ゴジラVSメカゴジラ

登録日:2011/06/11 Sat 22:25:10
更新日:2024/03/13 Wed 18:36:28
所要時間:約 10 分で読めます







世紀末覇王誕生

誰もがこの戦いを待っていた。



vs ㅤㅤㅤㅤ
ㅤㅤㅤㅤ




―この戦いですべてが終わる。―



「ゴジラVSメカゴジラ」は1993年12月11日に公開されたゴジラシリーズ第20作目の作品である。観客動員数380万人。



【ストーリー】

1984年に復活して以来の度重なるゴジラ被害に対し、国連は1992年に『G対策センター』を茨城県筑波市に設立し、実働部隊として『Gフォース』を設置した。
G対策センターは海底に沈んでいたメカキングギドラをサルベージし、その技術を解析・吸収して対ゴジラ用の究極兵器「メカゴジラ」を完成させる。


モスラとバトラとの戦いから一年後の1994年、ベーリング海のアドノア島にて翼竜の化石が発見され調査団が赴いた。
そこで発見したものは「割れた卵」と「孵化されてない卵」であった。
卵を持ち帰ろうとする調査団にラドンが襲来し、さらにゴジラも上陸し、両者が戦っている間に脱出した調査団は日本に卵を持ち帰る。


そして卵は孵化、生まれたのは翼竜ではなく「ゴジラザウルス」の子供だった。


【概要】

本作は1994年の正月映画として制作された為、ゴジラ生誕40周年記念作品として作られた。

当初はキングコングの案もあったが権利関係でダメになり、次いでメカニコングの案もあったがメカゴジラに落ち着いた。

さらにアメリカ版ゴジラの制作が決まっていた為、平成ゴジラシリーズ最終作として制作された。
これに伴い、海外輸出も考えて映画中盤の舞台に日本の古都である京都市が選ばれた。
キャッチコピーも「この戦いで全てが終わる」だったが、アメリカ版ゴジラの制作が遅れた為、急遽翌年も『ゴジラVSスペースゴジラ』が制作され終わる詐欺映画となった。

本作ではビオランテ〜モスラまでシリーズを引っ張った大森一樹氏が制作から離れ、監督は前作に引き続き大河原孝夫氏が担当し、脚本は以降度々シリーズに関わる三村渉氏が初起用となった。

音楽では伊福部昭氏が迫力あるメカゴジラのテーマを盛り上げオープニングから盛り上げた。


【登場人物】

◆青木一馬(高島政宏)
G対策センターの技師でガルーダの開発スタッフだったが、Gフォースのメカゴジラのメンテ要員として配属されるが、翼竜好きである事が原因でトラブルを起こし駐車場係になる。
しかしガルーダを合体させる事によるメカゴジラの強化案を提案し、技師として復帰する。
国際機関所属だけあって英語は堪能で、翼竜ロボを一人で作る技術や合体を提案する発想力を持っている。
梓が危機に陥った事を知り、自らガルーダに乗り込んで出撃し、無理やりでも、パイロットとして訓練した経験が生きる事になる。
ちなみに裏設定では、スーパーX2の開発スタッフの一人でもあった。
Gフォースに引き抜かれたのは、こうしたメカへの強さと「若くて頑丈で、おまけにいなくても影響のない奴」だから。
ヤマトタケルとそっくりな為、子孫なのではないかという噂がある。
「知りません?羽根があって空を飛ぶ・・・」

◆五条梓(演:佐野量子)
生命科学研究所の職員で、アドノア島から持ち帰った卵の研究に当たる過程で孵化したベビーゴジラの面倒を見る。
ベビーゴジラに対して情が移り母親のように接し、その中で青木とも交流を深める。
「こ〜ら! あなたはさっき食べたでしょ!?」
演じた佐野量子さんはベビーに愛着があり、1日の撮影の終わりにはベビーのスーツにバイバイと言ってたとか。可愛い。

◆三枝美希(演:小高恵美)
シリーズお馴染みの超能力者。
本作ではベビーゴジラ孵化のきっかけを作り、ベビーゴジラと接することでゴジラに対しての考えを変えていく。
決戦ではゴジラの第二の脳を探る為にメカゴジラへの搭乗を要請され、気が乗らないながらも作戦に参加する。
「今まで私、ゴジラと戦うことが人類に貢献することだって信じてた。……今はそんな気持ちになれない」

◆佐々木拓也(演:原田大二郎)
Gフォースの大尉で、メカゴジラのメインパイロット。
体育会系で容赦なしの鬼隊長ではあるが悪い人物ではない。
そのため、今回は仮面ライダーシンに殺されずに済む。
「まあ、絶対に許可せんがな!!!」

◆大前博士(演:川津祐介)
アドノア島へ向かった生命科学研究所の科学者。
ベビーゴジラを研究し、ゴジラザウルス=ゴジラに第二の脳がある事を発見する。
札幌青少年科学館の野尻館長とそっくりだが別人。
ワイルド7の指揮はしない。

◆麻生司令官(演:中尾彬)
Gフォースの司令官で、ゴジラ対策の指揮を執る。
「今度こそ……奴の息の根を止めてやる……」


【登場怪獣】

ゴジラ
今回は同族のベビーゴジラを求めて活動する。
今作で腰の辺りに第二の脳があると設定され、また初めて赤い熱線を吐いた。

ベビーゴジラ
アドノア島から持ち帰った卵から生まれたゴジラザウルスの子ども。
詳しくは項目参照。

メカゴジラ
詳しくは項目参照。
伊福部氏による重厚なメカゴジラのテーマが作品を盛り上げた。

◆ガルーダ
怪獣ではないけどここに記載。
G対策センターで作られた初の対G兵器。
開発はされたが、スピードはあるが攻撃力不足で採用されずにメカゴジラが建造される。
後に青木のアイデアでメカゴジラとの合体機能を追加され、戦場に発進する。

