8マン/エイトマン

登録日:2012/09/22(土) 21:28:12
更新日:2024/01/24 Wed 13:32:43
所要時間:約 8 分で読めます






警視庁捜査一課は7班あり
1班7人で捜査にあたる


私は、そのどれにも所属しない


8人目(エイト)刑事(マン)―――


◇概要

『8マン』は平井和正原作脚本、桑田次郎作画によって製作されたSF漫画作品。
週刊少年マガジンに1963年5月から1965年15号まで連載された。
当時、サンデーに人気作家をほぼ押さえられていたマガジン側で、サンデー作品に負けない人気を持っていた作品の一つ。
当時の漫画主流読者である小学生よりやや高め(中学生以上)の読者を対象とした作風、パワーより銃弾にも負けないスピードを長所とした主人公、シャープでデフォルメの薄い画風、当時の作品の中では見るからに革新的な作品であり、創成期のマガジンを支えた大人気作品だった。
なお終了は作画担当である桑田の起こした銃刀法違反による不祥事ゆえの打ち切りである。

1963年11月8日から1964年12月31日までTBS系でアニメ化された。製作はサザエさんでお馴染みのエイケン(当時はTCJ動画センター)。決して松山せいじ氏のおっぱいちょいエロ少年漫画ではない
アニメ化の際に数字のタイトルでは他局(フジテレビ)のチャンネルを連想させるとして、アニメ版はタイトルを『エイトマン』とカタカナ表記にした。

ちなみに項目冒頭の「7人編成・7つの班」という捜査一課の設定は当時TBSで製作・放映されブームを巻き起こしていたテレビドラマ『七人の刑事』に由来している。
これは、ある意味では踊る大捜査線シリーズなどで知られる表現手法である番組の枠を越えたハイパーリンクのはしりとも言える。
当時の子どもたちは七人の刑事が活躍しているその裏で、エイトマンもまた活躍しているのだと胸を躍らせたのだろうか。


◇あらすじ

警視庁捜査一課刑事・東八郎は凶悪犯の追跡中、犯人の凶弾に倒れる。
次に東八郎が目を覚ました時に告げられた事実。

「君は死んだ―――今の君はロボットなのだ」

殉職した東八郎は、その意識と精神を次世代高性能ロボットのボディに移植(コピー)される事で蘇った。

彼は、かつての上司にして無二の友かつ最大の理解者である警視庁の田中捜査一課長の計らいで表の顔を私立探偵としながら、裏では警視庁捜査一課の「見えざる8番目の刑事」として、人の手では解決できぬ事件に挑み続ける。


◆登場人物

・東八郎/8マン (あずま はちろう/エイトマン)
ダブルのスーツが印象的な知性漂う精悍な元刑事の私立探偵。しかし依頼はめったに無く探偵事務所は常に赤貧洗うが如く金銭的にギリギリのラインを漂っている。
その正体は殉職した本物の東八郎の精神を移植されたスーパーロボット(いわゆるアンドロイド)であり、
警視庁捜査一課の「存在しないはずの、8番目の」刑事。
顔には特殊プラスチックと電熱線が張り巡らせており、全身の関節を調整することで身長も変化できる為、如何なる人物にも変装が可能である。
装甲外皮はハイマンガン=スチール製で、瞬間最高速度マッハ15(!)にも耐える耐熱・耐変形性能があるが、
弾丸などの質量攻撃は苦手らしく、ライフル弾にも貫かれてしまう(普通ならエイトマンに弾丸など当たらないので問題ない)。
元々、兵器として開発された過去があり、加速装置以外にも、レーザー光線など様々な武装が施されている。
だが、東刑事の魂はこれが固定装備されるのを嫌がるため、事件のために特別に装備し解決後は除装するのがお約束。
加速装置は最大の切り札でありアニメオープニングにも登場する8マンの代名詞的な能力である。
動力源として小型原子炉が内蔵されており、ベルトのバックルには原子炉を冷却するためのタバコ型強化剤が収められている。(今では珍しくなった少年誌の愛煙家キャラクターの元祖的存在)
弱点は高熱や電磁波、強力な放射線などで頭部電子頭脳や原子炉動力系統がオーバーヒートすること。
後に「刑事である事」と「過ぎた武装を持つ事」や「人の心を持つ事」と「機械の体を持つ事」の板挟みに苦しむようになる。
やがてついに正体が明るみになると、親しい人の前から永遠に姿を消す事を選んだ。

