ジャック・ザ・リッパー

登録日:2011/12/08 Thu 15:21:00
更新日:2024/03/31 Sun 20:04:20
所要時間:約 9 分で読めます





切り裂きジャックは売春婦を毛嫌いしている。

警察には決して捕まらない。


犯行は、まだまだ続く。



ジャック・ザ・リッパー(Jack the Ripper)/切り裂きジャックは、1888年にイギリスで発生した連続猟奇殺人事件の犯人。少なくとも5人の売春婦をバラバラにしたとされる。

「ジャック」とは英語圏で多い男性名の一つであり、正体不明のこの猟奇殺人犯に付けられた仮の名前である。
またの名を「ホワイトチャペル・マーダー」。女性であるという説もあり、女性形の「切り裂きジル」と呼ばれていた時期も。

事件が起こったイギリスではもちろんのこと、世界的にその名を馳せた、まさに伝説の殺人鬼である。



■事件概要


1888年8月31日金曜日、1人の売春婦がバラバラにされて殺された。以降2ヶ月間に渡り、全部で5人の売春婦が殺害されている。
事件はいずれも週末(金曜日~日曜日)に発生、また夜間人目のつかない場所で行われたものとされている。

またジャックは殺人を犯した後、決まって死体から臓器を持ち去っている。その際に行ったと思われる解体の手際が素人とは思えないほど良いため、ジャック=医者説が唱えられた。

遺体をバラバラにされた被害者たちの中でも5人目の被害者の遺体損壊は凄まじく、皮膚や内臓を含めほぼ完全にバラバラに解体されていたという。
この5人目の被害者は「最も残忍な殺され方をした」と言われているが、医学的な観点から見れば高い解体技術がなければ不可能なため、「最も高度な殺され方をした」と言えるらしい。
なお医者説には「凶器はメスのように鋭利な刃物である」という根拠もあるが、それが真実であるかは定かではない。

他にも10人以上ジャックに殺されたと思われる被害者もいるが、模倣犯や愉快犯の犯行とも考えられるため、被害者は「少なくとも5人以上」とされている。

被害者として確定しているのは以下の5人。
人物 年齢 日付
メアリ・アン・ニコルズ 42 8月31日(金)殺害
アーニー・チャップマン 47 9月8日(土)殺害
エリザベス・ストライド 44 9月30日(日)殺害
キャサリン・エドウッズ 43
メアリー・ジェイン・ケリー 25 11月9日(金)殺害


■切り裂き魔からのメッセージ


ジャックの有力な手掛かりとして、新聞社に、切り裂きジャックを名乗る人物から手紙が届いたという記録がある。
内容は九月二十五日付で項目冒頭にあるような、「ジャックは売春婦を毛嫌いしている」「警察には捕まらない、事件はまだ続く」「次は耳を送ってやる」というもの。
当初は数多くの「自称ジャック」の一人と思われたが、九月三十日の犯行の被害者たちが耳を損壊されていたことから警察に注目される。

また、十月十六日、腎臓の一部が入った小包が送り付けられるという事件も発生。鑑定の結果、四人目の被害者のそれだと確認された。
この手紙に残されていた「地獄より」という署名は有名。

その5日後、3人目・4人目の被害者が発見された9月30日日曜日の早朝、ゴールストン通りの壁に白いチョークで書かれた、ジャックからのものと思われるメッセージが見つかった。
その内容は「ユダヤ人は理由もなく責められる人たちなのではない」というもの。
重要な証拠になると思われたが、その内容がユダヤ人を庇護するようなものであったため、反ユダヤ主義者を煽るのではないかと考えた警視により消されてしまった。
消す前に写真を撮るべきだと意見した警察官もいたが、それもなされなかった。

どちらもイタズラであるという可能性も否めない(事実新聞社がジャックから手紙が来たと発表した後、自称ジャックからの手紙が殺到したらしい)が、
自ら犯行予告や警察への挑発ともとれるメッセージを送ってきたのは彼が初であり、劇場型犯罪の元祖と言われる*1


