ジョジョの奇妙な冒険 Part6 ストーンオーシャン

登録日:2013/12/04 Wed 18:25:04
更新日:2024/03/20 Wed 22:16:26
所要時間:約 5 分で読めます






『ひとりの囚人は壁を見ていた』

『もうひとりの囚人は鉄格子からのぞく星を見ていた』


『あたしはどっちだ?』

『もちろんあたしは星を見るわ…父に会うまで……』

『星の光をみていたい』


『ジョジョの奇妙な冒険 Part6 ストーンオーシャン』とは、荒木飛呂彦のロマンホラー漫画ジョジョの奇妙な冒険』の第6部。
スタンド(幽波紋)シリーズ第4弾。

副題は「第6部 空条徐倫 ―『石作りの海』(ストーンオーシャン)」


【概要】

舞台は2011年のアメリカ。前半はフロリダ州立グリーン・ドルフィン・ストリート刑務所、
後半はそこから脱獄して黒幕を追跡する、という大きなターニングポイントが存在する。

これまでのジョジョシリーズの集大成的な作品であり、ジョースター家とDIOの因縁は今作を以って完結する。次の部でもジョースターDIOが戦うのは密に密に

今でこそもう過去だが、連載当時では2011年という設定でもかなり先の時代であり、「これ以上未来に進むとリアルな物語が描けなくなる」という懸念から、
次回作の『STEEL BALL RUN(スティール・ボール・ラン)』からは舞台は別の世界観に変わり、歴史がリセットされた形となった。


【作風】

出会い宿命因縁家族愛など『目に見えないが確かに感じられる人と人との繋がり・絆』がテーマとして強く描かれており、涙腺が緩むシーンが多い。

しかし、一方で作者の(精神的な)迷い試行錯誤がストーリー進行上にも影響していると思しき矛盾迷走(夢オチなど)が目立つ難解な展開
それにこれまでの『ジョジョ』でも見られた怖い痛そうに加えてキモい汚い系も大幅に増加したグロシーンも多い事もあり、
途中で読むのを投げ出してしまう人も多い、ある意味『最も人を選ぶ部』となっている。

また、本作からタイトルを一新して副題の方がメインタイトルになったにもかかわらず、歴代でも最も『過去の因縁』が深く根付いた作風故に、
これまでのシリーズ(特に第3部の『スターダストクルセイダース』)を把握していないと真の意味で楽しめないという点も大きい。
なお、当時流行していたいわゆる「謎本」の中には「6部しか読まずにストーンオーシャンを考察する」というとんでもない無茶をやらかした代物もあった。

従来と同じくバトルの軸となるのは各人のスタンド能力だが、発現の切っ掛けにに加えて、
黒幕であるスタンド「ホワイトスネイク」の能力で生成される「DISC」が関係したスタンド使いが多く登場する。
また、これまで割とキチッとカテゴライズされていたスタンドの傾向に変化が訪れつつあり、
終盤は一般的なスタンドの原理原則に対して例外要素の多い概念的抽象的な能力が多く現れる。
それに伴い、射程距離がどうのというより広大な規模が一斉に能力の影響下に置かれる、『広域範囲型』とでも言うべきスタンド攻撃で、
戦闘中のスタンド使い達だけでなく世界そのものが大混乱に陥る機会も一度や二度ではなく、一般人の被害が尋常じゃない事になっている。
これも「現在の『ジョジョ』の世界観はここで一旦終わりにする」という決断から、遠慮のないや破滅を描けるようになった影響とも考えられる。

単行本は新たに第1巻から刊行されたが、「1 (64) 」のように第1部からの通算巻数も表記されている。


【あらすじ】

空条徐倫は無実の罪で「州立グリーン・ドルフィン・ストリート重警備刑務所」に収監されるが、実は父親の承太郎を狙う敵の罠だった。
面会に来た承太郎は敵の攻撃から徐倫を庇ったことで仮死状態になり、徐倫は父親を救うために立ち向かう。
その敵こそジョースター一族の因縁の敵であるDIOの親友・プッチ神父だった。


