F-15

登録日:2011/05/31(火) 15:07:05
更新日:2024/01/15 Mon 17:48:26
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大空を守る鋼鉄の鷲


F-15J(第305飛行隊所属機)*1

F-15とはマクダネル・ダグラス社(現ボーイング)が開発した制空戦闘機である。愛称はイーグル。



乗員 1名(B/D/DJ型は2名)
全長-19.43 m
全幅-13.05 m
全高-5.63 m
翼面積-56.5 m2(C)
空虚重量-12,973 kg
最大離陸重量-30,845 kg
発動機:P&W製F100-PW-220ターボファン・エンジン2基(A/B/C/D型)
推力 :64.9kN/105.7kN(A/B)
   :P&W製F100-PW-229ターボファン・エンジン2基(E型)
推力 :79.2kN/129.5kN(A/B)
最大速度 M2.5

アメリカ空軍などで運用されたF-4ファントムの後続機としてで開発された。優れた格闘性能や長射程の空対空ミサイルを運用能力を持つ第4世代戦闘機である。


■特徴

本機の特徴はF-16やF-111のように新技術を採用することなく、A-5などで前例があるクリップトデルタ翼を採用。コックピットのキャノピーには涙滴型を採用し、360度の視界を確保している。
簡単に言うとすごいパワーのエンジンに大きな機体、大きな翼という 奇をてらわずシンプルに航空機としての性能を追求した ということ。
この すごいエンジン+でかい機体と翼 という性質のために日進月歩の戦闘機の中でも後から近代化改修で向上する余地が多かったということでもある。

■開発まで

F-15以前の米空軍は、いわば「戦略核爆撃万能論」とでも言うべき思想に固執していた。
つまるところ、「敵の重要拠点に核爆弾を放り込むだけで戦闘は終わるし、自分たちは敵の各爆撃機を撃ち落すことだけを考えればいい」という危ない思想である。
核のように大ざっぱな兵装の使用を前提にしているのだから、爆撃機は超高速で突っ込んで大体の位置に爆弾を落として来ればオッケー。
そして敵も同じような爆撃機を使ってくるのだから、迎撃機は旋回性能よりも迎撃に間に合うだけの速力と爆撃機を確実に叩き落すだけの攻撃力を重視すべし。
このような思想の下に戦略を考えると、「制空戦闘機」という代物が全く必要なくなってしまう。

ところがベトナム戦争では核爆撃をする機会なんて訪れず、空軍の仕事は地道で根気のいる近接航空支援、戦術爆撃と、そのための制空戦闘であった。
当然、主戦場は低空、低速域。ドッグファイトも発生する。
先述した思想に基づき開発された空軍のセンチュリーシリーズはまるで役に立たず、元々空母艦載機であるがゆえになんとか低空低速でも動くことができたF-4で凌ぐこととなる。
それでも純然たる制空戦闘機には及ぶべくもなく、本来格下のはずのソ連製のMiG-21、旧式だが運動性の良いMiG-17などに苦戦を強いられた。

この問題を指摘したのがジョン・ボイド。彼はコンピュータでの精密な計算によってF-4がミグに空中戦で明らかに劣っていることを証明し、より制空戦闘に専門化された戦闘機の必要性を訴える。
この結果や、今後戦うだろう(この時は高性能だと思われていた)MiG-25やMiG-23、台頭してきたスホーイシリーズに対抗する為、軍は制空戦闘に優れた戦闘機の開発を決定。研究契約を結んだ8社に以下のRFP (Request For Proposal・提案依頼書) を出した。

