京浜急行電鉄

登録日:2009/12/25 Fri 01:20:05
更新日:2024/04/14 Sun 23:05:48
所要時間:約 8 分で読めます




京浜急行電鉄とは、東京都神奈川県を営業範囲とする、総路線距離87kmの大手私鉄。
略称は「京浜急行」「京急電鉄」「京急」。通称は「ハマの赤い稲妻」。

本社は長らく東京都港区に構えていたが、2019年に横浜のみなとみらい地区に移転。本社ビルの一階には京急ミュージアムが併設された。

概要

純粋な電気鉄道として開業した鉄道として日本最古参クラスの会社で、戦時中にはいわゆる大東急に吸収されて「東急湘南線」となったが、戦後に独立して今に至る。

保有路線は
  • 本線   泉岳寺~浦賀間    55.5km
  • 久里浜線 堀ノ内~三崎口間   13.4km
  • 逗子線  金沢八景~逗子・葉山間   5.9km
  • 空港線  京急蒲田~羽田空港間 6.5km
  • 大師線  京急川崎~小島新田間 4.5km
の5つで、大師線以外の全線が本線と直通運転を行っている。

大師線は本線との直通運転もなく、本線で使われることがなくなったボロが回されることから馬鹿にされがちだが、京急の歴史は大師線から始まっている。
詳しい歴史の説明はWikipediaに任せるが、大まかに言うと大師電気軌道と呼ばれる大師線を建設した会社が、合併・吸収を繰り返して出来たのがこの京浜急行電鉄である。なので、真の京急ファンは大師線には敬意を払って接している。

大手私鉄では珍しく駅名の変更が多く行われており、1987年6月1日にはそれまで各線に存在した「京浜○○」の駅名を一斉に「京急○○」に変更している。

東京都に路線を持つ大手私鉄では唯一、東京メトロとの接続駅がない。


列車

  • 普通
  • 急行*1
  • 特急
  • 快特*2
  • エアポート快特
  • イブニング・ウィング号
  • モーニング・ウィング号

の7つ。最も速いのは快特で、泉岳寺~三崎口間の平均所要時間は66分である。昼間はこの快特と特急を中心に、羽田空港行きの急行や普通が運転されるダイヤ。
快特・特急は平日の朝夕ラッシュ(土休日は朝のみ)に一部の列車が品川~金沢文庫間で12両編成となり混雑の緩和を図っている。

ちなみに快特は京急久里浜行きが基本。また朝ラッシュ時には金沢文庫以南特急、金沢文庫以北快特の通称「B特急B快特」も存在する*3
本線のみで運転される快特はこのB快特の一部のみである。どうしてこうなった。

ウィング号は号車指定のライナーで、品川~上大岡間を含む区間を利用する際は着席整理券が必要となる。
ちなみに号車指定と言ってもJRのように細かく決まっている訳ではなく、券売機の位置によって「前4両」「後4両」というように指定されるだけで、指定された号車の間ならどこに座っても構わないと決められている。

そして京急の最大の特徴は「KQクオリティ」と呼ばれる一連の神業である。
<例>
  • 並走するJRの列車を無料列車・有料列車問わずぶち抜く。
  • ダイヤが乱れた際の、逝っとけダイヤと呼ばれる京急にしか出来ないダイヤの実施。
…etc

かつては8両しか入れない駅で12両編成の切り離しをする際、到着と同時に開放。そして前の8両が駅から出て行く途中で後ろの4両が駅に入線し、30秒程で折り返して引き上げる。その引き上げの際もポイントの通過限界速度ギリギリで走行すると言う職人芸も風物詩であった。しかし保安装置の更新によって、こうした神業が出来なくなりつつある。

欠点は他の私鉄と違い、区間によってはJRより料金がかかったり、ルートの関係で時間がかかる箇所もあること。
これはJRが主に横浜~東京間を電車特定区間にして、通常よりも割安な運賃が適用されているのが理由。
特定区間外の逗子・葉山~横浜や、特定区間を貫通する久里浜~品川などは京急の方が安いので、事前に乗り換え案内サイト等でチェックするのが吉。

車両

4両・8両編成は全車両が相互に連結が可能で、朝夕ラッシュ時等には異種混結も見る事ができる。

現役車両

  • 1500形
初代1000形や吊りかけ車置き換えのために1985年に登場し、現在の京急で二番目に数が多い車両。初代1000形同様、地下鉄直通も可能なオールラウンドで使える車両として開発された。
製造が長期に及んだため、途中でアルミ車に変わったり、界磁チョッパからVVVFインバータに変わったりと様々な違いがあったが、更新工事が施工され初期車でVVVFインバータになった車両がある。
従来車と同じく車体窓下に白い帯を引いたデザインだが、本形式での採用が最後となっている。
6両・8両編成が在籍する。かつては4両編成も在籍したが、2023年までに全廃された。

