リーンの翼

登録日:2011/03/19 Sun 07:33:00
更新日:2023/05/22 Mon 15:52:08
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にほんのひのまる


なだてあかい


おらがむすこの


ちであかい





リーンの翼とは、富野由悠季による小説作品。
富野氏が監督を務めたTVアニメ『聖戦士ダンバイン』と同様に、異世界「バイストン・ウェル」を舞台とした作品であり、
その世界観を広げるべく小説誌『小説 野生時代』に『ダンバイン』の放送と同時期に連載されたが、『リーンの翼』の時間軸は『ダンバイン』よりも遥か昔となっている。


【作品媒体】
  • 1983~86年に連載された小説、全六巻。
  • 2005年からインターネットで先行配信されたOVA。小説版の70年後を意識したパラレルワールド。全六巻orコンプリートBOX。
  • ガンダムエースにて連載されたOVA版のコミカライズ。筆者は後に『ガンダム00』や『ガンダムUC』のコミカライズも担当する大森倖三氏。全三巻。
  • 2010年に発売された小説、「完全版」と称して発刊された。全四巻。


【概要】
『聖戦士ダンバイン』同様に、異世界「バイストン・ウェル」の物語であると同時に、
戦前生まれの日本人迫水真次郎の物語でもあり、ファンタジー的な要素もある……が、この作品の本当の見所は「戦前の日本人の心」である。


完全版と称される小説版の話の構成は大きく分けて二つになっており、
前半は特攻隊員であった迫水がフェラリオと呼ばれる妖精に召喚され、激動の時代であったバイストン・ウェルの中の世界の一つ、<コモン界・ヘリコンの地>で聖戦士として活躍する話。
元々は83~86年の小説版を下記のOVA版の展開に合わせるよう一部を変更したものである。

『ダンバイン』よりも遥か昔という設定から、前半は同作品で活躍した「オーラバトラー」などの機械類は出てこず、
ひたすらによる白兵戦を展開する(小銃や機関砲ぐらいなら出てくるが数は少ない)。
そして昔の富野作品らしく、生々しい表現が多用されているのも特徴の一つである。


後半は、バイストン・ウェルで七十年という時を経て地上に帰還した迫水と、
その少し前にバイストン・ウェルに降りて来たアメリカ人と日本人の混血児、エイサップ鈴木の二人が現在の日本の状況に関して対立する話。
この後半部分はアニメ化されており、一般的に『リーンの翼』というとこちら、富野アニメ初にして唯一のメカがフルCG。
ただし完全版はOVA版での行動に至るまでの各キャラの背景が描写されており、話の展開が早すぎたOVA版の補完としても機能する。

漫画版は、大まかなストーリーはアニメと同じであり、
これは大森氏が富野氏に『 余分なものは付け加えず、絵コンテに忠実に 』という要望を受けたためであるが、
それでも結構セリフ回しやら何やらは違っている。
漫画版とアニメ版を比べてみれば、所謂「富野節」というのは尺の都合やテンポ重視などで自然と変わってしまった結果というのが見て取れて面白い。
漫画自体も見やすく分かりづらい台詞回し等がないので、富野濃度濃い目なアニメより先にマイルドなこちらをオススメしたい。

PS2から発売されたゲーム『Another Century Episode』の23Pにも参戦している。
2は本編アニメよりも先行しての参戦だったため、富野監督が収録に立会ったらしい。

更にスパロボシリーズでは『UX』に参戦。
聖戦士ダンバイン』とのクロスオーバーが展開され、第二部ラストの展開に泣いたプレイヤーも多い他、
アニメ版と比べてエイサップとナナジン(アッカナナジン)のストーリー・戦闘アニメ等における主人公としての存在感が増しており、
迫水のアクが強すぎてやや地味な印象に終わってしまったアニメ版を知るファンからは「良改変」として好意的に受け止められた。
また現在はサービスが終了してしまったが、『スーパーロボット大戦Card Chronicle』にも参戦。
意外なキャラクターと和解する展開に多くのユーザーが驚いた。
それ以前の『スーパーロボット大戦COMPACT3』では強化パーツ(スパロボ)として登場した。


