タガメ

登録日:2010/09/26 Sun 19:54:03
更新日:2023/06/24 Sat 21:01:20
所要時間:約 6 分で読めます





縁日の的屋で取った、五匹の金魚。
初めて金魚掬いをやったその結果は、大きいのを五匹も取った喜び。

その喜びを胸に秘めながら、半ばスキップを踏んで、僕は帰路へ付いた。

名前は何にしようかな。
どんな水槽で飼おうかな。
餌は何が良いかな――

様々な思いを脳裏に巡らせながら家に着いた僕は、庭先に置いてある、使わなくなった浴槽に水を張り、そこへ金魚を放した。

元気に泳ぎ始める金魚達。
明日からの飼育に期待を膨らませながら、僕は眠りに就いた。



そして、翌朝。
様子を見る為に浴槽を覗いた僕の眼に映されたのは






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┌(oio)┐{ゴチソウサン


死屍累々と化した金魚達と。
水面をゆらゆらと泳ぐ、1匹のタガメの姿だった――――



以上、
と或る少年の夏休み日記より抜粋。






タガメはカメムシ目(半翅目)コオイムシ科 に分類される水生昆虫
学名はレトセルス・ディーロレィ。
英名はジャイアント・ウォーター・バグ。
漢字表記は田鼈、もしくは水爬虫。
日 本 最 大 の水生昆虫であり、日本最大のカメムシ

そう。余り知られてないが、実はこの子、カメムシなのである。
田んぼにいるカメムシ、故にタガメ
カメムシwとか思った奴ちょっと表出な。

体長は5〜6cm。メスの方が大きく、オスで6cmまで達する個体は稀である。
逆三角形のような個性的なフォルムと、カマキリと同じように鎌状になった太く力強い前脚が特徴的。
若い個体はタイコウチによく似ているが、臀部にある呼吸器がタガメの方が短いと言う点で識別が可能である。
あまり飛ぶ事はないが、繁殖期には積極的に飛び回り、走光性がある為強い明かりにも寄って来る。


多くの水生昆虫と同じく肉食性で、性格は極めて獰猛且つ凶暴。前半の件のように、金魚5匹を一晩で平らげるなど朝飯前。
タイコウチやミズカマキリが自分より大きな個体はなるべく避けるのに対し、タガメは自分よりも大きな個体でも、積極的に襲い掛かって捕食する
その対象はフナや金魚と言った淡水魚には留まらず、トノサマガエル、毒持ちのイモリ、小さな個体であればあの鯉にすら襲い掛かる。
挙げ句の果てにはクサガメやマムシ等の爬虫類を仕留めることも。
その獰猛さから『水中のギャング』『淡水の殺し屋』『フィッシュキラー』と言った様々な異名を持ち、淡水魚やカエルからは非常に畏れられている存在。


捕まえた獲物は鋭い爪の付いた前脚の鎌でしっかりと押さえ、針状になった口吻を突き刺して消化液を送り込み、それによって液化した肉液を啜って食べる。蜘蛛かお前は。
一部の文献では獲物の血を吸うとされているが、これは誤り。
体外消化によって溶けた内臓を食べている為、タガメに襲われた獲物は骨と皮しか残らないのである。タガメ怖い。


以下、カエルの捕獲から捕食まで。
(タガメとカエルをお好みの美少女に脳内変換するとより一層美味しく頂けます)

「けろけろ♪ うーん、今日も田んぼは平和だなぁ…おなか空いちゃったし、虫でも食べに上がろっかな♪」

「……………………ふ」

BGM:ジョーズのテーマ

「……捕まえた…」
「え…? きゃああああッ! や、やだあッ、痛いッ、離してよお! 」

「大丈夫…気持ちいい事、してあげる…」

プッ……ツゥーー…

「いッ……あ、や、なにッ、これ…?」

「ふふ…すぐわかる…」

「あ、あぁあ……や、やだッ…溶けるッ…カラダ、溶けちゃうぅ…」

「……気持ち、いい? 気持ちいいよね……カラダ、溶けちゃいそうだもんね…」

「あッ…あッ、あ……あはッ、あははッ…これ、き、もち…いいッ…」

「…いただきます………ん」

ぢゅっ……ちゅるッ…ずずずッ…!

「あ…す、吸われ……は、あぁ…あはッ、あはははッ……んぁあッ…!」


そう。
タガメに襲われた獲物は、肉体をじわじわと溶かされ、更にそれを啜られると言う極上の快楽を味わいながら果てるのである。
タガメは恐ろしい殺し屋であると同時に、獲物に快楽を与える娼婦でもあるのだ。

まぁ勿論、獲物が本当に快楽を感じてるのかは知ったこっちゃありませんが。
活動時期は春〜秋終盤。
越冬は成虫で行い、春中旬から初夏にかけて繁殖期となる。この頃になると、オスが自らの腹部で水面を叩いて波紋を作り、メスを誘う求愛行動が見られる。
交尾はあたかも人目を避けるかのように、決まって日没後に行われる。
ムードが大切らしい。

一度に生む卵の数は凡そ60〜100個。この卵は、オスが給水・保護する事でも知られている(メス育児放棄じゃね? とか思った奴は骨の髄まで散れ!)。
そうしてオスが守った卵は約10日間で孵化し、幼虫は通算5回の脱皮を経て40〜50日で成虫まで成長する。因みにオスは幼虫の孵化と共に死ぬ。ごくろうさん。

余談だが、タガメの面白い習性の1つに、オスが保護する卵をメスが破壊すると言う過激な破壊行動がある。
これは卵を保護するオスを自分の交尾相手として獲得する為の行動であり、もちろんオスに為す術などない。
要するに↓

「あはははッ、壊れろ壊れろッ! みーんな壊れなさいよッ!」

「や、やめて下さい! あぁッ、卵が……あの人から預かった卵が…」
「あの人? ふふッ、何を言ってるの。貴方はまだ交尾なんてしてないでしょ」

「え…?」

「貴方は今から、私と交尾するのよ…貴方はまだ交尾なんてしてない。私が初めての相手なのよ……」

「え、あ…………………は、はい……」

(男って本当にちょろいわね)

↑こう言う事。
やはりどこの世界でも、おなごとは強い生き物なのである。



また、カメムシ目なので当然匂いを持つ。
この匂いは種によって異なり、日本産のタガメはまだ熟れてない完全緑色バナナのような青臭い匂いがする。
東南アジアに生息するタイワンタガメにはキンモクセイ(もしくはラ・フランス)に似た芳香があり、素揚げや佃煮にして食用にする地域もある(勿論日本でも)。
因みに味は白身魚やチーズに似ているが、かなりクセが強いので苦手な方にはオススメできない、玄人向けの食材である。
そんなタガメだが、かなり水質のよい水にしか住めない為、他の水生昆虫と同じく昨今の農薬大量使用や水質汚染によって急激にその数を減らし、今では殆ど見られなくなってしまった。
日本産のタガメは既に絶滅危惧種に指定されており、絶滅が危ぶまれている。
皆も、水を大切にしよう。
それが田園や川を、ひいてはタガメを守る事に繋がるのだから。

……人間?



……



……溶かされに、来たの?


……私、人間キライ



……でも、餌くれるなら、好き



……追記修正もするなら、もっと好き



……貴方は…どっち?



……私が、好きになれるヒト?





―― HAPPY END ――

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最終更新:2023年06月24日 21:01