聲の形

登録日:2014/01/07(火) 20:11:30
更新日:2019/04/15 Mon 17:20:03
所要時間:約 11 分で読めます






概要

聲の形とは、週刊少年マガジン2013年36・37合併号から2014年51号まで連載された漫画である。
聴覚障害、いじめ、障害者差別等の題材を中心に扱っている。
作者は大今良時で、マガジンの新人漫画賞受賞作品を連載作として改変したもの。
舞台は岐阜県大垣市で、風景の描写や地理関係などは現実のものをモデルに描いている。*1
題材・シナリオ共にマガジン屈指の問題作で障害関係の出来事を差し引いてもいじめのエグくて醜い描写が強く描かれており、かなりいじめ等について考えさせられる。
この漫画を読んで心が傷つく人も多いだろう。


話題になった映画にせよ、原作にせよ、終盤で鬱展開を一気に覆すあらすじとなっている。
煽り文や予告では淡い青春ストーリーと言う印象を受けやすいが、実際には最序盤と中盤の展開がかなりキツいので注意。


タイトルは読切2つと連載版、映画版、いずれも『聲の形』で副題等はないが、登場人物やシナリオの一部など詳細部分が少々異なっている。
連載版は読み切りで語られた物語を6話掛けて掲載し(5話は読切では語られなかった中学生の話をやっている)「更にそれ以降の話」を中心に描かれている。


単行本は全7巻で、累計200万部突破。この他、海外9ヶ国で翻訳されて発行されている。
作者は最初から全7巻か多くても10巻の予定で全体の話の構成を決めてから連載しており、
担当曰く引き伸ばしとかはできないので早々諦めるしかなかったとのこと。
各巻の終わりも話の切れ目になる場所か、新展開の序章が来るようになっている。

1巻 小学生編から再会の日まで
2巻 結弦との接触と和解まで
3巻 かつてのクラスメート達との再会
4巻 遊園地、島田との再会
5巻 映画制作開始、将也と硝子の歪んだ感情の暴発
6巻 大事件の幕開け、将也視点が消失した状態での物語進行
7巻 波乱を乗り越えた後の出来事

ただ、作者本人によると各話の構成は状況に応じて予定を変更した部分があるらしく、伏線っぽく描かれながら話数の都合で端折られ放置された要素も幾つかあった。
この他、将也と硝子の物語を語る上で必要のない部分はかなり端折っており、島田との和解など意図的に未消化で終わらせている描写も多い。
もっとも全員が皆誰とも和解してハッピーエンドになるのは御都合主義が過ぎると言う捉え方も出来るので、ここら辺はバランスを取った形になる。
打ち切りエンド或いは編集部の無理な引き伸ばしに見える人もいるではあろうが、原作者サイドとしては打ち切りもなく無理な引き伸ばしもせず終わった形になるようだ。

マガジンでかなり優遇されており、増ページや表紙を飾った回数が多い。

  • 連載までの経緯
元々は2008年に「マガジンSPECIAL」にて作者の入選作として掲載される予定だったが、
「聴覚障害者に対するいじめ」、という非常に重く扱いの難しい題材から掲載は見送られてしまった。

しかしはその高い画力と構成力が評価され、「別冊少年マガジン」2009年10月号から(形は違えど障害者となった少女の再起を描いた)『マルドゥック・スクランブル』のコミカライズがスタート。
原作を再構築し、オリジナルの展開をはさみつつも難解な内容を丁寧にまとめ上げ、2012年6月号にて好評を持って完結を迎えた。

その後、編集部が全日本ろうあ連盟や弁護士等の各方面と協議を重ねた末に、
「別冊少年マガジン」2011年2月号に読み切りとして掲載され、3年ぶりに日の目を見ることになる。
掲載後、進撃の巨人らの人気作を押しのけてアンケート1位を取るなどの読者からの反響の大きさから連載が決定し、
『マルドゥック・スクランブル』完結後、「週刊少年マガジン」2013年12号にリメイク版読み切りが掲載され、そしてついに同年36・37合併号より連載となった。
ちなみにリメイク版の掲載号のマガジンはその号のみ通常より6万部伸びるという事態が発生した。
内容が内容だけに単行本も最初は少なめに発行されたが、予想より売れ行きが良くて品切れになったため増刷された。


