いずも型護衛艦

登録日:2013/11/24 Fri 23:22:23
更新日:2024/03/16 Sat 16:32:26
所要時間:約 5 分で読めます





いずも型護衛艦2番艦「かが」*1

いずも型護衛艦は、海上自衛隊ヘリコプター搭載護衛艦(DDH)。


【スペック】

諸元
基準排水量 19,500t(推定値)
満載排水量 26,000t(推定値)
全長 248m
全幅 38m
高さ 48m
吃水 7m
最大速力 30ノット
航続距離 不明
乗員 約470~970名

機関
COGAG方式 GE LM2500ガスタービンエンジン 4基
推進器 2軸

兵装
高性能20mm機関砲(CIWS) 2基
SeaRAM 近SAMシステム 2基

艦載機
F-35B戦闘攻撃機 8機(計画値)
SH-60K哨戒ヘリコプター 7機
MCH-101掃海・輸送ヘリコプター 2機
最大積載機数 14機

レーダー及び電子機器
洋上ターミナル(MTA)
OYQ-12戦術情報処理装置
OPS-50 3次元式 1基
OPS-28 対水上捜索用 1基 航海用 1基
OQQ-23 艦首装備式 1基
NOLQ-3D-1 電波探知妨害装置
Mk.137 デコイ発射機 6基
OLQ-1 魚雷防御装置(MOD+FAJ)



【概要】

いずも型護衛艦は海上自衛隊が建造したヘリコプター搭載護衛艦(DDH)である。
同級は2隻建造であり、しらね型護衛艦(2隻)の代替として就役した。
艦名はひゅうが型に引き続き「地方名(旧国名)」から採られている。
1番艦はネームシップの「いずも」(出雲)、2番艦は「かが」(加賀)と命名された。
どちらも旧海軍で使われたが海上自衛隊では初めて命名された。
特に2番艦のかがは海軍では空母でありその空母と全長がほぼ同じで全通飛行甲板を備えた護衛艦ということもあり大きな波紋を呼んだ。


【特徴】

ひゅうが型を大きく上回る船体と積載量を誇り、旧日本海軍が運用していた正規空母「飛龍」を上回ることや、
現代の軽空母と同規模であるなど海自にしては随分割り切った艦形である。
現時点で海上自衛隊の保有する艦艇では最大級を誇る。
ひゅうがに比べDDHとしての役割を強化をした能力となり、以下のような相違点がある。


【ひゅうがとの相違点】

  • 全通甲板の拡張
ひゅうが同様、戦闘機などの離発着は行えないが、
長さ195m→245m
横幅 33m→ 38m
ヘリ搭載数11機→14機
ヘリ同時運用能力3機→5機
とDDH(ヘリ搭載護衛艦)としての運用能力は強化されている

  • 自衛火器の縮小
ひゅうが型はVLS(ミサイル発射管)や魚雷発射管、豪華な電子装備などDDHとしては強力な武装を装備していたが、如何せん費用がバカにならなかった為、いずも型ではそれらを撤廃し艦能力を索敵・防衛に特化させた

結果自衛力は低くなったがその代わりに旗艦としての能力が向上し、戦闘そのものは僚艦に任せることとなった。
また建造費に関してもサイズも一回り大きくなったがその分武装が減ったことでひゅうがとほぼ同じ金額に収まっている。
その他にもCIWSに至っては退役艦から移植しているなど、日本お得意の節約技術が目立つ。

この他にも広くなった艦内のスペースを生かし、ひゅうがと同様に「輸送艦」「補給艦」「病院船」とマルチに運用できるのも本艦の特徴でもある。


【全通甲板】

「甲板が艦首から艦尾まで空母のようにつるぺたな形をしている」「全通甲板」を採用。

また本艦が計画された当初は、
など、様々な噂も飛び交っていたが、F-35B導入の検討の事実は無いと小野寺防衛相が発言したため噂と消えた…
また中谷防衛相も固定翼の航空機の運用を想定した艦艇ではないと述べ、周辺国やマスメディアに釘を刺した。
2017年12月にも、いずも型の改修とF-35Bの導入が検討されていると政府関係者筋で複数の報道機関から報じられたが、
防衛省は大臣会見で『報道等に御指摘のありました、F-35Bの導入や「いずも」型護衛艦の改修に向けて具体的な検討は行ってはいない』と否定している*2

30防衛大綱(平成31年度以降に係る防衛計画の大綱)で、STOVL機の導入が盛り込まれる予定になっている。
多用途運用母艦もとい多用途運用護衛艦(Multi-purpose Operation Destroyer)へ改修される構想があり*3、F-35Bを8機搭載できる実質的な軽空母に改装される。
ただしF-35Bの所属は航空自衛隊であり、常時艦載するのは従来通りヘリコプターに限られる模様である。
合衆国の空母航空団と異なり電子戦機・早期警戒機・空中給油機などの支援機を母艦運用せず、
整備・補給上の問題から継戦能力も限定されるため*4、憲法解釈上保有が禁じられている攻撃型空母には該当しないと政府与党は釈明している*5


