B-2スピリット

登録日:2012/05/24(木) 04:45:28
更新日:2023/04/11 Tue 00:09:35
所要時間:約 3 分で読めます




初飛行・1989年7月17日
生産数・21機
運用開始・1997年4月運用状況・現役
ユニットコスト
7億2700万USドル

B-2は、米軍のステルス戦略爆撃機である。
B-52、B-1に次ぐ爆撃機として開発された。
開発はコックピットと機体中央部はボーイング、他の部分は全てノースロップ・グラマン社が担当した。

水平尾翼および垂直尾翼がない全翼機と言う特徴的な形をしている。
愛称はスピリットで、さらに機体ごとに「スピリット+~(アメリカの州名)」と機体毎の愛称が付けられている。

アメリカには50の州があるが全部揃えるとアメリカの財政が破綻する。
なぜならこの爆撃機、同質量のと同じ位の値段と言う、お高い機体なのである。

高い高いと言われたF-15イーグルがせいぜい1機100億円、F-22ラプターが200億であるのに対し、
そのお値段、なんと2000億円。ラプターの10倍、いや、ある意味10倍界王拳である。
あまりにも一機あたりの値段が高すぎるが故に、あのギネスブックにも「世界一高価な航空機」として掲載されているほど。
Googleで「空飛ぶ国家予算」と検索すると何故か上位にB2が出てくるのもこれが原因なのかもしれない。


◆開発

開発が始まったのは意外に古く冷戦期から。徹底した極秘開発だったため当時は知られてなかっただけ。
本来はソ連のICBM発射基地に見つからないように近づき、破壊するのが任務だった。

使われた細かい技術等は本家に譲る。膨大な量になるから。
簡単に言えば敵のレーダー波を吸収・妨害し、自分が出すレーダー波を探知されにくくするのがB2のステルス技術。

さて、冷戦が終結すると当面戦略爆撃の必要性もなくなり、B2も必要なくなったと思われた。しかし時代は変わり、世論も変わる。アメリカ国民は自国の死傷者が出ることに非常に敏感になり、敵国であっても必要以上の死傷者が出ることに神経質になった。それはベトナム戦争の頃とは比較にならないくらい。アメリカという国もようやく人殺しに飽きたといったところか。

アメリカ軍の最大の敵はアメリカ議会になった。敵に民間人の死傷者を出さず、自軍の兵士に死傷者を出さない。よって、敵に気づかれずに正確に爆撃できる航空機が必要になった。
ステルス機の先駆、F117は確かに見つかりにくかったが、爆弾積載量が非常に少なかった。少ないということは機数がいる。機数が多いと見つかるリスクも高くなる。ステルス技術だって完全じゃないのだ。
それでより積載量の多いB2爆弾機が誕生した。

しかし、平和な時代の議会は軍に予算を出したがらない。結果完成したのは計画の1/6の21機だった。


◆実戦

初の実戦はコソボ紛争。初飛行からなんと10年もたっている。ガンダム世界のガルダ級並みに貴重なこの機を簡単に出撃させるわけにはいかないし。何しろデリケート。
湿度・温度は徹底的に管理しないとステルス塗料がだめになる。女性のお肌とかわらない。
だからアメリカから空中給油を繰り返して戦場に赴く。なにこの金食い虫。
というか、当初は湿度の管理を徹底しないとセンサーがバグって最悪墜落するという欠陥もあった。
まあ、今は簡易基地が作れるようになってそこから出撃出来るようになったが、運用に制限があることには変わりない。予定の基地に降りられなくなって、別の基地に路駐する羽目になった…なんて事も。

現在までに被撃墜は無し。ただし、上記のセンサーの欠陥が発端となり、2008年に離陸したスピリット・オブ・カンザスが失われる事故が発生している
推定損失14億米ドルという史上最も損失の大きい墜落事故となった。
ちなみに上記した別の基地に路駐したB-2はコイツでそれもセンサーの欠陥が起きた原因の一つ。
これにより、一時は全てのB-2の運用が中止される事態にまでなったが、センサーの欠陥の存在とその対策が進められた事で無事運用が再開された。
なお、パイロットはギリギリまで機体を立て直そうと粘った上で後コンマ1秒遅かったら間に合わなかったというタイミングで脱出に成功したため、その行動を逆に称賛されたとか。
補充? 誰が議会に説明するんだ? よって現在は20機しか存在してない。
現在はアメリカしか保有していない。機体自体が超軍事機密で他国に渡せないってこともあるが


そもそもこんな金食い虫を維持管理できる国が他にあるか

飛ばせなくたって存在しているだけでステルス塗装を維持管理する金がかかるのだ。
当のアメリカ空軍でさえコストパフォーマンスに合わないことを認めてしまってる。

しかし、今後ステルス技術は必要不可欠になるし、この機体を開発・運用できたことは間違いなく財産になった。



新技術というものは金がかかるんだぜ。

最高に快適な格納庫の中でB2はもう路駐だけは絶対に嫌だと思いながらそう呟いている。

◆今後

2021年現在、アメリカ空軍はB-21なる新型爆撃機の開発を進めている。
同機のコンセプトイラストはB-2と類似した外見を持つステルス爆撃機となっており、少数生産におわったB-2の無念を果たしてくれることを期待したい。


なおB-21による置き換えはB-1とB-2から優先的に行われ、最古参であるB-52の置き換えは後回しになる模様。やっぱり運用費が高すぎたんだ…

◆余談

B-2を設計したノースロップ・グラマン社は元を辿ればジャック・ノースロップが全翼機を生み出すために作った会社である。
彼は全翼機のために3度ノースロップ社を立ち上げようやくYB-35、それをジェット化したYB-49まで漕ぎつけるが技術的な問題もあり不採用となってしまった。
彼はこれ以降開発の一線から退き、その後投資の失敗やパーキンソン病を患ったことで車いす生活を余儀なくされる。
1980年余命いくばくもなかった彼にノースロップ社は軍の承諾を得て、極秘機密であったB-2の模型をプレゼントし実用化に漕ぎつけたことを明かした。
夢破れ、投資の失敗や病によって失意の中没するはずであった彼にとってこれ以上ない吉報に、会話すらままならなかった彼は

「Now I know why God has kept me alive for 25 years」
(今こそ、神が私に25年の余生を与えたもうた理由が分かった)

と涙を流しながら書き残した、翌年全翼機に人生をかけた男は85年の生涯に幕を閉じた。



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最終更新:2023年04月11日 00:09