銚子電気鉄道

登録日:2009/11/05(木) 22:08:09
更新日:2024/03/09 Sat 20:01:04
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銚子電気鉄道とは、千葉県銚子市にある鉄道会社で、銚子から外川間を結ぶ鉄道路線の名称でもある。
「銚子電鉄」と呼ばれることも。
最高時速40キロ、所要時間19分で結ぶ。
路線記号はCD


概要

前身は大正時代の1913年(大正2年)に開業した銚子遊覧鉄道。
しかし、赤字経営の上に第一次世界大戦で鉄の価格が高くなったので廃止。線路は剥がされて売られてしまいました……。

しかし、銚子遊覧鉄道の社員は諦めずに廃線跡を転用し、今の銚子電鉄になる銚子鉄道を開業します。1923年(大正12年)のことでした。

当時は蒸気機関車が客車を牽引していたが1925年に電化され、以後太平洋戦争で変電所を焼かれたり、変電所が故障したりと色々な苦労を乗り越えてきました。

90年代からは、千葉県東金市のある工務店の子会社になり、駅舎を洋風の建物に改築したり電車の色を塗り変えたりしました。
この時期の電車にゴリラのキャラクターが描かれていたのは半ば黒歴史

しかし親会社の工務店のとんでもねー社長による借入金の横領、さらに業務上横領が判明し逮捕されたことにより運転資金が不足。
遂には鉄道車両の検査が出来なくなってしまいます。



そこで銚子電気鉄道がとった行動は……。


名物となっていたぬれ煎餅の購入を呼びかけることだった。


「電車修理代を稼がなくちゃ、いけないんです。」




これが2ちゃんねるやブログ、さらにマスコミの報道を通して広まり、一時期はぬれ煎餅の生産が間に合わなくなった。

これでなんとか電車の検査はできたが、一難去ってまた一難。今度は線路の枕木や踏切がボロボロで国土交通省から直して改善するように指摘されてしまう。


これも有志の人達によって作られたサポーターズクラブの支援、募金によりなんとかしのいだ。


しかし次は電車の老朽化を指摘され買い換えることに。

銚子電鉄「京王電鉄3000系電車が廃車になるからそれちょうだい」

京王「でも電圧が違うからそのままじゃ走らんよ(銚子電鉄の架線電圧は600ボルト。京王は1500ボルト)」

銚子電鉄「改造したらお金足りないよぉ……どうしよう……」

伊予鉄道「京王3000系を投入して廃車にする800系があるけど、どう?」

銚子電鉄「よし、それちょうだい!」


ちなみに銚子電鉄初めてのクーラー搭載電車。しかし走行中にクーラーを使うと、

変電所「らめぇぇぇぇぇ!!壊れちゃゔの゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙!!」

となるので走っている間は非冷房となる。(つまり始発駅である銚子駅や外川駅では使えるらしい)

車両の愛称を決める命名権の売却、車両支援オーナー制度など、やっぱり投入するのは大変なようである。
これにより1000形電車を除く旧型電車は全て廃車された。

東日本大震災の風評被害により観光客が激減したため、2013年に自主再建を断念し国と千葉県、銚子市が銚子電気鉄道本体に公的資金を注入、それでも足りない分は銚子電鉄の自助努力により調達することとし、取りあえず2023年までの運転資金の枯渇という事態は避けられた。

現在は日中1時間間隔で運行しているが、東日本大震災直後までは30分間隔で運行していた。当時、車掌は銚子~笠上黒生間のみ乗務しており、笠上黒生~外川間はワンマン運転を行っていた。
現在は全区間車掌が乗務し、無人駅での集札を行うので運賃箱による運賃収拾はあまり行われない(使うとしても終電間際ぐらい)。

