暗殺鬼フラン衆伝 ユーラシア1274

登録日:2011/06/27(月) 22:36:18
更新日:2023/11/01 Wed 00:12:36
所要時間:約 5 分で読めます




西暦1274年 壱岐、対馬を占領した元・高麗群は現在でいう博多付近に上陸したが、暴風によって敗退した。
これは、後に文永の乱の役として語り継がれる「蒙古襲来」であり、日本国の歴史上初の…最大の国難の物語である。

立ち向かうは『腐乱衆』と呼ばれる餓鬼道の男達。
幼き頃より京の都に捨てられ、人間の死肉を喰らって生きてきた。
生まれた時より地獄を見て育ち、誰よりも生き抜く道を知っている。
そして、生き抜くためにまた血肉を引き裂く…。
全ての能力をそれに傾ける…。

この者達は喰らった魂が自分自身の体内に宿っていると信じている。
ゆえに、死ぬことすら恐れはしない。

正に、餓鬼になり損ねた物達!!
奴等が通った後には人の死骸の腐っていく臭いしか残らない!!!

餓鬼、乱王丸!!
餓鬼、金性坊!!
餓鬼、凶気天丸!!
餓鬼、死目影!!

元皇帝フビライを暗殺せんと、4人の日本人が大陸へ渡った!!


これは、我らが石川賢の描いた漫画版『蒙古襲来』
全1巻 218Pと短くまとめられてはいるが、この一冊だけで十分満足できる内容である。
復讐とか殺しに対する葛藤とか正義だ悪だとか、そんな小難しい話は一切無し。
とにかくフビライを殺したい奴等が暴れまわるだけ。

本作の魅力は何よりも主人公である乱王丸こと腐乱衆が敵を殺って殺って殺りまくる所にある。
彼等の生い立ちはかなりヘビーな物であるのだが、作中でネガティブな影を垣間見せる奴など一人もおらず、仲間同士での会話もコミカルな印象を与え、その行動一つ一つにも陰湿さをまるで感じさせない。
実に生き生きと殺戮を繰り返す彼らの行動は、ともすれば爽快感すら与えられる仕上がりとなっている。

善悪に縛られず、自信の境遇に嘆くことなく、ただ生き残る為に、ただ殺したいが為に敵を討つ。
実に石川賢らしい漫画である。



登場人物

乱王丸
巨大なシャチの頭に乗ってダイナミック乗船を行える本作の主人公的存在。
血の気が多く、邪魔する輩はぶち殺さなければ気が済まない。
腐乱衆の中心的な存在でもあるが、リーダーとしての統率力は持ち合わせていない様子。
強大な敵を前にしても「だから面白いんだ」と笑って返せる肝っ玉と、嵐のように時化った海では平気だが、緩やかな揺れの海ではひどい船酔いを起こす体質を持つ。
刃物の扱いに長け、身に纏う鎧は仕込み刃が組み込まれており、全身に展開した刃を用いて敵をバッサバッサと斬殺していく。
というより、コイツはそれしかしてない。
大物の首を穫るたびに自分が成長していく気がしてシミジミする。
戦いの時は常に笑顔を絶やさず、敵を惨殺する時などは物凄い凶悪な笑みを浮かべる。
意外にもユーモアな性格であり、お調子者で意地っ張り。
そんな彼ではあるが、親と慕う「日蓮」には敬語が使えるほど人間は出来ている。


金性坊
大柄で温厚そうな顔つきのスキンヘッドの男。
腐乱衆の中ではメンバーのまとめ役といったところ。
教養もそれなりにあるらしく、本当に人間を喰ってまで生き抜いて来たのか疑わしいくらい人間が出来ている。


凶気天丸
特徴という特徴の無い地味な男。
大量の野鳥を操る能力を持つが、その能力を戦闘に用いた描写は無い。
というか、コイツが戦っている描写すら無い。
更に言えば出番も極端に少なく、作中で彼が喋ったのは二言ぐらい。


死目影
髭ボーボーな三等身ほどしかない小柄の男。
影に身を潜める能力を持ち、主に相手の足元からの奇襲戦法を得意とする。
出番は少ないが、特徴的な容姿とマスコット的な言動から、そこそこ存在感はある。


日蓮
腐乱衆の4人を率いる男で、フビライ暗殺を命じて大陸に渡らせた張本人。
あらゆる弾圧にも信念を曲げずに仏法を説いて回り、予言をことごとく的中させる怪僧。
日本を守りたければ他の邪宗を捨てて、法華経へ帰依しろと鎌倉幕府執権である北条時宗に説く。
腐乱衆からは絶大な信頼を得ており、日蓮の言葉は彼等にとって絶対である。
西洋では常識となっている惑星球状説を知っているなど幅広い教養の持ち主である。


趙剣
本作の主人公的存在その2で元国に支配された高麗の軍人。
元に滅ぼされた民族の生き残りで構成された『雑色軍』を纏め上げ、フビライ打倒を計画する人物。
蒙古襲来の際には、日蓮の予言した嵐が起こる日に合わせて侵攻するように上官に勧め、日本侵攻を図った蒙古軍の全滅に成功する。
目的の為なら部下をも平気で殺す冷酷さを持つが、周囲からの信頼は絶大である。
剣の腕も確かで、その実力は乱王丸すら凌駕するほど。
頭も冴えており、周辺諸国の情勢に対する知識は勿論、戦闘指揮までこなす正に完璧超人である。
乱王丸に野心家で有ることを指摘され、本人もそれを否定しなかった。


大汗フビライ
元国の帝王。
コイツを殺せば万事解決かと思ったが、そんなことはなかったぜ。



本作は石川賢の漫画要素をふんだんに盛り込んだ作品であることも特徴で
  • 群がる敵を蹂躙する主人公
  • 敵役の方がしっくりくる主人公達の凶悪な言動
  • 飛び散る血潮に宙を舞う手足に首チョンパ
  • 時代を先取りした数々の兵器(火薬や空爆グライダー、ミサイルもあるよ)
  • 蒸気を利用したカラクリ式の居城
  • そして巨大な木造式のロボット
と、入門書としてもお薦め出来る一品である。



物語は巨大木造式ロボットに主人公達が乗り込んだ所で盛り上がりも最盛期を迎えるのだが、これ以降は多大なネタバレになる為控えておこう。









行け~っ!! うおおぉ!! アニヲタの果てまで!!

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最終更新:2023年11月01日 00:12