余談ながら、アニメ版におけるエイトマンは60年代前半にして現れた超絶イケメンボイスとしても語り草。
演者の高山栄氏がその後ラジオパーソナリティの道に進んだためにアニメの仕事を全く行わなくなり、結果として後年において高山氏の仕事に触れにくくなってしまったのが惜しまれるところである。

・関さち子 (せき さちこ)
東探偵事務所の事務員(秘書)。本作のレギュラーヒロイン。
東に助けられたことがきっかけで事務所に就職したお嬢様で、彼に仄かな想いを寄せている。
一方で何度も8マンに助けられているが、8マンはロボットであるが故に感謝の念はあっても想いを寄せてはいない。
そのため東が8マンなのでは?と疑惑が持ち上がった時「東さんが8マンだったら良いなあ」と言う一郎に対して「いやよ、東さんがロボットだなんて!」と叫んでおり、また実際に東=8マンが発覚した時には驚愕とともに恐怖の表情を浮かべていた。
最終章で8マンの正体を知りショックを受けるが、その結末は描かれていない。
ある意味彼女の態度が8マンに失踪を決意させた要因なのだが、ヒーローの正体を知っても受け入れるヒロインが多い中、サチ子の反応は生々しく人間らしいものを感じさせる。

・一郎(いちろう)少年
東探偵事務所の押し掛け助手。
ラーメン好きでいつも食べている。事件が起これば、ほぼ空気。
当時この手の作品には必ずこういう(あまり役に立たない)少年助手がいたものである。

・田中(たなか)捜査一課長
警視庁捜査一課の課長。東八郎を「8マン」にした人その1。
部下思いで情に厚く犯罪を憎む好漢。いささかドジなところはあるものの、警察官としての実力は一級品。
その情により東八郎を8マンとして蘇らせる提案に乗り、その責任において彼を「陰の刑事」として重用する。
本作以前には『エリート』で捜査一課長として、本作以後には『超犬リープ』に警視総監として登場しており、実に数多くの難事件に関わってきたベテランである。

・谷方位(たに ほうい)
某資本主義大国より自身の研究成果を持ち逃げしたロボット工学博士。東八郎を「8マン」にした人その2。あからさまに日本人な名前だが日本人ではなく日系人。
当初は自国の宇宙開発に希望を持ち、ロボット開発もそのためのものだったが、冷戦下において母国が軍事増強に傾き、自分の研究すらも軍事利用せんとする政府に嫌気が差して逃亡。
その途中で東八郎の殉職に遭遇し、自らの理想のために彼に開発したロボットのボディを与える。
しかし彼の決断によって残された妻子は悲惨な目にあい、名作と名高い「決闘」のエピソードが発生することになる。
実は8マンのプロトタイプボディの持ち主。つまり自身も8マンと同じロボットである。

・デーモン博士
某共産主義連邦より送り込まれた天才科学者にして8マン最大の宿敵、そしてライバル。
「彼の国がスーパーロボットを持つなら我が国もスーパーロボットを持たねばならない」という理由から幾度と無く8マンに戦いを挑み、彼を大いに苦しめ、一度ならず撃破に成功し、そして超人類ミュータントの事件では協力を申し出た。


★リメイク

1960年代を代表する人気作品は伊達ではなく、いくつかリメイク作や続編が存在している。
が、ほとんどの作品において平井・桑田はノータッチで原作者と言うより一種の名義貸しに近く、それらの作品を「公式」と位置付けるかどうかは正直、微妙という意見もある。
内容の評価はまちまちだが、商業的にはどの作品も苦戦している。