車両

現在の車両

  • 2000形
デハ2001+クハ2501・デハ2002+クハ2502
銚子電気鉄道初の2両固定編成。
元は伊予鉄道から導入した800系で、その前は京王の2010系だった。
塗装は2001編成が京王グリーン車塗装、2002編成がイオン広告車の2パターンだったが、現在は前者が青色ツートン、後者が銚子電鉄の旧標準塗装となっている。
編成の両端で顔が違い、片方は湘南顔と言われる二枚窓だが、もう片方は京王5000系と同じ顔にされている(この改造は伊予鉄道時代に実施したもの)。
2002編成はベースの塗装が京王の旧塗装であるアイボリーにえんじ帯のため、京王時代に偽新車*1と言われていた時代を彷彿とさせる姿となった。
2014年1月に2002編成が脱線。当初は軽い損傷だろうと思われたが、なんと車輪がゆがんでしまい、その車輪を直すのに数千万単位の費用がかかることが判明した。
2000系導入ですらギリギリな銚子電鉄が修理に出せる金はなく、このまま運用復帰はまずないだろうと思われた。
しかし、地元学生らが脱線した車両の修理代を集めるために「クラウドファンディング」と呼ばれるカンパで修理代を集め、目標金額(300万)を達成し、2015年の年初めから修繕を行い、アイボリー塗装から銚子電鉄の旧標準色塗装に塗り替えられた上で、同年4月より営業運転に復帰した。
これ以外にも2022年にしなの鉄道から譲り受けた169系のリクライニングシートが設置されたほか、ドアが北陸鉄道8000系*2からの廃車発生品に交換されている。
後述する新車の導入に伴い、2001編成が2024年3月で引退。

  • ユ101形
貨車を改造して生まれたオープンデッキのトロッコ客車。
銚子が舞台となったNHKの同名の連続テレビ小説にちなみ、『澪つくし』の愛称がある。
安全上の都合で現在使用停止中で、事実上の廃車扱いとなっている。

  • デキ3
銚子電鉄のアイドル。昔は地元の醤油工場にを運んだり客車を引っ張ったりしていた。
廃車はされていないが検査期限が切れていて、さらにブレーキ装置の都合上本線は走れない。
基本は黒一色の塗装だが、赤と薄いクリームのツートン旧塗装を纏っていた時期もある。
また、灰色に塗装*3されて市川市の千葉県立現代産業科学館に貸し出されて展示されたこともある。
生誕80周年記念で双頭連結器装備、シングルアームパンタに改装?何のことですかそれは?

  • 3000形
2015年9月に導入された。
と言ってもこれまた京王→伊予鉄と転じた車両で、京王時代は5100系、伊予鉄時代は700系を名乗っていた。
後述する1000形電車と入れ替わる形で、2016年3月26日より営業運転を開始した。
2000形と同じく2両固定編成で冷房は付いているが、先の2編成と同じく、終端駅でしか動かせない制約がある。
塗装は後述のデハ100形101が纏っていた銚子の海をモチーフにした塗装の復刻版となっている。
こちらにも車端部に169系のリクライニングシートが設置されている。

  • 22000系
2024年3月に営業運転開始。
2023年の創業100周年を記念して導入が発表され、当初は社名を伏せて「本州の会社から」という発表だったため鉄ヲタの大半が廃車の多数出ている静岡鉄道を予想していたが、その後譲受先が南海であることが正式に発表され、その予想外ぶりに皆が驚いた。
厳密にいえば譲渡されたのは支線区で使用されていた2200系で、銚子電鉄入り後に南海時代の旧塗装と旧形式が復活したこととなる。


過去の車両

  • デハ100形101
昔はドラマ『澪つくし』に出演したこともある電車。引退後、物置変わりに笠上黒生駅に置かれていたが最末期の姿はあまりにも悲惨。
現在は解体されて台車だけ上毛電気鉄道と東武博物館に譲渡された。

  • デハ200形201
京成電車の機器を使っていた車両。
他の車両よりも早々と廃車になったため資料が殆ど無い。
路面電車のようなおヘソライトが特徴。

  • デハ300形301
鶴見臨港鉄道(今のJR鶴見線の国有化前の名称)の電車で貴重な買収国電の生き残りだったが、仮台車供給のため解体されてしまった。晩年は検測車だった。