登場人物

石田将也(いしだ しょうや)
CV:入野自由、松岡茉優(小学生時代)
本作の主人公。小学校時代は硝子をいじめていたが、高校生になってからは逆に、硝子に対して過去の贖罪を行うべく東奔西走している。
詳しくは個別記事参照。

西宮硝子(にしみや しょうこ)
CV:早見沙織
本作のもう一人の主人公。聴覚に障害を持つ少女で、小学生の時将也の通う小学校に転校し、紆余曲折あって再度転校。将也とはその5年後再会する。
詳しくは個別記事参照。

○永束友宏(ながつか ともひろ)
CV:小野賢章
高校3年時の将也のクラスメイト。モコモコ頭と小柄で小太りが特徴の少年。
素直になれず見栄を張ろうとするところがあり、そのせいで交友関係も狭い。
一方で仲の良い相手に対してはノリが良く、友達想いで情に厚く、更には家庭的な面もあるなど、素顔からは人の良さが伺える。
昼休みに生徒に自転車を盗まれそうになったところを将也に助けられ、
盗まれた将也の自転車を見つけたことが切欠で友達になり以降は彼の良き理解者となって行動を共にするようになる。
将也に対していつの間にかビッグフレンドを名乗るなど、やたら距離感が近い(軽くウザい)が、
重い雰囲気になりやすい今作の中では数少ないムードメーカーと言える存在。
アルバイト中の植野に惚れるもある誤解の一件で幻滅して以来彼女を苦手としている。嫉妬深い一面もあり、将也が真柴とつるむと不機嫌になる。
将也にくっついて何度も硝子とは顔を合わせており、将也と仲の良いところも見せているが、硝子と直接絡むことは少ない。
将也や佐原のように手話が出来ない上、硝子も手話の出来る相手を中心に意思疎通を図ろうとする関係から、若干置いていかれている。
ただ、常に他の人間が硝子に状況を説明出来るためか、彼は硝子を障害者として意識せずに普通の女の子として接している部分がある。
そのノリは硝子の耳が聞こえないことを忘れているのかと思うほど。
日頃どこまで意思疎通が出来ているのかは不明なものの、彼に対する硝子の反応を見る限り信用されてはいるようである。
意識不明が続く将也のお見舞いにきて硝子と病院で鉢合わせした際には、
自分の言ったことを口調まで含めて一字一句違わず文字にして筆談すると言う丁寧な対応を見せた。
硝子の立場からすると、過去の確執のない唯一の純粋な関係であるとも言える。

西宮結絃(にしみや ゆづる)
CV:悠木碧
硝子の妹。ゆじゅう。ボーイッシュな女の子で硝子サイドの視点となる準主人公。
詳しくは個別記事参照。


○佐原みよこ(さはら みよこ)
CV:石川由依
将也の小学校時代のクラスメイト。しゃはらしゃん。長身でそばかすが特徴。
手話ができるため硝子のフォローをしようとするが、周囲から「偽善者」「ポイント稼ぎ」などと罵られ、
自身も次第に新たないじめの標的にされるのを恐れて卒業式まで不登校になってしまう。
友達想いで心優しく、打たれ弱い性格の人物。
高校生編で将也は同級生の川井等の情報を得て硝子のために再会の行動を起こし、無事に硝子との再会を果たし、再び交流を持つようになった。
自らの贖罪を目的として硝子に近づいた将也とは対照的に、こちらは比較的普通に友達として接しているところがある。
外出着はパンツルックだが、夏場の部屋着はショートパンツやタンクトップなど露出度が高い。
身長が高いため後輩の注目の的で、後輩達の言葉をキッカケにヒールを履くようになった。
植野と同じ服飾系の高校に通っており、一緒に下校するなど小学生時代とは違って和解している。
友人を自己啓発のための道具として捉えてる面があり、「怖い人」を克服する自分や「弱い人」を救済する自分などの目的が動機となっている。
そうなるキッカケは自己承認のきっかけが後輩達の言葉であった事が伺える。
「高めろ、自分を、変り続けろ」結局一番大事なのは自分である。