[8] 8マン ~すべての寂しい夜のために~

1992年の実写映画にしてファン最大の黒歴史。主演はジョー&カイの宍戸親子。ベースストーリーは作内でも評価の高い「決闘」の巻。

8マンと瓜二つの顔を持つ謎の青年。その正体は谷博士の息子、谷ケンであった。
自分と母を捨てて亡命した父を恨む彼は、谷博士と8マンへ復讐するために現れたのだ。
争いを避けようとする8マンに対し、ケンは博士とさち子を人質にとって決闘を挑む。
苦悩しながらも戦う8マンだったが、超人的な身体能力を発揮するケンに追い詰められていく。
しかしケンの身体には、ある秘密が隠されていた……。

当時『8マン』の版権を持っていたリム出版がメディアミックスを狙い製作したが、原作のネームバリューのみに頼ったお粗末な品質と東京ドームを一日貸り切るコケおどしのバブリーな営業戦略によって盛大に大コケ会社まで倒産させた作品として有名。大体「人気アニメ=オタク=宅八郎」と発想し「宅でキャンペーンやればオタクども釣れんじゃね?」と考えて宅に8マンのコスプレさせるあたりいろいろおかしいつかヲタなめんな

ただし須甲和彦氏によって執筆された小説版『8マンbefore』は映画の出来に反して紛うことなき傑作である。

[8] 8マン before -すべての寂しい夜のために-

須甲和彦氏によって執筆された上記映画作品のノベライズ。
重ねて言うが映画の出来に反して紛うことなき傑作である。
後述の『8マンafter』と連動して、過去と未来二つの8マンのストーリーが制作されていくはずだったのだが……。
大本となる映画のクオリティがもう、なんというか、あまりにも酷すぎた為、あえなく1巻のみでポシャってしまった。
ほんと、映画さえまともに作られていたらなぁ……。

複雑な家庭事情から逃げるように上京してきた女子大生のサチ子。
偶然から少年犯罪に巻き込まれた彼女は、身を呈して助けてくれた若き横田刑事と恋に落ち、やがて妊娠する。
危険な仕事であるからと躊躇していた横田刑事も遂に結婚を決意した時、臓器密売組織追跡していた彼は殉職。
さらに件の少年犯罪で友人が逮捕された事を逆恨みする少女たちによってリンチにあったサチ子は、流産してしまう。
失意の中、とにかく再起しようと考えた彼女は、やがてある探偵事務所の秘書として就職を果たす。
私立探偵 東八郎。似ても似つかぬ筈の彼に、どうしてかサチ子は、かつての恋人の面影を見てしまう……。

一方、ロボット研究の予算欲しさに臓器密売組織に手を貸し、家庭を顧みず研究に没頭していた谷博士。
組織との軋轢から殺されかけた博士は、自身を庇って瀕死の重傷を負った横田刑事を助けるべく、
そして自らの研究成果を試したいという欲求を抑える事ができず、彼の記憶をロボットへと転写してしまう。
その事実を知るのは殉職の場に居合わせた、横田刑事の上司にして親友である田中捜査一課長のみ。
蘇った死者に対してどう接して良いかわからぬまま、田中課長は、せめて一人の人間として扱ってやろうと決意するが……。

東八郎=8マンは、暴走を抑える為、感情と記憶の数々を封印された状態である事に気付いていなかった。
胸に空虚な想いを抱いたまま機械の身体をもてあまし、自分の存在意義を求め、使命感から悪と戦うべく街を走る日々。
そんなある日、謎の連続殺人事件を追う8マンの前に、もう一人の高速戦闘ロボットが現れ、襲いかかる。
そして戦いの中、彼によって電子頭脳をハッキングされた8マンは、ついに横田刑事としての記憶を取り戻し……。

谷ケン。かつて心中自殺を試みた母によって殺され、父によって蘇生された青年。
昂る感情をそのまま機械の身体に押し込められたケンは、全てを暴力衝動としてしか解放できないでいた。
さらに父への復讐を胸に秘めたケンは、谷博士を喪った臓器密売組織から取引を持ちかけられ、受諾してしまう。
臓器密売組織の首魁、その目的は脳髄だけになってしまった少女に肉体を与え、蘇生することであった。
同じく無理やり蘇生させられた者同士、ケンと少女は交流を重ね、やがて恋に落ちていく。
しかし少女は、かつて逆恨みから一人の女性を不幸にした事を悔い、彼女によって殺される事を望んでいた……。

