海底軍艦

登録日:2011/06/14 Tue 21:35:43
更新日:2024/04/05 Fri 03:07:12
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恐怖の海底王国地上に挑戦!

緊急出動する万能原子戦艦!



海底軍艦
1963年12月22日公開

「海底軍艦(英:Atragon)」とは、1963年(昭和38年)12月22日に公開された日本の特撮映画。製作は東宝。

明治時代の冒険小説作家・押川春浪が1900年(明治33年)に発表した潜水艦「電光艇」が活躍する同名の冒険科学小説を基に、海底冒険SFとして作られた作品。
戦記映画の重い雰囲気を漂わせながら、超兵器「海底軍艦」や侵略者「ムウ帝国」、新怪獣「マンダ」等を混ぜて堂々完成した娯楽映画である。

目次

【ストーリー】

日本で土木技師が行方不明になる事件が相次いで発生。事件現場に居合わせたPRカメラマン・旗中とその助手の西部は、被写体としてスカウトしようとした神宮司真琴と彼女が秘書を務める海運会社の常務・楠見を、拉致しようとする謎の男の魔の手から救った。

その後日、「ムウ帝国」なる組織から国連などに対し、"海底軍艦"なるものの建造中止と地上全ての即時返還を要求する脅迫フィルムが届く。その正体は古代に海に沈んだはずのムウ大陸の末裔であり、連続する土木技師の行方不明事件もムウ帝国の仕業だった。
国連は当初この要求を黙殺するも、世界各地でムウ帝国によるものと思われる異変が多発。遂に世界各国によって共同の防衛司令部が組織され、最新鋭兵器などを動員した警戒網を構築する。
しかし、ムウ帝国の科学力は人類のそれを大幅に上回っており、人類はなすすべがなかった。

ムウ帝国を止めることができるのは、彼らが建造中止を要求した、旧大日本帝国海軍の神宮司大佐が造ったという“海底軍艦”だけ。
神宮司大佐の娘である真琴と大佐の上官だった楠見を拉致しようとしたのも、海底軍艦の手がかりをつかもうとしたムウ帝国によるものだった。
しかし楠見によると、神宮司大佐は終戦時、自国の敗戦を認めず反乱を起こして何処かに脱走したという。果たして神宮司大佐、そして“海底軍艦”はどこにあるのか―


【登場人物】


◆旗中進(演:高島忠夫)
フリーのPRカメラマン。真琴を追う中でムウ帝国の存在を知り……
「海底軍艦は“キ○ガイに刃物”ですよ!」

◆西部善人(演:藤木悠)
旗中の助手。

◆伊藤刑事(演:小泉博)
技師の失踪事件を調査している。最後らへんはモブ同然。

◆神宮司真琴(演:藤山陽子)
神宮司大佐の娘。
変な男につけ回されたり、再会した父親が堅物かつ、時代に取り残された「戦争キ○ガイ」だったり拐われたり災難な人。

◆海野魚人(演:佐原健二)
記者らしいが怪しい。いかにも怪しい。
実はムウ帝国人。海底軍艦のありかを突き止めるためのスパイ。


◆楠見(演:上原謙)
元海軍技術少将で神宮司の上官。戦後は海運会社の常務を務める。
終戦時に反乱を起こした神宮寺の遺言に則り、真琴を引き取り、育てていた。

ちなみに演者の死後、彼の孫も東宝特撮に出演する事になる。


◆神宮司大佐(演:田崎潤)
海底軍艦「轟天号」艦長。元大日本帝国海軍の技術将校。
終戦時、大日本帝国の敗戦を認めずに同志や部下たちと共に反乱を起こし、自ら「轟天建武隊」を率いて潜水艦で南方へ逃亡。
逃亡中にムウ帝国に襲われるもこれを切り抜け、戦後は南方の島に秘密基地を建設し、大日本帝国再建のために轟天号を建造していた。
戦後は島で20年も過ごしたために頭の中が大日本帝国時代のままだったので、記者には「キ○ガイ」呼ばわりされ、成人した娘に泣かれる始末だったが、吹っ切れた後は「漢」と化した。
海軍第一種軍装を着こなす姿はまさに往時の大日本帝国海軍軍人である。
20年間も孤島で部下たちと同志たちを大日本帝国海軍の規律を保ちつつ統率してきた事から、高い統率能力を持っている事がうかがえる。
「では、ムウ帝国の心臓を攻撃してご覧にいれよう!」