○植野直花(うえの なおか)
CV:金子有希
将也の小学生時代のクラスメイトで、一緒に硝子をいじめていた女子。
ガサツな性格で、トイレから出るときに手を拭かない、部屋で下着姿になって寝るなど全体的に行儀は良くない。
ちなみに登場人物の中でも胸はあまり大きくない。
小学生時代から元々口も悪かったようだが、高校生編では激昂すると口調が完全にヤンキー口調になる。
高校時代に将也と再会を果たし、その際に将也のことが好きだったと言うことが判明したが、
小学生時代とは変わって硝子を気遣うようになった将也とは反りが合わなかった。
小学生時代は将也が一番仲の良かった女子でもあり、遊園地では硝子を案じる将也に苛立ちヒステリックを起こしたこともある。
それでも未だ彼を気にかけ、再会後は積極的に距離を縮めようとしている。
アルバイトでは猫カフェの店員として働いており、このときは眼鏡をかけている。
また、猫カフェのチラシ配りでは猫耳を付けていたこともある。かわいい。
硝子が犬キャラであるのに対しこちらは猫キャラである。
再会時に硝子の補聴器を奪っていじめようとしたり、将也と硝子の仲を知って蔑むように泣き笑ったり、現在でもかなりたちの悪い言動が目だつ。
しかし補聴器を奪ったり蔑むような態度は好きだった将也が硝子と親密になったことに対する悔しさ悲しさから来るものであり、
小学生時代と変わらない性悪に見えつつその内心は複雑なところがある。
また、高校生時代には白黒ハッキリさせることに対して極端に執着しているところがあり、
そのために相手が聞いて嫌がることまで正直にぶちまけようとするなど、かなりストレートな言動が多い。
怒るとその傾向は顕著になり、暴言レベルと化す。
彼女にも良心はあるのだが自重を好まない性格がゆえ、ときとして自制が利かなくなり、やってから後悔している。
将也を孤独にした一件も悔いており、硝子に償うべく行動する彼と同じく将也の為に動いている。
高校生になってからは全体的に善行も悪行もかなり目立ち、場を引っ掻き回したかと思えばその後は自らの行動を省みて嘆くような場面が多い。
彼女の巻き起こすトラブルは常に物語を大きく動かす起点になっており、作劇面ではトリックスター的な立ち回りの存在となっている。

○川井みき(かわい みき)
CV:潘めぐみ
将也の小学生時代のクラスメイトの女子。メガネをかけた優等生風の少女で植野と仲が良い。
硝子が転校してくる事を将也達に最初に伝えたのは彼女。
高校時代では真柴に好意を寄せており、髪型を変えて眼鏡をコンタクトに変えてアプローチしている。
48話の本人主観で来歴を捉えた場合、優等生になるべく必死の努力をし、模範的な行動は何かを考えて行動してきたことが伺える。
しかしその一方でウザいくらいに自分大好き人間で、他人の気持ちや自分の間違いを理解できないと言う、凄まじいほどの性格的欠点がある。
模範的といえる行動もそれなりに多いが、それが周囲にどのような印象や影響を与えるかを考えることが出来ない。
小学校時代はたまに悪口をいうこともあったが基本的に硝子へのいじめに対して見て見ぬふりをし、
酷いときだけ「やりすぎ」などと発言するなど、殆どの場面で安全圏に身を置いていた。
その後いじめが問題になり、将也が糾弾されると自分は悪くないとガチ泣き。更に将也が島田達にいじめられるようになると「因果応報」と貶していた。
自分自身のこと以外は物事を全て理屈で捉え、人の心情と言うものを殆ど捉え切れていない。
将也とは中学・高校でも同じ学校に進学し、クラスメイトとなっていたが、互いに干渉は避けていた。
将也には佐原の件で親切と認識を改められたが植野とは違い、硝子をいじめたことは完全に将也が悪い、自分は「少しだけ」悪かったと考えている。
自分は直接いじめてないから悪くない、ちょっとは優しくしたから悪くない、
将也はいじめの主犯格だったから悪い、でも手話とかで頑張ったからその分だけ許してあげるべき。そう言う考え方。
将也が過去を流布してないか尋ねたときは一方的に説教し、クラスメイトの前でいじめの件を暴露した。
しかし、結局は自分も硝子をいじめた事実を植野と将也、佐原の口論によって真柴に知られることとなった。
自らの行動を棚上げする言動が非常に多いが、責任転嫁が目的ではなく、自分は悪くないと思っているがゆえもの。
常に自分は正しいと思って行動しているので、自分が悪い自分が他人に迷惑をかけているなどと言う発想にたどり着かない。
将也が入院した際にはその傾向が顕著になり、クラス1人30羽の鶴を折って千羽鶴を作ろうと言い出してクラスメートから陰でウザがられていた。
(実際に折る立場になればすぐ分かることだが、折り鶴30羽はかなり時間が掛かるし煩わしい)
それどころか将也が転落事故を起こした引き金になっているのではないかという、あらぬ疑いすら掛けられる始末である。
まあ立場が悪くなるや否や都合良く人の黒歴史を暴露する女なんて信用されないよね。
硝子が映画作り再開を持ちかけた際にはそれを即座に否定し、将也の心配をしろと言い出したが、
真柴が映画作り再開に賛同した途端にこの女も映画作りに賛同している。
怪我人がいたら心配するのが当たり前という型にはまった発想で、硝子のやったことを理解しようともせず頭ごなしに否定し、
自分が好意を寄せる真柴の行動は正しいと思うので、真柴の提案には従ったという単純な理屈である。