【あらすじ】
海と大地の狭間に存在するとされる世界、バイストン・ウェル。
人々の想像力によって生み出されたとも言われるこの世界には、コモン人と呼ばれる人間、フェラリオと呼ばれる妖精、ガロウ・ランと呼ばれる怪人が住んでおり、
“オーラ”と呼ばれる生命エネルギーによって、この世界のあらゆるものが支えられている。
コモン人が住むコモン界は、小さな部族に別れ、時に部族同志が戦火を交えていたが、この世界には乱世になった時に〈聖戦士〉と呼ばれる英雄が現れるという言い伝えが昔からあった。


【前半の登場人物】

《地上人》
オーラロードを渡りバイストン・ウェルに降りて来た者達のこと。

迫水真次郎
『リーンの翼』全編を通しての主人公。


《コモン人》
バイストン・ウェルに住む人間のことであり、見た目は地上人と変わらない。

◆アマルガン・ルドル
「軍国ガダバに滅ぼされたシィ国の領主の子」と名乗る流浪の武者。
《地上人》迫水がバイストン・ウェルに召喚された後に初めて出会ったコモン人で、迫水と共に打倒ガダバを目指し行動する。

◆ゲリィ・ステンディ
商人の家で働いていた少女。
迫水に惹かれてアマルガン軍に参加。
城攻めの際に機関砲の直撃を受けて帰らぬ人となるが、それを感じた迫水は伝説のリーンの翼を出現させ、彼が聖戦士となるための道筋を作った。

◆ガッザ・ガザエル
迫水達が途中で滞在していた海賊船ゼラーナの船長。

◆クロス・レット
ガダバ傘下の街、ドラバロに住む青年。
婚約者をガダバ軍に破瓜された後に殺され、その恨みから反ガダバであるアマンガンの軍に参加。終戦まで死ぬことなく戦い抜いたがその後の動向は不明。

◆リンレイ・メラディ
キェの国の女王で十九歳。
物語の開始以前からレッツォ砦に囚われており、その間はずっと拷問を受けていた。
聖戦士である迫水に惹かれ、将来を約束するような仲となる。
小説版の最後でリーンの翼を発現し、迫水を刺し殺したアマルガンを焼き殺したのだが、完全版では迫水をかばいアマルガンに殺された。

◆アンマ・ガルレア
キェの国に仕える武家出身の若き女武者。
彼女も迫水に惹かれるが女王リンレイの気持ちを知り、身を退いた。
片腕を失うも終戦まで生き延びたが、その後の動向は不明。

◆ダーナ・ガラハマ
元ガダバ軍の大隊長。
迫水率いる軍に捕虜として捕えられるが、聖戦士としての迫水の輝きに魅せられ、アマルガン軍に寝返る。
その後はアマルガン軍の大隊長として目覚ましい活躍をするも、ガダバの総帥との決戦の際に親衛隊の銃撃に遭い死亡。

◆ゴゾ・ドウ
シィとキェの国を征服したガダバ軍の総帥。
現在はチッの国と交戦中であったが、アマルガン率いる反乱軍に聖戦士がいると聞き、自ら最前線へ赴き迫水と一対一の勝負をするが敗北して討ち取られる。

◆シュムラ・ドゥ
ゴゾ・ドウの第三子で捕虜の女子供老人を盾にするような外道。
リーンの翼を発現した迫水によって討ち取られる。

◆ダム・ボーテ
ガダバの武将でダーナ・ガラハマとは「ダブルD」と呼ばれるほどの親友だったが、結局解り合うことなく、アマルガン軍の女武者に討ち取られる。

◆ハッサバ・ノゥム
ガダバの隠密集団「床山」の長。
「床山」は聖戦士の靴を盗み、迫水にリーンの翼を出させないようにしたが、その後靴は奪い返されハッサバも迫水に切り捨てられた。