  • マッハ0.9、高度30,000フィートにおける高G機動で異常振動を生じない。
  • 上記空力特性を持つ翼を使い、広い飛行速度高度域で充分なエネルギー/運動能力を持つ。
  • 空中給油、または増槽のみで大陸間の長距離回送飛行が可能。
  • 搭載兵器は全任務に対して一人で操作可能。
  • 現実的な空対空戦闘を想定して4,000飛行時間の疲労寿命の安全係数を4として試験で証明する。
  • 最新の技術を利用した操縦席艤装を行い、特に近接格闘戦ではヘッドアップディスプレイを利用する。
  • 理論整備工数は1飛行時間あたり11.3人/時。
  • 構成機器の平均故障時間は上記整備工数内で対応。
  • 操縦席の視界は360°確保すること。
  • 主エンジンは機内設備のみで起動できること。
  • 機体構造、電気、油圧、操縦装置は戦闘状況下で無事に基地に帰投できる高度の生存性を持つ。
  • 対戦闘機戦闘装備状態の総重量40,000ポンド(約18.1トン)級。
  • サブシステム、構成部品、装備品は少なくとも試作品による実証済みのものに限る。
  • 最大速度は高空においてマッハ2.5の速度を達成する。

提出された案を元にフェアチャイルド・ノースアメリカン・マクダネルの三社に選出。6ヶ月の研究契約を結び。各社期日通りに設計案を提出。
フェアチャイルドは変形デルタ翼の機体、ノースアメリカンはオージー翼の機体、マクダネルはデルタ翼の機体である。
そしてついにマクダネルと契約を結びF-15は誕生したのである。

しかしながら、あれもこれもと詰め込んだ結果機体は大型化し、値段も高騰。
これに不満を持ったボイドが「安価な機体を生産することで高価な機体の数を補う」などと空軍と議会をだまくらかして完成させたのがF-16
この考えはハイアンドロー戦略などともっともらしく呼ばれており、ソ連・ロシアもこれに倣った。

いくつかの国に売り込みを行ったが、価格から採用を見送った国も多く、C/Dまでは日本以外にはイスラエル・サウジアラビアの3か国に留まった。
E型を導入したのは、日本以外のC型を採用した3か国に加えて韓国・シンガポール・カタールの3か国。
全タイプ通算だと米国を含めて7か国で採用されたが、現代の戦闘機としては少ないほうである。F-16やF/A-18、さらにはSu-27にも採用国数では負けているのが現状である。


■バリエーション


・YF-15

原型機
おおよその形状は量産型と似ているがいくつか異なる点が見られる。
  • 水平尾翼にドッグツースがない。
  • 主翼端の形状が異なる。
  • エアブレーキの大きさが半分程度。
などの違いがあるがこれらは試験で異常振動などの問題対策として各所追加や変更が行われている。

・F-15A/B

初期生産型
Aは単座、Bは訓練用複座機。
輸出型にはF-15バズ(イスラエル空軍でのF-15A/B呼称)が存在する。
この頃もいくつか異なる点があり、エンジンの可変ノズル部分保護にアイリス板が取り付けられていたが脱落事故が頻発し以後は排除された他
エアブレーキも試作機よりも大型化したが上面にフィンがついたものになっていた。

・F-15N(シーイーグル。あるいはシーグルとも)

海軍向けの艦上戦闘機版。
マイナーコードのNはNAVY(海軍)のことを指す。
艦上機用の装備と機能を追加しただけのお手軽仕様だが、当時F-14の飛行試験が始まった頃であったため構想のみに終わっている。
パラサイト・イヴではこの艦載機仕様のF-15が登場している。まあ単に軍事関係に詳しくなかっただけと思うが
ガメラでは『空母から発進したF-15がギャオスを迎撃した』旨の新聞記事が確認できるので、こちらが採用された世界線なのかもしれない

・F-15C/D

レーダー等を改装
CとDの違いはA/Bと同じ
他にはE型では標準装備となった胴体密着型増槽(コンフォーマルタンク)が装備できるようになった。
J/DJはC/Dに若干手を加えた日本仕様機。
また他の輸出型には、F-15アケフ(イスラエル空軍でのF-15C/D呼称)が存在する。
なおアメリカ本土の空軍機は2010年代にF-22やF-35などに転換・退役しており本土では空軍州兵、海外では在日米軍や在欧米軍の部隊にしか残っていない。