そして全てを喪ったケンは暴走のまま、サチ子を人質にとって、8マンへと『決闘』を挑む……。

本作は各章ごとに視点となる人物を変え、サイボーグとして蘇った者の苦しみ、その周囲にいる人々の葛藤を描き切ったハードSFである。
アクションシーンは多少あるとはいえ、全体の作風としては後述の『サイボーグブルース』に極めて近い。
スーパーロボットとして持て囃される事は無く、蘇生した死者である事を嫌悪され、故に誰とも真の意味で打ち解ける事無く、自らを「ただのオモチャに貶められた」と自嘲し、死者である自分が燃え尽きるまで走り続ける決断をする、虚無的な8マン。
(原作8マンも蘇生直後は「こんなあさましいロボットになるなら死んだ方がマシだ」と言っているので原作再現である)
やがてその戦いが「魔人コズマ」に至り、後述の『8マンafter』にて自ら死を選ぶ事を思うと……彼に救いはあったのだろうか。
今となっては、描かれなかった「未来の8マン」が『8MAN infinity』である事を願うばかりである。

[8] 8マン ANOTHER STORY

末松正博の手掛けた上記実写映画のコミカライズ。
横田刑事の殉職から8マンの誕生、東京で巻き起こる犯罪との戦い、そしてさち子との再会を経て、東八郎は奇妙な既視感に襲われる。
人類を救うためのロボット、どんな道をも選ぶことができる存在、人間ではない機械、化け物、そして蘇った死者。
「オレハイッタイ、ナニモノナンダ!?」

トーンを一切使わない鮮烈な白と黒のタッチで、ノワールなハードボイルド調のエイトマンが描かれている。
方向性としてはノベライズ版に近く、人間社会に相容れない孤独なエイトマンの苦悩や、容赦なく犯罪者を打ちのめす姿、苦み走った東八郎の表情などは、
「頼もしいヒーロー」として描かれた原作の東八郎に比べて、より彼の人間味を掘り下げている。
そういう意味においても、やっぱりこちらも実写版よりクオリティは高い。
8マンオフィシャルブックVol1に前篇が一挙120ページ掲載されたのだが、この雑誌は実写映画とのタイアップ企画によるもの。
映画がコケてしまったことでVol1以降は発表されることなく、残念ながら後編がどのように描かれていたのかは不明である。
末松氏は後年マンガボーイズでも8マンを掲載しており、本作の雰囲気はそのままマンガボーイズ版にも継承されている。

[8] サイボーグブルース

原作者である平井和正が手がけた大人向けのSF作品。
世界政府警察機構の黒人刑事アーネスト・ライトは、巨大犯罪組織クライム・シンジケートとの戦いの中で殉職。
しかし僅かに残った脳を機械の体に搭載したサイボーグ特捜官として蘇り、再び犯罪との戦いに挑む。
だが鋼鉄の体に閉じ込められた生ける死者であるライトには、魂の救済は無い……。

主人公を同僚の裏切りで殉職した黒人刑事アーネスト・ライトに変更し、舞台も北米に。
サイボーグであることの悲哀と苦しみがストーリーの中心となっている為、アクションシーン(当時の批評家曰く「エイトマン・ドタバタ」)は少ない。
『8マン』はあくまで勧善懲悪のヒーロー物として描かれていた一方、此方は徹底的にダークで暗く重苦しい内容となっており、
腐敗した警察と犯罪組織の対立、人間とロボットの間で揺れ動く想いなど、さまざまな葛藤がこれでもかと主人公を打ちのめす。
そして幼馴染で恋人だった少女が犯罪組織の手に落ち、世界政府と犯罪組織が表裏一体の同一組織である真実を知らされ、
自身もまた政府から組織へ払い下げられるという運命に至ったアーネスト・ライトが、最後に選択する道は……。
「エイトマンへの鎮魂歌」として執筆された、初期平井和正作品における大傑作。
後述の『エイトマンインフィニティ』にも、アーネスト・ライトというキャラクターが登場している。