○真柴智(ましば さとし)
CV:豊永利行
高校時代のクラスメート。何故か永束には少々態度が手厳しく、また川井に好意を寄せられているが無視している。
それどころか川井の身勝手さもしっかりと理解している。
「眉毛が少し変わっているから」という下らない理由でいじめられた過去のトラウマから、いじめっ子に対して異常な敵対心を持っている。
それ故かクラスメートにランドセルを押し付ける小学生らを見て押し付けられたランドセルを投げ捨てて「自分で持て」と凄んだり、
将也の元担任の竹内のゲス発言を聞いていきなり飲み物をぶっかけたりと弱い者苛めをする相手には容赦が無く、またそのやり方も些か手荒い。
一方で男子高校生らしい悪ノリがその場の雰囲気を明るくすることもある。
(映画撮影のために)目出し帽を試着する硝子を見て将也が思わず笑ったとき、硝子は珍しくむっとした顔を見せたが、
そのとき真柴は一緒に目出し帽を被ってみせ、場を上手に収めた。
基本的にノリが良く、永束のようなウザさもなく、人に気を遣える良い奴なのだが、
薄ら笑いのような表情が多い上に、過去のトラウマなどが絡むと何をするかが読めず、どこか怖いという印象を与える。
将也に近付いたのは、
「過去自分がバカッター騒動で相当変わっている(ように見える)人間を間近で見て、自分が左程変わっていないと実感したい」
という歪んだ感性を孕んだ動機があったが、将也や硝子の在り様を間近で見るうち、その考え方も改めるようになっていった。
硝子が映画の再開を提案したときには筆談ノートのやり取りから彼女の心情を理解して再開へ賛同し、飲み物をぶっ掛けた竹内への謝罪と小学校ロケの再交渉を硝子と共に行った。
川井が自分は悪くないと思って行動していることは完全に見透かしており、いじめを事実上黙認していたことも悟っているが、敢えて何もせず放置している。


西宮八重子
CV:平松晶子
硝子と結絃の母親。父のいない西宮家で実母と二人の娘の家族をまとめている。
詳しくは個別記事参照。

○石田美也子
CV:ゆきのさつき
将也の母親。夫とは別れたらしく、1人で床屋を営んでいる。
将也に対しては硝子いじめの件を嘆きながらもきちんと叱らず理由も聞かない等教育面で過度に放任主義的な所が見られるが、
愛情や親としての責任感は持ち合わせており小学校編では硝子の補聴器代が問題になると即座に170万円を弁償した。
長女が男を取っ替え引っ替え連れて来ることも気にせず、結弦や永束と言った息子の友人が家に上がって一家の食事に混ざっても普通に受け入れており、恐ろしいほど寛容すぎる。
余程のことがない限り子供達を好き放題に行動させるが、それでも家庭内は至って平和。
高校編では将也が5年前の補聴器の件でケジメを付けたことを喜んだが、
部屋の様子から自殺しようとしていた事に気付いて支払われた170万円を燃やすと脅して自殺を止めようとした。
既に自殺をやめた将也も心から謝罪した為に安心したが、その際に手元が狂って170万円は全て燃やしてしまった。
西宮母との関係は最初非常に険悪だったが、将也の快気祝いの際に意気投合。お互い母子家庭の母親と言う立場もあったため、通じ合うものは多かったようだ。
連載中は名前が決まっていなかったが、アニメ化の際の打ち合わせで決定した。