■被疑者


「切り裂きジャック」の正体には諸説ある。
先述の「医学的高度な殺し方」を根拠とする医者説、かの有名な推理作家コナン・ドイルによる女装男性説、さらにそれが飛躍して生まれた女性説、
「徘徊している警察官に怪しまれることなくターゲットに接触できる」ということを根拠とする警官説、当時はまだ高価だったブドウをエサにした貴族・王族説、
壁のメッセージから考えられたユダヤ人説……等々。ちなみに当時のイギリス女王の孫も疑われていた。

何人か切り裂きジャックの容疑者として逮捕された人物もいるが、どれも証拠不十分であり、真犯人と決定づけるまでには至らなかった。
故にこの事件は未解決事件であり、真犯人は今もなお見つかっていない。まあいくらなんでも既に死んでいるだろうけど……

近年の犯罪分析によって犯人は数名に絞られ、有力候補は精神病院の脱走者で、最終的にアメリカに渡航していたかもしれないとされている。


■切り裂きジャックが関係する作品


「そもそも存在そのものがフィクションじゃね?」とまで言われるほど強烈なインパクトを与えた殺人鬼は、後の作家達に多大な影響を与えることとなった。
活動(?)時期が被るということもあり、シャーロック・ホームズと何度も対決させられたことがある。
推理ものだけでなく、ファンタジーものでも人気者。
サスペンス系だと「犯行時以外は残虐な本性を隠して生きている、一見すると温和そうな人物」、
ファンタジーやアクションだと「一目で危険人物だとわかるが物理的に被害者が逃げきれない運動能力の持ち主」というキャラづけになる傾向がある。

作品一例

  • 『フロム・ヘル』
アラン・ムーア原作、エディ・キャンベル作画のグラフィックノベル。
2000年に入ってから映画化されている。しかも主演はジョニー・デップ(ジャック役ではない)。
ただし原作とは完全に別物であり、主人公である切り裂きジャックが殺人を儀式として最終的にに近い存在にまで昇華するなど、
かなり壮大なスケールの作品となっている。

ジャックをモチーフとした事件の回がある。正体は「浅倉禄郎」という『相棒』の初代相棒・亀山薫の友人でもある検事。
『相棒』にはほかにも、女性を屈服させるという意味合いで女性のピアスを奪い去る女性を対象にした快楽殺人鬼が登場している。

青山剛昌原作の漫画『名探偵コナン』シリーズ第6作目の映画。
劇中に登場した仮想体感ゲーム機「コクーン」のゲーム、「オールドタイム・ロンドン」でプレイヤー達が追いかける犯人として切り裂きジャックが設定されていた。
しかし、ただの劇中劇(?)のラスボスというだけではなく、ストーリーの根幹にも関わるキーパーソンの一人であり、終盤でそれが明らかになる。

  • 『パワーストーン』
カプコン製作の3D格ゲーに、包帯グルグル姿で登場。
魔女やら超サイヤ人やらと戦うことに。

第一部『ファントムブラッド』にて、舞台となる国や年代が被るためか登場。
一見するとダンディなおじさまではあるが、自分が誘った(と思しき)女性を惨殺するばかりか、
その際に、そもそも自分が誘ったと思われる上、直前に帰ろうとした犠牲者を「まだいいじゃないか」と引き留めておきながら、
犠牲者が遅くまで出歩いていることを罵りながら首を掻っ切るという、常軌を逸した言動と残虐性を有した殺人鬼。
その『悪』を見込んだディオ・ブランドーにスカウトされてゾンビと化し、主人公ジョナサン・ジョースター一行の前に刺客として現れ、ジョナサンと死闘を繰り広げた。
戦闘では、生前から女性を殺害するために使用していたらしき手術用のメスや、肋骨のような刃物を使う。


