もののけ姫

登録日:2010/01/01 Fri 16:16:07
更新日:2024/01/15 Mon 23:50:56
所要時間:約 12 分で読めます











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「もののけ姫」とは、1997年に公開されたスタジオジブリ製作のアニメ映画。
原作・脚本・監督:宮崎駿。

【概要】

自然界と人間の戦いを描いた荘厳な作風が特徴であり、これまでのジブリ作品に比べるとおどろおどろしく暴力的な描写も多い。
ほのぼのとした日常描写や明朗な少年活劇など、従来のジブリの作風を期待していた観客を良い意味で裏切った異色作ともいえる。
が、そもそもジブリの出発点は「風の谷のナウシカ」であり、原作の漫画版にも凄惨な描写はじゃんじゃん出てくるので、
パヤオ的にはむしろ原点回帰だったのかもしれない。

公開前から注目を集めていた本作であるが、公開されるやいなや社会現象を巻き起こし、興行収入は193億円と、それまでの日本公開映画の記録を更新した。
ちなみに、その後この記録を塗り替えたのは邦画では長らく同じジブリ作品の「千と千尋の神隠し」と「ハウルの動く城」のみだった(君の名は。によってついに牙城が崩された)。
2020年には再上映が行われ、興行収入は201.8億円となり200億円を突破した。


【あらすじ】

エミシの隠れ里に住む若者アシタカは、村を襲ったタタリ神を退治するのと引き換えにその身に呪いを受ける。
そのタタリ神が遠く西の地方から来たと知ったアシタカは、その謎を解くため旅立つ。
そこで彼が見たものは、森を切り開こうとする人間達と森を守ろうとする獣達との戦いだった。


【登場人物】

◆主要

・アシタカ

声:松田洋治
主人公。17歳。
エミシの一族の末裔の少年。
心も綺麗なイケメンで意外とあちこちでフラグを建てる。
正義感が強く、また次期族長として育てられていたためリーダーシップにもあふれるが、やや無鉄砲。
自分で自分の眼を「曇りなき眼」とかクソ真面目に言ってのけちゃう色々凄い人(現代の厨二病患者と違い、それだけ自分に誇りを持ち、かつその言葉にふさわしくあるべく眼力を鍛えているという事だろう)。
村を襲ったタタリ神に立ち向かい、これを退治するも命が蝕まれていく呪いを受けた。
が、その副作用で、発作的に強大な力を発揮する。呪いモードでなくても身体能力が明らかに人間のレベルを超えてるが。
弓矢の名手で、騎乗しながら敵の両手や頭を正確に射抜く腕前。争いは好まないが、かかる火の粉は容赦なく振り払う。
中の人は『風の谷のナウシカ』のアスベルの声と同じ。でもガンシップには乗らない。

・サン

声:石田ゆり子
ヒロイン。15歳。
シシ神の森で山犬と共に暮らす少女。
獣と共に生きてきたため身体能力は高く、五感は鋭い。自分を山犬だと思っている。
苛烈な性格で、森を荒らす人間を憎んでいる。
干し肉を口移しで食べさせるシーンにハッスルした人は多かろう。
(裏を返せば異性への口移しなど気にしない程、人界から程遠い生い立ちだったということであろう。くれぐれも現代の感覚と一緒にしないように。)
ポスターから赤く口を染めた印象が強いが、本編ではモロの傷を吸った一シーンでしか登場しない。
映画ラストではアシタカのプロポーズに応えており、また、監督は「(あの後)ふたりはしょっちゅう会っている」と述べている。

・ヤックル

アシタカが駆る、アカシシと呼ばれるオオカモシカ。
どんな時もアシタカに付き従うアシタカの相棒で今作の萌え要素を一手に担う。

◆タタラ場

・エボシ御前

声:田中裕子
タタラ場の頭領。
目的のためには手段を選ばない徹底した合理主義者で製鉄の関係で森を切り崩すために獣と戦ったり、地元の侍や武将と勢力争いをしたりと敵が多い。
その反面、売られた娘を引き取ったり、皮膚病に冒された人を手当てするなど弱者や身内には優しい一面もある。ってか人間的にはむしろ善人。
適材適所の徴用で人材を余すところなく用い、街に活気をもたらす優れた為政者であり、文武にも長けたスーパー才女。
彼女が考案した石火矢は鉄砲に相当する兵器だが、口径、威力ともに最早そんな次元の代物ではないオーパーツである。
これでも既製品よりかなり軽量化されたらしい。
象でも倒すつもりかと言われそうだが案外冗談でもなかったり。