◆天野兵曹(演:田島義文)
序盤、真琴をつけ回していた怪しい人。実は神宮司大佐の部下で、海軍在籍時の階級は一等兵曹。


ムウ帝国

かつて世界に君臨していたが、一万二千年前に海に沈んだムウ大陸の末裔。
地熱を利用し人工太陽を創造し海底に大帝国を作り上げた。

地殻変動によって滅亡が近づいていたことから、地上を再び支配すべく侵攻。実は土木技師の行方不明事件の黒幕でもあり、拉致しては落盤が多発する地底帝国の修復を行わせていた。
地上より遥かに進んだ文明を持っているようだが、なんかおかしい。高性能潜水艇持ってるわりには、で戦ってるし……。ひょっとしてギャグなのか?

第一、脅迫文で海底軍艦の建造中止を要求しているが、
自分から海底軍艦が怖いことを白状していることには気づいていなかったのだろうか……


◆皇帝(演:小林哲子)
ムウ帝国に君臨する女帝。妖しい美貌と威厳を併せ持つ。
ちなみにメイクや衣装のコーディネートは演じた小林氏が自ら手掛けたもの。小林氏曰く、リハーサルで本多監督に「これでいいでしょうか?」と尋ねたところ大いに喜ばれて一発OKを貰ったらしい。
「マンダの生け贄にせよ」

◆猊下・ムウ帝国長老(演:天本英世)
地上攻撃の指揮を執る長老。イカデビルにはなれない。

◆工作隊23号(演:平田昭彦)
楠見と真琴を誘拐しようとしたが……

◆ムウ帝国人
皇帝に仕えるムウ大陸の末裔。
地熱の影響で高熱エネルギーを発することができ、海から現れる時は蒸気を噴き上げていた。
寒さに弱く、外界では銀色の気密服を着用する。



【兵器・怪獣】


海底軍艦 轟天号
全長150m
重量1万t

終戦間際に日本を脱した神宮司大佐率いる「轟天建武隊」により、20年の歳月をかけて建造された原子力万能戦艦。
言わば『大日本帝国海軍の忘れ形見にして、最強の遺産』。

拠点とした島があらゆる金属を含む地層が出る理想的な島だったため、建造、完成させることができた。
んなあほな……本来は『米軍を放逐し、1945年以前の戦前日本と日本海軍を再興させる』目的のもとに建造されたが、
現時点でムウ帝国に対抗可能な唯一無二の兵器ということで、戦後世界から求められる事になる。

本来、建造計画自体は大戦末期、連合艦隊が壊滅したレイテ沖海戦の直後あたりから存在していたとされ、日本海軍は轟天号を造ることで太平洋戦争の起死回生を目論んでいた。
軍艦は通常は予備代わりに二隻前後を建造する習わしなので、設定されていないが、もしかしたら二番艦も計画されていたかもしれない。

スペックは戦後20年の技術発展と戦中からのトンデモ研究を組み合わせたためか、まさに「万能」。
水上を80ノット・水中を50ノットで航行し、マッハ2で飛行(参考までに、あたご型護衛艦は30ノット、そうりゅう型潜水艦は20ノットである)。
地中をドリルで掘り進み、時速300キロで地上を高速移動するチートと言わざるを得ない高性能。

