そうりゅう型潜水艦

登録日:2012/07/11(水) 09:49:07
更新日:2022/02/12 Sat 14:36:33
所要時間:約 5 分で読めます



そうりゅう型潜水艦とは海上自衛隊が運用及び建造中の潜水艦で、海上自衛隊としては初のAIP(Air Independent Propulsion:非大気依存型推進)潜水艦であり、原子力を主機関としない通常型潜水艦としては世界最大の排水量を誇る潜水艦である。


【諸元】

基準排水量 2950t
水中排水量 4200t
全長 84.0m
全幅 9.1m
深さ 10.3m
吃水 8.4m
水中出力 8000馬力
航続距離 非公開(一説によると6100km)
乗組員 65人
最大速力(水上) 13ノット
最大速力(水中) 20ノット
船体形状 葉巻型 部分単殻式
最大潜行深度 非公開(一説によると300m+とも)
兵装 533mm魚雷発射管 6門
機関 ディーゼルエンジン 2基
スターリングエンジン 4基
推進電動機 1基
レーダー ZPS-6
ソナー ZQQ-7(2番艦以降はZQQ-7Bを搭載)



【概要】

そうりゅう型潜水艦は前級おやしお型潜水艦をベースに改おやしお型として設計された。
しかし後述の様におやしお型に比べ多くの点が変更、改良されたためその性能はおやしお型を遥かに凌駕するものとなった。



【改良点】

おやしお型からの主な改良、変更点は以下のとおり。
①海自初のAIPエンジンの搭載。
詳しくは後述するが、これにより数日が限界だった潜水艦の潜水行動を数週間に伸ばした。
②セイル(艦橋)の前にフィレットを追加。
③おやしおではセイル、船体側面にしか使用されていない吸音タイルを艦全体に張り巡らせる。
④従来の十字舵からX舵へ変更。
⑤より高性能なソナーの搭載。
等々でさらに突っ込むとよりたくさんの改良点があるがここでは割愛する。


【性能】

さてそんなそうりゅう型の性能だが…ぶっちゃけ目茶苦茶高いと言われている。
そもそも前級であるおやしおの性能がアメリカ海軍をして「世界で最も静かな通常型潜水艦はキロ級潜水艦であるが、おやしおはそれを探知できる世界で優れたを持つ潜水艦である。」と評価している。(因みに防衛機密であるため真偽不明だがおやしおの静粛性はキロ級にひけをとらないらしい。)
そんなおやしおをベースとして強化、改良をされているため、そうりゅう型の性能は通常型潜水艦としては世界最高峰の一つとされている。


【AIP潜水艦】

そうりゅう型最大の目玉。AIPは訳すと「非大気依存推進」の意味。
このAIP潜水艦を説明する前に、原子力を主機関としない通常型の潜水艦の機関について説明する必要がある。

通常型潜水艦はディーゼル・エレクトリック艦ともよばれ、主機関はディーゼル機関とエレクトリック、つまりバッテリーによる電動が主流だった。
しかし通常型潜水艦はディーゼル機関を動かすために、大気中から酸素を取り入れる必要があるため、定期的な浮上やシュノーケル航走をする必要がある。

AIPは大気に頼らず推進力を得る方法のことで、酸素の代わりに液体酸素でディーゼル機関を駆動したり、燃料電池で電動モーターを駆動したりといくつかの方法がある。
そうりゅう型の場合はディーゼルエンジンとは別に搭載しているスターリングエンジンを液体酸素で駆動して推進する。
このことにより従来のおやしお型では騙し騙し使って最長で数日、といわれた最大潜航時間を数週間にまで伸ばすことに成功した。
しかしこの方式は液体酸素が搭載されている時しか長時間潜航ができないため、液体酸素を使い切ると液体酸素が補給されない限り二度は使えないという弱点がある。
それとAIP用スターリング機関はごく低出力であり、低速でゆっくり巡航するときしか使わない。
基本は行き帰りに主機関を、作戦海域で潜伏・哨戒するためにAIP、戦闘その他の場合に蓄電池…と各種を使い分けるものなので留意のこと。

なお、そうりゅうはこのAIP機関のためのスペースを確保するために、おやしお型と比べて居住スペースが非常に窮屈になっていて乗組員の評判が悪い。
それもあってか、11番艦の「おうりゅう」からはAIP機関と鉛蓄電池を廃し、リチウムイオン電池搭載型として設計変更された。
本級での運用で得られたデータを参考に、次期潜水艦ではリチウムイオン電池の使用を予定しているとも言われている。