  • デハ500形501
12メートルの車体の小さな電車。上田丸子電鉄(現在の上田電鉄)からやってきた。
しかし車体の割にモーターの出力が大きく、消費電力が半端なかったので末期は予備車となっていた。
廃車後は犬吠駅前で車体を半分にカットされた上でお店になっていたが、2012年に解体された。

  • デハ700形(デハ701・デハ702)
近江鉄道で走っていたモハ51、52を改造して投入した電車。ルーツは1928年に投入されたデユワ101・102。顔が前後で異なる。
廃車間際にデハ702が昔の標準塗装のスカイブルーと淡いブルーグレーのツートンに塗られていた。702号車は携帯サイトでオークションにかけられた。
廃車後は「ポッポの丘」に引き取られ保存された。

  • デハ800形801
伊予鉄道のモハ106を改造したもので、銚子電鉄初めての戦後に作られた電車。
現在は予備車指定を外れて、外川駅の側線に静態保存されている。2018年には側線に雨ざらしで展示されていたため雨漏りが発生し、地元の高校生らが急きょクラウドファンディングで資金を集め、地元の工務店の協力で大規模修繕された。

  • デハ1000形(デハ1001・デハ1002)
営団地下鉄銀座線で運行されていた2000形電車を改造した電車。
元々は導入予定が無かったが、同形式を導入していた日立電鉄(2005年廃線)の計画見直しで余った2両がやってきた。
勿論そのままでは走れないので、日立電鉄と同様にパンタグラフの取り付けや台車の交換を実施した。
1001号は『桃太郎電鉄』のラッピング電車になり、1002号は漫画『鉄子の旅』の作者、菊池直恵さんデザインの塗装になっていた。
2011年末には1002号が営団丸ノ内線(方南町支線)時代の塗装に、1001号も銀座線時代の塗装にそれぞれ塗り替えられた。
末期には重連運転も実施していたが、総括制御装置が無いため各運転台に運転士が乗り込み汽笛を合図に操作するという特殊な運行を実施していた*4
2015年に1002編成が引退し、現在は仲ノ町車庫にて静態保存中。1001編成は2016年2月に引退し、現在は千葉県松戸市の私設博物館「昭和の杜博物館」にて静態保存されている.

駅紹介

()内の名前はネーミングライツによる愛称。
  • CD01 銚子(ちょうし)(絶対にあきらめない)
総武本線成田線との接続駅。昔はディーゼルカーが乗り入れたこともある。

  • CD02 仲ノ町(なかのちょう)(パールショップともえ)
電車の車庫、銚子電鉄の本社がある。車庫は入場券(硬券)を買えば見学可能。ぬれ煎餅を購入できる。
なかのまちではない。

  • CD03 観音(かんのん)(金太郎ホーム)
駅名の通り近くにお寺がある。
電鉄直営のたい焼き屋さんがある。うぐぅが口癖の女の子も大喜びだ!
電話か犬吠駅の駅員さんを通してたい焼きの注文個数と乗る電車の時間を連絡すると駅員さんがたい焼きを届けてくれる。
愛称は千葉に本社を置く同名のマンション・アパートの施工会社がネーミングライツを買い取り名付けたもの。

  • CD04 本銚子(もとちょうし)(上り調子 本調子 京葉東和薬品)
2017年に京葉東和株式会社が命名権を買い取りネーミングライツが付けられたが、元の駅名は「ほんちょうし」ではない。念の為。
また、同年には悪名高き24時間テレビの企画で駅舎が改築させられている。

  • CD05 笠上(かさがみ)黒生(くろはえ)(髪毛黒生)
電車が上り下りで交換できる唯一の駅。ぬれ煎餅を購入できる。銚子行きの列車はここで車掌による車内改札を行うことが多い。
育毛剤メーカーの株式会社メソケアプラスが同駅のネーミングライツを買い取り、駅名の一部が「髪毛黒生(かみのけくろはえ)」に改称されている。
でもここに行った後で四国の半家駅に行くなよ?絶対に行くなよ?