・F-15E(ストライクイーグル)

複座型をベースとした戦闘爆撃機。複座型原型2号機の機体を改修しデモンストレーターとし、制式採用にあたり軽量化と構造強化のためにチタニウムを多用し機体の約60%を再設計。
またコクピットも一新、後席は各種火器管制を担当するようになった。
前述したコンフォーマルタンクは標準装備されパイロンを多数装備できるようになったが、主翼内側のパイロンと近すぎるため同時使用ができない欠点もある。
HUDを視野角の広いものに変え、多機能表示装置(うち一つはフルカラー)をつけた。
韓国ではF-15K「スラムイーグル」として採用されている他、イスラエルのF-15I「ラーム」、サウジアラビアのF-15S・F-15SA、シンガポールのF-15SG、カタールのF-15QAが存在する。
後述のF-15EXはF-15QAがベースになっている。
なお試作機はベースが最初期の複座型だったため機銃穴がない、エアブレーキがYF-15と同じ小さい物になっていると量産型とは違う点も多い。
F-15SAからデジタル・フライ・バイ・ワイヤが導入されており型式にAが付くものがこれに該当する。

・F-15(実証機)

F-15S/MTD(STOL実験機), F-15ACTIVE(先進制御テクノロジー研究機),F-15IFCS(知的制御飛行システム研究機),
複座型原型1号機をベースとした実験機、S/MTDは空軍で開発・試験運用されNASAに移管された。
F/A-18の水平尾翼を流用したカナードが特徴。
全て同一機体でありマイナーコード変更に合わせて、機体内外の仕様も変更している。
ちなみにS/MTDだった頃は全派生機中唯一排気ノズルが二次元式、ACTIVEでは三次元式で運用された。
計画名から一部では「アジャイル・イーグル」とも呼ばれていた。
用途上武装を積んでいないので通常仕様機よりもわずかに軽量なのだが、原型機をベースにした影響なのか実は実用上昇限度と最高速度が通常仕様機より劣っている。

・F-15A STREAK EAGLE(記録挑戦機)

上昇力の記録(特定の高度まで何秒で上がれるか)に挑戦するために改造された機体。
この機体は、飛行に悪影響を及ぼす機器類が徹底的に排除されている。
レーダーやFCS類、アレスティングフック、M61A1バルカン砲、一部の汎用油圧システム、ジェネレーター1基、必用限度以外のアクチュエーター迄である。
これらを撤去した記録挑戦機は実に1,270kgもの軽減化を達成した。
果ては塗装まで引っぺがされて素地が露出したため、全裸で街や店内など衆人監視の中を走り回るストリーキングにちなみ STREAK EAGLE(ストリークイーグル)と呼ばれた。
すなわち「全裸のイーグル」である。
挑戦の結果、高度3000m~30000mまでの8つの世界記録を更新し、現在でも高度20000mの記録を保持している。

・F-15FX(F-15E発展型)

F-15FXはAN/APG-63(V)3 AESAレーダーを搭載し、戦闘機間データリンク(IFDL)の装備、デジタル地図装置、暗視ゴーグル対応型コックピット、JHMCSの運用能力付与、
12000時間の飛行可能な9G対応の機体構造、19箇所のハードポイント、第3世代可視光/赤外線目標表示システム、先進電子戦システムの装備、AIM-9XサイドワインダーやAGM-84ハープーンなどの新世代兵装の装備などが盛り込まれる。
また、SE型と同様に空自のF-4EJ改の後継機となるFX候補にもあったが共に落選した。

・F-15SE(ステルス性向上型)

