乙嫁語り

登録日:2010/06/28(月) 09:31:15
更新日:2023/04/13 Thu 02:50:08
所要時間:約9分で読めます





乙嫁語り(おとよめがたり)』とは森薫のマンガ作品。
ハルタ(旧名fellows!)にて連載していたが、新創刊する青騎士に移籍。
単行本は14巻まで発売中(2022年11月現在)。縦24cm×横17cmのワイド版も刊行予定。


19世紀の中央アジアを舞台に、少年カルルクと嫁のアミルの二人を軸とした、異国情緒あふれまくりの部族的な生活・風習・文化等を描いた作品。
スゴくカンタンに説明すると中央アジアの新婚さんマンガ。

「部族的な生活とかどうでもいいし…」
「メイドさんいないし…」
って人もとりあえずアミルやエキゾチックな娘さん達に萌えるために読んでみるといい。
「ハタチのババァなんかいらねーし…」
「人妻とかキメーよ…」
って人はカルルクに刺されてしまえ。

なおこの時代、結婚適齢期は15・16歳だったとか。
そこで目を輝かせている大きいお兄さん、廊下に出ようか。

…その一方でカルルク達が住む地域周辺では隣接するロシア帝国との抗争が起こっており、徐々に不穏な状況になりつつある。


以下、最新巻までのネタバレ注意。

【登場人物】

◎カルルク・エイホン
本作品の主人公にしてアミルのお婿さん。
12歳で結婚し、まだ13歳の少年だが聡明で落ち着きがありなかなか人間ができている。
アミルとの歳の差婚に多少驚いてはいたものの、彼女のことを大切にしている。
温厚な性格とは裏腹に、嫁のためなら刃物を使うことも辞さない。
アミルの実家・ハルガルがバダンと組んで二度目の襲来時には大人として槍を奮い戦っている。
10巻では年上の妻を守れる強さと男らしさを求め、ハルガル家で弓を習っている。
年齢のためかアミルより頭二つ分ほど小さくパッと見姉弟くらいにしかみえないが、二人仲良く馬を並べて出かける姿はとても微笑ましい。

◎アミル・ハルガル
第1の乙嫁であり、本作のもう一人の主人公。20歳の頃に嫁いできた現在21歳の人妻。
良い香りがしそうなエキゾチックお姉さん。
別の移牧民の一族からカルルクのもとに嫁いできた、家事〜狩りまでなんでもこなすスーパー嫁。
当時としては嫁き遅れながら嫁ぎ先のエイホン家との関係はなかなか良好。夫であるカルルクに対してゾッコンラブ気味で、夫を手にかけようとした相手は例え実父でも容赦しない。
たまにすっとぼけた行動を取ったりパニックに陥ったりもするが、普段とのギャップがまた可愛い。
意外と押しが強く、厳しい一面が描かれることもある。
ちょくちょくほぼ全裸の姿が描かれるが、「エロい」よりも「美しい」が先に出るほどの素晴らしい身体。やはり美乳は良いものだ。
作者曰わく
「中央アジアならではのものにしたいなあ」
と思ってできたキャラクターらしく、思いついた設定を清々しいまでに全部ブチ込んでいるそうです。
キョトンとした顔がかわいい。

◎ヘンリー・スミス
中央アジアの文化を研究しているイギリス人。マイペースで疑問に思ったことをすぐに追求する。手帳とペンは手放せない。
心優しい分頼りない所があり、よく周囲から釘を刺される。
エイホン家に居候していたが2巻の最後でアンカラへと旅立ち、本作の第3の主人公に。
その後の物語はエイホン家の周りとスミスの周りとを行ったり来たりする形で進んでいく。
アンカラでカメラを手に入れた後は記録のためこれまでの旅路を折り返していくが…
+ 顛末
旅を進めるにつれロシア帝国軍の行動の深刻化や治安悪化による野盗の出没等に遭遇していき、
アリの判断によっては帰還もやむなしと判断した少し後ロシア軍と住民の戦闘を間近で見た事で、エイホン家のある街への再訪問を断念
治安が安定すればまだチャンスはあるのか、あるいはその時に元の様子が残っているのかと不安を抱きつつアリ達に別れを告げ、タラスを連れボンベイ経由で帰国の途についた。

◇乙嫁たち
作中に登場する乙嫁(ヒロイン)たち。俺の嫁…と言いたくなる方が多いがタイトルの通り皆既婚か婚約者がいる。ちくしょう!

