多重人格探偵サイコ(漫画)

登録日:2011/01/30(日) 23:22:02
更新日:2023/04/23 Sun 22:58:05
所要時間:約 6 分で読めます





『多重人格探偵サイコ(MPD PSYCHO)』は大塚英志:原作、田島照宇:画の漫画作品。1997年~2016年に連載された。全24巻。

【概要】

「月刊少年エース」、「コミックチャージ」を経て、「ヤングエース」誌に連載され完結した。
田島照宇のモノトーンを活かしたスタイリッシュ且つ、エロティックな画と、流行を巧みに取り入れた大塚英志の物語が鮮烈な印象を与える犯罪サスペンスである。但し連載の長期化により、「サスペンス」ではあってもジャンルなどに関してはかなりぶれている。
他メディア化された連載前半では90年代後半から取り沙汰される様になった(事実を誇張した)低年齢化や複雑化する凶悪犯罪を題材に、主人公達が「バーコード殺人者」を生み出した謎の組織「ガクソ(学窓会)」の陰謀に挑む姿が描かれた。
連載後半(8巻以降)ではSF・ファンタジー的要素が強くなり、「主人公の人格」を巡る争いが中心となるサスペンスアクションとなった。
…正直作品の大半部分で「多重人格『探偵』」が活躍していないのはご愛敬。

ちなみに第1話掲載号印刷中に、そのあまりにグロい描写を見た角川書店の役員が印刷機を止め、協議等があったのか連載開始が1ヶ月遅れることとなったという逸話がある。


【物語】

199X年…警視庁捜査一課の刑事、小林洋介は〝連続猟奇殺人犯〟島津に恋人、本田千鶴子を殺害される…。
千鶴子は島津に四肢を切断された上に箱詰めにされ小林の許へ郵送されると云う残酷な仕打ちを受けたのだ。
追い詰められた島津は、小林に言う…。
「オレと同じ人殺しが刑事なんかやってるからさ…」
そして、千鶴子の生命を自ら断った事を小林が指摘された時…。
小林の中に潜んでいた〝西園伸二〟を名乗る人格が目覚め…島津を射殺するのだった…。
我に返った小林?を駆け付けた刑事達が取り押さえる…。
小林は言う…オレは〝雨宮一彦〟…だと。
数年後、凶悪事件への協力から仮釈放を受けた小林洋介=雨宮一彦を警視庁を退職したプロファイラー伊園磨知が迎える。

「伊園犯罪研究所へようこそ…」

「良いのか?殺人犯でも」

「イエス」

「…多重人格者でも?」

「オフコ~ス」



不敵な笑みを浮かべる〝雨宮一彦〟…。
─物語は、こうして始まる。


【主要登場人物】

  • 雨宮一彦
本作前半の主人公にして、後半の実質的ヒロイン。
小林洋介の中に眠っていた人格の一つで、理知的で冷静…高い知性を持つ。
島津殺害時に初めてその姿を顕し、それ以降の主人格となる。
後に西園(小林)の体から美和を通じて西園弖虎へと人格を転移され(雨宮自身は殆ど夢の中状態)、後半では「彼の人格の行き先」を巡る争いが焦点の一つとなる

  • 西園伸二
裏社会とも繋がりのある凶暴な人格で、殺人等の荒事もこなす非合法活動御用達の探偵業をしていた。
小林洋介の裏人格を装うが、彼をコントロール出来る立場にあり、全人格中でも首位に置かれる。
ニュータウンでの事件の後、磨知らの前から姿を消すが…。
ジャンボ旅客機ハイジャック事件の際美和に雨宮の人格を奪われ、雨宮の新しい持ち主になった弖虎と対峙した後ガクソの人間によって射殺。
だがその残滓は弖虎内で眠る雨宮の中に残り続け、終盤にて意外な役目を果たすことになる。

  • 小林洋介
かつての主人格。
生真面目な性格の刑事だった。
西園の死後、彼の遺体は「小林洋介」として磨知により解剖された。

  • 村田清
  • 雨宮美奈
小林洋介の別人格だが、一度のみの登場。
尚、全ての人格の元になった人物は20年前の「雨宮診療所」の人間である。

  • 伊園磨知
今作前半のヒロイン。
心理学者で、かつては警視庁でプロファイラーとして働いていた。
退職した後は清水老人に依頼を受け「伊園犯罪研究所」を開設…。
雨宮一彦を雇い入れる。
だが後半では唐突に多重人格者との設定が付き、磨知の人格は「プログラム人格」とされ消失。
そして本来の人格は〝伊園若女〟と名乗り(真名はさらに別のもの)、本作のラスボスとなる。
…ヌード率高し。

  • 伊園・アリワン・美和
磨知の妹で、中盤までのヒロインの一人にして弖虎にとっての真ヒロイン。
女子高生だが、生意気で誰に対してもフランクな口の効き方をする。その裏側はかなり黒く、海外留学時代に男と同棲していた。
ジャンボ旅客機ハイジャック事件の際西園から雨宮の人格を奪い、重傷を負いながら雨宮を弖虎に託した後昏倒。
後半では意識不明のまま眠り続け、終盤で弖虎と再会した後…。
ヌード率高し。