★続編


[8] 帰ってきたエイトマン 2代目は竹下通りのハウスマヌカン

1987年にTBSの2時間ドラマ枠・月曜ドラマランドで放映された作品。
平和を守り続けて過労状態の東八郎より、加速能力を与える8マンスーツを託された主婦が、彼の休暇中に平和を守るというストーリー。うん、本当なんだよ。
続編と言うより、続編の体裁をとったタチの悪いパロディ。公式が病気状態でノリはまるで東映不思議コメディシリーズ。


[8] EIGHTMAN

1991年にてSNKよりアーケードにて発表されたアクションゲーム。

人類に絶望した谷博士が、帰還した超人類ミュータントと協力し、人類滅亡を計画。
復活した怪人達によってパニックに陥る大東京を、8マンは再び駆け抜けていく。
熾烈な戦いの末、8マンは谷博士に取り付いていた幻魔を倒し、世界を救う……。

――――というストーリーだったのだが、突如制作現場に現れた平井和正氏が大激怒で却下。
可動直前にデモ画面やストーリー画面が削除された結果、8マン要素の薄い作品になってしまった。
殺人ロボット005や魔人コズマ、超人サイバーなど原作の敵キャラがボスとして出てくるものの、ほぼ名前だけで別物である。
当時の平井和正氏は精神的に不安定だったらしいが、ほぼ唯一のゲーム作品であるだけに残念でならない。
ちなみに2Pキャラは、新たなるボディに意識を移し復活した谷ケン。


[8] 8マン AFTER

1993年に発表されたOVA。小説版も出た。

8マンが魔人コズマとの戦いを経て姿を消してから7年。
東京はメガロポリス「シティ」へと発展を遂げたが、その一方で治安は悪化し、危険な犯罪都市に成り果てていた。
東探偵事務所を辞した後、大企業バイオ・テクノ社に勤務していたサチ子は、ふとしたきっかけから私立探偵の羽佐間と巡り合う。
機密を保持したまま失踪した科学者を捜索する羽佐間に、似ても似つかぬはずだがかつての想い人である私立探偵の姿を重ねるサチ子。
しかし謎の襲撃者から彼女を庇った羽佐間は致命傷を負ってしまう。
東京ではサイボーグによる凶悪犯罪、彼らを維持するための活性剤を密売する犯罪結社による暗躍が続き、事態は一刻の猶予もない。
報せを受けた田中警視は、意を決して谷博士のもとを訪ねる。あの伝説の男のボディに、羽佐間の意識を移植するために。
だが、かつて警官だった頃、羽佐間は自身の妹を惨殺した不良警官を一人、また一人と復讐したという過去があった。
その過去がもたらす怒りは、エイトマンに封印された兵器としての機能を呼び覚ましてしまう。
東八郎が屈した「己は兵器である」という重圧を、羽佐間は背負う事ができるのか――……。

さち子や田中の人格設定が物語側に都合よく改変されてたり、物語開始以前に8マンから東八郎のメモリーは消去され、第1話で別人(オリジナル主人公)のメモリーが移植されたり……という展開をやらかしたため正直、微妙。
「東八郎じゃない8マンなんて…」「初代の復活じゃねえのかよ」「巻き込まれ体質って…謝れ! 自ら死地に飛び込み皆を守った東八郎に謝れ!」と、よくどっかで耳にする批判が噴出した。
ただ、そういったもろもろを抜きにした単体作品として見ると「新たなエイトマンの誕生」として完成度は高いため、コレはコレでアリという意見もある。
しかしその一方で羽佐間の再起を中心にしたためヴィランがあっさり退場したり、背後に暗躍する組織などの伏線が未回収だったり、
その上で続編は造られなかったという辺りまで踏まえて、良くも悪くも90年代初期のOVAである。
あと主題歌のアレンジは超格好良いので必聴。


