メカゴジラの逆襲

登録日:2011/06/05(日) 21:57:48
更新日:2024/03/09 Sat 01:15:11
所要時間:約 6 分で読めます






さらに狂暴となって!さらに強力な武器を持って!
メカゴジラがよみがえった!

地球を奪え!――宇宙人の命令に新怪獣・チタノザウルスと日本中を大破壊!





『メカゴジラの逆襲』は1975年3月15日に公開されたゴジラシリーズ第15作目の作品である。観客動員数97万人。

1975年春の東宝チャンピオンまつりで上映され、同時上映は「劇場版 新八犬伝 第一部 芳流閣の決斗*1」「アグネスからの贈りもの*2」「アルプスの少女ハイジ*3」「サザエさん*4」「はじめ人間ギャートルズ*5」。
奇しくも前作と同じく、「ハイジ」が同時上映されている。

前作 「ゴジラ対メカゴジラ
次作 「ゴジラ(1984)

●目次

【概要】

前作『ゴジラ対メカゴジラ』のヒットにより作られたメカゴジラシリーズ第2作目であり、
ゴジラシリーズでゴジラ以外の怪獣のみがタイトルになったのは本作のみである。

チャンピオンまつりの時期の作品ではあるが、本作ではドラマを重視しており、
監督は本多猪四郎氏が復帰、音楽も伊福部氏が新曲を書き上げた。脚本ではシリーズ唯一となる女性が手がけている。

このような布陣で作られた本作は、老科学者の社会への復讐と、それを利用する侵略者。
そしてサイボーグとなった娘と若き科学者の悲恋がストーリーの核となっている。
またゴジラ対メカゴジラの直接の続編であるため、冒頭にキングシーサーがほとんど登場しない対メカゴジラのあらすじが流れる。

特撮面においては、久しぶりに大規模な都市破壊シーンが復活
セットの床まで吹っ飛ばす大規模な爆発シーンも見られ、前作では見せきれなかったメカゴジラの破壊シーンも存分に披露された。
また今回のスーツアクターはウルトラマンでレギュラーのアクターを務めていた人達で、肉弾戦を主体とした殺陣を見せてくれている。


ドラマ、特撮共に充実した作品ではあるが、子供には受けにくい恋愛もの、
作品全体の重い雰囲気等からか、シリーズ最低の観客動員数となってしまった。

本作以降オイルショックもあり、予算のかかる怪獣映画は製作が一端ストップする。
また前後してフジテレビのピープロ作品は『冒険ロックバット』を最後に枠が途絶え、仮面ライダーシリーズは『仮面ライダーストロンガー』、ウルトラマンシリーズも『ウルトラマンレオ』を持ってシリーズが一端終了となり、第二次怪獣・変身ブームは完全に終息した。

シリーズでは最後になるが1968年制作の『怪獣総進撃』が未来の出来事(1994年)であることから本作(1975年)より未来の出来事と解釈した書籍も存在する。


【あらすじ】

ゴジラに敗れ、爆発四散したメカゴジラを調査する潜水艇あかつきであったが、謎の巨大生物に襲われ沈没した。
宇宙人の関与を疑った国際警察はあさつきを保有していた海洋開発研究所と共に調査を始めた。

海洋学者の一ノ瀬は、あさつきの乗組員の恐竜という言葉から、国際警察の村越と調査を始める。
そこで、学会で恐竜に関する発表をした真船博士に行き着く。しかし真船博士は15年前に学会を追われていた。

真船博士を訪ねた一ノ瀬は娘の桂から博士はすでに亡くなり、資料も大半は処分したと聞かされる。
桂の態度を怪しんだ村越と一ノ瀬は調査を継続する。

一方、実は生きていた真船博士は、ある組織の援助によりチタノザウルスのコントロールを完成させていた。
組織の正体はブラックホール第三惑星人であり、メカゴジラの修復の協力を依頼する。

調査が進む過程で再会し惹かれあっていく一ノ瀬と桂だったが、桂は実はすでに実験の事故で死亡しており、サイボーグとなっていた。
惹かれあう2人には残酷な運命が待ち構えることになっていく。


【登場人物】

◆一ノ瀬明(演:佐々木勝彦)
海洋開発研究所の科学者で、事故の調査をする内に桂と知り合う。その後も会うにつれて桂と惹かれ合う。
最後に桂の秘密を知ってもなお彼女を愛した。
演じた佐々木氏は2度めのゴジラ主演である。


◆真船桂(演:藍とも子)
真船博士の娘であり、本作のヒロイン。
真船博士を調べる一ノ瀬と知り合い、一ノ瀬に惹かれていく。

しかし、桂はすでに死んでおり、宇宙人にサイボーグとして生き返らされた存在である。
それでも心は失わなかったが、物語終盤で再改造を受けた際にメカゴジラの中枢を移植され、人の心も一旦失う。
一ノ瀬の説得により心が蘇るが、桂は自分を壊してと一ノ瀬に懇願する……