襤褸を纏った少女の姿で登場。肉体的にも精神的にもやや幼い少女そのものだが、真名は「ジル・ザ・リッパー」(女性形)ではなく「ジャック・ザ・リッパー」。
一見そこまで危険そうに見えないが、やはり本質は無邪気とはいえ殺人鬼であり、殺すとなると躊躇なくターゲットを殺害する他、
ジャック自身は情報を話せば生かして帰すと宣言したにも関わらず、被害者自身が『情報を話す見返りに殺してくれ』と哀願するほど凄惨な拷問を加えたこともある。
その正体は、堕胎され生まれることすら拒まれた胎児達の怨念が「切り裂きジャック」の伝承に取り込まれ、怨霊の群体として成立した存在。
それ故に、一人称は「わたしたち」。娼婦たちを惨殺したのも母親を求めてのことで、マスターを「おかあさん」と呼ぶ。

なお、Fateシリーズでは『ジャック・ザ・リッパー』はクラス毎に異なる側面──異なる正体の『ジャック』が召喚されるといい、
『Apocrypha』に登場したのは、アサシンクラスで召喚された場合のジャック。
これは、史実でもその正体が分かっていないことや、大衆の間で複数人説や悪魔説など様々な正体が実しやかに囁かれた影響であると思われる。

確たる容姿を持たず、性別すら曖昧な「ジャック・ザ・リッパー」。
“誰でもない”から“誰にでもなれる”という性質を持ち、ジャック・ザ・リッパーの"正体っぽいもの"であれば老紳士から腕時計まで自在に姿を変えられる。

これは、彼?の本質が『正体不明のジャック・ザ・リッパー』という概念を内包する、言うなれば「狂気の切り裂きジャック伝説そのもの」の擬人化に近い存在であるから。
厳密には彼は「どんなジャックにもなれる名前のない誰か」とでも言うべきかもしれない。
聖杯にかける願いは「ジャック・ザ・リッパー」の真の正体を知ること。

前述のFateシリーズの設定に則れば、おそらくバーサーカークラスで召喚された場合のジャックだと思われる。
なお、違うクラスでも同じ「ジャック・ザ・リッパー」の名を持つ英霊に影響されるのか、
幼女に変身しようとすると『Apocrypha』に登場したアサシンクラスのジャックの姿に変身してしまうそうな。

和月伸宏の漫画。最強のフランケンシュタインである「究極の8体」の2番、リッパー=ホッパーとして登場。
肺機能に特化しており、その能力で主人公をバラバラにするまで追い詰めるも覚醒した主人公に敗れた。

  • 『ミキストリ』
巻来功士のオカルトバトル漫画。警察官の父親が躾のつもりで繰り返した自覚無き虐待の犠牲者として登場。
「虐待の結果として邪悪な連続殺人鬼と化した」という設定である。
犯行を知った父親に殺害され、殺人鬼化の原因究明を後世に託した父親の遺言で遺体は親子共々約100年の間冷凍保存されていたが、
ブードゥーの秘術でバラバラの状態で復活し、新たな犯行に及んだ。
復活に伴い、自分の体液が注入された人体パーツを自在に操る能力を得ている。

枢やなの漫画及びアニメ。
架空の英国を舞台に主人公シエルの母の姉である医者マダム・レッドと死神グレル・サトクリフが切り裂きジャックの犯人として登場。
複数犯である上にその内1人が人外の存在であるという設定。
犯人であるマダムは死神に殺害され切り裂きジャック事件は解決するも、
死神のグレルは同僚に仕事道具(デスサイス)無断使用等の件で連行され、結果的に「犯人不明・逃走」オチに…。

野田サトルの漫画。刺青の変態脱獄囚の一人マイケル・オストログが登場。名前の由来は実際に切り裂きジャックと疑われた人物の一人。
街並みがロンドンと似た札幌で切り裂きジャックの事件を再現しようとした。年齢から本人ではないかと推測されている。
その名に劣らぬ危険人物だが、人の皮を剝ぐキャラが多数登場し、主人公からして敵の腸を取り出すこの漫画では、戦闘力・猟奇性よりも逃走の巧みさと変態性が強調され、
処女懐胎を信じており、愛し合って生まれることを誤った行為と認識し、ある娼婦から王族の男と愛し合って生まれた息子だと呼び止められたことが犯行の動機。
宇佐美と繰り広げたガンアクション(比喩)のインパクトに気圧された読者が多数

