デストロイア

登録日:2009/06/12 Fri 03:43:35
更新日:2024/03/09 Sat 22:06:35
所要時間:約 6 分で読めます






全てのものを破壊してしまう、とんでもない破壊生物…!


『デストロイア』!!


デストロイアとは平成版ゴジラ映画『VSシリーズ』の最終作『ゴジラVSデストロイア』に登場する怪獣。
分裂した群衆が一斉にに攻撃を仕掛けた初めての怪獣*1でもある。

二つ名「完全生命体」


【概要】

元々は地球上に酸素がほとんどなかった25億年前の先カンブリア期に生きた「原始的な微生物」。
甲殻類ですらなく、同朋もろとも「酸素の毒素」にやられて絶滅したが、極一部が地中深くに閉じ込められて生きていた。
それが、1954年オキシジェン・デストロイヤーが使用され、海中が無酸素状態になったことで復活。
最後まで自分で作った兵器の使用を渋っていた芹沢博士の懸念は「人類同士によるオキシジェン・デストロイヤーの悪用」だったが、まさか使用そのものが怪獣を生み出すとは夢にも思わなかっただろう。

40年余りを経た1996年。
かつてオキシジェンデストロイヤーが使用された地域で海底トンネルの掘削作業が行われた際、地中で復活していた微生物も外気にさらされた。
この時に酸素の毒素を克服&異常進化し、種としての異常なパワーアップを果たす。

環境の激変や火器による攻撃を受けて幾度となく砕かれながらも、微生物の集合で構成された体は二酸化炭素を吸収し、襲撃した相手のDNAを取り込んで弱点を克服。
微小体で魚を喰ってからわずか3日で完全体に進化を遂げていくその姿はまさに完全生命体
いくら砕いても焼き尽くしても再生し、しかも進化の糧としてしまうこの特性から限りなく不死身に近い

活力源はミクロオキシゲンという微少化された酸素。これはオキシジェンデストロイヤーと非常に深い関係にあることが示唆されているが、-196℃という超低温で無効化されることが弱点。
とはいえそんな温度は自然界では現れず、デストロイアは自らの不死性を誇るがごとくにわざとらしく正面から蹂躙する。

ゴジラジュニアを執拗に狙ったり、わざわざゴジラの前でさらって見せしめのように殺すあたり、かなり高い知性と醜悪な根性を持っているようだ。

微小体

体長:3mm~5mm
体重:0.5g

古代に生息していた本来のデストロイア。この状態なら単なる古代生物で済んでいただろうが…

クロール体

体長:2mm〜30cm
体重:2g〜1,5kg

元のサイズを考えればこの時点で既に巨大化と言っていいほど。
しながわ水族館の水槽の映像解析で存在が判明した。

幼体

体高:2〜18m
体重:350kg〜260t

どこかビオランテ(植獣形態)にも似た、六本の足で陸上を歩き回る形態。
8本足で歩き回り、ミクロオキシゲンを直接吐くなど殺傷性が一気に高まった。
とはいえ、この時点では極めて危険な生物ではあっても自衛隊にも対応できる程度の存在ではあったのだが…

集合体

体高:40m
体重:15,000t

幼体が自衛隊の攻撃を受けて集合し、一体の生物となったもの。
形態は幼体の発展系だが、二対の長大な触手や小さなハサミを生やして攻撃性が増している。

飛翔体

体長:65m
翼長:80m
体重:15,000t

その名の通り、空を飛び回ることが可能。
顔などは集合体よりはむしろ下記の完全体に近くなっており、角を生やすようになった。
集合体とは自在に体質を変更可能で、ジュニアの熱線を受けた際には集合体に戻って応戦している。

完全体

全長:230m
全高:120m
翼長:210m
体重:80,000t

劇中に登場した中では最終形態。
二本足で歩き回る上、形態変化せず空を飛ぶことも可能。
さらにこの形態からも無数の集合体に分裂し数の暴力で攻めることもできる。


【活躍】

オキシジェン・デストロイヤーと酸素に触れ、微生物とほとんど変わりない大きさの『微小体』(三葉虫に似た姿だが劇中には未登場)として目覚める。その影響でオキシジェン・デストロイヤーに至る前段階のミクロオキシゲンを生成する能力を獲得する。