シリーズ一の悲恋とも言える本作を彩ったヒロインを演じたのは、「ウルトラマンレオ」で松木晴子隊員役で出演したことでも知られる藍とも子である。
そのため本作のオーデションにはMAC隊員の服装のまま受けに来たという。

本公開時の宣材写真では、銀ラメの衣装を着けた桂がゴジラやチタノザウルスの横でを手に構えているものがあるが、
劇中ではこのような鞭を使う描写は無かった。

ちなみに、改造手術シーンで見えるおっぱいは作り物である。
当時、あの一瞬にドキッとした少年たちもいたとか……


◆真船博士(演:平田昭彦)
フルネームは真船信三。海洋開発研究所に勤める天才的な科学者だったが、15年前にチタノザウルスの存在や生物のコントロールを主張したために学会を追われる。その後は自力で研究を続けた。
学会や社会への復讐の思いと、桂が死亡した際に命を救われたことがきっかけで、メカゴジラの修復に協力するが、
そのために娘を「道具」として扱っていたことを悟って心が折れてしまう。最後は国際警察が基地に突入した際に盾にされて死亡する。

シリーズを支えた名優、平田昭彦氏の最後のゴジラ作品となった。

なお、ひと昔前の批判に「ゴジラがいる世界で、恐竜発見を唱えたら学会追放はおかしい」というのがあるが、
追放されたのは前述のように生物を自分の意志でコントロールしようとしていたからである。
怪獣大戦争怪獣総進撃ゴジラ対ガイガンにて宇宙人に怪獣のコントロール、
すなわち兵器化をやられて地球側が大打撃を受けている事を考えれば無理はない。
学会追放という手法のせいで野放しになってしまったという問題はあるが……

また、本作の年代を公開年と同じ1975年とすると、その15年前は1960年。
まだゴジラ二体と初代アンギラスしか現れていなかった(後付けでゴジラシリーズに組み込まれた作品を含めてもラドンバランのみ)。
当然「人類を守る怪獣・恐竜」なんてものも存在しておらず、真船の意見は当時の基準なら相当危険なものであったことは間違いない。
なにせゴジラが封印、アンギラスが死亡して一段落しているところに、全く無傷で健在な怪獣的存在が証明されるのだから。

え? それならなんで回想シーンにテレスドンザラガスの解剖図が存在してるんだって?
こっちが聞きたい!


◆村越二郎(演:内田勝正)
国際警察の捜査官で一ノ瀬の学生時代の先輩。事故の調査から始まり、最後はブラックホール第三惑星人の野望を阻止する。
一ノ瀬のピンチには、ナイスなタイミングで駆けつける。

◆若山勇一(演:六本木真)
◆山本ユリ(演:麻里とも恵)
一ノ瀬の同僚たちで、桂に肩入れする一ノ瀬を窘める。
若山はあかつき号並びに超音波発生装置を開発したが、山本はこれといった活躍は無し。

◆町の少年(演:梅津昭典)
チタノザウルスに襲われゴジラに助けを求める。
ウルトラ6番目の弟なんだからゴジラよりウルトラ兄弟やその時点で地球で活躍していたレオを呼ぶところじゃないのか


ブラックホール第三惑星人

前作で大破したメカゴジラを修復、今回は真船博士の協力を得ながら計画を進める。正体が猿顔からケロイド顔*6に変更された。それじゃミステリアンじゃねーか、というツッコミは受け付けない。銀色の服に三本の角が生えた銀色のヘルメットを着用。
作中では母星の消滅が迫っていることが語られた。

◆ムガール(演:睦五郎)
今回の司令官。前回の司令と顔は同じだが別人である。
最期は国際警察に追い詰められた末に円盤に乗って逃走を図るも、ゴジラの放射熱線で爆死した。

◆津田
ムガールの部下で副官。最期は一ノ瀬に絞殺され、その際苦し紛れに素顔を晒した。

【登場怪獣】

ゴジラ
本作では影が薄い我らが怪獣王。スーツが改修されており、目つきが鋭いイケメンになった。
スーツアクターはウルトラシリーズでレギュラーのアクターを務めた河合徹氏。肉弾戦主体の激しい殺陣を演じた。
ラストの海へ帰るゴジラのシーンには、前作で「偽ゴジラ」として使用されたアトラクション用のぬいぐるみが使用されている。
本作でに帰った後の消息は不明(上述したように時系列的には怪獣総進撃が最後になるが)。


メカゴジラ
ゴジラからタイトルを奪い取った。前作と区別するため「メカゴジラ2」などと呼ばれることもある。
暗めの渋い色調になり、胸部パーツなどの形状が変化している。
頭の中にはもう1つの頭があり、頭部をもがれてもなおも攻撃を続けゴジラを苦しめた。
新兵器のフィンガーミサイルは威力の表現のために、セットの下に火薬を仕込んで地面に穴を開ける演出をされた。