  • 笹山徹
警視庁捜査一課の自称「お荷物」「似非プロファイラー」…。
磨知や小林洋介の同僚(上司)で、彼らとは友人同士。
当初は、コメディリリーフとしての役割を担っていたが、後半では作中屈指の漢として主人公の一人を務める。
作者の他作品に同名で似た様な顔のキャラが2,3人いるが、本作エピローグを見るにスターシステムの可能性が高いと思われる。

  • 天馬
小柄でブ厚いレンズの眼鏡と云う、特徴的な姿の女(一応)刑事。
物語後半からの主要キャストで、笹山の相棒役を務めていた。
着用しているコートからあだ名は「青島」

  • 犬彦
新宿所轄署の刑事。「犬彦」は名字にあたる。
天使の肋骨移植事件にて笹山と天馬と出会い、彼らと協力関係を結ぶ。
麒麟と云う名の中国人女医と交際していたが…。
ちなみに元となったキャラは原作者の別作品『摩陀羅 転生編』の「犬彦綬陀矢」で、新宿署所轄刑事設定は『摩陀羅 天使編』・『リヴァイアサン』から。
関係ないが『リヴァイアサン』版犬彦をモチーフにした楽曲を某幻想楽団がハロウィンにネタっぽく歌ってた事があった。
また『摩陀羅 転生編』・『天使編』と転生編のアナザーストーリー『僕は天使の羽根を踏まない』の犬彦にも(設定こそ違うが)「麒麟」という女性の友人がいた。


  • 渡久知菊夫
物語の中盤までのメインキャスト。
フリーカメラマンにして報道キャスター。
長髪に眼帯と云う特徴的な見た目をしている。
磨知や雨宮に親しい様子を見せる一方で、「ガクソ」と繋がっていた…。
都庁の占拠事件を起こした後…死亡する。

  • 鬼頭日明
公安4課長。
磨知の昔の恋人であり、笹山の部下だった。
再会した磨知や雨宮らとの出会いにより「ガクソ」に挑む道を選ぶ。
法務大臣にして影の内閣を仕切る鬼干潟龍夫は義父。
後半にて死亡するが、生前自身の体にある「細工」を施したことで、自分の遺体から臓器を移植された義父の寿命を縮めることに成功した。

  • 清水老人
「昭和の怪物」と呼ばれる政財界の重鎮にして、磨知のパトロン。
独自のスタンスから「ガクソ」と対立している様で、後半では笹山に隠された真実を語る。
原作者が投げ出した別作「木島日記」にも若い頃の彼が登場しているが、同作では実直かつ血気盛んな軍人として描かれており、現在の姿はとても想像出来ない。

  • 西園弖虎
西園伸二=雨宮一彦が退場した後の主人公。
「ガクソ」が作り上げたもう一人の西園伸二で、少年ながら恐るべき力を持つ殺人者であったが、様々な人物との出会いに「ガクソ」との対決を選択する。
プログラム人格「雨宮一彦」の現在の所有者。だが終盤では諸事情により「雨宮」と自分の人格が融合しそうになる危機に。
最終巻の書下ろしラストで笑う彼が「誰の人格」なのか、それは読者の想像にゆだねられている。


【ガクソ】

戦前から存在する、先端技術と魔術の融合を目指す研究組織「施条機関」を前身とする。
劇中では「合衆国」と深い関係がある事が語られている。
日本を舞台に「バーコード殺人者」を放つ等、何世代にも渡り様々な実験を行っている。
ちなみにラスボスがあくまで組織の一構成員な若女だったこともあり、最終回でも普通に残っていたり。

  • 全一
「ガクソ」のエージェントで、汚れ仕事からプロジェクトの監視役まで様々な仕事をこなす白子(アルピノ)の男。
彼自身が「ガクソ」の実験の産物であるらしいが、詳細は未だに不明。
一度だけ「Z-1」と名乗る場面がある。

  • 伊園若女
覚醒後の磨知の(表向きの)真の名。ちなみに「若女」は「ワカナ」と読む。
「ガクソ」の研究者。

  • ミス・アーヴィング
「ガクソ」の研究者。
「木島日記」にも登場しているが、60年を経た現在も容姿が変化していない。

  • 雨宮先生
かつての「雨宮診療所」の代表。
「ガクソ」でも、かなり上位に位置する研究者でもあり、雨宮一彦を「息子」と呼ぶ。

  • ルーシー・モノストーン
本作のシンボル。
「少女の歌声を持つミュージシャンにしてテロリスト」と呼ばれる。一応言うと名前は女性的だが男性。
「ガクソ」が新時代の選ばれた人間の雛型として選択した存在。
この再生プログラムにより生み出されたのが「雨宮一彦」である…と現在はされているが、以前は西園伸二や西園弖虎が〝そう〟だと語られていた。
他にも、色んな設定が生まれては消える、この漫画のブラックボックス。
しかし最終的にはラスボス若女の肉体的な意味での父親にして彼女の傀儡だったという結論に。哀れ。


【余談】

厨二設定にして設定変更がざらに起こり、新キャラは出て来てもすぐに死ぬのが「売り」である。

時事ネタも多いが、当然すぐに風化する。







「追記、修正は左眼のバーコードを通して行って下さい。」


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最終更新:2023年04月23日 22:58