[8] THE EIGHT MAN

1994年から月刊マンガボーイズに連載された作品。作者は前述の実写版コミカライズも担当した末松正博。

伝説の刑事エイトマンが姿を消してから100年後の2094年、世界はマザーコンピューターによって感情さえ制御される管理社会「シティ」となっていた。
一方、シティに参加できない人々が暮らすスラムでは、次々と人がレプリカントに襲われ消失あるいは惨殺される事件が頻発。
それがシティが公式に市民へ感情を供給する電子ドラッグ「マインドブレード」の原材料とするためだと知った民間警察の田中部長は
この強大な陰謀を阻止するには力不足な自分を嘆き、祖父がしきりに語っていた伝説の刑事エイトマンの復活を望むようになる。
そして時を同じくして田中部長の娘レイは、レプリカントを一瞬にして吹き飛ばす謎の光と、8の文字を目撃する――……。

前述の「AFTER」に似た設定だが、此方での主人公は谷博士により100年ぶりに再起動したオリジナルのエイトマン本人。
本作では八幡駿(ヤハタ ハヤオ)と名乗り、「マインドブレード」計画の裏に潜むデーモン博士と対決することになる。
出渕裕によってデザインされたエイトマンが超速で戦う姿や、ハードボイルドなアメコミ調のタッチによる平井和正風のストーリー、
さらに昭和時代のエイトマンの活躍も原作風のタッチで描かれるなど、クオリティの高い作品であったのだが、マンガボーイズ廃刊によって打ち切り。
コミックスもデーモン博士の一味と戦うためエイトマンに変身した隙を突かれ、八幡探偵として側についていれば守れたはずの女性を殺されてしまう、実質バッドエンド。
エイトマンが円満な結末を迎える事はないという歴史がまた一つ積み重なってしまった。


[∞]8MAN infinity

2004年から2007年まで『マガジンZ』に連載されていた作品。
現時点で最新のリメイク作にして、一番続編らしい続編。

他者を助ける為には自分を顧みない高校生の東光一。彼はある日、線路に落ちてしまった一人の少女を助けようと自らの命を落してしまう。
しかし、列車に轢かれたはずの彼は病院で目を覚ます。
それは光一が助けようとした少女……人の姿をした機械マシンナリーのアンナと、アンナを導く東八郎によって、マシンナリーボディ8thを与えられた為だった。
伝説の男「8マン」の力を引き継ぐ「8マン・ネオ」となった彼は、謎の組織「ヴァレリー」や、犯罪結社「黒い蝶」の陰謀を食い止める為、アンナと八郎と共に戦いに身を投じてゆく……

作者(原作脚本)は平井に代わり、平井のたっての指名で『JESUS』『闇のイージス』でお馴染み七月鏡一が務める。平井も企画時にスーパーバイザーとして参加した。
七月自身が平井和正マニアでありヒーローマニアであるため、その「解っている」展開やネタ振りは非常に胸熱
のだが、掲載紙『マガジンZ』の休刊によってあえなく打ち切りとなってしまった。
機会があれば続編を描きたいという考えは製作陣にはあるようだが、今のところは絶望視されている。




そして2020年……




「加速装置……君はボクと同じ能力を持っているんだな……」

「キミは一体何者だ? ロボットか?」



「それともボクと同じサイボーグか!?」





[8x009]8マンVSサイボーグ009

チャンピオンRED2020年9月号より連載開始が予告された一大企画。

サイボーグ戦士たちの活躍によって黒い幽霊団が倒され、平和が取り戻されてより数年。
兵器市場に黒い幽霊団残党の気配を察知して潜入した009達であったが、それは彼らを誘き寄せる罠であった。
核弾頭炸裂まで残り数秒。加速能力の限界に達した009を追い抜き事態を解決したのは、鋼鉄の胸に[8]のマークを輝かせた一人の男。
ギルモア博士は語る。彼こそは一人の天才によって人間の意識を移植された機械、伝説の男エイトマンだと。
谷博士を人質に取った黒い幽霊団は、009への刺客としてエイトマンを送り込む。
宿敵デーモン博士をも招聘した黒い幽霊団は何を企んでいるのか。はたして009に戦いを挑むエイトマンの真意とは。
日本マンガ史上の伝説ともいえる二大スピードスターがついに激突する。