研究所のフラスコにミクロオキシゲンで穴をあけ脱走すると、自己進化か海底の蟹かなにかを捕食したかで甲殻類に似た姿をした『クロール体』へと進化。

その後に現れた『しながわ水族館』で魚全匹を捕食。
見回りをしていた警備員(どこかGフォース副司令官と瓜二つ)を絶叫させる。
(この時、3Dスキャンによって上記の姿が確認される)

短期間のうちに急速に増殖・成長し、魚を捕食したことで脊椎動物の特徴も獲得。無脊椎動物にはあり得ない巨大な首や尻尾を備え、エイリアンのようなインナーマウスを持つ多脚型の甲殻類タイプへと進化。
『幼体』は圧倒的な数の力でお台場のテレコムセンタービルを占拠。突入してきた警視庁の特殊部隊や外で警戒に当たる警官を粒子ビーム状のミクロオキシゲンで溶かして殺害し、執拗に追いかけたヒロインを捕食しようとする等、多数の子供達にトラウマを植え付ける。

一部は火炎放射機やロケットランチャーで倒れたかに見えたが、二酸化炭素を吸収し、倒されても進化・克服する*2特性で、翌日には軒並み巨大化

対する自衛隊が通常火器から冷凍兵器に換装したことで為す術なくお台場のクリーンセンター(焼却場)に逃げ込むが、対抗して合体して巨大な触腕や爪が生えた『集合体』へと進化。
冷凍攻撃が効きづらい厚い外骨格と単純なパワーを得、さらに体内のミクロオキシゲンが高濃度化したことで粒子ビームが必殺の『オキシジェン・デストロイヤー・レイ』にパワーアップ。メーサー戦車隊のメーサーをものともせず前進して防衛網を破壊した上で、爆煙の中肉体を『飛行体』に変形して飛び去った*3

品川周辺を空から破壊した後、東京に上陸したゴジラジュニアと天王洲アイルで交戦。

変形能力を駆使した戦法で翻弄し、ジュニアの胸にインナーマウスを突き刺してジュニアの生き血を啜り、再度トラウマを植え付けた。

一時は集合体のまさかの大ジャンプでマウントポジションまで取るなどで圧倒するも一瞬の隙を突かれて熱線の連撃を浴び、品川の大井火力発電所へ吹き飛ばされ、大爆発を起こしてしばらく姿を消した。


だが、夜間になるとまたしても燃え盛る炎の中から完全体へと成長して出現。
しかも先の戦いで突き刺したインナーマウスで吸収したジュニアのDNAによって完全直立二足歩行へと変化した他、ゴジラを上回る巨大な姿でごつごつした赤黒い外骨格に身を固め、巨大な翼と尾をしならせて仁王立ちする

赤い悪魔と呼ぶに相応しいその威容で羽田空港でゴジラとの再会を果たしたジュニアを空中から堂々と連れ去り、東京ビッグサイト付近に突き落として致命傷を負わせた。


強力な攻撃で東京ビッグサイトを瓦礫の山に変え、ヴァリアブル・スライサーでゴジラを袈裟懸けに切り裂き、怒り狂ったゴジラを圧倒したが、メルトダウン寸前で、切断した瞬間に切断された部分が即再生するバーニングゴジラに致命打にはならない。
それどころか、弱点の腹部に集中攻撃を受けたことで血を吐くほどのダメージを受けて爆散。
10体ほどの中間体*4に分裂してなおゴジラに襲いかかるが、攻撃は効果がなく、倒れ込みで振り払われる。


+ デストロイアの最期
ジュニアが目の前で事切れて泣き叫ぶゴジラに対し、デストロイアは完全体に戻り、なお空中からオキシジェン・デストロイヤー・レイを浴びせ、更には尾を巻いてゴジラを投げ飛ばす。
だが、これは完全な悪手だった。今更この程度の攻撃が効く相手なら、デストロイアもここまで苦戦していない。
デストロイアはゴジラがジュニアに気を取られ、自衛隊もメルトダウンに対応しなければならない隙に何が何でも逃げるべきだったのだ。

デストロイアの攻撃で、ゴジラの炉心温度は1180度を超え、いよいよメルトダウンが近くなったゴジラは背中が爆発するほどにそのエネルギーが暴走した。
自衛隊はメルトダウンを阻止すべく、スーパーXⅢ以外にも、平成vsシリーズを彩ったメーサー砲の数々を冷凍仕様で揃えた。