【同型艦】

※2018/10/6現在
艦名 由来 艦番号 状態
そうりゅう 蒼龍 SS-501 引渡済
うんりゅう 雲龍 SS-502 引渡済
はくりゅう 白龍 SS-503 引渡済
けんりゅう 剣龍 SS-504 引渡済
ずいりゅう 瑞龍 SS-505 引渡済
こくりゅう 黒龍 SS-506 引渡済
じんりゅう 仁龍 SS-507 引渡済
せきりゅう 赤龍 SS-508 引渡済
せいりゅう 「清瀧権現」から SS-509 引渡済
しょうりゅう 翔龍 SS-510 引渡済
おうりゅう 凰龍 SS-511 進水済
とうりゅう 「闘竜灘」から SS-512 進水済



【余談】

  • 本型が建造されるまで潜水艦の命名基準は~しおと決められていた。(おやしおとかもちしおとか)
    しかし本型が建造中に命名基準が変更され~しおの他に瑞祥動物(龍とか鳳凰とかおめでたいと言われる動物)を追加するという変更が行われた。
    そのため海上自衛隊では初めて~しおが付かない潜水艦となった。
    そこ、ネタが尽きたとか言わない。

  • 悪名高い武器輸出三原則が見直されたことで、オーストラリア海軍がコリンズ級潜水艦の後継としてそうりゅう型潜水艦に非常に強い関心を示していた。
    船体は日本、戦闘システムはアメリカが担当し、最大12隻(現実的には8~10隻とされる)、総額2兆円という巨大プロジェクトとなると思われた。
    しかし国内建造にこだわるオーストラリア造船業界*1や、輸出潜水艦で高い実績を持つドイツ*2から横槍が入るなどの紆余曲折を経て、
    オーストラリア政府がフランス*3と契約したことを公式に発表したため、この件については流れたようである。
    フランスの支援で建造する新型艦は「アタック級」と名付けられたが、遅延が目立ち「困難に遅れては1番艦が出来るころには陳腐化している」とまで言われるようになってしまった。そして2021年、当局は突如「中国の脅威に対抗するにはアタック級は能力が足りないことから、米英の協力のもと原潜を配備する」と発表した。突然の原潜導入計画にミリオタは驚愕し、梯子を外されたフランス側はブちぎれた。

  • アメリカも関心を示している。太平洋で各国が潜水艦を増強している中、高価な原潜ばかりでは数を揃えられないので、高度な能力を持つそうりゅう型を一定数調達しようという話が持ち上がっている。こちらはまだ商談になるレベルの話ではなく、軍人が勝手に「これ欲しいなー」と言ってるだけの段階だが。

  • さらに、フィリピン軍が2隻程度の潜水艦調達を希望しており、その選択肢に日本製を入れていることが判明。

  • さらにさらに、インド海軍が次期通常潜水艦調達コンペに日本を正式招待したことが発覚。
    日本が応じる可能性は低いが、とにかくわずか1~2年の間に世界各地から引く手あまた状態でオファーが来まくってるのは間違いない事実である。

  • 日本は16隻の潜水艦運用を行っている(現在は22隻体制に移行中)が、建造技術維持のため毎年潜水艦を建造することがきまっている。
    これがつまりどういうことかというと、16年たった潜水艦は自動的に廃艦、税金を使ってスクラップにされるということ。
    さすがにもったいないということで、もう1~2年の余生を訓練艦や試験艦として過ごす運用が近年行われているが、それでも17~18年。

    潜水艦は浮上と潜水を繰り返すため、船体にかかる負荷がとても大きく艦船の中でも寿命が短いのだが、それでも30年は使おうとすることが多い。原潜だと40年くらいはなんとか頑張る。
    さすがにそれ以上は船体が保たないのでせいぜい訓練に回すのが限界だが。
    つまり海外(特に非先進国)では全然現役として使えるのに惜し気もなく税金を使ってスクラップにしているという訳。
    太平洋戦争でのトラウマとかいろいろあるんだろうが、政府の財政赤字、自衛隊の予算不足を考えると何だかとてももったいない。
    ??「税金ウマー」

  • 前述の通り、現在海上自衛隊は潜水艦を22隻体制に増強していく予定だが、予算的に潜水艦乗組員の養成人数は増強されていない。
    つまりより深刻な人手不足が起きるのは火を見るより明らかである。(ただでさえ海上自衛隊では乗組員不足が深刻な問題になっている。)
    ちなみにこの22隻だが、就役からまず10年使い、1年かけて延命工事、さらに1年かけて再訓練で後期10年使ってお役御免、のサイクルが念頭にある。
    つまり現役20隻体制で実質4隻増。加えて今まで通り、現役を退いてから訓練・試験艦任務のため1~2年残すことも考えている。










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最終更新:2022年02月12日 14:36

*1 自国建造はコリンズ級が大失敗作と評価されているため政権側がまたロクでもないもの掴まされちゃたまらんと難色を示した

*2 大型潜水艦の建造経験がないため脱落とのこと

*3 そうりゅうとほぼ同規模の「原子力潜水艦」の建造実績があり、パワープラントを通常型に切り替えたプランを提案していた