動物のお医者さん

登録日:2012/02/07(火) 00:29:36
更新日:2024/02/04 Sun 12:59:17
所要時間:約 8 分で読めます




動物のお医者さん』とは、少女雑誌『花とゆめ』に1987年~1993年にかけて連載された少女漫画。
作者は佐々木倫子。

北海道札幌市のH大学獣医学部を舞台に、獣医を目指す主人公の成長と動物とのふれあいを描いた感動物語。










……と、この作品をタイトルや表紙の絵でしか知らない人には思われがちだが、実際は学生の身の回りの日常をコメディタッチで描くギャグ漫画



ギャグ漫画である




……一応、成長物語なのは間違っていない。

ギャグ漫画といっても絵柄は端正かつ写実的で、ギャグのスタイルも押し付けがましいようなものではなく、思わずクスリとくるような笑いを取りにくるタイプ。
その絵柄に反した登場人物のシュールな言動の破壊力には定評があり、ファンならソラで思い出せるほどの名言・迷言は数しれず。獣医学に詳しくないはずなのに、なぜか連載当時の(家畜)法定伝染病や牛・馬の歯式を言える本作読者が後をたたない。
ちなみに少女漫画だが登場人物同士の恋愛描写は全くと言っていいほどない。ナルシストのインコとかオス同士のとかならあるよ。

ギャグ漫画の御多分にもれず本作は各話完結式のスタイルを取っており、作品中の時間の流れは意外と曖昧。
第一話の時点だと卒業間近の高校生だった主人公・ハムテルは数話もしないうちに大学生活に馴染んでおり、子犬だった愛犬のチョビもすぐに成犬の姿になっている。
時系列もあっちこっちに飛び、様々な登場人物の過去エピソードが豊富に描かれているのも特色のひとつである。

また、この作品の影響で本作の主人公の愛犬チョビと同じ犬種シベリアン・ハスキーを飼う人が急増し、北海道の獣医学科の志望者数が急増するなどのブームが起こった。
_でも流行ってるからという安易な理由で動物を飼わないようにね!


【主な登場人物】

(俳優は2003年ドラマ版)

  • 西根公輝
演:吉沢悠

何も考えてないだけだ 職業のことはH大の理IIIに受かってから考える

この漫画の主人公。親友の二階堂を始めとする大半の登場人物からは名前をもじってハムテル、祖母からはキミテルと呼ばれている。が、本来の読みはまさき

高校時代に偶然出会ったH大学の漆原教授にシベリアン・ハスキーの子犬を押し付けられ、それと同時に「君は獣医になる」とカシオミニを賭けて宣言された。(カシオミニとは70年代に大ヒットした小型の電卓だが、ドラマ版では時代もあってか電子辞書を賭けている)
感情の起伏が少なくマイペースで冷静な性格をしており、教授の言われるままに獣医学部を志望した理由も「子犬の治療費が浮くから」と至極現実的なものであった。

年季の入った(埃だらけの)大豪邸に祖母と二人で暮らしており、普段留守にしている父と母はそれぞれピアニスト・オペラ歌手として世界的に活躍している。
ピアノが弾けたり乗馬の経験があったりするなど温室育ちのお坊っちゃんと周囲から思われた時もあった。
実際、大学にいくまで一度もアルバイトをしたことが無かった。

原作だと基本的には冷静で優秀な人物として描かれているが、ドラマ版では穏やかな天然キャラとしての側面が強調されていた。
とはいえ、原作でも「バイトしたのにバイト料もらい忘れた」とか「犬の口にはゴムパッキンが付いている」とか天然エピソードがちょくちょく見える。第1話のヒキからして犬のうんこを検便に出している回想だし。
完璧超人というわけではない。


  • 西根タカ
演:岸田今日子

祖母の教えをまもらない者はおそろしいことになる~~~~
今おそろしいのです

ハムテルの祖母。押しの強い性格で都合の悪いことはすぐに忘れるなどトラブルメーカーなところがある。
たいていは「おばあさん」と呼ばれる。
夏は水かけババア、冬はお湯かけババアとして活躍する。
一般人なので当然獣医として活躍する機会は無いが、あるエピソードがきっかけで、終盤は小鳥の看病ならある程度手伝えるようになった。


  • 二階堂昭夫
演:要潤

ぼくのときは教授の知らない人を紹介してください
そんな人は知らん!