○島田一旗
将也の小学生時代の友人。
当初は将也と仲が良く一緒に遊んでいたが、将也の幼稚さに呆れ徐々に距離をとり始める。
将也の硝子いじめが問題視されてからは将也に成り代わっていじめグループのリーダーとなり、将也に排他的かつ暴力的ないじめを行うようになる。
後に将也と同じ中学校に進学した時は暴力行為などは辞めたものの終始将也に対して辛辣な態度を取り、
将也が小学校にて硝子に行っていたいじめの件を周囲に暴露して孤立させるというより陰湿な行為を働いた。
高校編で一度将也と再会するが口は利かず、将也がただ傷ついただけに終わった。
植野が将也との関係を修復しようとするお節介を煩わしく思っている描写がある。
その一方で、将也が川に転落した際には将也の救出を広瀬と共に行ない、
映画製作では植野に頼まれて音楽選びと言う形で密かに協力を行うなど、単純な悪役ポジションには収まらない行動も見られる。
特に音楽選びに関しては植野の狙いを理解しつつわざわざ協力を行っている。

○広瀬啓祐
将也の小学校時代の友人。
やや太り気味の少年。島田とよくつるんでおり、島田の腰巾着のようなところがある。

○竹内
将也たちが小学生の時に担任を務めた男性教師。
学校では授業中の硝子のサポートをクラスメートに完全な丸投げ。
硝子をサポートした児童を褒めることはあってもその児童への直接の支援はなし。
硝子に対する一連のいじめが発覚すると将也に対し高圧的な態度を取り、
その責任全てを将也一人に押し付けて事態の収拾を図る。
将也がいじめを受け始めてそのことを訴えた際には「硝子をいじめていたお前に糾弾する権利があるのか」と言って取りあわず、
卒業するまでクラスの将也へのいじめを黙認した。
高校編では映画ロケ地としての使用許可を求めるべく学校を訪問した際に再会する。
その際に硝子と家族については「障害を理由に何があっても許されると考えている一家」とわざわざ話題に持ち出して非難しており、教師側の立場から彼女らがどう見えていたかを漏らした。
この将也と硝子を侮辱するゲス発言には、真柴の怒りが爆発し、手に持ったペットボトルの水を竹内にぶちまけた。
…ここまでの説明では人によってはいじめを黙認するような無能クズ教師に見えるかもしれない。
だが、将也が硝子をからかっているのを見かけたら職員室にて1対1で注意をし、
硝子のためにクラスみんなで手話の勉強をしようと提案する喜多先生に対して「自分がやるより先に生徒に覚えさせようとするなんて恥ずかしいと思いませんか?」と諌めたりするなど、教師として規範的な対応をしている。
また、高校編では硝子と将也が手話で会話している様子を見て、その手話の内容を理解していた。
硝子に連れ添う将也の更生した姿を見て「ほら、やっぱり立派になったじゃないか」と声をかけていたり、意味深な描写が見受けられる。
前者については、裏設定*2では、「硝子の為ではなく自分のレベルを高めるため」と解説されていたため
「結局微塵も反省していない」という反感を抱く読者も居る。
ただし、これは裏を返せば、「教師として手話が出来なかったことは問題である、と認識して自ら改めた」ということでもあり、過去の経験から彼なりに汲み取ったものもあることが窺える。

○西宮いと(硝子と結絃の祖母)
聴覚障害を持って生まれた孫の存在を受け入れ、父親のいない一家を支えてきた優しい婆ちゃん。
西宮姉妹の母親の実母にあたる。
素直になれない娘とそれに振り回される孫達のことを暖かく見守り、老人クラブを休んででも手話サークルに通うなど、
硝子を含めた一家を祖母と言う立場で支えてきた。
西宮姉妹の母親は余裕がなく独善的な態度を取るため、この婆ちゃんの優しさがうまい具合にバランスを取っている。
八重子と硝子・結絃姉妹の溝を埋めるべく双方に気を遣っていたのだが、間に存在し続けることで溝を埋める機会が出来なかったのは皮肉な話である。
ある日突然亡くなってしまうが、分かりにくい思いやりを見せる娘と、
思いやりに気付かず好き勝手に行動する孫(と言うか結絃)の親子仲を案じ、死期を悟った頃に結絃へ手紙を書き遺していた。
母親と娘たちが溝を埋めたのは、この人の死がひとつのきっかけになっている。