F-15の海外カスタマー向けの将来需要を見込んで開発された機体であり、ステルス性を高めるためにCFTを改造してコンフォーマル・ウェポンベイを側面と下面に1箇所ずつ、左右合わせて4箇所設置し、AIM-9、AIM-120AMRAAM、JDAMやGBU-39SDBなどが搭載可能であり、従来型のダッシュ4CFT付け替える事で現行のF-15Eに搭載可能な兵装はすべて搭載可能だという。
このほか、垂直尾翼を改設計して外側に15度傾斜させるとともに軽量化と空力改善を図り、信頼性改善のためにデジタル飛行制御システムを導入。
自己防御用器材としてイギリスの名門、BAEシステムズ製DEWSを装備、レーダーはAN/APG-63(V)3 AESAレーダーを搭載する。
いくつかの国で導入を打診したものの採用されず、韓国では一度内定しかけたが計画が白紙に戻り最終的に35を採用している。
2023年時点で採用国はアメリカ含めても皆無、またステルス機はF-35が採用国が増え単価が下落、別にF-15の後述の新プランも立ち上がったことでほぼ計画中止状態。
原型機は既存機を改修して開発されたが採用されていた場合新造機が納入されるはずだった。

・F-15 2040C

上記のSEとは真逆に、既存機を改造しステルス性を捨てミサイルキャリアー化と機体寿命を大幅に伸ばしたタイプ。
安全確認がされたF-15は機体寿命が10,000時間に延長されたが、それをさらに18,000時間に延ばすことを目的としていた。
空軍州兵で多く抱えるF-15を全てF-35に置き換えず要撃任務などを引き続きF-15で行うなど補完しあうことを目的としている。
当初は導入機数は72機としていたが144機にまで拡大し、2024年までに80機の導入を目指していた。
その後機体寿命的にあまり長持ちしないことや、そもそも既存機を改修するより新造した方が安いということから新たにF-15EX計画が立案され2040Cは計画中止。
そのF-15EXもF-35よりもコストが安いことを売り文句にしていたが、F-35のコストが採用国増加によって単価が下落傾向であり議会からも疑問視されている。*2

・F-15EX(イーグルⅡ)

上記のように既存機の改修計画から新規生産として新たに立案されたタイプ。
DまでとEのような機体構造の改良はされていない、だが最新のフライ・バイ・ワイヤ(FBW)の採用とコクピット回りなどソフトウェア、F-15QAから尾翼や機体後方に警戒装置などを増設。
更に最初期に検討されるも安定性の関係から長らく封印されていた、主翼外側のハードポイントが最新のFBW導入によって復活している。
これにより搭乗員の育成はごく短期間で済むこと、スペアパーツで8割・整備面では9割の共通化によってコスト削減が見込めるとされている。
仕様はE譲りの兵装搭載量を予定しており、実質的にはEの対空特化仕様機となる見込みである。
兵装搭載量で配備の進むF-35とは差別化を図っており、現状米軍だけの採用を予定しているため殆ど価格差は出ないとしており
F-15・F-16のようなハイ・ローミックスにはならないだろうとされている。*3
上記のように疑問視されたものの2020年に8機の導入が確定、2021年に納入されその後の試験運用によって以降の配備の是非が決まることとなる。
なお本機は複座であるが単座タイプのF-15CXも計画されていたが、予算が降りたのはEXだけなためこちらは廃案になったと推測される。


■兵装


・F-15A~D

AIM-7F スパロー(中射程/4発)
AIM-120 AMRAAM(中射程・打ちっぱなし・スパローの後継/4発)
AIM-9L Mサイドワインダー(短射程/4発)
M61A1バルカン砲(口径20mm/940発)
ASM-135 ASAT(対衛星ミサイル・試験運用のみ)

・F-15E

対空兵装はF-15A~Dと同じだが、対地兵装が追加された
ペイヴウェイ(レーザー誘導爆弾)
┣GBU-28/Bバンカー・バスター(遅延式信管で地下ターゲットを破壊できる大型爆弾・2130kg・F-15E特製)
┣GBU-15(遠距離滑空赤外線誘導爆弾・907kg・射程28km)
┣AGM-130対地ミサイル(GBU-15にロケットモーター・慣性航法装置・GPSを追加射程45km)
┣GBU-39(小型爆弾・射程110km)
┗GBU-53/B(GBU-39の精密誘導版)
JDAM(GPS誘導爆弾)
核爆弾