【用語】

弓と矢

4部から登場するスタンド使いを生み出すアイテム。
本作では後述のDISCに扱いが取って代わられており、序盤と終盤の回想にのみ登場する。

『DISC』

スタンド『ホワイトスネイク』の能力により人体(頭部)から取り出される記憶媒体。
実際の音楽DISCのような形をしているが、柔らかく、折り曲げたりしても破損はしない。
取り出す対象となる人間がスタンド使いだった場合、『記憶』と『スタンド』の2枚のDISCが出てくる。
DISCを抜き取られた人間は延命措置無しでは遠からず死んでしまうが、元のDISCを戻せば復活する。
ただし、『スタンド』のDISCのみ戻した場合は、生きてはいるが記憶喪失で生きる力が希薄になってしまう。

記憶DISCは頭に挿す事でその記憶を自由に閲覧する事が出来、スタンドDISCは他者に貸し与える事で『相性が良ければ』その能力を行使する事が可能となる。
また、空のDISCも存在しており、命令などを書き込んだこれを対象の頭に挿す事で意のままに操る事も可能。

『屋敷幽霊』

謎の少年、エンポリオ・アルニーニョが住居としている異空間。
厳密には過去に刑務所内の音楽室として実在していた部屋なのだが、火災により実物は焼失し、現在エンポリオが利用しているのは部屋、及びそこにあった品物の残留思念ともいうべき存在である。
部屋の中の品物はエンポリオのスタンド能力で道具として持ち運びや利用が可能。
ただし、あくまで幽霊のため、銃は衝撃は与えられるものの傷は付けられず、飲食物は味がするだけで実際に飲み食いは出来ない。

『天国』

物質的に世界の頂点に立つ事に飽き足らず、更なる高みを目指したDIOが最終目標として掲げた『真の幸福が手に入る境地』の事。
いわゆる一般的なパラダイスのたとえ死後の世界とは違う。

生前DIOは「どんな犠牲を払ってでもそこへいく」と宣言し、『天国への行き方』をノートに記していた*1
しかし、第3部にてDIOを斃した承太郎の手によってノートは処分されてしまい、その内容は読んだ承太郎の記憶の中にのみ残った。
DIOの遺志を継ぐプッチ神父が承太郎の『記憶のDISC』を狙ったのはこのため。

『DIOの息子たち』

生前DIOが不特定多数の女性に産ませた、DIOの血を引く若者達。全員男性である。
『天国の時』を目指すプッチ神父を押し上げる、いわば援護の捨石として拵えられた不憫な存在。
『出会い』に恵まれなかったためか心身ともに荒み、社会的にも不遇な人生を送ってきた。

なお、第5部『黄金の風』の主人公、ジョルノ・ジョバァーナも血縁上は彼らの異母兄弟にあたるが、登場する事はなかった。
その理由については特に公式では語られておらず、ファンの間では様々な考察がなされている(物語の舞台であるフロリダに来ていたかも知れない…とほのめかすような記述が単行本にはあるが)。


【登場人物】

「ストーン・フリー」あたしは…この「石の海」から自由になる
主人公。無実の罪で刑務所に収監された悲運の女囚。
両親の離婚に伴う誤解から父・承太郎を嫌っていたが、真実を知った事を境に血統の誇りに目覚めていく。
シリーズ初の女性主人公だが、各種補正には乏しく、心身共に容赦のないダメージに晒される。
しかし、逆境の中で代々受け継ぐジョースターの爆発力と父を救うという覚悟に目覚め、史上屈指のガッツ&タフネスを持つ『JOJO』に成長していく。

スタンドは徐倫自身の肉体を糸のように分解・再構成する『ストーン・フリー』。

「復讐」とは自分の運命への決着をつけるためにあるッ!
徐倫の囚人仲間。
本来は正義感の強い人物だが、姉・グロリアの仇である服役中のギャングに復讐するためにあえて犯罪に手を染め、刑務所に入った。
徐倫と会った時には2度目の服役であり、生来の面倒見の良さから、何も知らない徐倫に刑務所内の暗黙の掟や身を護るための裏技を教えるなど、何かと世話を焼くうちに仲良くなった。