・甲六

声:西村雅彦
タタラ場の売り買いの運送を担う牛飼いの一人。
山犬の襲撃で谷に転落したところをアシタカに助けられ、以降男衆と共に彼を『旦那』と慕う。
ヘタレだが仕事柄外界のことには詳しい。

・トキ

声:島本須美
タタラ場でふいごを踏む女性たちのリーダー格。
気の強い性格でゴンザに正面切って物申し、夫の甲六も尻にしいている。
アシタカを良い男と評し夫には軽口を叩くが、実際は甲六を愛する良妻。
青き衣を纏って金色の野に降り立たない病人のお母さんでもない。

・ゴンザ

声:上條恒彦
エボシの付添役のハゲ。
力自慢で威張っているが頭は悪い。
が、それでもなんだかんだでエボシからの信頼は厚い様子。気性は純粋である。
いかつい顔をしているが、泳げない上に刀を曲げられ震えあがっているなど、本作品でも指折りの萌えキャラでもある。
空賊じゃない
千と千尋の神隠しに三体セットで出てたりはしない。
ツンデレ。

・ジコ坊

声:小林薫
諸国を旅する僧。
良く言えば屈託のない、悪く言えば図々しい性格。要領の良い性格故か観察力に長けている。
「師匠連」なる謎の組織(おそらく朝廷に連なる組織)の命令で僧たちや地走りを引き連れてエボシに近づいているが、彼自身にも野心がある模様。
体型に似合わずかなりのフットワークの持ち主。ある意味本作一番の笑い所を取った人物。
しかし神殺しの呪いをエボシに押しつけようとしたあたり、宮中で生きる者のしたたかさと邪悪さを垣間見せている。

◆シシ神の森

・モロの君

声:美輪明宏
誇り高き山犬の長であり、サンの養母。300歳。
サンを我が子のように愛する一方で、その不憫かつ矛盾した境遇に複雑な念を抱いている。
大局を見極め、己を律することの出来る理性的な性格。体は非常に大きく、鉄砲では流血する程度で致命傷を与える事ができないため不死身と謳われる。
大変な歳月を生きているが故かシシ神の本質を理解しており、山犬一族の手で森を守るべく虎視眈々と機をうかがっていた。
ちなみに日本では美輪明宏が声を担当したことで知られるが、英語版ではXファイルのスカリーが声を当てている。

・乙事主

声:森繁久彌
鎮西(九州)を縄張りとする、四本の牙を持つ白き猪の長。500歳。シシ神の森には海を渡って訪れた。
とにかく馬鹿デカく、老齢を感じさせないパワーを持つが、やはり寄る年波には勝てず、既に目が濁って見えていない。
猪の中では理性的な方で、他者の話にもしっかり耳を傾けることができるが、やはり本質は猪突猛進な単細胞であり、一族のイノシシ神たちが力を失いつつあることに焦燥感を抱くあまり浅慮に走ろうとする。それが後々悲劇を招くことになる。
かつてはモロと恋人同士だったらしい。*1

・タタリ神

声:佐藤允
物語の発端にしてみんなのトラウマ。ばっちい。
黒いミミズのような物が体中から湧き出た悍ましい姿をしており、触れた物は植物なら一瞬にして枯れさせ、生物ならば死の呪いを与える。
その正体はかつてタタラ場近くの森を居所にしていた猪神「ナゴの(かみ)」の成れの果てで、
エボシ御前に礫を撃ち込まれた末に森を追われ、傷の痛みと死の恐怖に怯えながら各地を彷徨。
人間への憎しみを募らせている内にあの姿になってしまったのだという。
アシタカに退治された死に際に人間への呪詛を言い残し、最期は溶けて骨だけが残された。
その後は塚に葬られ里で供養されることとなったが、果たして成仏してくれたのだろうか…。
触手担当。そして今作で一二を争う可哀想なお方。
専用曲「TATARIGAMI」はパーカッションが大変格好良い。 

・コダマ

森の木の精霊。本作のマスコット。プリケツ。
森が健康な証拠であり、機嫌のいいときなどに首を鳴らす習性がある。後ろ姿が妙にリアル(主にケツが)。
じゃがいも。使徒。(∵)。
参りましょう、だぁいじなだぁいじなアタックチャーンス!