何より、デストロイアはゴジラを怒らせた。

怒り狂ったゴジラの放つ超出力の「インフィニット熱線」と、射程・パワーが急上昇した「全身発光」に、デストロイアは大ダメージを受け続ける。
頭部の右の感覚器官を吹き飛ばされ、悲鳴を上げてよろめくデストロイアだが、もはや反撃すら叶わず、苦痛に呻くばかりとなる。

ズタズタになったデストロイアは、その巨大な翼を広げて空中に脱出を図る。

「デストロイアが空に逃げます!」

「逃がすな!!撃ち落とせ!!」

たとえゴジラのメルトダウンを阻止できたとしても、空を飛び回るデストロイアを生かしておけば、ゴジラを遙かに上回る脅威になるのは目に見えている。
デストロイアが満身創痍で人類の兵器がちょうど揃っている今のうちに仕留めねばならない。ゴジラのメルトダウンを阻止するための兵器は、皮肉にも対デストロイア特効兵器でもあった。

地上のメーサータンクと、上空のスーパーXⅢから、次々と青白い冷凍メーサーがデストロイアに突き刺さる。
ゴジラの熱線で満身創痍のデストロイアは、自慢の甲殻が役に立たなくなっていたのだろう。
集合体時には効かなかった攻撃に体内のミクロオキシゲンも無力化。

遂に浮力を保てなくなったデストロイアは墜落して爆散。お台場を更地にして果てた。



……と、「ゴジラ死す」と銘打たれた本作において、ゴジラの死因にまったく関わっていないが、本来なら墜落後に立ち上がって再びゴジラと戦った*5末にメルトダウンの道連れになる。

が、「ゴジラ死す」がテーマであるという大人の事情により、自衛隊にやられた数少ない怪獣という、汚名を着せられることとなった。




【戦闘能力】


ぼくらはオキシジェン・デストロイヤーを作らなかった。

しかし、オキシジェン・デストロイヤーはそこにある。


vsシリーズの敵怪獣のほとんどがゴジラを一時的に圧倒しているなかで、デストロイアが弱いかと言うと、もちろんそんなことはまったく無い
  • 激しい肉弾戦を頭突きで突破し、そのまま尾で引きずり回した挙句、海に突き落とす格闘力は過去のあらゆる怪獣を凌ぐ。
  • フルパワーで発射すればコロナビームの二連射に耐えるゴジラを一撃でダウンするほどのパワーを持つ破壊光線オキシジェン・デストロイヤー・レイ。
  • 赤色熱線*6を何発も喰らっても耐える高熱に対する強い耐性、倒れても分裂→再集合で復活する凄まじいタフネス。
  • ゴジラ族以外の生物が摂取すると暴走するゴジラ細胞を取り込みながらも平然と成長し続けた超生物*7
  • 形態名に完全体とあるが、これはあくまで作中で登場した中での最終形態だっただけ。パンフレットによればさらに進化する可能性もあったらしい。
そんな能力があっても本来「近接戦時のカウンター技」が広域を薙ぎ払う熱波となり、余波だけで爆破炎上する極太「インフィニット熱線」を放つ歴代最強との呼び声高いゴジラ相手では勝ち目がない

逆を言えば、不死身の筈のデストロイア恐怖させ、逃げを選ばせたバーニングゴジラがいかに凄まじかったかと言えよう。
それに「デストロイアと戦わせてメルトダウンを阻止しよう」と考えた人間に利用されるだけ利用されて、役立たずと見られるや殺されたとも取れる。

極端な話、デストロイアは人類が初代ゴジラを生み出し、オキシジェン・デストロイヤーを使わなければ、いまなお海底で眠っていたのだろうから、ある意味では人間のエゴに振り回された不幸な怪獣と言えるだろう。


【主な攻撃】

  • ミクロオキシゲン攻撃
微小化した酸素原子「ミクロオキシゲン」を放出し、分子間結合に潜り込んで対象を分解。分解した肉を食らいラーニングする形で遺伝子レベルで進化の参考にする。
幼体になれば粒子ビーム状にして吐けるほか、相手の体内にミクロオキシゲンを注入して内側から溶かすというエグい応用技もある。
しながわ水族館の魚達や多数の警察官が犠牲になった。