ハムテルの親友……で、獣医学を学ぶ身でありながら大のネズミ嫌い
どのくらい嫌いなのかというと、ネズミがいる場所は裸足で歩かないようにしたり、少し触られたり発見しただけで失神したりするほどには苦手。
それなのに何故か、深く考えないでハムテルについていって獣医学部に入った。
アホの子というわけでもなく気の良いやつだが、ネズミ絡みではポンコツ化し「戸棚の裏はネズミのでいっぱいだーッ!!」をはじめとした様々な迷言を残している。

……というか、高校名は明かされていないが、原作の描写からするとハムテルともどもかなりのエリート校の出身である。獣医学部に入れるくらいなのでそりゃそうか。
この学部に入るかどうか迷った時に神様のいうとおりにしてみたら、神様は「獣医学部に進みなさい」と仰ったらしい
獣医学部に入った後は何とかネズミ嫌いを克服しようと四苦八苦しており、ドブネズミと戦ったり(負けたけど)、ハムスター程度なら触れるようになったりする(ただし真っ青な顔で)など一応少しずつ改善は見られている。

なお、おばあさんとは顔なじみだが、もはやそれを通り越して完全に家族の一員(=労働要員)として認識されている。なんやかんや手伝うあたり、二階堂の人の良さがうかがえる。

ちなみに原作だとソフトな雰囲気だったのに対し、ドラマ版ではハムテルに比べて若干チャラい雰囲気の青年として描かれている。


  • 菱沼聖子
演:和久井映見

血が好きなことでは他の誰にも負けません~~~~ お願い採用して~~~~


公衆衛生課に所属する変な院生で、ハムテルの先輩。
大きなリボンと非常にゆっくりした喋り方が特徴(彼女のセリフのフキダシだけグニャグニャとした特徴的な線で描かれている)。好物は血液検査の後片付け。好物……??
常軌を逸した低血圧・低体温体質の持ち主だが、登場回数を重ねるごとに、謎の変温動物になったり、超音波を聴き取ったり、傷んだ寿司を食って1人だけ平気だったり、虫垂炎の手術を受けたときに暇だからライトに反射した自分の腸を眺めたり、怒って静電気を出したり……と、変人化が進行していった。
要領の悪さからいろいろ行き遅れたり生き遅れたりしているが、両親も(というか親族一同)そんな感じなので「人の倍大学にいたなら人の倍長生きすればいい」と大して問題視していない。器がでかい。
しかし研究者としての能力は高いのか、あるいはただの強運か、特許が取れそうなほどの発見をするなど侮れないところがある。


  • 漆原信 教授
演:江守徹

ヨシ!午後にもつれ込むような仕事がはいらなかったら昼メシにつれていってやろう
スシでもウナギでもいいぞ!

高校生だったハムテルに獣医の道を示してチョビを押しつけた大学教授、かつH大学付属家畜病院の院長でチョビの命の恩人かつ育ての親。

……と肩書きは立派だが、その正体は大のアフリカンマニアで毛刈り好きのトラブルメーカーでフリーダムな破壊神。
巻き込み気質でもあり、教授が何か苦労すると周囲はその10倍は苦労するとして恐れられている。
普段の言動は理不尽極まりないが、ここ一番の決断力や度胸には優れており、たびたびハムテルたちの窮地を救うこともあった。
ちなみに、獣医学部には戦後のどさくさに紛れて入学したらしい。
本編では殆ど描かれていないが、実家は折り詰めなどを作る仕出し屋である。
レギュラー陣の中で唯一チョビの“一番可愛かった時期”を知っているため、ハムテル達から嫉妬の目を向けられた事もある。