歴史上の英雄からてっとり早く配下を選ぼうとした黒幕のミスで呂布と一緒に召喚された、という形で登場。ヒーロー(英雄)ならぬヒール(悪役)。
外見はパンクファッションに身を包んだモヒカンで指に鉤爪を装着し、全身にナイフを仕込んでいる。本当に19世紀の英国人なんだろうか
狂気的な性格のサディストで、マゾ疑惑もある変態。知能指数に至っては「うひょひょひょひょ~っ」である(公式)。
一方で「生き血に不自由しなくなった」という理由で自分を召喚した黒幕に大変感謝しており、
軽視されているにも拘らず呂布とは違って「一生ついていく」と明言するほど従順で、時には黒幕への気遣いも見せる。

  • 『探偵コナン・ドイル』
ブラッドリー・ハーパー著、府川由美恵訳の小説。晩年のドイルが当時の日記と回想で書いたものとする体の作品。
切り裂きジャックをホームズとワトソンではなく、コナン・ドイルと実在の人物である仲間たちが追うという一風変わった物語。
当時の世相や娼婦達が生活していた劣悪な環境、ドイルの「自作に対する苦悩」や「終盤ホームズばりに成長する観察眼」が書かれ、
さらになぜドイルが探偵小説を書き続けたかが(もちろんフィクションながら)分かる。

神vs人類の最終闘争(ラグナロク)における人類代表の1人として選出された。
正装をした初老の紳士といった容姿をしており自らを紳士と称するが、その言動の端々には下衆さを匂わせ、ブリュンヒルデからもゲボカス野郎と吐き捨てられている。
4回戦に出場し、ブラフや騙し討ちも厭わないトリッキーな立ち回りでギリシャ神話の英雄ヘラクレスと交戦する。

獣神祭限定排出モンスターとして実装。担当声優は高橋李依
カラフルな服装に身を包み、これまたカラフルな髪型をした笑顔の少女で、両手にはハサミを持つ。
流石に全年齢向けゲームで「連続凶悪殺人鬼」を描くのは難しかったようで、
人を殺すのではなく「人の心の中にある悲しみや怒りのようなネガテイブな感情」を切り取ることで人を笑顔にしようとする人物になっている。
その一方で自分のネガティブな側面も知らず知らずの内に自分で切除していたり、
そのせいでネガティブな感情が無くなってしまい常に笑顔のサイコパスと化しているという、狂気の殺人鬼が元ネタらしい危ない一面もある。
外伝作品「キュービックスターズ」では「私が切り裂き魔って呼ばれてるらしいけどなんでだろう?私は人のネガを取り除いてあげているだけなのに」と口にしている。



追記・修正は、まだまだ続く。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • 犯人
  • 雷電
  • 伝説
  • Fateサーヴァントネタ元項目
  • 切り裂き魔
  • 殺人鬼
  • 猟奇殺人犯
  • 切り裂きジャック
  • 未解決事件
  • 事件
  • イギリス
  • 史実
  • 世界史
  • 正体不明
  • フロム・ヘル
  • バラバラ殺人
  • 解体
  • 医者説
  • 女性説
  • 架空人物説
  • 聖飢魔II
  • StandAloneComplex
  • 名探偵コナン
  • ベイカー街の亡霊
  • シリアルキラー
  • えぐすぎる殺し方
  • 黒執事
  • お肉切りたい君
  • ジョジョ
  • ジャック・ザ・リッパー
  • ワールドヒーローズ
  • グレル・サトクリフ
  • アンジェリーナ・ダレス
  • マダム・レッド
  • 終末のワルキューレ
  • アサシンクリード

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2024年03月31日 20:04

*1 1838年から同じくロンドンで 「ばね踵のジャック(スプリングヒールジャック)」またの名を「バネ足ジャック」と呼ばれる正体不明の変質者が出没しており、切り裂きジャック出現の10年程前には軍が動員される騒ぎとなっていた。挑戦状の「ジャック」の名もこれに倣った悪戯という説もある。ちなみにバネ足ジャック最後の目撃例は1904年で、同一人物がこれほどの長期に渡って運動能力を維持できるとは考えられないので、おそらくその時々の脚力自慢の変質者が模倣犯していたのだろう