気風の良い姉御肌の人柄が魅力的な女性だが、言動のかっこよさがもはや『男前』レベルに達している事からファンには『兄貴』の愛称で呼ばれる。
具体的には自殺しようとする人にパンツをあげたり。
作者的には第3部のジャン=ピエール・ポルナレフの女性版をコンセプトに製作したキャラであり、実際記号的に似通った部分がある。

スタンドは貼り付けた物体を分裂させるシールを作り出す『キッス』。

『フー・ファイターズ!!』わたしの事を呼ぶならそう呼べ!
プッチ神父の所有するDISCによって知性を与えられた湿地帯のプランクトン由来のミュータント(本体一体型スタンド)。
DISCの影響から、生命体でありながらスタンドとしての性質も併せ持つ。
当初はDISCの番人として近付く囚人を殺害する凶悪な存在で、徐倫らにも敵意を向けたが、敗北してなお命を助けられたことで改心、女囚・エートロの死体に取り憑く事で行動を共にするようになった。

水さえあれば際限なく増殖して生存出来る驚異的な生命力を持つ反面、乾燥には極端に弱い。
傷口に自身の細胞を詰める事で応急手当係りとしても活躍。

彼女を守りきったなら…オレは彼女と結婚する
物体を分解しなければ気がすまない症候群を煩った男囚。
恋人の浮気現場を目撃し、間男もろともバラバラに解体するという凶悪事件を起こした事から、社会的には殺人鬼として恐れられている。

中性的な冷たく妖しい美貌の持ち主で、初登場時の容姿は完全に女性だったが、徐々に長身で筋肉質な体型に変化していった(彼のスタンドは一応大規模な整形も可能だが……。なお、アニメ版では当初から男性としてのビジュアルで登場した)。

徐倫の強い意志力に惚れこみ、彼女と結婚する事で自身の魂が浄罪される事を望むように。
当初は冷酷で徐倫以外は眼中にない危険人物だったが、後半からはノリがよくギャグもこなす貴重な癒し枠に。
ちなみに承太郎からは『戦闘中に結婚の許しを乞いだす空気の読めないイカれたヤツ』として思いっきり嫌われている。\娘は渡さん、オラァッ!!/

スタンドは物体にスタンドパワーを潜行させ、構造の組み換えや内部からの破壊を行う『ダイバー・ダウン』。

君を救うことはできないが…DISCを守ることはできるだろう…そして君にまだ強い意志が残っているのなら切り抜けられるかもしれない
正体不明・記憶喪失の男囚。アナスイと行動を共にしていることが多い。
無口で物静かな男だが、時に激しい気性が顔を出す。
エンポリオを通じて知り合った徐倫に協力する。

スタンドは天候を操る『ウェザー・リポート』。本体名とスタンド名が全く同じという珍しい例だが、実は……

法律は無視する
ご存知、第3部の主人公にして、徐倫の父親。
歴代最強の完璧超人と思われた彼も第6部では仕事にかまけて家庭を疎かにし離婚しているなど、ダメ家庭人としての意外な顔が……
もっとも、これはジョースターの因縁から生じるトラブルに家族を巻き込みたくないという一念から来るもので、心の底には娘への変わらぬ愛があった。
ただし、自分の想いを表に出して伝えようとしない悪癖は3部の頃から全く変わっていなかったが……
娘を助けるために刑務所に向かうが、罠に嵌って記憶とスタンドの『DISC』を抜き取られてしまう。
徐倫の取り戻したDISCが届くまでは仮死状態だったり記憶喪失だったりと完全にヒロイン状態。
最終決戦時ようやく合流し、一行の司令塔的なポジションに就いた。

良くも悪くも全盛期の『圧倒的なまでの主人公補正』がごっそりと抜け落ちた感があり、そこに一抹の哀しみや時の移ろいをしみじみと感じるファンも多い。

スタンドはお馴染み最強の『スタープラチナ』。
時間停止の限界時間は序盤では第4部『ダイヤモンドは砕けない』と同様に2秒間だったが、終盤には全盛期と同じ5秒間に延びた。
何故かスタンドチャートでの紹介が2つある。