【今後の艦載機運用計画】

その後F-4の代替だけでなく近代化改修できないF-15の後継機として、B型も含むF-35購入の予算が計上され、米国の議会で売却が承認された。
これを受けて甲板の改修が決まっているが建造当初から改修を見込んでいたため改修予算も31億程度で済む予定。
ただしあくまで離発着できるだけの改修で本格的な運用は実験を重ねて別途改修を予定している。
なおB型の導入は内閣総理大臣官邸・国家安全保障会議(NSC)・自由民主党国防部会が主導しており即戦力化は考慮しておらず、艦載機運用のノウハウ蓄積や問題の洗い出しを目的とした「練習艦」、将来検討されているF-2の後継機に艦載機も視野に入れそれを運用する次世代艦の「実験艦」としての面が強いと言われている。

現在の計画では5年ごとのドッグ入りに併せて2段階の改装を行い、F-35の母艦としての能力を獲得する予定である。先んじて2020年に第一段階の改装を終えた『いずも』は、翌2021年11月に四国沖で米海兵隊岩国基地のF-35Bによる発着艦を行った。。

近年問題になっている米軍のオスプレイ(VTOL機)であるが、
13年6月における米軍との共同訓練「ドーン・ブリッツ」にてひゅうがに格納できた為、
ひゅうがよりもエレベータが大きいいずもなら格納可能であると考えられる。
その後2020年になり陸上自衛隊にもオスプレイが配備された。
塗装は今まで定番であった緑系迷彩から洋上飛行の考慮したものへと変更され、自衛隊が力を入れている島嶼防衛を意識したものになっており
航空自衛隊だけでなく陸上自衛隊にとっても重要な艦船になりつつある。


【装備】

前述した通りひゅうが型に比べ武装や装備品の数はか~な~り抑えられており最低限の個艦防空をなんとかこなせるというレベルである。

逆に言えばひゅうがは装備が過剰なだけであり、こちらは艦隊における旗艦としての役割に特化した性能であるため、
専ら大量の哨戒ヘリと僚艦(主にイージス艦)に守ってもらう他にもレーダーなどの電子機器は探知・伝達のみに特化し、
追尾・迎撃などはC4Iを通じて僚艦に任せるのである。

そこ、他力本願とか言わない。

CICやFICも拡張されていることもあり、純粋な指揮能力では全護衛艦を越える性能を持つ。

実際米軍のニミッツ級空母に関しても僚艦との艦隊運用が前提であり、現代戦闘では「如何に艦艇を適切に運用できるか」が重要なのである。
つーかいずもはデカすぎて、もう単独行動不可能なので機能分担した方が良いのだ。
加減速にせよ急旋回にせよ、いずもの巨体では従来の護衛艦のような運動は不可能でかえって艦隊運用に支障が出る。それくらいなら中央でどっしり構えていた方がマシなのである。
ぶっちゃけひゅうがでも問題視されてるくらい。


【「艦名」流出事件】

1番艦「いずも」の進水式直前に艦名がネット上に流出する事件が発生した。
本来は護衛艦の艦名は進水式の際に発表される習わしがある。
しかし海事幕僚幹部の発表した資料(PDFファイル)に伏字で書かれていたが、
網掛け形式で消されていたためドラッグすれば見えるという初歩的なミスで発覚してしまった。
また進水式の年(2013年)は名前の由来となった「出雲大社」の建て替えを祝う「本殿遷座祭」が執り行われたが、これは偶然である。

偶然である。

大事なことなので2度言いました。

ちなみに艦名はひゅうが型(2番艦いせ)同様旧国名である「出雲」が使われており、過去に二度同じ名を持つ艦艇が存在した。
第一次世界大戦時に活躍した装甲巡洋艦1番艦「出雲」
太平洋戦争時、日本郵船の客船から改装された「出雲丸(改装後「飛鷹」)」
細かい事を言うと、装甲巡洋艦「出雲」は出雲国(いずも)、「出雲丸」は出雲大社(いづも)で名前の由来は全く別である。

2番艦「かが」についても、事前に情報提供を受けていた某報道関係者兼軍事ライターが、
艦名を特定できるようなコメントをツイッターに載せてしまい、ネット上を騒がせた。


【同型艦】

1番艦 いずも(22DDH)
2012年1月27日 起工
2013年8月 6日 進水
2015年3月25日 就役


2番艦 かが(24DDH)
2013年10月7日 起工
2015年8月27日 進水
2017年3月22日 就役




追記・修正は制海艦任務を果たせるようになってからお願いします。

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最終更新:2024年03月16日 16:32
添付ファイル

*1 2019年6月1日編集者撮影

*2 ソース:http://www.mod.go.jp/j/press/kisha/2017/12/26.pdf

*3 艦種分類は改修後もヘリコプター搭載護衛艦(DDH)のままで変更されない事となった。

*4 合衆国では建造費が高騰化したフォード級を補完する空母として満載排水量2万トン及び4万トン級の小型艦の整備を検討したが、ソーティ(作戦飛行回数)が大型空母に劣る点や経空脅威下の高い戦域では陸上基地や大型空母の支援が不可欠という欠点が指摘されている。

*5 ソース:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181211/k10011743071000.html