  • 600形(3代目)
1500形に続くオールラウンダーとして開発され、1994年に登場。
従来から設計を一新し、前面形状や塗装面でその後の京急車両のスタンダードを築いた。
登場当初はツイングルシートという革新的なシートが採用されていたが、変形機構が複雑な上座り心地も悪かったことから短命に終わり、通常のクロスシートに変更された。
そのクロスシートも直通先の都営地下鉄線内で評判が悪かったため、現在は車端部のクロスを残しロングシートに変更されている。
登場当初前面窓下はイロンデルグレーに塗装されていたが、視認性の悪さから従来車と同じ白に変更された。
606編成が「KEIKYU BLUE SKY TRAIN」として青く塗装されている。
4両・8両編成が在籍する。

三代目京急線内快特用車両。形式名は「21世紀に向かう京急の新しい車両」として命名された。そして京急初の歌う電車で、内外装機器に外国製品を多数使用しているのが特徴。
2000形に続く2ドアの車両。

車内は全て転換クロスシートだが、客が向きを変えることは出来ない。ところが向きを変えようとした乗客が破損させる事態が相次いだため、枕カバーに「シートの向きは変えられません」と書く羽目になった。
デザインは600形と同じだが、ワイパーカバーの大きさを拡大して「2100」の刻印を抜き文字で入れており、この意匠はのちの他形式にも反映された。
ちなみにこのカバーの抜き文字部分を通して運転席から連結器が見える仕組みになっていて、600形のそれが正面から見て左にズレているのはそのため。右詰めしてしまうと連結器が見えないのである。
2157編成が「KEIKYU BLUE SKY TRAIN」となっていたが、2015年からは2133編成がその任に就いている。
8両編成のみが在籍する。

  • 1000形(2代目)
2002年から製造されている、現在の京急を代表する車両。「新1000形」「N1000形」とも呼ばれる。4両・6両・8両編成が在籍する。
初期編成は2100形と同じく歌っていたが、国産品切替以降は歌わなくなり、従来車も更新で姿を消した。

2006年度までに登場した車両はアルミ製で塗装をしていたが、2007年度以降の車両は車体が一部無塗装のステンレス製に変更。「銀様」「銀1000」「お銀」という愛称が付けられた。
ちなみにステンレス車登場時、「京急にステンレス車が入る訳がない」と楽観していた京急ファンは阿鼻叫喚したとかしなかったとか。
また、これまではクロスシートだった車端部の座席もロングシートになり、これによって着席定員が増えたが、京急らしくないのではないかと賛否が分かれていた。

京急的にも思う事があったのか、2016年3月の16次車以降は、ステンレス地に伝統の赤塗装のカラーフィルムが貼られクロスシートも復活。
前面に通り抜け可能な貫通路を設けた1800番台も登場した。
2017年の17次車からは、京急らしさを取り戻すため全面塗装に戻されている。

2021年に登場した20次車は、1800番台と17次車をベースにした1890番台となり、京急初のトイレ付きデュアルシート車となり、公式にLe Ciel(ルシエル)の愛称も付けられた。
クロス時は朝のウィング号増結や一部特急で、ロング時は急行で運用される。
制御装置も違うからもはや別形式としたほうがよかったんじゃね
こうした新機軸を採用した結果、2022年鉄道友の会ブルーリボン賞を受賞している。

2023年に登場した22次車は久々の川崎製となり、またまたまた設計変更が加えられた。
もはやこれ一冊だけで本が作れるほどのバリエーションとなっている。

2023年時点で足掛け21年、というより2002年以降京急で導入された車両は本形式のみというレベルで長期製造されているため、1500形と車両番号の重複が生じるようになった。
1500形のアルミ車を改番(1600番台→1500番台)したがそれでも番号が足りなくなり、前述の22次車に至っては「1000形500番台」「1000形700番台」を名乗り、複数の形式で車両番号が重複するというねじれた現象も生じている。
そのため、20次車以降については600形(3代目)以来となる車両番号にハイフンが使用されることになった。

過去の車両

  • 800形
高加減速で優等列車の運転を支える普通列車用の4ドア車。愛称は「だるま」。
従来の京急のイメージを変える斬新なデザインとカラーリングが大きな話題を呼んだ。
当初は3両編成で落成したが、後に全編成が6両化された。
元々窓回り白はこの形式で採用されたものだが、2000形登場に合わせて「優等用車両は窓回り白、普通用車両は赤」とされたため通常塗装に変更された。
末期に823編成でこの塗装が復活している。
普通電車用のため高速域の加速性能こそ低いが、低速域の加速性能は非常によく、駅間の短い京急にぴったりの車両である。
普通以外には逗子線直通の急行、ダイヤ乱れ時には特急、快特として使われる事もあった。
ホームドアの設置が前倒しされたため、2019年までに全車廃車となった。
1979年鉄道友の会ローレル賞受賞。

