ディープストライカー(ガンダム・センチネル)

登録日:2012/07/07(土) 07:41:58
更新日:2023/08/20 Sun 15:06:17
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何者なんだ、お前は!?





モデルグラフィックス誌の連載企画『ガンダム・センチネル』において、メカデザイナー・カトキハジメがコンセプトアートの1つとして寄稿したモビルスーツ(MS)。
型番:MSA-0011[Bst]PLAN303E



冒頭の煽り文と共に掲載されたイラスト・設定は数多くのモデラーの度肝を抜いた。
やたらと「情報量」という単語が飛び交っていた当時のMG誌ではあったが、本機の情報量は群を抜いていた。
いつものセンチネル・ブルーとは違う赤色のSガンダムBst型。その左手は異形のクロー状になり、おまけに背中には馬鹿でかい大砲を担いでいる……?
模型作例企画と言うことで当然、後に立体化作例が掲載されることにはなったのだが、これを任されたモデラーはパッと見で

「ただでさえディティールが濃いのに、「二次元の嘘」まみれのイラストをどうやって模型に起こせと?」
「何処をどう見ても他のどんなプラモパーツも流用できそうにない」
「本体と同じ長さがある糞長い砲身はどうやってつくろう……」の三重苦を考えて憂鬱になったという。


……結局、センチネル・ワークスと呼ばれるセンチネル作例お馴染みの分業体制で他のモデラーに応援を頼み、ほとんどすべてをフルスクラッチで作成。
砲身は成形したプラ棒を地道に手で削りながらテーパーをつけていったという。聞くだけで気が狂いそうだ。
そうして出来上がったモデルも、パーツを組み合わせるのに5分かかり、出来上がった後はどこを持てばいいのか分からなくなる代物であった。

本機を見た大体の人は「0083デンドロじゃん」と思うだろう。それもそのはず、本機が元ネタのひとつなのである(もう一つはガンダムMAモード)。
というか『0083』自体が版権問題でややこしいことになったセンチネルのリメイクみたいなものだし。



機体概要

この「PLAN 303E」は、Sガンダムに数多く存在したバリエーション案のひとつであり、プラン・ナンバー300番台、つまりBst型の試験機とされていた3号機をベースとして考案された。
ちなみになぜ「数多く」存在したのかというと、Sガンダムは機体各部がユニット化されて独立しているため換装が容易、
また全身で4基、上半身だけで2基ものジェネレーターを搭載していて出力にかなりの余裕があったので、
こんだけあるんなら何でもできんじゃね?」と考えられたため。

Bst型のコンセプトは大推力による強襲であるが、303Eはそれをさらに推し進め、
超加速で敵艦隊の懐まで侵入し、戦艦級の大火力で一点突破、つまり一撃離脱を行うという出鱈目なコンセプト
で計画がスタートし、ガンダム型MAとしか言い様の無い異形となった。

Sガンダムは実際のところ、「機体各部の高度なユニット化」により、ジェネレーター・スラスター・ビーム砲を自由に組み合わせられる戦闘機、と言ったほうが正しい。
オマケとして手足が付いていることと、運用上の都合から一応MSに分類されているだけである。
超高性能ユニットの集合体であり、その中核としてSガンダム(だった物)を利用する本機はコンセプトの極致といえよう。

▼武装

●60mmバルカン砲
Sガンダムの頭部に設置されている固定武装。
●改良型ビーム・カノン
本来は背部ブースターに設置される武装だが、303Eでは左脚のブースターに2門まとめて設置される。長射程用に改修されている。
●速射式ビーム・スマートガン
Sガンダムお馴染みの手持ち火器で、通常版よりも銃身が大型化されている。右脚のブースターに懸架する。

普通ならこのSガンダム基本装備で十分だが、本機は普通ではなかった……。

●アーガマ級メガ粒子砲ユニット
本機の象徴であり、これが無くては始まらない。その名の通りアーガマ級、アイリッシュ級の主砲1門を天地逆さにして右肩に搭載している。
左肩には戦艦並の探知能力を持つレーダーを搭載した大型ディスク・レドームを設置している。
主砲上部にはみ出しているぎざぎざの部分は本来、仰角調整のために使うエレベータギアだが、レドームの防御用とカウンターウェイトのために残されている。
戦艦並の火力が必要とはいえ、戦艦の主砲をそのまま設置するという発想は早々無いだろう。寧ろあって堪るか。*1