○硝子と結絃の父
長女が聴覚に障害を抱えていると知るや否や妻と離婚した。
硝子が生まれながら聴覚に障害を持った原因はコイツの感染症(風疹だと思われる)が一因で、妻に出産時のリスクを予め伝えていなかった。
しかし自分の責任を棚上げし、予防接種などを行なわず胎児の病気への対策を怠った妻に一切の責任を押し付けた。
コイツの両親も積極的にこの男の肩を持ち、障害児を激しく嫌悪。
障害を抱えて国などから補助を受けて生きる子供は要らないと言う態度を取った。
ちなみにこの男が離婚を叩き付けたとき硝子は3歳で、結絃は離婚の前後に妊娠が判明している。
障害児を産んだ妻を毛嫌いしていたため、次女の顔は見たことがないと思われる。
障害者の立場からすれば二度と出て来て欲しくない吐き気を催す邪悪な連中だが、作品のテーマに大きく関わる人物である。
しかし硝子の立場からすればこんな男でも自分の父親であり、幼少期しか一緒に暮らせなかったことには複雑な思いがある。


かなりどうでも良い余談

主要な女子の中で一番胸が大きいのは硝子。次いで佐原、その次が植野や川井。殆ど胸がないのが結絃。

私服や部屋着などの特徴も細やかに描かれており、外出時の服装と部屋での格好を比べてみるとなんとなく性格や好みの一面が読み取れることもある。
  • 硝子…部屋着は季節問わず長ズボンがメイン、私服はフェミニン系が多め、スカートを好む
  • 結絃…一貫してジャージとハーフパンツのボーイッシュ
  • 佐原…夏場の部屋着はタンクトップやショートパンツ、私服はロングパンツ系
  • 植野…夏場は部屋で下着、外出着は近場でも遠出でもショートパンツ系を好むが、近場の外出ではタンクトップなどのラフな格好が多い
  • 川井…部屋着は不明、外出着は季節問わずミニスカを好む、暑い日には日傘

劇場版アニメ化


最終回の扉絵では誰もが予想しなかったアニメ化しかも映画化が発表。
制作は京都アニメーションで、山田尚子が監督を務めた。
そして約1年半の時を経て、エグい内容も重い展開も概ね原作に忠実な作品として完成した。
さすがに単行本7巻分を129分で全て描くことは出来ないため、止むを得ず改変された部分はあるものの、なるべく原作にあった要素を盛り込むよう配慮がなされている。
心が叫びたがってるんだ。』『君の名は。』『この世界の片隅に』などとともに人間ドラマ中心のアニメ映画としてアニメファン以外からも注目を集め、20億円を超えるヒット作となった。
なお、興収ランキングでは20位と大して高くない結果だが、公開規模が小さいため、他作品との単純比較は難しい。
同年公開のジブリ映画が初動でこの映画以上の公開規模にも関わらず大してヒットしなかったことを忘れてはいけない。
当初は120館規模の上映で、県内で1箇所しか上映していないという地域すらあった。
内容が内容だけにあんまりヒットしないとの予想が大半だったのだろう。
しかしいざ公開されると満席が相次ぎ、規模が小さい割に観客動員数がかなり多いという予想外の展開を見せる。
反響を受けて上映規模が拡大して行き、公開から2ヶ月後に新規上映を開始した映画館すらあった。

  • アニメ映画化後の反応
痛みを伴う青春恋愛映画として高い評価を得た本作だが、「いじめ加害者が一転していじめ被害者となり、自分の行為を理解して贖罪と和解を目指していく」という将也の更生を描いた作品でもあるため、「いじめ加害者が幸せになることは許されない」といった過激な批判をする視聴者もネット上では一部見かけるようになった。加えて「健常者にとって都合が良い障害者を描いている」とする声もある。