二代目京急線内専用快特用車両。登場当初は2ドア、2100形登場後は3ドアに改造。4両・8両編成が在籍した。
2ドア時代は快特・ウィング号で大活躍だったが、前面に貫通扉がなく都営浅草線に入れないため、8両はラッシュ時に2100形の代理で快特として走った後、早々に車庫に帰るというような運用方法であるため、ファンからも「ニート」などという不名誉な愛称を付けられていたが、逗子線直通のエアポート急行にその活路を見出すことに。
ちなみに一度、泉岳寺行きの快特にこの車両の8両編成を使って、京急は国交省から大目玉を喰らった。
4両の方は主に快特・特急の増結用として用いられ、2編成繋いで8両の快特として使う事もあった。格下げ後は普通列車の仕事が加わった。
4両は2016年10月11日を最後に全廃。残っていた8両も2018年3月28日を最後に全車引退した。
1983年鉄道友の会ブルーリボン賞受賞。

  • 1000形(初代)
1959年に登場した通勤型車両で、通称はミスター京急。
登場当初は旧600形にも似た湘南型だったが、途中から都営浅草線乗り入れ用に貫通扉付きの顔に代わり、初期車ものちに改造された。
20年近くにわたって増備されたため冷房装置や機器類など形態のバリエーションが豊富で、一時期4ドアの700形の中間車を組み込んで運用されたこともある。
京急の新性能車では唯一、2両・4両・6両・8両編成が在籍していた。
1988年から廃車が開始され、2010年までに全車引退。
一部は高松琴平電気鉄道(琴電)に譲渡されたほか、乗り入れ先の京成電鉄にリース形式で譲渡され、そこから更に北総鉄道・千葉急行(現:京成千原線)に譲渡された車両も存在する。

  • 700形(2代目)
1967年に登場した京急線内専用の通勤型車両。
ラッシュ時対策として4ドアにしたことが最大の特徴で、T車を入れることでコストダウンも図った。
通勤快特と大師線と言えばこの車両だった。
2005年に引退。1000形と同じく一部は琴電に譲渡されている。

  • 600形(2代目)
1956年に登場した京急初の高性能車。
当初は700形と名乗っていたが、上述の4ドア車導入に合わせて改番。
京急で初めて車両冷房を搭載した形式でもある。
登場から一貫して快特専用のクロスシート車として運用され、1986年に引退。
一部の編成が琴電に譲渡され現在も使用されているほか、逗子線神武寺駅近くにある逗子池子第一公園にトップナンバーが保存されており、定期的な整備維持活動が実施されている。


その他のエピソード

  • 自社線・乗入先の沿線に国際空港があるにもかかわらず、行先表示へのローマ字表記が開始されたのは2003年の1000形2次車からと非常に遅かった。現在は無線システムの更新から正面はLED・ローマ字表記なしの方向幕で統一されている。
  • 総合車両製作所との関係で、逗子線は上り線が三線軌条となっている。詳しくは当該記事参照。
  • タモリ倶楽部』ではタモリとくるりの岸田繁等タモリ電車倶楽部メンバーで車両工場を見学。さらに工場内の保線工事を行っている。
  • 度々ネタにされがちな、久里浜線に存在する『YRP野比』。諸説あるが正しくは『横須賀リサーチパーク』の略称である。
    開発に京急が関わったのと、YRP行きのバス連絡をしているため改名されたらしい。JR西日本以外では初の英文字入り駅名だが……。それと“野比(アクセントは\)”は、駅名としても40年以上前の開業時から存在している。
  • 戦前には東京地下鉄道(現在の東京メトロ銀座線の新橋~浅草間を建設・運営)の品川延伸、及び現在の京急本線との直通計画があり、京急側でも銀座線規格の電車を用意したりと乗り気だった。
    だが東京高速鉄道(現在の銀座線の新橋~渋谷間を建設・運営)幹部で後の東急グループ総帥の五島慶太のTOBにより両社は彼の支配下に入り、五島の打ち出す新宿方面線延伸案が優先されたため乗り入れ計画は頓挫。京急の地下鉄乗り入れは戦後の都営浅草線開通までお預けとなった。



追記・修正はみなとみらいの京急ミュージアムを訪問してからお願いします。

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最終更新:2024年04月14日 23:05

*1 1998年の改正で一旦消滅し、2010年に復活。復活後2023年まではエアポート急行を名乗っていた。

*2 1999年のダイヤ改正と同時に正式種別名を快速特急から変更した。

*3 昔は「通勤快特」と呼ばれる別種別だった。