  • オキシジェン・デストロイヤー・レイ
集合体以降の形態で使える攻撃で、『オキシジェン・デストロイヤー』の高密度粒子を破壊光線のように口から相手に放射するデストロイアの代名詞。
集合体の段階で芹沢博士の作り出したオキシジェン・デストロイヤーと同等規模の威力を誇り、完全体では瞬間的にはオキシジェン・デストロイヤーをも上回る。

  • ヴァリアブルスライサー
ミクロオキンゲンの「分子間結合を緩める」効果を利用して分子レベルで完全体の角を伸ばし敵を切り裂く近中距離攻撃。
そんなのをまともに食らって即死しなかったバーニングゴジラが異常なのであってゴジラの肉体を一刀両断する殺傷力は脅威でしかない。

  • 腹ビーム(正式名称不明)
本編ではカットされた幻の技。腹のトゲが開いてビームを放つ。
劇中、熱線集中連射でデストロイアの腹が吹っ飛び血を吐くシーンがあるが、その時使われたギミックは本来これ用のもの。



【映画以外の出番】


『ゴジラアイランド』にも登場しているが、ポジションはX星人のパシリ。何故か相棒はメガロであった。

パチンコ『CRゴジラ3』にも登場。何気に新規カット満載。

TCGバトルスピリッツでは忠実に能力再現がされている。詳細はデストロイア(Battle Spirits)へ。



【余談】

  • “Destroyer”では商標関係で問題があったとされる*8ため、北米版ではスペル“Destroyah”の問題で発音が「デストロイアッーになる。

  • 造形を手掛けた若狭新一氏によれば、それぞれの形態で造型のテイストが違ったものになってしまう事態を避けるべく、自身が一任する形になったのだが、デザイン決定までの紆余曲折により、本来であれば3~4ヶ月を要するところを集合体・飛行体・完全体を同時進行で40日のうちに仕上げる羽目になったという。
    なお、その間スタッフ達(22人)は徹夜続きで、作業場のコンクリートの床で寝ることも多かったとか……。スタッフの皆さん、お疲れ様です。

  • 上記の通り様々な形態へ変形していく不気味さも強調されていたデストロイアだが、完全体だけはバンダイから懇願されて怪獣らしい姿にしたとのこと。ビオランテの商品化でも苦労したから困ったんだろうな……。
    かつてない怪獣を描きたいと考えていた川北紘一特技監督などの間でもこのあたりで意見が分かれたらしいが、反面その見返りとして、バンダイはバーニングゴジラの着ぐるみの材料になる素材を提供したという逸話もあり、高温になったゴジラの表現に試行錯誤していた造形スタッフを手助けすることになった。

  • VSシリーズ第3作の『ゴジラvsキングギドラ』に登場する『ゴジラ誕生』という本には、「このゴジラは若き天才科学者・芹沢大助博士により、世紀の発明・オキシジェン・デストロイヤーにより、東京湾で骨も残さずに消滅してしまった。この後、東京湾はしばらく生き物の棲むことのできない、死の海と化してしまい……」という記述がある。その後にバビロンプロジェクトだの過激派環境保護団体『地球防衛軍』だのなんか不穏当な単語が並ぶけど、半分ジョークだからしょうがない
    後にスタッフも「まさかそこからデストロイアが出てくるとは思わなかった」と回顧している。芹沢博士も全く同感だっただろう。

追記・修正はオキシジェン・デストロイヤー・レイを耐えてからお願いします。

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最終更新:2024年03月09日 22:06

*1 ミニバルタンがウルトラマンを襲う未撮影のアイディアを再起用したもの。

*2 実際焼かれた一匹から垂れた炎は黄緑色に光っていた。

*3 ただし、後に完全体に冷凍メーサーが効果を発揮していたことから、「冷凍メーサーはそれなりに効いており、飛翔して逃げたのではないか」と言う考察もある。

*4 一回り小型だが、形態は集合体と同様。

*5 墜落時点で崩壊同然、顔の肉がだらりと下がり、うめき声を上げるのが精いっぱいで、角を掴まれボロボロに崩れ落ちており、もはや戦いと呼べるのかは怪しいが。

*6 前2作にてメカゴジラとスペースゴジラに止めを刺した物を上回る

*7 ジュニアの細胞がまだ未熟だったからという可能性もあるが。或いは完全体はデストロイアがG細胞の力に飲まれた結果の姿であって克服している訳ではないとも考えられるか

*8 単純に「オキシジェン・デストロイヤー」などの作中用語や「駆逐艦」などの同音語などと紛らわしいだけかもしれない。