トリカブト(植物)

登録日:2012/04/13 Fri 22:58:31
更新日:2023/12/30 Sat 18:00:17
所要時間:約 4 分で読めます




トリカブトとは、キンポウゲ科トリカブト属の多年草植物である。漢字表記はスミレと同じ「菫」。


■概要

世界の広い範囲(湿地を好む)に自生しており、日本にも30種ほどが存在している。
花は、上記のような紫色が一般的によく知られているが、白やピンク等もある。
日本でよく知られているのは全国広い地域に自生する「ヤマトリカブト」と、花の美しさから園芸の対象となる「ハナトリカブト」の2つである。また、茎がつる状になる「ハナカズラ」という珍しい品種もある。

名の由来は烏帽子帽=鳥兜に花の形がよく似ている事から。
英名は「モンクスフード」、修道僧のフードの形から連想された命名である。
また、漢方薬としても使用され、その際には鳥頭(うず)又は附子(ぶし)*1とも呼称される。
花言葉は「騎士道」「忠誠心」だが、これはやはり兜を連想する見た目かららしい(人間嫌いとか世捨て人とかもあるが)。
「復讐」というものもあるが、これは後述する凄まじい毒性に由来しているだろう。
「Wolfsbane(和名:狼殺し)」という別称も存在する。


■毒性

さて、このトリカブトを語る上で欠かせないのはその毒性である。
トリカブトは、全種類の花、茎、葉、根、その全てに猛毒を秘めた毒草なのだ。
主な毒成分はジテルペン系アルカロイドのアコニチンで、他にメサコニチン、アコニン、ヒバコニチン、低毒性成分のアチシンの他ソンゴリン等を全草(特に根)に含む。
採集時期および地域によって毒の強さが異なるが、毒性の強弱に関わらず野草を食用することは非常に危険である。
主成分のアコニチンは特に恐ろしく、根の一齧り分だけで成人男性50人を死亡せしめる程の威力。
この植物の毒性についてはかなり昔から知られており、古代ギリシアの植物学者が図鑑にその恐らしさを記載していたり、
古代ローマでは狼の駆除の為生肉に挟んでいたりしたらしい。
成分名であるアコニチンも、かつてトリカブトの花園だったと言う地中海のクレタ島の観光名所、アコナイの丘から来ているとされる。

また、ミステリーにおいてよく使用されるように、かなり昔から殺人用途に使われてきた毒草であり、古代ローマでは通称「継母の毒」と呼ばれていた。
継母が夫の連れ子が邪魔になった際、殺害するのによく使われたかららしい。
また、神話においてもかの地獄の番犬、ケルベロスの涎からトリカブトが生えてきたとか言われる。それくらい恐ろしいものだと認識されていたのだ…。

「誇り高げに生いし草 その葉は青く 美しく 医学に知らるるトリカブト
 この毒草の地下の根は 神の手ずから植えしもの 人を惑わすこと多く 墓場にまでも導きて 黄泉の臥床に送り込む」

上記はカラフトに送られた流刑囚が詠んだ歌である。
流刑囚は絶望のあまり、トリカブトを齧って自殺する者も多かったらしい。
その美しさに、「自分を救ってくれる」神と言う幻を見て…。

更に、日本では不器量な女性を「ブス」と呼ぶが、トリカブトの別名の「附子」から来たと言う説もある。
神経毒であるトリカブトを口にすると、顔が恐ろしく歪むのだ…。


■日本人とトリカブト

トリカブトは日本でも有名な毒草であった。
北海道の先住民族であるアイヌ民族にとっても重要な植物で、毒性の強い根の部分をアイヌ語で「スルク」と呼んでいた。穏やかじゃないですね
ヒグマ・シカ・クジラなど比較的体が大きな獲物を仕留める毒矢に使用されており、集落のそばには毒性の強いトリカブトが群生していたといわれている。
北海道グルメ漫画「ゴールデンカムイ」にもしっかり登場。
神話においても毒矢の材料にされたり、また、かの一休さんが舐めて自殺しようとした(かに見せた)水飴も名義上は「附子(トリカブト)」だったとされる。
現代日本においても、山菜取りに行った人々がセリやヨモギと間違えてこれをおひたしや天ぷら等で食べてしまい死亡するケースは未だに絶えない。
特に同じキンポウゲ科のニリンソウは非常によく似ており花くらいしか違いはないうえ、同じ場所に群生していることも多い。
山菜に異様な苦味を感じたら飲み込まずに吐き出しましょう。