▼その他装備

●マルチ・センサー
ΖプラスC1型のディスク・レドームを改修したもので、左腕を丸ごと換装して取り付ける。
これだけでEWAC機1機分の探索能力を持つ。これを活かすためレーダー士官も搭乗する。

●Iフィールド発生器
胸部と脚部増加パーツに搭載。Ex-Sではコクピット回りのみ、それも一瞬しか展開できない限定的なものだったが、303Eでは常時高出力のバリアが展開可能。

●ブースター
全10基もの大型ノズルを搭載。さらに推力増加のためコンフォーマル・パックを追加し推力を上げている。もう誰が乗るんだよこれ。
ちなみに脚部は上下に可動する。



……とまあ、無茶苦茶な要素のオンパレードだが、MSとしての旋回性には難があった事、
何より開発費用が天文学的レベルだった為に当然了承など得られず、画餅に終わった。
随伴機として計画されていたΖプラスC1・ハミングバードも、この煽りを受ける形で没にされている。

いずれにせよ、超高性能機が完成するということは、それに携わる技術者の正気も失わせてしまうものらしい。
アナハイム自重し……いいぞもっとやれ。



ゲーム作品にて

●Gジェネ
魂から登場。現時点で唯一のゲーム登場作品であり、もはやSDではない。だが、まさかの登場に驚愕かつ動く本機に歓喜した人も多い。
MA扱いでサイズは大きく、接近戦には弱いといった点はあるが火力は高く、IフィールドやALICE機能もあるため意外と硬い。さらに高威力かつ長射程のMAP兵器もあり使い勝手はそこまで悪くない。
WARS以降はテレストリアル・エンジンを付けると地上に出せるため、機械の塊が地上や大空を翔け回るというロマン溢れる光景を見る事ができる。
WORLDではリョウが乗って現れる面があり、早めに倒さないと危険。ちなみに戦闘アニメは全部描き直されている。



立体物

ガンプラではディープ自体は発売されなかったものの、Bst試験機が連載当時の1/144で発売されているため、やる気がある人は後に発売されたHGとミキシングビルドしてみよう。

その他GFFや食玩では発売されている。

長らく完全なキット発売は無かったが2018年3月、MGの200体達成記念としてついに一般発売が決定。定価21,600円也。
前年に発売された新作版MG_Ex-Sガンダムのパーツを多く流用している*2が、各部が再度新規造形されているので余剰パーツもかなり多め。
当然ながら自立は不可能なので専用スタンドが用意されており、そのスタンドには背部の下部プロペラントタンクを支柱とする補助パーツがセットされているので、それを使用すればしっかりと飾る事ができる。
可動域はほぼ絶望的で両腕部や頭部など極一部の限られた部位しか動かないが、その分巨大な主砲や各種武装のインパクト、色分け再現率の高さや段落ちモールドで見た目はかなり優秀。

なお、このサイズのキットの宿命として箱も機体のサイズも超絶ビッグクラス。作るのは自由だが飾る場所の確保を忘れずに。

余談

beatmaniaIIDX15th「DJ TROOPERS」に「THE DEEP STRIKER」という楽曲が存在する(作曲角田利之)。
ムービーにも本機をモデルにしたと思われる機動兵器が登場しており、題材(モチーフ)になったと思われる。
ヘヴィなガバキック音の主張激しいBPM173のNU-STYLE GABBAだが、細かく展開が変わり妙な疾走感がある一曲。


追記・修正は一撃離脱を得意とする方、もしくはキチガイな方にお任せします。

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最終更新:2023年08月20日 15:06

*1 ザンボット3やSRXなど、戦艦の主砲を自分の武器として使ったロボットはディープストライカー以外にもいるが、どっちも「取り外した戦艦の主砲を借りて武器として使った」だけで最初から戦艦の主砲を乗っける設計ではない…

*2 そのため本来オミットされているはずの頭部インコムがそのまま付属している。とはいえ展開用のワイヤーケーブルは無いので、自前で用意しない限りは見た目だけの飾りにしかならないが。