ひろしの回想(クレヨンしんちゃん)

登録日:2012/09/28(金) 21:05:32
更新日:2024/04/14 Sun 21:19:24
所要時間:約 3 分で読めます






「とうちゃんはとうちゃんなんだよ、このにおい分かるでしょ」







「ひろしの回想」は映画「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲」で使用されたBGMである。作曲は浜口史郎。


◆概要

大人達を連れ戻す為に20世紀博に突入したかすかべ防衛隊だが、しんのすけ以外は捕まってしまう。

しんのすけはシロとひまわりを連れて大人達を探す中、遂にひろしを発見。
しかし、“イエスタデイ・ワンスモア”(オトナ帝国)の放つ「懐かしいにおい」によりひろしは現実から逃げ、子供の頃に戻っており、
しんのすけの呼び掛けにもそっぽを向く。

「だったら、今のにおいだぞ!」

「懐かしいにおい」で子供に戻ったなら「今のにおい」なら大人に戻れるかもとしんのすけはひろしの靴を脱がして嗅がせる。
ひろしの足は臭い、それは今までの人生が積み重ねた現在の臭いだからである。
自分の足の臭いで意識を失ったひろしの脳裏には、自分の今までの記憶が蘇っていく……。


幼少期に父・銀ノ介の自転車の荷台に乗って一緒に釣りに行った記憶。
故郷の田んぼを、学生時代に彼女と共に、歩いた記憶。
別れて雪の中を一人で、歩いた記憶。
故郷を離れて上京し、就職した記憶。
覚え始めで仕事のミスを注意された記憶。
上司や同僚に飲み屋で励まされた記憶。
みさえとの出会い、桜並木でのデート。
しんのすけの誕生に雨の中駆けつけた事。
35年ローンで家を新築した事。

真夏の中の外回り、仕事の打ち合わせ、夜遅くまでの残業、電車の中で眠くなるまで疲れて帰って来て、出迎えたしんのすけやひまわりにちょっとのいたずら。一緒に風呂に入り、風呂上がりの一杯。

帰りを待っている家族がいる、笑い合える家族がいる、今まで歩んで来た辛くも楽しくもある過去がある……忘れていたそんな記憶が蘇る。

その記憶の中で最後に流れてきたのは奇しくも自分が父親にしてもらったのと同じ、しんのすけを荷台に乗せ、家族みんなで釣りに行った記憶だった。
回想が終わり、現実に戻ったひろしは涙を流して横たわる。

そして、しんのすけの問いに、抱き締めながら答えるのだった。



「とうちゃん……オラが分かる?」



「ああ……ああ……!!」


◆解説

人気作品であるオトナ帝国の各シーンでも、場面と相俟ってかなりの人気と好評価を得ている。*1
また、作中クライマックスで流れる「21世紀を手に入れろ」の前半部分は「ひろしの回想」がアレンジされた物である。
過去を思い出す「ひろしの回想」が未来へと向かう「21世紀を手に入れろ」の前半部分に使われているのは、
過去を振り切り、未来へと向かう意思の現れと言われているとかいないとか。

実はこのシーンの舞台となるEXPO'70は、しんのすけ目線(現実の目線)だと非常に不気味なものとなっている。
というのも広大に見える大阪万博はひろしの幻想であり、実際はそう広くない部屋に、絵に描いたハリボテがかき集められた空間なのである。
当然ひろしは児童期の小さな姿に戻ってなどいないし、ひろしが会話している銀ノ介達も妄想の産物…自分の父親がハリボテの昭和の中で、過去に逃げ込もうともがく姿など見たくはないだろう。
その幻想から逃れ切った二人の絆の強さもまた、このシーンの印象を強くしているのだが。


「オレの人生はつまらなくなんかない!

家族がいる幸せを、あんたにも分けてやりたいくらいだぜ…!」


ひろしの後、みさえも「今のにおい」によって記憶を取り戻すが、その時の回想は無いどころか、ほんのわずかなシーンしかない。
尺の都合もあるとはいえ、扱いの差よ…*2

なお、『オトナ帝国』はせましがアニメに登場する前の話の為、この時の回想にせましは一切登場しない。


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最終更新:2024年04月14日 21:19

*1 ひろしの回想には子供から大人になり、家族を持つまでの全ての思い出が組み込まれており、大人ほど感情移入や理解がしやすい為、子供の付き添いとして一緒に見ていた親が泣き出すと言う事態が起こる事もしばしばあったという。

*2 一応みさえも後年放映された「オタケベ!カスカベ野生王国」にて似たシーンが流れたので、不公平ではなくなったと言えよう