90式戦車

登録日:2009/08/30(日) 09:20:08
更新日:2023/03/15 Wed 12:56:18
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読み:きゅうまるしきせんしゃ
きゅうじっ式戦車じゃないぞ。間違ってもきゅうじゅっ式戦車じゃないぞ。

90式戦車とは陸上自衛隊が開発した国産三代目の主力戦車で97式中戦車の末裔である。
一代目:61式戦車(STA)
二代目:74式戦車(STB)
三代目:90式戦車(STC)
四代目:TK-X(10式戦車)


【武装】

  • L44 120mm滑控砲
ドイツの名門火砲メーカー、ラインメタル社製の120mm滑腔砲をライセンス生産したもの。

ちなみに、こんなエピソードがある。

自衛隊「おい、STCの主砲どうする?」
自衛隊2「日本で作ったことないしなぁ、そうだドイツに頼もうぜ!」
ラインメタル社「分かりました、作りましょう。ライセンス生産も許可します。但し3億円/門です。」
自衛隊「高ぇよ!どうするの?」
自衛隊2「じゃあ日本製鋼所に作ってもらおうぜ。」
日鋼「日本の技術力を甘く見るなよ。」
そして月日がたち
日鋼「完成したよ、ドイツのより少し高性能だけど予算オーバーしちゃった。」
自衛隊「よくやった、これを採用しよう。」
ラインメタル社「あ…あの…値下げするんでウチのを買ってくれませんか?」
自衛隊「仕方ない、ここはドイツ製を採用しよう」
終わり

もっともこの時に試作された国産滑腔砲はコストを無視した特注に等しい代物であり、
量産仕様で性能面で大差が付かなければラインメタル製を採用する約束だったという。

余談だが90式の主砲には長らく空包がなく駐屯地祭の模擬戦では同軸機銃しか射撃しなかった。
しかし10式戦車用に120ミリ空包が開発されたことで、近年では迫力不足の問題も解決(?)されている。
当然といえば当然だが日本製鋼所の試作120mm砲に合わせ、ダイキン工業と小松製作所が徹甲弾と対戦車りゅう弾を試作している。
こちらも採用はされず弾薬はドイツ製のライセンス品だが、のちの74式戦車用93式APFSDS、91式HEAT-MPに技術は活かされた。


  • ブローニングM2重機関銃
  • 74式戦車車載機関銃

副武装に関しては74式戦車と同じであり概ね過不足無いものである。
ただし近年発覚した住友重機械工業による機関銃強度偽装事件により不安が持たれる。
そのためか朝霞駐屯地展示の試作車からは、当初は搭載されていたM2重機関銃が今は撤去されている。

【FCS】
各種センサーと一体となった火器管制コントロールユニットは、90式の時点で「世界一」とまで評される。
フルブレーキング中に発射しても命中弾、3km先のターゲットに行進間射撃を1発目から命中させる等、ふざけたエピソードは盛りだくさん。
曰く「競技会で1位になったが、1発外したためにお通夜ムードだった」とかいうレベル。
砲の俯角だけではなく、74式譲りのアクティブサスペンションも併用してこのコントロールを行っている*1
敵からしてみたらこっちみんな

【防御力】
一時期「第三世代で再軽量ゆえに紙戦車」と揶揄されたこともあった。
しかし同様に第三世代最小であるため「容積単位あたりの密度」はギチギチに高い。
その上で純国産のセラミック、チタニウム主体の複合装甲を採用(内装モジュール式拘束型セラミック装甲と言われる)。
傾斜装甲は採用していないが、APFSDSを被弾した場合は避弾経始が意味を為さない、複合装甲を収める容積を確保するため等が理由と考えられる。

耐久試験では自らが搭載する120ミリ徹甲弾、対戦車りゅう弾複数を被弾しても貫通なし。
エンジンも無事に再起動するなどかなりの強靭さを見せつけている。
他にも側面装甲は89式装甲戦闘車の35ミリ機関砲の徹甲弾射撃に耐えたとか。

加えて第三世代戦車の標準装備といえる弾薬庫上面のブロウオフパネルも装備。
仮に弾薬庫が被弾誘爆してもパネルが吹き飛び上部へ爆風を逃し、極力戦闘室へ被害が及ばない配慮が為されている。

装甲以外の防御としてはレーザー検知器と連動した発煙弾発射機がある。
相手のレーザー照準を受けると「貴様、見ているな!?」と自動的に発煙弾を発射。
光学、赤外線照準を問わずに視野を遮り退避できる優れものである。その盛大な発煙は総火演の名物の一つ。



【走行・航続性能】
燃費は一リットル当たり250メートル程。しかし燃料タンクが大きいので東京から三重県まで余裕でいけるとの噂もある。

最高速度は時速70キロメートルと第三世代として申し分ない。
軽さが効いてか加速性も良好で、停止状態から200mを20秒という記録がある。
ブレーキに至っては効きが良すぎて車体から上半身を出した車長が胸等を打つ怪我をするので"殺人ブレーキ"と言われている。
この点は敵戦車の照準を感知した時に急加速・急停止を使い、相手の照準を大幅に狂わせることも意図に入っている。