原作は七月鏡一、作画は早瀬マコトの『幻魔大戦 Rebirth』コンビ。
もはや説明するまでもない傑作『サイボーグ009』とのクロスオーバーである。
同誌で既に連載されている009たちサイボーグ戦士らの説明は少なく、若い読者たちに8マンを紹介するような導入だが、
無論それだけではなく「INFINITY」の設定であるマシンナリー、機械の体に人間の意識を移植した点を回収しており、
003が「私達だって少しは生身の部分が残っているのに、まったく何も残っていない状態で生かされるなんて」と8マンに同情し、
その003ですら、電子頭脳であるがゆえに、過去のどんな出来事でも思い出ではなく鮮明な記憶となっている8マンの苦悩に気づけないなど、
サイボーグ戦士たち以上にもはや人でなくなってしまった、エイトマンの孤独と悲哀を描いている。

もし『エイトマン』が打ち切りにならなかったなら、平井和正は「エイトマンやコズマ博士の持つオーバーテクノロジー」の源流として、
超古代文明のロストテクノロジーなどを登場させていく想定だったというが、これはやがて神々との戦いに至るサイボーグ戦士たちとも通じる部分がある。
また『8マンAFTER』や『INFINITY』『マンガボーイズ版』など、エイトマンの続編は過去幾本か制作されていたものの、
いずれも二代目、あるいは遠未来の物語で、「東八郎であるエイトマンのその後の活躍」が描かれるのは本作が初。
平井和正、石ノ森章太郎の後継者とでも言うべき二人が此処からいかなる8マンを描くのか、注目である。


その後、令和5年(2023年)7月20日、全話収録の単行本が上・下巻同時発売された。



★主題歌とメディアおよびスポーツ

明るく高らかなその曲調は、鉄腕アトムや鉄人28号の主題歌と並び、日本の戦後アニメ史を代表する有名なアニソンのひとつとして有名。そのため、特に出典を明らかにすることもなく引用されたり、パロディのネタに使われたりすることも多い。
たとえば、本作のタイトルが『8マン』である事から、数字の8と縁があるスポーツ選手(背番号が8だったりゲームの中で8番目の役割を持っている等)や俊足を売りにしているスポーツ選手の応援歌にたびたび用いられる。かの巨人・原辰徳監督の応援歌に採用されたのは特に有名。高校野球などで知らないうちに聞く事もあるかもしれない。
また同じ理由で「速さ」や「8番目」がセールスポイントとなる商品・サービスのCMソングにも採用される事がある。近年で有名なのは「フレッツ光」のCMで使われたSMAPによるカバーだろうか。


★余談

作画を担当していた桑田は前述の通り銃刀法違反を起こして本作は打ち切られた。
が、アニメの主題歌を歌った克美しげるに至っては何と1976年に恋愛トラブルから愛人を殺害し10年の実刑を食らい、出所後は覚醒剤をキメて再び8ヶ月間、刑務所へ。さらにその後は体を壊して長き闘病生活を余儀なくされた。
結果、二人とも後半生では最終的に魂の寄る辺を求め宗教活動に至っている。
ちなみに原作者・平井も一時的に某ニューエイジ系教団に関わっていた事がある。
なお本作の主人公・東八郎は原作最終回*1で、「兵器である自分という現実」をつきつけられ魂の寄る辺となる「人の絆」を失い失踪して物語は終わる。
偶然とはいえ異様な符合・いわく。さらに前述したリム出版の倒産、リメイク・続編作の不振から業界では呪われた作品とも言われている。





そして私は姿を消した。その後、探偵事務所の皆とは出会っていない。


だが諸君らは別だ。


私がいかに変装の達人であるか、諸君らは、よく知っているはずである。



ジリリリリ…ジリリリリ……

カチャ
「−−−はい、番号違いです

追記・修正してください−−−」

ジー、コロコロコロ……

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最終更新:2024年01月24日 13:32

*1 連載時の作画自体は桑田ではなく当時彼のアシスタントだった楠高治と小畑しゅんじが担当したが、後にリム出版から完全版が発売された際新たに桑田による同ストーリーの新バージョンが執筆された。