ラドン
詳しくは項目参照。
新撮映像は怪獣総進撃以来となる。


【余談】

新都心・幕張での最終決戦では、VSシリーズ中、最も大量の火薬が使用されたという。

ファイヤーラドンとの戦闘時、メカゴジラの右眼のビームキャノンを壊されるが、よく見るとその前に既にライトが消えている。

ベビーゴジラや翼竜ロボは、特撮班ではなく本編班が担当し、慣れない撮影に苦労していたらしい。
ベビーのアクターの破李拳竜氏は2時間も入れられた事もあった。

メカゴジラの発進シーンはゴジラに敗れて頭と右腕が吹っ飛び、全身が焼けただれたスーツを直して使用した。
造形の若狭氏は泣きそうになっていた。

特報の一つにガンヘッドの映像を多用したものが存在する。
さながらゴジラvsガンヘッドとでもいうべきものに仕上がっており、大変熱い。


本作に登場する古代のコーラスは、もともと子供達が適当に声を出す程度のものだったという。
しかし話を聞いた伊福部昭氏が「じゃあちょっと歌詞つけようか」と言い出し、その場でアイヌ語の歌詞をサラサラっと書いて採用したらしい*1
ちなみに曲の意味としては「山に座ます神、沖に座ます神。その間に出来た子、その名は、何ぞ、何ぞ、何ぞ……」で、「山の奥から現れる神・ラドンと、海(沖)から現れる神・ゴジラの「二人の子供」、つまりベビーゴジラを謳い上げたものであり、ストーリーの核にいるのがベビーゴジラである事を表している。


ベビーゴジラを探す過程でゴジラが京都に出現し、京都駅のすぐ北を通過し、京都タワーをふっ飛ばして前進する場面がある。
……そして五年後、京都駅は今度は亀の大怪獣最終決戦(仮)の舞台となっている。
さらにゴジラは京都駅を素通りした(1994年には京都駅ビルがなかったからだが)が、あちらはメイン戦場となったのに対し、あちらはゴジラが破壊した京都タワーは破壊されないという違いがある(決着の場面で、遠景に細く直立している)。




メカゴジラは「世界の脅威に立ち向かう人類の守護者」という存在で、いわゆる正義のロボットという立ち位置なのだが、実は悪役という指摘もある。
というのも、本作のゴジラ(とラドン)は「この世でただ一人の同族(兄弟)を求めて、人間の時代を彷徨う孤独な存在」というふうに指摘されており、三枝未希など主要メンバーがそれを理解してしまうというストーリーである。
それに対してメカゴジラ側の人間はそれらを一切斟酌せず、徹底的に殺しにかかる為(メカゴジラの戦法も、内臓や脊髄の破壊を狙う等、正義のロボットとしてはやる事がえげつない)、ゴジラ、ベビー、五条梓、三枝未希達を中心として鑑賞した場合、対立するメカゴジラは純粋な正義の味方とは言えない演出がなされている。
もちろんメカゴジラ側の正義や使命感も瀬川長官等の口から余す事なく描かれており、全体的に見ても高圧的なところはあっても陰湿さは感じられない。


+ ゴジラについて
本作のゴジラは同胞であるベビーゴジラの存在を探知し、共に暮らしたいという想いでストーリーに絡んでくる。

その為、ベビーゴジラが隠れたビルに迫りながらも見つけられず悔しげに咆哮したり、自らのせいでベビーゴジラが恐怖しているのを察知し、悲しげに意志を阻喪する等、これまでのゴジラとは全く異なる姿を見せた。

これにより、主人公達はゴジラやラドン達について「生まれる時代を間違えて、人間の世界で彷徨う事になった孤独な存在」だという事を理解する。

「いつか再び、自分達を受け入れてくれる時代が来る事を信じて、ただ生きて待ち続ける事」こそが、ゴジラたちにとっての生きる標である事が描かれるのだ。

「いつか人類の時代が終わって、また彼らの時代が来るんだろうか」
「それがたとえあと、6500万年後だとしても……彼らはきっと、待ち続けるんだわ……」

こうした「ゴジラの生」というテーマは次回作次々回作でも引き続き描かれ、「ゴジラの死」をもってまとめられる。

そうした事から考えると、本作は当初シリーズ完結作として考えられていた通り、ゴジラvsシリーズにおける一つの終着点であり、大きなターニングポイントだったと言えるだろう。




【DVD】

オーコメは「ゴジラ×メカゴジラ」の手塚昌明監督で、当時は助監督だった。

ベビーの体内図やGフォースのマークを書いたのは手塚氏である。
また、ゴジラの第2の脳を表現したのも手塚氏で、ダンボールとしらたきで表現した。

オーコメ収録時は「×メカゴジラ」撮影前だったので、所々で意気込みも語られている。



メカゴジラ出撃シーンの高揚感は異常であり、間違いなく、本作の名シーンの一つである。
以下英語で↓



Rotate to standing position



Hurry to the lift



Insert cooling now


Insertion starting by OK!



Head arm open!


Open the body arm


Lift up MECHA GODZILLA!


Extend body arm!


Start main engine
Starting main Engine


MECHA GODZILLA take off!




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最終更新:2024年03月13日 18:36

*1 ちなみに伊福部氏は北海道出身で、小学生の時にアイヌの人々と交流を持ち、彼らの生活・文化に大きな影響を受けた。氏の代表作の一つとして知られる『シンフォニア・タプカーラ』も、氏のアイヌの人々への共感とノスタルジアから書かれたという。