■自衛隊

自衛隊ではF-104J/DJの後継機として選定され単座・複座合わせて213機のF-15J/DJが導入された。
長らくアメリカ空軍に次ぐF-15シリーズ導入数第2位であったが、サウジアラビアがF-15C/Dを98機・F-15Sを72機・F-15SAを84機
導入したことでシリーズ総数254機となったため導入数で現在は世界第3位になっている。*4
配備は1981年から始まり当初は完成機を輸入、ノックダウン、最終的にはライセンス生産の順番で導入された。
最初に新田原基地の第202飛行隊に臨時飛行隊が創設され、その後正式にF-15の飛行隊となり2000年に閉隊されるまで要撃任務と機種転換・教育任務を兼ねていた。
教育任務は練習機のT-33T-2の退役などで教育体制の見直され組織された第23飛行隊が担当し主にDJ型を使用している。

なお実際にF-104から機種転換したのは202・203・204飛行隊の3部隊だけであり、201飛行隊はF-104配備完了で一度閉隊したがF-15配備開始に伴い復活。
205飛行隊は306飛行隊・206飛行隊は305飛行隊が入れ替えで新設されたため閉隊、207飛行隊は機種転換することなく最後のF-104部隊として1986年に閉隊している。
むしろF-4部隊のうちF-4EJ改に機種転換しなかった303・304・305飛行隊、EJ改に機種転換するもF-2の配備遅延に伴い限界を迎えたF-1の穴埋めのために第8飛行隊に
EJ改を回してF-15が配備された306飛行隊の4部隊にもおよび実質F-4の後継機にもなっていた。
またアグレッサー部隊として新設され当初T-2が配備されていた飛行教導隊*5では早い段階から機種転換が計画されていたが空中分解など事故が頻発。
機種転換を教導隊用のF-15生産を待たず他の部隊から移籍という形で転換された。
この教導隊仕様のF-15は他の自衛隊機とは異なり、試験導入したAIM-120を運用できる改造が施されていた。

Pre-MSIP・J-MSIP

自衛隊のF-15は大きく分けて2つのタイプが存在しそれぞれPre-MSIP・J-MSIPと呼ばれている。
Pre-MSIPはJ型は801~898号機・DJ型は051~062号機までがこれに該当するが、事故で破損した832号機だけは修復・改造されておりJ-MSIPと同じ扱いとなっている。
これらの機体は自衛隊の近代化改修に対応しておらず、また機齢が古いもので40年近く機体寿命から考えて長持ちしないため改修されずF-35に置き換わる。
かつては特に差を考えずに配備されていたが近代化改修や後継機問題が出始めた頃から、Pre-MSIPは新田原基地やF-15部隊が2個ある基地で一方の部隊に集中配備する多い。
なお置き換わった後の機体をどう処分するかで意見が分かれており、アメリカが買い取るなど話もあるが不透明の状況。*6

J-MSIPはこれ以降に導入された機材すべての総称でJ型は899~965号機・DJ型では063~098号機が該当する。
これらは生産中から日本独自の改造が加えられまた機体自体も比較的新しいことからJ-MSIPで近代化改修が行われ、日本独自開発の
99式空対空誘導弾(AAM-4)や04式空対空誘導弾(AAM-5)はこの機材でしか万全な運用はできない。
逆に言えば搭載するだけならばPre-MSIPでも模擬弾などなら問題ないため訓練で搭載していることもある。
Pre-MSIPとは逆に緊迫の続く那覇基地所属部隊・飛行教導群・202飛行隊に代わってマザースコードロンになった306飛行隊などに集中的に配備されている。