◎タラス
第2の乙嫁であり、3巻に登場する女性。劇中トップクラスの美人であり薄幸。
過去に5人の旦那さんと死に別れており*1、カラザの町はずれで義理の母と二人で慎ましく暮らしていた若き未亡人。
放牧された羊たちがのんびりと草を食み、地平線まで見える気絶しそうなぐらい広大な草原に風が吹き抜ける中、頭のスカーフをはらりと開けて、美しくそして豊かな髪を靡かせる彼女の姿はまさに「美しい」の一言。
スミスとはいい感じになったものの引き離されてしまう…が、新しい夫(ぐう聖)の協力もありアンカラで再会。再度婚約しスミスに同行することに。
愛しい人が傍にいること、旅先で土地や人との出会いに触れ、薄幸な雰囲気から一転、豊かな表情を見せるようになる。

◎ライラとレイリ
第3の乙嫁であり、4~5巻に登場する、アラル海の畔にあるムナク村の漁師の娘の褐色双子姉妹。とても賑やかでパワフルで素潜り漁が得意な働き者。
性格、容姿がそっくりで常に二人で行動している。そのため何かしら行動をする際には二人で動くことが染みついている。
基本的に性格は素直で良く言えば自由奔放、悪く言えば落ち着きが無い。そしてかわいい。かわいい。大事なこ(ry
4巻では自分たちの理想の旦那さんを探すために魚をぶつけたり、タックルかましたりと様々なトラブルを巻き起こす。
弟が四人ほどいる。
結婚後は互いの夫と4人で暮らしている。

◎アニス
第4の乙嫁であり、7巻に登場する、ペルシアの大富豪の妻。アニス一筋で詩人な夫とまだ赤子のハサンという息子がいる。
何不自由ない生活ではあったが、それ故の孤独感に苛まれていたところに、出向いた風呂屋でシーリーンと出会う。
スレンダーな体型のアニスは、そのふくよかな体型のシーリーンに憧れ、やがて姉妹妻となる。
シーリーンをはじめとして風呂屋で女性たちと交流をするようになったことで笑顔も口数も増えるように。

◎シーリーン
絹のように美しい黒髪と紅玉のような唇を持つ、巨乳で豊満な肢体の美女。マフードという1~2歳の息子がいる。
貧しい染物屋の妻で、時々にしか風呂屋へは出向けないのだが、そこでアニスと出会う。
アニスからの姉妹妻の申し出を受けるが、その儀式の直後に夫を失ってしまい、残された子どもと義父母を抱えて途方に暮れていたところを、
アニスの勧めで、彼女の夫の第二夫人となった。

◎パリヤ
第5の乙嫁。エイホン家の周囲の人々の項で詳述。


◇エイホン家の人々
アミルの嫁ぎ先の家族。ブハラの近くの街に在住。
元々は遊牧民だったが、何代か前に定住化した一族。

◎マハトベク
温厚なおじいちゃん。
カルルクの相談役。地味。

◎バルキルシュ
おばあちゃん。
アミルを諭したり普段は優しい感じだが、キメるときはキメる女傑。
弓を構えたり、山羊にまたがる姿は圧巻。
要所要所で見せ場があり、おじいちゃんより目立つ。『乙嫁』の大先輩なんだからまあ当然かも。

◎アクンベク
パパさん。
ヒゲオヤジ。あんなにかわいいカルルクきゅんもいつかこうなる日が来るのだろうか・・・

◎サニラ
ママさん。
年齢不詳のおっとり美女。夫とは今もラブラブ。
系譜的にも見た目にもババアだが、そこがいい。優しい。そして何より美しい。美しすぎる。
7巻の『熱』は必読。

◎セイレケ
カルルクのお姉ちゃん。
カルルクの兄弟は他にもいるらしいが、今家に居るのは彼女だけ。
厳しくも優しい母親だが、刺繍はあまり得意ではない様子。

◎ユスフ
セイレケのお婿さん。
若いながらもしっかりした父親ぶり。だが夫婦の時間になると妻にデレデレ。
意外と好戦的で実直な言い回しをする。
立場的には婿養子になる。