となりのトトロ』で「森の中に昔から住んでる」と歌われているトトロがこの作品には登場しないばかりか、森自体が切り開かれてしまう点について、
原画担当の二木真希子氏たっての希望で入れられたラストシーンの小さなコダマが、トトロに変化したというアニメに関する都市伝説が存在する。

・シシ神

あまねく生命の生と死を司る森の神。
栄枯盛衰をもたらす豊穣の神であり、一方で死神でもある。
人面鹿のような見た目をしており、超常的な力を振るう。睨んだだけで樹木を育てたり、命を刈り取りも出来る。
獣たちからは苦しい時の救世主、人間たちからは獣たちの希望にして不老長寿の象徴と勝手な解釈で見られているが、
生命を司る神としての本質を理解しているのはモロだけであった。

・デイダラボッチ

シシ神の夜の姿で、半透明の身体を持つ巨神。
普段はゆっくりと徘徊しているだけだが、首を失うとドス黒い色の荒神となって暴走し、触れるもの全ての命を奪いながら膨張する。本作の実質的なラスボスとなった。
元ネタは国造りの神。


◆エミシ

・カヤ

声:石田ゆり子
エミシの村の少女。
アシタカを慕っていたが、旅立ちにより二度と会えなくなるアシタカにお護りとして玉の小刀を託した。
それがどうなったかは皆さんご存知のとおり。これについては声優の石田も難色を示していたが宮崎駿は「男なんてそんなもん」とコメントしている。
ちなみに中の人はサンと同一人物。


【余談】

主題歌の「もののけ姫」を歌うのはクラシック出身の歌手・米良美一。
男性ながら女声のように聞こえるその歌声は当時の視聴者を驚愕させたが、その秘訣はカウンターテナーという独特の歌い方によるもの。

本作の舞台となるシシ神の森のモデルは東北地方の白神山地、タタラ場のモデルは島根県奥出雲などに残るたたら場である。

この作品公開の前年あたりは中高生のいじめや自殺が相次ぎ、社会問題となっていた。
ちなみに、本作と近い時期に公開された有名なアニメ映画としてエヴァンゲリオンの旧劇場版がある。
アニヲタ的にも、「まぁ、そういう時代だった」と想像してもらえれば分かりやすいであろう。
宮崎駿はそれらに対する怒りを顕わにするかのごとく本作を描き上げ、見事に成果を挙げた。
メッセージ性が強かったためか説教臭さが鼻につくという声もあったものの、かつてのナウシカを髣髴とさせるハードな路線を打ち立てたことによって
従来のほのぼの路線からの脱却を期待するファンも少なくなかった。
が、結局は本作でガス抜きが済んでしまったのか、以後のジブリ製作品ではちょっとおどろおどろしい描写に本作の面影を残すのみとなっている。


本作では今までのジブリ製長編アニメの約2倍のセル画が使われている。

また宮崎駿作品では初めて本業声優と芸能人声優の比率が完全に逆転しており、
目立つ役で声優としてキャリアを積んでいるのはトキ役の島本須美氏と牛飼いの頭役の名古屋章氏のみ。
(ちなみにジブリ全体ではすでに「おもひでぽろぽろ」や「耳をすませば」などで芸能人や新人声優を多用するスタイルになっている)
この起用スタイルは以後のジブリ作品のスタンダードとなっていっている。これはプロデューサーの鈴木敏夫によるところが大きい。

ちなみに、先述の旧エヴァことエヴァ完結篇の劇場版のキャッチコピーは「だからみんな、死んでしまえばいいのに…」だった。一方でこちらは「生きろ」。
皮肉にも、二作品のポスターが並列して置かれた劇場もあったとか。
さらに、これらを受けて生まれたのがブレンパワードの「頼まれなくたって、生きてやる!」だと言われている。

公式ムック本「もののけ姫を読み解く」の裏表紙では、屈託なく笑うサンと穏やかな表情をしたモロが見れる。
その肩の力を抜いた平和な佇まいは本編からは想像もつかないほど。


『宮崎駿のススメ。』著:井坂十蔵ではモロとエボシの憎悪の根源についてエボシがサンの本当の母親なのではないかと言う仮説がある。

実はこの映画よりもずっと昔、宮崎は同じタイトルでストーリーボードを作っており、後に書籍化もされている。
しかしこれはストーリーも設定も映画とはまったくの別物で、古代日本が舞台だったり、サンの名前などにわずかな名残がある程度。
「美女と野獣」を原型にしており本人も面白いと思っていたようだが、アニメーション作品にするにはうまくまとまらず没になったようだ。

宮崎が完成直前になってタイトルを「アシタカせっ記」に変更することを提案したが、鈴木Pは了承したふりをして押し通したという逸話がある。
このタイトルはメインテーマBGMの曲名として使われることになった。





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最終更新:2024年01月15日 23:50

*1 劇中では語られていない設定。美輪明宏氏がモロのアフレコをした際の声を収録現場で聴いた宮崎監督が何かを閃いたように「かつて乙事主と好い仲だったような演技で」と注文をつけていたため、監督がその場で思いついたのではとも言われている。