  • CD06 西海鹿島(にしあしかじま)(見えないことで、未来を拓く アシザワ・ファインテック株式会社)
銚子電鉄の中で新しい駅。
ちなみにネーミングライツも銚子電鉄最長。

  • CD07 海鹿島(あしかじま)足腰元気(あしこしげんき)緩衝法(かんしょうほう)
声優の林原めぐみファンにはおなじみの駅。東映のオープニング映像の波の撮影場所の海岸が近い。
関東最東端の駅でもある。
なお、妙に声に出して読みたくなる愛称は一般社団法人日本健康機構のネーミングライツによる。

  • CD08 君ヶ浜(きみがはま)(ロズウェル)
一日の利用者数が15人と千葉県ではもっとも利用者数の少ない駅。
銚子電鉄非公認ではあるが、ねこ駅長「きみちゃん」がいる。

  • CD09 犬吠(いぬぼう)(最高だぜ!銚子!アイドルマスター SideM)
関東の駅百選に選ばれる美しい駅。犬吠埼灯台の最寄り駅。ぬれ煎餅や後述の「まずい棒」などを購入できる。
また、愛称の通り、アイドルマスターSideMとのコラボを銚子電鉄で行っている。

  • CD10 外川(とかわ)(ありがとう)
堀江由衣のシングル『Days』のPVや朝の連続テレビ小説『澪つくし』に出てくるレトロな駅舎を持つ。電鉄主催の朝市もやる。
とがわではない。

しあわせ三像

『桃太郎電鉄』の協賛企画で、犬吠駅に「貧乏がイヌ」像が、笠上黒生駅に「貧乏をトリ」像が、仲ノ町駅「貧乏がサル」像がある。

模型

いずれもNゲージサイズである。
既にデハ300・500・700・800・1000が鉄道コレクションから発売されている。
またデキ3が津川洋行とワールド工芸から発売されており、ハフ1、2セットも津川洋行から発売された。

今後の課題

先述した通り2023年までの資金の確保には目途が立ったが、それ以降は全く見通せていない。
そのため、銚子電鉄では売り上げが頭打ちとなっていた濡れせんべいにかわる商品として「まずい棒」を売り出した。これが好評で現在、絶賛増産中である。棒自体は「とてもおいしい」とのこと。名前の由来は「経営がまずいんです」というもので、決して味がまずいわけではない。パッケージイラストはホラー漫画家の日野日出志氏。

ただ、仮にこれで資金の確保のめどが立っても再び壁が立ちはだかる。設備の更新と車両の更新があるからである。
設備は消耗品である枕木などの交換。車両は新製時から60年以上経過している2000形と50年以上経過している3000形である。特に車両規格が小さいため20mの車両は導入できず、18m車の導入となるが、大手私鉄などで同クラスの電車が運用されている線区は東急多摩川線などごく少数に限られる。
また、架線電圧も今時数少ない600Vのため、銚子に持ってくる場合は大規模な改造が必要となる。

余談

  • 乗る時は「弧廻手形」という一日乗車券が便利。
    犬吠駅でぬれ煎餅一枚と交換してもらえるチケットや「地球の丸く見える丘展望館」、「銚子ポートタワー展望室」の一割割引券もついてくる。
  • 元旦にはJRからの臨時列車があるため終夜運転を行う。
    この時は「弧廻手形」は売っていないが、代わりに通常の1日乗車券が売られている(元旦のみなのでレアもの)。
  • すべての駅に電光掲示板付きの自動販売機を設置している。主に主要ニュースや運行情報について情報提供を行っている。



ぬれ煎餅を買ったり電車に乗ったりするついでに追記・修正をお願いします。銚子はとてもいいところです。


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最終更新:2024年03月09日 20:01

*1 この塗装は初代5000系以降の新車に採用されていたことから。

*2 元京王3000系で、ドアが片開きの初期車である。

*3 本来は上から黒を塗る予定だったが、間に合わずに下塗りのままで展示となった。

*4 同様の運行形態は、鹿児島交通枕崎線(1984年廃止)のキハ100形での例があった。