しかし本編を見ればわかる通り将也もまた被害者となっており、彼がいじめられた原因の一つとして、そういった無関係な第三者からの一方的な断罪という要因が描かれている(さらに言えば、一方的に更生を否定し続ける行動も『いじめ』と変わらないため、主張者へのブーメランとなっている)。
また硝子も障害者に対する一方的な偏見に晒された結果ひどく屈折した人格を育むこととなり、それがいじめの原因へと繋がっている事も描かれている(前述の批判を言い換えれば、「硝子は被害者の障害者なのだから、加害者で健常者の将也を許すことはありえない」という偏見である)。

2人が歩み寄れた理由は過去を水に流せる柔軟な考え方ができたこともあるが、それよりもお互い異なる要因で屈折した人格を持っていたことが大きく影響している。
2人とも屈折していたがゆえ、奇妙な形で噛み合ったのである。
将也と硝子、そしてその周囲の人間とが、そういった偏見や差別を乗り越え、手を取り合って前に進んでいく物語が『聲の形』なのだ。


  • 中の人の演技について
石田将也役は高校生時代を入野自由、小学生時代を女優の松岡茉優が演じている。
松岡茉優がアニメ声優を務めたのは三度目だが、同年7月に公開されたポケモン映画では棒読みに近い演技だった。
しかし本作では棒読みがなく、生意気で悪ガキな将也を見事に演じきるという、圧倒的な上達を見せている。
山田尚子監督が敢えて高校生編の収録を先に行い、松岡に他の声優の演技を見せた上で小学生編を収録したことも大きいだろう。
なお、松岡茉優を抜擢したのは山田監督であり、ドラマでの演技を見てオファーを出したとのこと。
潜在的な能力を読み切り、その能力を存分に発揮させた山田監督の手腕も見事であると言えよう。

また、硝子役の早見沙織は間違いなく難易度の高い演技を求められ、それを見事にこなしたと言える。
聾唖者の役を演じるため、実際に聾唖者と交流を行い、聾唖者がどのように声を出すよう教わっているかを学んだらしい。
結果としてはちゃんと聾唖者そっくりの発声を覚え、硝子を見事に演じて見せた。
声なき声で喜怒哀楽までしっかり表現しているあたりはさすが声優と言うべきか。


  • 設定考証について
物語自体は屈折した人間同士の歪な物語であるため、ストーリー展開に関しては理解に苦しんだ人も少なくない。一方、舞台設定などはかなり丁寧に作り込んであり、設定や描写のミスが指摘されることは殆どない。
例えば同年公開の『シン・ゴジラ』では政府や自衛隊の描写、『君の名は。』では彗星の軌道でミスを指摘する意見がある。
しかし本作に対する意見は殆どが演出や構成に対するものである。

これは原作で手話や風景を丁寧に描いていたことが非常に大きい。
原作者の母親が手話通訳者であったため、原作では手話をしっかり描いており、手話の分かる人は本作を見て口話訳が出来る。
映画では原作をベースに手話通訳者の手話を一旦撮影し、その動きをアニメーションに落とし込むという作業を行なっている。
また、硝子、結絃、将也の手話はそれぞれ微妙に異なる仕草で描かれており、硝子にとっての手話は日常生活での意思表示手段であるため動きが柔らかく、将也は硝子との会話手段として独学で手話を覚えたため動きがやや硬いという細かい考証が行われている。

風景描写も殆どが現実の事物を元に描き、劇場版スタッフは原作者がモデルとして選んだ場所に赴き、改めてロケハンを行なった上でアニメ化している。
現実に存在しない要素をフィクションとして描くようなことはしなかったため、ビジュアル面で矛盾点が生じることはなかった。

  • テレビ放映について
同時期に公開された『君の名は。』『シン・ゴジラ』などが1年たらずでテレビ放映されたのに対し、本作はなかなかテレビ放映されなかった。
これは内容自体の問題というより、一部映画館で2018年3月まで上映されていたことと、尺の都合によるものが大きいと考えられる。
全編通して129分とかなり長めである上、CMなどを挟むとカットを入れても2時間枠に収めることが困難であったので、スタッフもそれなりに気にしていた模様。
この問題に対してNHKが手を挙げ、2018年夏に24時間テレビのドラマ枠の裏番としてEテレで放送を行った。
スポンサーCMを挟まず、枠の編成を自由に変えやすいNHKの強みが大いに発揮された形となる。


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