◆チタノザウルス
実質的な主役怪獣。頭や尻尾に鰭が生えたゴジラ同様に水でも活動可能な恐竜で、当時の恐竜の学説の1つを取り入れ、極彩色の肌をしている。
恐竜だが格闘能力が高く、蹴り一発で弱ったゴジラを街から造成地まで吹っ飛ばしている。また尻尾で竜巻を起こす。
ゴジラ戦では前衛を務め、遠距離の火力のあるメカゴジラが後衛に回るという連携も見せた。
ただしこれらの戦闘能力はコントロールによるものであり、本来はおとなしい性質。
どこかの海で静かに暮らしていたであろうところを侵略・破壊行為に無理やり加担させられたと考えると彼もまた被害者といえよう。

劇中では一貫してきょう↑りゅう↓という妙なアクセントで呼ばれている。

スーツアクターはウルトラマンレオで有名な二家本辰巳氏のため、突風を巻き起こす時にレオの変身ポーズに似た型をとるシーンがある。

5年前の回想シーンで真船博士がチタノザウルスを説明するカットで、バックに『ウルトラマン』に登場した地底怪獣テレスドンの解剖図が使われている。

検討用台本では、「タイタンI」「タイタンII」という雄雌の恐龍であった。

デザインは井口昭彦、造形担当は、昭和30年代に東宝特殊美術部で各種怪獣造形を支えた村瀬継蔵(ツエニー)。
人間が入るタイプのものと、同じ大きさのアップ用の首、ヒレが開閉する仕掛けのついた尻尾、遠景用の人形(海底シーンで使用)が作られた。

上陸したチタノザウルスが大きく伸びあがるカットでは、
スーツアクターがシーンによって着ぐるみに前後逆に入ることによって「反り返り」を表現している。
また、構図に変化をつけるため、シネスコに敢えて長身のデザインが採用されている。

特技監督の中野昭慶が「恐竜の体色は極彩色だった」という学説を採り入れ、大変派手な体色になっている。
また、身体のイボの彩色はすべて違う色で彩色されており、セットの地面もチタノザウルスに合せてマゼンタ系で彩色したものの、
ゴジラと組んだ際に「ゴジラに合わせて照明を調節するとチタノザウルスが映り難くなり難しかった」と中野は述懐している。

チタノザウルスの首はかなり長めで、首の振動が激しい上に、
頭を撮ろうとすると空のホリゾントを超えてセットの天井が写ってしまうなど散々苦労したという。


ラドン、マンダ、キングギドラ
桂が多くの人々の命を奪う怪獣を回想するシーンで過去作からの映像で登場。マンダは二代目のため、『怪獣総進撃』が本作より未来の出来事であるという書籍設定と矛盾している。
何故ラドン、ギドラと来てマンダなのかとは突っ込んではいけない。
恐らく、複数の怪獣の破壊シーンをバックに桂が語り掛けるシーン構成だったため、直近の作品でそれなりに長い破壊シーンのある怪獣が選ばれたものと思われる。
マンダはラドンやギドラと違って都市破壊シーンが豊富なワケではないが、『怪獣総進撃』でモノレールに巻きついて破壊するシーンがノタノタして長いため起用されたのだろう。





【余談】

DVDには本多猪四郎監督の夫人に対するインタビュー、オーディオコメンタリーは撮影の富岡カメラマンである。
富岡氏は本編、特撮両方の撮影を担当したため、毎日徹夜で非常に苦労した。本多監督がコンテで細かく指示し、何とか出来たとのことである。
ゴジラ FINAL WARS』の冒頭にて、過去に出現した怪獣の一体としてチタノザウルスが紹介されている(映像は今作の流用)。


サイボーグであっても愛することが出来る方は追記・修正をよろしくお願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • 映画
  • ゴジラ
  • メカゴジラ
  • チタノザウルス
  • ウルトラマンレオ
  • ゴジラシリーズ
  • 東宝
  • 特撮
  • 怪獣
  • 悲恋
  • サイボーグ
  • 第1期最終作
  • 東宝特撮映画
  • きょう↑りゅう↓
  • ブラックホール第三惑星人
  • メカゴジラの逆襲
  • 静岡県
  • 天城山
  • 神奈川県
  • 横須賀市
  • 東宝チャンピオンまつり
  • 悲しい結末
  • 終始シリアス
  • ビターエンド
  • 鬱展開
  • 同時上映との凄まじい温度差
  • 本多猪四郎
  • 邦画
  • 救いがない
  • 前作との凄まじい温度差

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2024年03月09日 01:15

*1 完全新作。当時人気だったNHKの人形劇「新八犬伝」の前半をリメイクしたもの。また、71年冬の「マッチ売りの少女」以来の人形劇の上映であるが、本作で最後となった。

*2 完全新作。当時人気絶頂だったアグネス・チャンの短編映画。前年春の「ハロー!フィンガー5」の人気を受けて制作されたが、アイドル映画は本作で終了となった。

*3 テレビシリーズ第45話「山の子たち」を上映。なお、上映当時は既にテレビシリーズは放送終了している。

*4 テレビシリーズ第76回Aパート「送辞をよむぞ!」を上映。なお、テレビシリーズは2024年現在も続いていたりする…。

*5 テレビシリーズ第1回Bパート「マンモギャーの巻」を上映。

*6 一部書籍では「病魔に侵されたミュータント」と説明されている。