ドラマ版では江守氏の完コピっぷりがすさまじく、原作再現度は全キャスト中随一。


  • 菅原教授
演:草刈正雄

かならずや犯人をつかまえるぞ

イギリス紳士のような容姿をした公衆衛生学の教授。漆原教授とは学生時代からの同期。しかしながら彼と違って入るべくしてH大学に入学した。
大の好きで知られており、この人の前でうっかり馬の悪口を言ってしまった学生は後の人生にツケが回るというジンクスがある。

生真面目でインテリ気質なため、登場しては何かしら不幸な目にあう(大体は漆原か菱沼によって)不憫な人。

ドラマ版では友情出演の草刈正雄が演じているが、ヒゲを生やしておらず痩せ形でもなく黒髪なので、漆原とは対照的に完全にイメージが異なる。


【主な登場動物】


獣医漫画なだけあってこの作品には数多くの動物が登場するが、動物キャラも鳴き声だけではなくセリフを使ってちょくちょく喋る。
動物キャラのセリフには人間キャラと違ってフキダシが無く、文字も写植ではなく手書きのレタリング文字で書かれている。
セリフというよりかは、考えている事の内容が字幕で表示されていると表現したほうが適切かもしれない*1
この作品がきっかけで、手書きレタリング文字は佐々木倫子の定番のお約束ネタとして読者に広く認知されることとなった。

声:柊瑠美

そうかな… そうかも…

この漫画のヒロイン。笑顔がチャーミングなシベリアン・ハスキーの女の子。ここ重要。
血統書などは無く、「似ているがおそらく雑種だろう」とされている。
実は漆原の友人宅の軒下に迷い込んだ犬が出産したが、衰弱した母犬や他のきょうだいは助からずチョビだけが生き残った、というなかなかにヘビーな出自。

不良がビビるほどの怖い顔の持ち主で、ハムテル達と初めて会ったときは「般若」とさえ称されたが、その実は極めて温厚な性格の持ち主でめったに怒らない*2良い子。
ハムテルに「あそぼ」とアプローチを掛けることも多いが、ハムテルが忙しい時には察して自ら身を引く良犬。

子犬だった当初は年相応に暴れまわる犬だったが、ミケの教育的指導で「遊び」の加減を学び、おばあさんの噛みつき教育的指導により人間を傷つけないよう配慮できる犬になった。
成犬となった今では忍耐力も凄まじく、子供や菱沼さんにいじられてもひたすら耐える。

犬種が犬種なので物干し台を軽く飛び越える脚力の持ち主であり、また後に犬ぞりレースにも参加した。
さらに泳ぎも不格好ながら習得しつつあり、そのうち海で遊べる犬になるかも。

ヒヨちゃん(後述)に驚かされて外に逃げたときに、まだ名前を決めていなかったため呼び方に困ったハムテルが二階堂の適当に付けた『チョビ』という名前を自分でも試しに呼んでみたらそのまま定着した。

なお、漫画版では成犬だが、ドラマ版ではタレント犬の都合か生後7ヶ月の幼犬を使って撮影されている。結果的に般若らしさは原作より薄れている。

本作のチョビは本人(?)の資質と躾の甲斐あって非常に賢い犬として描かれているが、この漫画の影響でシベリアン・ハスキーを飼いはじめた人は漫画と現実の壁を思い知らされたとか。