アグレッサーのF-15

自衛隊のF-15は冒頭の写真のように基本グレー基調の塗装が施されており、特殊な塗装は何かしらの記念行事が行われる時にのみ限定されている。
しかし飛行教導群のF-15は仮想敵機として上空でも判別しやすいよう意図的に派手な塗装を1機ずつ違ったものが施されている。
その塗装も様々で部隊にF-15は配備されて以降暫定塗装も含めると膨大な数が存在し、専用の画集が発売されるほどである。

彼らは実戦部隊に代わって様々なケースを想定し訓練を実施、それを実戦部隊に伝授する任務を帯びているためスクランブル対応などの任務は除外されいる。
元々エリートばかりの戦闘機パイロットでも選りすぐりの精鋭集団であり、教練を受ける・部隊でも新入りのパイロットたちは
ベテランとの練度の違いと的確な指導力に舌を巻くことも多いという。
なおベテランたちも圧勝しては訓練にならないから意図的に相手よりもちょっと上程度に抑えていることもあり文字通りレベルが違う。
式典などで展示飛行を実施しその腕前を披露し、一般世間への露出も多いブルーインパルスとは別のベクトルでエリート集団である。

現在部隊は石川県小松基地を拠点にしているが精鋭部隊のF-15見たさに多くのファンが詰めかける。
また部隊は年に1度カテゴリーⅢ*7と呼ばれる全国各地の戦闘機部隊が駐留する基地に4機以上で遠征し現地の部隊に教練を行うことがあり
この時教導群が飛来した基地では多くのファンが詰めかけるのが恒例となっている。
また、2023年一月には共同訓練のため来日したインド空軍のSu-30MKIを”歓迎”するために百里基地に展開し、ロシア製の新鋭戦闘機相手に実力を試している。*8

失われた鷲

導入から今日まで40年以上に渡り現役のF-15であるが当然ながら事故によって失われた機体もある。
2021年までに失われたF-15は以下のとおりである。
●1983年 F-15DJ(12-8053) 夜間訓練中に墜落、2名殉職。
●1987年 F-15J (42-8840) 要撃訓練中にバーティゴに陥り墜落、1名殉職。
●1988年 F-15J (22-8804・22-8808) 要撃訓練中に敵方と要撃方それぞれ1機ずつが空中衝突し墜落、2名殉職。*9
●1990年 F-15J (52-8857) 要撃訓練中の急降下でそのまま墜落、1名殉職。
●1991年 F-15DJ(12-8079) 基地へ着陸進入中にエンジンが爆発し墜落、1名負傷。
●1992年 F-15J (72-8884) 訓練から帰投中に墜落、搭乗員は脱出し救助されるも殉職。*10
●1993年 F-15DJ(82-8064) 燃料系統の不具合により墜落、2名救助、詳細は後述。
●1995年 F-15J (72-8891) 夜間訓練の離陸中にトラブル発生で離陸中止、オーバーランし火災も発生するが搭乗員は自力で脱出した。
●1995年 F-15J (52-8846) 要撃訓練中味方機の誤射により墜落、1名救助。
●2008年 F-15J (72-8883) 訓練中エンジントラブル発生、再始動するも必要な推力を得られず墜落、1名救助*11
●2011年 F-15J (72-8879) 訓練中に消息不明、尾翼が回収されるも搭乗員は未だ行方不明のまま。
●2022年 F-15DJ(32-8083) 離陸直後バーティゴに陥り基地から5kmの至近距離で墜落、2名殉職。

なおこれ以外にも全損こそしなかったが1990年エンジン暴走により破損したF-15J(42-8832)、2011年燃料タンクと模擬ミサイルの一部が落下したF-15J(82-8964)
2023年緊急発進するもトラブルで離陸中止・オーバーランしたF-15J(22-8812)など墜落こそしていないが事故を起こした機体・事例はいくつか存在する。