【車重】
重量は50トン。流石に民生品トレーラーでは運搬できず特注品の特大トレーラーで運搬される。
90式戦車は重すぎて橋を渡れない、と言われたりするが、これはデマ。
大型ダンプカーが20トン以上ある。日本の橋は大型ダンプカーが二台同時に走ると崩壊するのか?
もしそうならば手抜き工事である。

【操作性】
乗員は操縦士、射撃手、車長の3人。
弾が自動で装填されるので装填手がいらなくなり、人員を減らせた。
但しこの点は3名で戦車の簡易整備を行うためマンパワー不足であり、戦時に稼働率を維持できるかは後方支援隊の働きにかかっている。

高度なFCSと自動装填装置の組み合わせから砲の命中精度も非常に良好で、米国ヤキマ演習場では米軍からも高評価を得た。
2000年代に入ってからは演習用徹甲弾(一定距離を飛翔すると自壊)が配備され、総火演でも行進間射撃が見られる。



【その他】
日本の最先端技術を集結させて完成したのが90式戦車である。
しかし値段が高くて多くは調達出来なかった。この点は当時AFVまでは複数年度会計でコストダウン出来ないことも響いた。
ただし1台約11億円という値段が高かったか、というと他国(ドイツやアメリカ)の輸出仕様も大抵10億はするのでそこまで違わないという声もあり、自国用に小型軽量化できたことを価値と捉えるならむしろ妥当かもしれない。

主に北海道に配属され本州では74式戦車が現役。2010年には新型戦車の調達が始まるので74式戦車は更新されていくだろう。





90式戦車がいかに優れた戦車かお分かりいただけただろうか?
配備当時は世界に先じて対レーザー警報装置を装備したりもしており、実に先進性に富んだハイテク戦車だったのだ。
ええ何しろ第三世代戦車後発というのは伊達ではなかったのです。

配 備 開 始 当 時 は

残念ながら配備開始から既に20年以上も経っているのに拡張・改良がほとんどされず、C4I機能(早い話がIT技術)も弱い部分がある。
広域多目的無線機の搭載、第2師団などにおけるC2Tシステム運用試験も継続されているが結果はパッとしない模様。
これは小型ゆえの内部スペース不足に起因する。
このことからアメリカのM1A2SEPエイブラムスやロシアのT-90Mとは、かなり水をあけられている可能性もある。
但し前者は手足が三本いると言われるほど使用性の劣悪さが指摘されていて、後付でのC4I実装は90式と同じく容易ではないらしい。

10式戦車に期待したいところである。
まぁ今後も使い倒す予定だろうけど。


プラモデルの90式】

  • 1/35
タミヤからミリタリーミニチュアシリーズで発売された。
通常仕様の他に、92式マインローラー付きと自動装填装置再現、砲弾交換作業中のフィギュア付きがある。
また、自動装填装置付きの通常仕様が一時限定販売されていた。

オプションでエッチングパーツが別売されている。

  • 1/48
アリイとアオシマからリモートコントロールキットが発売された。
ちなみにアオシマはかなり出来が良く、後にシングルモーターライズも発売された…最近見かけないが。
アリイは…押して知るべし。

  • 1/72、1/76
ピートロッド東名からは1/72
フジミからは1/76が発売された。
フジミのは同シリーズの61式と74式と比べるとあっさりしている。
ピートロッドはスケールの割に値段が高い…、通常仕様の他に戦国自衛隊1549仕様がある。


【その他立体物の90式】
  • トミカ
トミカプレミアムシリーズ第三弾として発売。
1/124スケールで砲塔・砲身・履帯が可動する。

  • ラジコン
東京マルイからRCバトルタンクシリーズ第1弾として1/24が発売された。
主砲が10歳以上用電動ガンになっており、撃ち合いが楽しめるというエアガンメーカーらしい仕様となっている。
後にリニューアル版として第71戦車連隊仕様も登場。

  • 変形ロボット
タカラトミーからトランスフォーマー/リベンジシリーズにて、ディセプティコン兵士ブラジオンが発売。
90式から落ち武者モチーフのロボットに変形する、映画には登場しない玩具のみのキャラクターである。



この度、協同転地演習にて九州に初上陸した。
これは年々増す中国や朝鮮の脅威に対抗するため、従来の北方重視から島嶼防衛を含めた西方重視に自衛隊のドクトリンが変化しているため。
小規模ではあるが89式装甲戦闘車なども加えた中隊戦闘群編成であり、民間輸送力活用も含めて南西への抑止力向上が期待される。



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最終更新:2023年03月15日 12:56

*1 ただし、90式のアクティブサスペンションは前後方向のみに効いて、左右のローリングに関しては略されている。