◎ティレケ
セイレケの娘。
しっかり者のオシャマさんで、無垢なつり目の笑顔がまぶしい。
鷹ラブで彫刻や刺繍は何かと鷹に拘る。

◎トルカン
セイレケの長男。
よくロステムをイジメて泣かせてしまう。
自分の馬を買ってもらい、大人への一歩を歩む。

◎チャルグ
セイレケの次男。
兄のトルカンと一緒になってロステムを泣かせている。
主要な回が無い分、マハトベクより地味。

◎ロステム
セイレケの三男。
お手伝いをサボってよく怒られている。
夜に一人でトイレにいけないお年頃。
ヤギラブで彫刻が大好き。


◇エイホン家の周囲の人々

◎パリヤ
第5の乙嫁であり、嫁いできたアミルの最初のお友達。
陶磁器を取り扱うトノゴシュ家の娘。パンを焼くのが得意で、逆に刺繍が苦手。良くも悪くも嘘をつけない正直な娘さん。
気は強いが思ったことがストレートに口に出てしまうため、よく生意気と言われるらしい。
半面照れ屋さんで、自分に自信がないこともあって己のことはうまく話せず、相手を誤解させてしまう事も。
ハルガル二度目の襲来で家財を失い、家を立て直すまでは、一家でエイホン家に居候する事になった。
嫁入り道具も失ってしまった為、それが揃うまでは結婚も出来ない。だが大人の目を盗んでコッソリと愛は育んでいる。

◎カモーラ
明朗快活、誰にでもやさしく子供の面倒もよく見る。同じ年頃の子たちのなかでも信頼は厚い。
家事裁縫はいうまでもなく、歌や踊りも一級品。もちろん縁談が引きも切らず、父親のところへは毎日のようにお客が訪ねてくる。
…以上、初登場時の原作地の文そのまま。他にも色々長所があり、アミルとは別の意味で完璧人。
パリヤは彼女を手本にしようと観察していたが、カモーラもパリヤの物事をはっきり言う性格を尊敬していた。やがて2人は友達になる。
ちなみにパリヤよりはいくらか年下。そのため結婚を焦ってはいない。


◇ハルガル家の人々
アミルの実家の人たちであり、エイホン家の遠縁に当たる。(バルキルシュの祖母=カルルクの高祖母がハルガル家出身)
諸般の事情からアミルを連れ戻そうとする。

◎アゼル
アミルの兄。次期当主の呼び声高し。
寡黙で生真面目なムッツリイケメン。空気を読めない言動でよく年長者を怒らせている。
初登場時には父親からの命令でアミルを他の家に嫁がせるため連れ戻しにきた。
しかし父や年嵩の命令に忠実に行動しながらも、本心では彼等のやり方に憤りを覚えているなど良識派。
後にベルクワトの死没と本人の実力から家長に選出される。

◎ジョルク
アミルの従兄弟。垂れ目でお喋りで食いしん坊。
アゼル同様に現状への危機感と家長らへの疑念を抱いており、アミル奪還の襲撃前には危険を顧みず情報をエイホン家まで伝えに来た。

◎バイマト
アミルの従兄弟。寡黙で厳つい。
一族きっての穏健派で一族内外で調停・交渉役を任されている。

◎ベルクワト
ハルガル家の家長。アゼルとアミルの父親。
見た目こそそれなりだが、折角の娘を行き遅れにしたり嫁ぎ先を誤ったり跡取り息子の嫁を貰い損ねたりなど判断ミスの連発というダメな当主。
そのうえ他人の意見を聞き入れない器量の小ささを連発し、息子らからも半ば見限られていた。


◇その他登場人物

◎アリ
カルルク達と別れた後、アンカラまでスミスを送り届ける案内人。実家が貧乏なため、結納金を稼ぐためにこの仕事をしている。
サバサバして物怖じしない性格で、思っていることをはっきりと口にするタイプ。でも案内人としては頼もしい。スミスのことを「旦那」と呼ぶ。
単独で案内人を買って出るだけあってか、道中の事情や多数の言語を使い分けられる実力がある。また銃器の扱いにも長けており、盗賊やロシア軍との交戦では負傷一つなく生還している。

◎サマーンとファルサーミ
ライラとレイリと同じ村に住む漁師の兄弟。愛称はサームとサーミ。幼いころから双子のケンカ友達で付き合いも長い。
双子のことも良く知っており、5巻にてサームはライラと、サーミはレイリと結婚することになる。
二人とも若干ドライな性格ではあるが嫁さんを幸せにする気持ちはしっかりと持っており、結婚祝いに新しい船を貰った時は非常に喜んでいた。
ちなみにサーミは昔巨乳好きだったらしい。