神経毒であるアコニチンはその性質上、けして解毒は出来ないので皆様もご注意を…。


■トリカブトの利用

とは言うが、トリカブトはしかるべき処置をすれば強心剤や鎮痛剤等の薬に大変身するのだ。毒と薬は紙一重とは良く言ったものだ。
更に、その花の美しさから鑑賞対象としても人気である(こちらのハナトリカブトの方は公式な中毒例も無い)。
だが、やはりその毒性も見込まれる事も多く、狩猟の際の毒矢に加工されたり、軍事利用目的による研究もされていると言う。
また、トリカブトは神経毒なのだが毒の性質として、フグの持つテトロドトキシンと真逆の性質を持っている。
これは神経のイオンチャンネルの解放と閉塞と言う毒の性質を指している。
この両者の毒を調合し服用すると相反する性質により、発症時間を遅らせる事が可能になると言うものである。
事実、過去に2つの毒を組み合わせて服用させる事により被害者を殺害し、死亡時間をずらしてアリバイ工作を狙った事件が発生している。
ただし、これは今行ってもまずバレて捕まるのでやらないようにしましょう。

全くの余談ではあるが、『フレッシュプリキュア!』の妖精シフォンに食べさせると即死するという記述が幼児向け雑誌に載っていた。
子供の夢台無しである。


■創作作品におけるトリカブト使い

▼漫画作品

アイヌの少女で、作中序盤にて凶暴なヒグマをトリカブトを塗布した矢の一発で仕留めた。
また、ロシアンルーレットの中にトリカブトとフグ毒の両方が揃っていたために上記の原理で生還した人物もいる。

▼実写作品

そのまんますぎる名前を有するショッカーのトリカブト型改造人間。
武器は口から吐く溶解液と、猛毒ガスを散布する殺人植物。おい、トリカブト要素どこいった

トリカブトと鳥がモチーフのネオショッカーの改造人間。
武器はトリカブト型の弓矢で、劇中では毒矢を使う事もあり上記のトリカブトと比べてモチーフの要素はそれなりにある。
細かい粗を言えば上記の通りアコニチンに解毒法はないが、この毒矢の毒は神敬介/仮面ライダーXに飲まされた薬により解毒されている。

▼ゲーム

対馬に襲来した蒙古にひとたび敗れ、強大な蒙古を打ち倒すために侍としての誉を捨て手段を選ばず戦う冥人(くろうど)となることを選んだ武士。
戦いの中で再会した乳母が鼠退治に使っていた毒で蒙古を殺せないかと着想、トリカブトの毒を塗った吹き針を使用するようになる。
命中した敵は吐血しながらもがき苦しんで死ぬ、誉なき戦い方の極みとも言えるこの武器は誉を重んじる侍達との対立をより深め、
終いには蒙古にも製法を知られ利用されるなど仁を苦悩させる。
なお、敵に命中した際の効果は前述の通りだが仁は食らっても気力で治せる。

トリカブトをモチーフとした花騎士。儚げな雰囲気で庇護欲をそそるツインテロリっ娘。
小説2巻の主役であり「厭世家」「騎士道」といった花言葉を元にキャラクター性やストーリーが構築されており攻撃手段は影のような黒い使い魔によるガブガブ。
毒要素無くね?いやいや、この娘の毒は団長{プレイヤー}に向いているのである。
R−18な部分故詳細は省くが彼女の最初の寝室はバレたが最後、団長が社会的に即死する致死毒シチュ。
ボイスの各所に危ないセリフが散りばめられ、別衣装スキンは背中がパックリ開いた所謂「童貞を殺すセーター(+シュレディンガーのPNT)」…とリアル団長へのダイレクトアタックも欠かさない。全年齢版でも他人に見られたら死ぬよ?
実際この猛毒ロリにかなりの数の団長が毒されてしまったらしく、小説シリアルキャラでありながら過去にはファン投票1位に輝いた。


追記・修正は附子を服用した経験のある方がお願いします。

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最終更新:2023年12月30日 18:00

*1 生薬名、毒として用いる際は読みが「ぶす」に変わる。