には戦の中で決して彼には手出ししないことを誓った。詩人フォルカーとは堅い絆で結ばれているほか、弟のダンクヴァルトに対しても情を見せる。また一族への忠誠心は強く、クリームヒルトが結婚した時にハーゲンを連れていこうとした時には露骨に嫌悪感を示した。
  • 当初は夫を殺されたクリームヒルトの報復を恐れており、あの手この手でそれを防ごうするが、それで余計彼女の恨みを買っている。後半では予言で自分が死ぬとわかってるのもあって逆に彼女を煽り、向こうも向こうでハーゲン単独の暗殺が上手くいかないもんだから次第にエスカレートしてとうとう全面戦争を起こすに至った。
  • 争いの発端となったジークフリートの暗殺については主君の妻ブリュンヒルトが侮辱されたのがキッカケだが、それ以前から財宝に興味を示しており暗殺に反対するグンターに対しても財宝を奪うことを持ちかけるなど財宝が強い理由になっている。暗殺後、クリームヒルトの報復を恐れて強引に奪ってライン河に沈めたが、後で引き上げて使う予定でいた。がけっきょく使えないまま死んでしまった。
  • 前半はグンターを通じ、策でもって物語を動かす陰謀家的な立ち位置だが、後半からは死を恐れない英雄豪傑に相応しい振舞いをする。つーか後半はほとんどハーゲンが主役であり、前半とのギャップもあって非情に魅力的な人物像を形成している。
  • ニーベルンゲンの歌は原典からして登場人物の描写が異なる3パターンの写本が存在し、派生の写本が三十数種類、そこから更に現代語訳や外国語訳が加わるので、本筋に関わらない部分にはブレが大きい。もちろんハーゲンも例外ではなく、色々と解釈の違いが生まれている。
  • 特にハーゲンに関しては、源流にあたる写本の時点で中立的に書かれているパターンと悪役っぷりを強調され卑怯者・臆病者扱いが強くなっているパターンがあるので、上に書かれた動機や人物像も「世界中に数ある、ニーベルンゲンの歌におけるハーゲン像の一例」といえる。
  • 更に言えば、ニーベルンゲンの歌自体が「数あるハーゲン絡みの伝承の一例」でもあるので余計ややこしい。


○不死身のジークフリート

  • ハーゲンヴァルトという名前になっており、ジークフリートの妻フローリグンダ(クリームヒルト)の兄弟である。
  • 財宝はジークフリートが「どうせ老い先短いって予言されてるし、イラネ」とポイ捨てしたうえにブリュンヒリトは影も形も無いので、単純に嫉妬で殺した。
  • 今までの伝説では卑劣だの残忍だの言われても勇敢な姿を見せてきたが、今作ではとうとう臆病者になり下がっている。


○ニーベルングの指環

  • ラインの乙女から黄金を奪い指環を作りだしたアルベリヒの息子であり、ギービヒ家の当主グンターとは異父兄弟。
  • 父が神々に奪われた指環を取り戻そうとし、その目的のためにあの手この手でジークフリート達を利用する。
  • 暗殺後、指環を奪おうとしてグンターと争い彼を殺害する。
  • しかしブリュンヒルデが指環をラインの乙女に返還し、ハーゲンも滅びることとなった。


【現代の創作作品で】


項目参照。まあほとんど名前を借りただけなキャラだが・・・

ジークフリートが黒のセイバーとして登場する関係で、過去回想の中で触れられている。
友情に厚いという一面からか、ハーゲンとジークフリートは親友で、ジークフリートは自らハーゲンに殺されたということになっている。

ジークフリートとクリームヒルトがサーヴァントとして(ry
原典通りジークフリートを殺した結果、クリームヒルトに無茶苦茶恨まれて報復されたが、死の間際に真相を語ってクリームヒルトがさらに拗れる要因を作っていた。

  • 女神転生シリーズ
「ハゲネ」名義で悪魔の一体として登場。
初出は『ソウルハッカーズ』で種族は「猛将」。
パラメータは物理寄りで、専用スキル「コークスクリュー」を所持している。
が、専用と言っても大して強い訳ではない。通常攻撃よりは強い程度。
万能魔法メギドを持っているため、ジークフリートよりは相手を選ばずに戦える……といいたいが、ハゲネが造れる頃には他にも強くて便利な悪魔は大勢居る。
なにより、同レベル帯に回復・補助のエキスパートであるジャンヌ・ダルクがいるのが痛い。
両者とも作成には一体しか仲魔に出来ない「造魔」が必要である為、よほどハゲネが好きだというのでなければ大抵はジャンヌを入れているだろう。
以降のシリーズにも時折登場する。




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最終更新:2023年12月05日 01:28