◎ウマル
カルルクとアミルに付き添った旅先でパリヤが出会い、後にパリヤの許嫁となった少年。
一目見たときからパリヤを気に入っており、会う回数を重ねる度に正直で元気いっぱいな姿により一層惹かれていった。
ハルガル襲撃からの復興を手伝うため街に入り、読み書きと算盤ができることを活かして街の損害の勘定にあたる。

◎オル・タムス
ハルガルの遠縁バダンの族長。ハルガルが計画した街の襲撃に手を貸す。
実はロシアと手を組んでおり、ハルガルを利用し街の独占を目論んでいた。
実際はロシアからは潰しあい目的で利用されてる側だったのだが最期までそれに気付くことはなかった。

◎ホーキンズ
スミスの友人でパブリック・スクールの先輩。アンカラでスミスと再会した。
イギリスへの帰国を促すが、スミスの研究心に絆され再度送り出す事になった。その際にニコロフスキを同行させるが、ロシアの南進に対してはかなり危惧を抱いている。
スミスの家族との緩衝材としての役割も担っており、しきりに不安がる彼の家族へ手紙を送っていた。

◎ニコロフスキ
ホーキンズへの恩義から無償で手伝いをしている大男。
護衛のためにアンカラを旅立つスミス一行に同行する。スミスを「スメスさん」と呼ぶ。
クリミア戦争での実戦経験もあって相当に腕がたつ。
娘が3人いる。

◎土地の人々
基本的には皆明るくノリがいい。他店で買った肉を焼かせてくれたり、ごく普通の食事のはずがいつの間にか大宴会になったり。
ただしロシアからの襲撃に対して気を張っているため、西欧人のスミスに対しては風当たりが強い者もいる。


◇登場人物(?)

◎日干しレンガ
泥と藁を混ぜて型に入れ乾かして成型したもの。
砂場とかでよくやる原理で作成可能。
割と丈夫らしいので人に投げつけるのはやめましょう。

◎ホルキア
廟に奉られている故人。作中の説明によると、死ぬまでに40人の子供を設けた女性らしい。故に子宝祈願安産祈願の遠方からお参りしに来る女性もいるとか。
(夭逝した子もいるだろうとはいえ)それだけの子をもうけ、養育費と布支度及び結納金を準備した彼女の夫も相当の大人物である。廟があったらお参りしたいものだ。

◎カメラ
アンカラでスミスが手に入れた湿板写真機。持ち歩き用とはいえ毒薬含む複数の薬品と割れやすいガラス板、保護用の板も必要なためそこそこ大荷物。


◇用語

◎布支度
女の子が嫁ぎ先で使う布製の日用品(手ぬぐいのような小物から布団の覆い掛けのような大物まで)の準備。
良質な材料を大量に揃え(父親が大変)、ひとつひとつ製作し全てに刺繍を施す(娘が大変、教える母親も大変)。
これが揃わないとお嫁にいけない。

◎結納金
結婚の際に婿家から嫁家に払われるお金や家畜。事実上お嫁さんの一生の財産。なのでものすごく高い。
これが払えないとお嫁さんを貰えない。それに加えて結婚式の費用も出して当面の生活のための財産も残しておけないといけないから・・・


◇あとがき

◎森先生&マメたん
今回も今までの森漫画と同じく「あとがきちゃんちゃらマンガ」がついており、作品への解説やこだわりが語られている。
なんというか相変わらず濃い。デルタ隊形でさようなら!



作者である森薫先生のこだわりと画力の高さもあいまって、各話の絵の描き込み方が凄まじい。風景をそのまま切り取ったような絵は読む人を夢中にさせ、引きずり込ませる魅力を持っている。
特に刺繍の絵はもはや絵画レベルのクオリティ。これを毎回の如く描いてる森先生は本物の変態(褒め言葉)だと思う。
余談ではあるが、単行本の装丁が少し豪華である。そのため、少々値段が高い。しかし、一読すれば、その価値はあったと思えるほどに丁寧に作りこまれた作品であるので、興味があったら手にとってみてはどうだろうか。
あと、各巻には、オリジナルのアンケートハガキが同封されているが、イラストが可愛すぎて使えない…。大人しく市販のハガキやレターセットを使おう。



追記・修正は飛ぶ鳥を弓で撃ち落としながらお願いします。




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最終更新:2023年04月13日 02:50

*1 5人の夫は兄弟で、夫の死→義弟と結婚を繰り返していた。五男に至っては結婚当時まだ少年であった