会ってはいけないよ「その人」に…会ってはいけないんだ……絶対!
刑務所に隠れ住む少年。もう一人の主人公であり、キーパーソン。
ホワイトスネイクのDISC狩りで母親を殺されており、それ以降独りで刑務所内で生きてきた。

慎重で思慮深い反面、やや悲観的な性格。
しかし、心の奥底には外の世界を見てみたいという冒険心と、仲間のために我が身を投げ打つ勇気を秘めている。

戦闘力は無いが、子供とは思えない豊富な知識と『道具の幽霊』で徐倫達をサポートしていく。

スタンドは部屋や道具など、既に消失した物体の『幽霊』を使用可能にする『バーニング・ダウン・ザ・ハウス』。
『屋敷幽霊』の初出は第4部のスピンオフ『デッドマンズQ』。

落ちつくんだ…『素数』を数えて落ちつくんだ…『素数』は1と自分の数でしか割ることのできない孤独な数字…わたしに勇気を与えてくれる
刑務所内教戒師にして今作のラスボス
あのDIOが友人と認めた人物であり、DIOの意志を継ぐ者。
DIOが教えてくれた『天国へ行く方法』を求め、徐倫達の前に立ちはだかる。
人の法より神の法を尊ぶ敬虔なクリスチャンだが、その本質は自身の使命こそが全てに優先して果たされるべきであり、その過程で出る犠牲は必要な代価と断じて疑わない『自分が悪だと気付いていない最もどす黒い悪』。
その出生にはある秘密がある。

スタンドは人の記憶やスタンド能力を『DISC』にして取り出す『ホワイトスネイク』


【TVアニメ版】

2022年1月よりTVアニメ版が放送開始。
1月~3月まで1クール目を放送、10月~2023年4月まで2クール目以降が放送された。全38話。
地上波放送に先駆けて2021年12月1日にNetflixにて第1話~第12話、2022年9月1日に第13話~第24話、2022年12月1日に第25話〜最終話を先行配信。

今作でもアニメシリーズでは恒例となっている原作からの補完シーンやエピソード順序の再構成が多く見られており映像となった分、原作漫画よりも解りやすくなったという声も見られている。


【余談】

荒木先生は以前から『女性を描くのは苦手』、といった趣旨の発言をしており、
事実これまでの『ジョジョ』では、女性は『清楚で芯が強く、男の帰りを待つ女』といった保守的な女性像が主流であり、
いわゆる『性悪ビッチ』系統の敵に女性こそいるが、一部の例外を除けば味方サイドに強気な女性がいる事は稀であった。

しかし、
JOJOの主人公なのだから、顔面にパンチをくらってもヘコたれないタフさが必要だ。
時にはドブの中をはいずり回る可能性もあるし、
大股開きでビルの上から落っこちるかもしれない。
女性にはちょっとキツイ設定だ。

でもそのギャップが逆に考えてみるとおもしろいかもと思った。
しかも聖母マリア様のような大きな人間愛を持つ人。主人公は女性しかないと思った。

……という発想の転換からこの大きな挑戦に踏み切るに至った。

取材で訪れた米国の刑務所で、『男囚も女囚も犯した罪の傾向や内容はさして変わらない』という回答を得た事も判断材料になったのかもしれない。
そのためか、本作に登場する女囚キャラの大半が凶暴な男性のごとくゲスで乱暴な言動をしている。

結果的に少年漫画誌である『週刊少年ジャンプ』で「女性主人公の作品はコケる」というジンクスが根強い中、見事それを破った作品となったのだが、
これは長期連載の熟練度と主人公の性別を超えた『ジョジョそのものが好きだッ』という熱心な読者の支持があったのも大きな要因と言えるだろう。




To Be Continued
Part7




追記・修正・カブト虫!!

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最終更新:2024年03月20日 22:16

*1 ノートの内容については小説『OVER HEAVEN』に詳しいが、完全な正史作品ではないので留意されたし。