太平洋戦争で使われていれば、単艦で当時のアメリカ合衆国4軍を壊滅させていたであろう事は想像に難くない。

主兵装は艦首のドリル、−273℃の冷線砲、丸鋸型の回転式カッターに四基の電子砲塔に帯艦電撃…詰め込みすぎである。
ただし電子砲塔は特撮シーンは制作されたが、没になったために未使用。






◆伊号403潜水艦
日本海軍最大最強の潜水艦で、『潜水空母』の異名を誇った。
神宮司大佐はこれに乗って日本軍から脱走したが、ムウ帝国に襲われた際、囮として乗り捨てた。
実際の伊403は起工直後に空襲により損傷している。

◆レッドサタン号
世界最新の潜水艦。MU潜水艇を追跡するが……
乗組員全員が英語で喋っているため、何を言ってるのかさっぱりわからん。イエローモンキーへの嫌がらせか?
なお、実際は英語圏の国が軍用艦に「サタン」などという大変縁起の悪い艦名をつけることはまずない。



◆MU潜水艇
全長130m
重量7500t
3000mの水圧にも耐えるムウ帝国の誇る高性能潜水艇。艦首にマンダを模した主砲を備える。

◆飛行兵器
地上攻撃の主力。無音で滑空し、目標にカミカゼ・アタックを敢行する。


※ムウ帝国は他にも、東京丸の内を陥没させ、また世界各都市を壊滅させるなど、圧倒的な力を見せつけた。



守護竜 マンダ
全長150m(胴回り:10m)
体重30000t
ムウ帝国の守護神。生け贄を餌として食べている。
締め付け攻撃と毒牙が武器。

轟天号に長い体を巻き付けて締め上げるが……


「マンダの“まきつく”!」
「ごうてんの“でんきショック”!」
「マンダはまひした」
「ごうてんの“れいとうビーム”!」
「こうかはばつぐんだ!」


↑大体こんな感じ

後に『怪獣総進撃』にも角が無い個体(一部では2代目)が登場したが、初代に同様ムウ帝国から連れてこられたのかは不明。
そして41年後に公開された『ゴジラ FINAL WARS』にも登場し、地球防衛軍の新轟天号と対決を繰り広げた。



【余談】

  • マンダは当初大蛇がモチーフで、その名も「マンモススネーク→マンモス蛇(だ)→マンダ」という連想だったが、本作公開の翌年(1964年)が辰年という事でモチーフが変わったという経緯があり、宣伝用年賀はがきでも轟天号とマンダが戦うイラストが描かれていたとか。
    • 操演用の人形は後に『ウルトラQ』第6話「育てよカメ」に登場する怪竜としてほぼそのまま流用されている。

  • 丸の内ビル街陥没シーンはかなり大掛かりなもので、6台のカメラを同時に回している。

  • ラストの大爆発の煙は水槽に塗料を落としたものを逆さまに撮影したもの。
    ゴジラ』以降、東宝特撮を支え、後に『ウルトラマン』を世に送り出す円谷英二特技監督は、味噌汁を見てこのアイディアを思い付いたというエピソードは有名である。

  • 押川氏による原作小説は、現在「青空文庫」で無料公開されているため、戦記小説に興味を持つ方にはこちらもお勧め。
    ただ、原作はこれ以降も続編として書かれた長編が幾つかあるのだが、データ化されているのは2020年時点で最初の第1作のみなので注意。
    国立国会図書館デジタルコレクションで「押川春浪 電光艇」とかで検索すると幾つかは閲覧可能になっているようだ。

  • 原作者の押川氏は2019年にNHK大河ドラマ『いだてん』(演:武井壮)と横田順彌の小説原作の舞台『冒険秘録 菊花大作戦』(演:関智一)で実写化されたが、
    双方ともにスポーツ同好会「天狗倶楽部」創設者としての面がフィーチャーされ、本作の事は触れられなかった。残念。



マンダに締め上げられながら、追記・修正お願いします。

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最終更新:2024年04月05日 03:07