今後の自衛隊F-15

2023年現在は事故などによって200機にまで機数を減らしているが稼働率は高い水準を維持している。*12
上記のように近代化改修も次々に行われたがその後F-35の導入とA型のみならずいずも型でも運用可能にB型の導入も決まった。
改修されないF-15はF-35に機種転換され2020年度で退役したF-4EJ改同様機種転換され退役が確定。
現在Pre-MSIPが多く配備されている部隊は教育部隊の23飛行隊を除けば、元F-4部隊への配備完了後はF-35へ機種転換される可能性が高くなったともいえる。
これはアグレッサー部隊も同様で2023年にはアメリカ空軍のF-35アグレッサー部隊で研修を受けている。

また近代化改修機も将来的にはF-15EXのように主翼パイロンの対空兵装搭載量を増やす…と思われていたがあくまでハードウェアや警戒装置増設などに留まるようである。
しかし上記のように米軍では既存機改修計画を断念、新造機生産に計画を変更したため自衛隊のF-15もPre-MSIPはF-35へと機種転換されることが決まったが
J-MSIPの中にはPre-MSIPと大差ない機齢の機体も多いのでJ-MSIP全機で施されるかは不透明であった。
事実予定していた改修計画は予算の大幅超過によって見送られてしまい改修は遅れる見通しである、一方以前から日本独自で進めていた改修に関しては引き続き行われる予定。
その後防衛装備庁から能力向上改修はJ-MSIPの単座機全てに実施されることが決定、一方複座のJ-MSIPは対象外になったことでこれらの機体もどうなるかが注目される。

エアインテーク横にIEWS*13用のアンテナフェアリング・水平尾翼付近に後方警戒装置の増設改修を岐阜基地所属の32-8942が試験を行った。
有意性があると判断され同様の改修を22-8940・62-8958・72-8961などが受けている、これらはF-15J改や形態II型と呼ばれることがある。
またこれとは別に機首に赤外線捜索追尾システムを搭載した試改修機(12-8928)もあったが、こちらはいつの間に撤去されてしまい他の改修機に搭載されることもなかった。*14


■立体化

F-22登場までアメリカの最新鋭・最強の戦闘機ということやアメリカ軍で配備された部隊数や派生型も比較的多いことから国内外で多くのキット・完成品が出ている。
日本では昔はアメリカ製の最新鋭機、今日でも主力戦闘機として活躍していることから人気で立体化される機会も多い。
ハセガワでは記念塗装機やアグレッサーの新色が登場した時には頻繁に立体化されている。
食玩ブーム以降は1/144で数々のメーカーから立体化された。中でもトミーテックが当初食玩で発売した金型を塗装済み組立プラモデルとして発売し直した技MIXシリーズは完成度の高さから好評を博し、数多くの塗装機が発売されシリーズ終了まで柱を担い続けた。
2021年時点では定期的に再販していた技MIXシリーズ終了と食玩でもリリースが途絶えたことでプレミアがついているものが多い。


■逸話


  • 片翼で帰還した
 1983年、イスラエル空軍のF-15が訓練中にA-4と空中衝突、A-4は全壊し、F-15は片翼を吹き飛ばされてしまう。
 しかしこのF-15、片翼のままどうにか立て直し、漏れた燃料を空気中に噴き出しながら滑走路に無事着陸した。どうやらパイロットは着陸後機体を下りるまで片翼を失ったことに気付いていなかったらしい。
 機体の優れた設計を示すエピソードとして、今も語り継がれている。
 この逸話はエースコンバットのpixyの元ネタでもある。
 事故機はその後復帰したが事故前までにシリア空軍を4機撃墜しており事故後の1985年に1機撃墜したことでエースとなっている。本当はA-4で5機撃墜達成してるけど
 なおイスラエル空軍機は2019年には3万フィートを飛行中にキャノピーが吹き飛ぶ事故にも見舞われたが無事に着陸している。