とある思い出から、雷鳴がトラウマ。


声:山本圭子

カエルのやつがネコの置き物や思うて気にせんようになるまで動いたらアカンのや

ハムテルのおばあさんが飼っている何故か関西弁で喋る。

(自分以外の)礼儀作法に厳しく、まだ小さかったチョビに色々なことを教えたチョビのお姉さん(というかアネゴ?)のような存在で、彼女が自分より大きくなってからもカエルやスズメの取り方を(頼まれてもいないのに)ちょくちょく教えてあげている。
チョビ同様ハムテルにも懐いており遊びをねだることも多いが、チョビと違って彼の都合より自分の都合を優先する。ネコは気まぐれだからね。

西根家周辺の猫にとっては女ボス的存在であるらしく、「こいつらに何か食わしたって」と野良の母子猫を連れてきたこともある。
しかし、本人は自分のことをもっとお上品な存在(ナレーション曰く、『小笠原流家元』)だと思っていたので、「女ボス」呼ばわりされたときは激怒していた。
この場面は国語の教科書に載るくらい有名。

幼少期のとある思い出から、水没がトラウマ。


  • ヒヨちゃん(雄鶏)
声:大塚明夫

ワシが死んだら3年間は隠しておけ そして影武者を建てるのだ

子どもの頃、鷹匠に憧れていたハムテルが買ってきた雄鶏。買ってきた時にヒヨコだったからヒヨちゃん。
元々は普通の鶏だったが、野良犬とのケンカに勝った結果、自信を付け過ぎてしまって西根家最強の生物に豹変し、現在に至る。
その過程を描いた過去エピソードは必見。

ハムテルが小学生の頃から飼われているので既にかなりの高齢の筈だが、とっても元気。
鶏肉が好物の雌鳥とお見合い(という名の死闘)をさせられたり、インフルエンザにかかって死にかけたこともあったりしたがまだまだ元気。
彼がいないと西根家の庭は野生動物の住処になってしまう。
しかもH大学の破壊神、漆原教授と互角に渡り合う数少ない存在でもある。

ハムテルの夢枕に現れたときは、武田信玄(の遺言)のような発言をしていた。




  • おとうさん&おかあさん(スナネズミ)

フロにはいる?
いんや はいらない

漆原教授から「オスオスだから大丈夫」と言われて貰ってみたら子供を生んで、
オスメスだったと思ったら、
両方とも乳をあげているのを見て実はメスメスだったことが判明したスナネズミ。

最初に貰った二匹の内、顔が可愛い方がおかあさんで不細工なのがおとうさん。その後、おとうさんが更に子供を産み、おかあさんはパッタリと産まなくなった。
子供はどんどん増えていきもう貰い手がつかない。

ちなみにおとうさんは晩酌を嗜む貴重なスナネズミ。
たまにハムテル・祖母と一緒に呑んでいる。


  • シーザー(犬)
俺はやったぜ!

中盤以降に登場。チョビと同じくシベリアン・ハスキーで、ハムテル率いる犬ぞりレースのチームのリーダー。
俺はやるぜ」が口癖で、文字通り皆を引っ張っていく頼もしい存在だが、性格はチョビと正反対で言動はかなりフリーダム。
熱血かつ人懐っこい性格で、たくさん人がいる場所に連れて行くとテンションがハイになるが、それが弱点でもある(レースが始まるギリギリ前に会場に連れてこないと、はしゃぎ過ぎてバテてしまう為)。
飼い主であるブッチャーでも「何を考えているのか分からない」時があり、また同じく氏の飼い犬であるジャックと共に脱走をした事がある。




もう駄目だ……追記・修正しているんだ……

戸棚の裏は冥殿の卵でいっぱいだーッ!!

<誰だ,冥殿の卵なんて言ったのは。留年させるぞ!

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最終更新:2024年02月04日 12:59

*1 基本的に人間は動物の「セリフ」を理解できないし、動物側も人間側の細かいセリフは理解できない。ハムテル←→チョビなど、以心伝心の関係がある場合には結果として会話が成立しているようなシーンもあるが。

*2 実際は何度か怒ろうとしたこともあったが、怒るのに慣れていないために怒るタイミングを逃がしていた。