  • 唯一の空対空被撃墜
 前述のように確認されているもので世界唯一の空対空被撃墜記録は、日本国航空自衛隊所属の機体。
 戦闘での被害ではなく、訓練中の誤射。人為的ミスによってうっかり本物のミサイルを発射し、それが見事訓練相手を撃墜してしまったと言うもの。
 幸い撃墜されたパイロットは脱出に成功し生還したが、誤射したパイロットは操縦資格を剥奪されている。
 当然ながら事故後は全国のF-15はスクランブル機も含め飛行停止になったが翌月ミサイル非搭載での訓練が再開、ミサイル搭載での訓練は翌年までできなかった。
 なおこの撃墜機の残骸は何故か千葉県の遊園地にある。
 ちなみにだが、空対地での撃墜は多数存在する。すべてがF-15Eの物で、爆撃任務故SAMに引っかかりやすいので仕方ないのだが。

  • 事故後1日で飛行停止解除
 自衛隊機での事故に限らず、米国で同じF-15で空中分解など重大な事故が起きた場合は自衛隊のF-15も飛行停止処置を取られることは珍しくなく
 それが1カ月になることもあるが自衛隊機で事故を起こしたにも関わらず僅か1日で解除されたことがある。
 これは前述した1993年に起きた事故で燃料系統の不具合により墜落・搭乗員は無事脱出したが、事故機に乗っていたのが飛行教導隊のパイロットで*15
 墜落までに猶予があったにしても事故原因を特定し点検が必要な箇所を洗い出すという離れ業を行い、事故後検査を実施し飛行停止は解除された。何たるクソ度胸の持ち主であろうか…
 以後飛行教導隊(群)では長らく事故はなかったが、2022年に墜落事故が起きT-2運用時代以来に2名の殉職者が出てしまった。
 一名は飛行教導群司令でかつてはブルーインパルスの隊長も務めたこともあるベテランであった。


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最終更新:2024年01月15日 17:48
添付ファイル

*1 2019年10月25日 編集者撮影

*2 日本も同様にコストが下がったことでF-4の後継機だけでなく改修できないF-15の後継機としてもF-35を選定している

*3 機体を買い付けるコストはF-35と同等だが、使用するのに必要なランニングコストではF-35を下回るというデータもある。ステルス機であるF-35のランニングコストが高いといった方が正解かもしれない

*4 ただし運用に関してはサウジアラビアの国政事情によって露出する機会が少ないため今でも喪失した機を除く全機が運用されているかが不透明、また日本はE以降の導入はないためDまでの数ならば世界第2位ではある

*5 2014年に改編され現在は飛行教導群

*6 今までの自衛隊戦闘機は部品取り以外ではF-86系・F-1・F-4EJ系はスクラップor地上展示、F-104もスクラップor地上展示の他標的機に改修された機体も存在したが現在は無人標的機も進歩・安価になっており標的機への改修はコスパが悪い

*7 カテゴリーⅠは教練を受ける部隊の代表が小松基地に赴き教導群の訓練を受けるもの、カテゴリーⅡは逆に教導群が1.2機現地に赴き小規模な教練を行う

*8 ただし訓練自体は約2週間の予定で1周目は比較的共に訓練のために離陸する姿が見られたが、2週目は1週間通して天候不良で訓練どころかSu-30MKIが飛行することがなかったため全国から集まったファンが落胆したのは言うまでもない

*9 なお1人は今日に至るまでスクランブル発進した自衛隊戦闘機で唯一実射を行った人物だった

*10 この事故以降キャノピーを破砕できるようになったことから脱出時キャノピーに頭部を強打した可能性が高い

*11 この事故で世界でも指折りだった304飛行隊の航空無大事故の記録が途絶えてしまっている

*12 最初期に導入されたものでは40年を超えているが未だに現役、一時飛行している姿が見られない機もあったがIRAN入りし再び飛行しているものも少なくない

*13 統合電子戦システム。レーダー警戒から電子支援及び妨害、チャフやフレアの運用などを統合する

*14 自衛隊では試験的に新要素を追加するも試験結果がふるわず他機への搭載を見送るケースはわりと多い

*15 機体は202飛行隊から借用し教導隊で運用していた