《フェラリオ》
バイストン・ウェルに住む妖精。

◆ハロウ・ロイ
迫水をバイストン・ウェルに召喚したフェラリオ。
フェラリオの中では中級のエ・フェラリオなので羽は無く、大きさも人間と同じくらいである。

◆コム・ソム
海賊船ゼラーナに乗っているフェラリオ。
最下級のミ・フェラリオなので姿は妖精とほぼ同じ。

◆ノストゥ・ファウ
ガダバの「床山」に暗殺者として仕込まれたミ・フェラリオ。
迫水に捕えられられるも殺されはせず、その内迫水を慕うようになり、反乱軍の偵察役になるが、
偵察の途中にガダバ軍に捕まり、裸に剥かれた上に股間にドライバーを突っ込まれるなどの見るも無惨な拷問を受け、
迫水が発見した時には既に瀕死状態だったため、彼によって止めを刺される。


《ガロウ・ラン》
コモン界の地下に住んでいるといわれる性悪な種族。炎のガンダム乗りではありません。

◆ミン・シャオ
弓の名手。
迫水と幾度となく戦い、彼を最も苦戦させた女戦士。戦いの際には己のオーラ力を全開にし、人間離れした獣のような姿となる。
最後まで迫水を苦戦させるも、リンレイ・メラディのオーラ力を受け取った迫水に倒される。


【後半の登場人物】

《地上人》

◆迫水真次郎
CV.小山力也
反乱軍の兵士から一国の王まで登りつめた聖戦士。
そうでもあるがぁぁぁぁ!!!

◆蓼科宗一郎
長崎の原爆によりバイストン・ウェルへ跳ばされた日本海軍技術将校。迫水の良き相談相手となる。


◆エイサップ・鈴木
CV.福山潤
アニメ版『リーンの翼』の主人公。
山口県岩国市に住む大学浪人中のフリーターで、アメリカ軍人である父と日本人である母を持つ混血児。
サコミズからは一方的に気に入られ、リュクスの婿にならないかと勧誘される。
そんなことを言って、隙を作らせるのか!

19歳のフリーターというアニメ版での設定、エイサップというボブサップみたいな特異な名前に鈴木という普通オブ普通な名前の組み合わせ、
アニメ版では存在感を全て迫水真次郎に取られてしまったようなところから、よくネタキャラ扱いされるカワイソウな主人公。
富野監督も∀ガンダムのキースで福山氏に目を付けていたものの、エイサップは余り印象に残っていなかったとか。

その反動もあってか初参戦となった『スパロボUX』では大幅に補正が加えられており、
ショウをはじめとする多くの仲間達との共闘、幾多の苦難を乗り越えた事によりかなり早い段階で戦う事への強き意志を固め、
自身のオーラ力と強き意志でナナジンをアッカナナジンに変貌させるわ、迫水顔負けの超ド派手な捏造必殺技を最強武器のトドメ演出で披露するわ、
その際に原作に無かった熱血シャウトを響かせるわとやりたい放題。おかげで原作とは見違えるような立派な主人公と化した。


◆矢藩朗利(やはんろうり)
エイサップの悪友。
自身が結成したテログループ「ジスミナ」のリーダー。
アニメでは在日米軍基地に勤務する父親への反発心から過激な反米思想を持っているとされ、
一方小説版では2chの軍事版からブログなどを経てネット右翼的思想に染まり、それぞれの理由で前述のグループを組織したが、
当人らにさほど真剣味はなく、行動理念も大したものはないとされている。
金本やエイサップと共にバイストン・ウェルへと召喚される。
名前の由来は初期設定の「ロリコン」から取られているがその設定はお蔵入りとなり、その代わり金本と「アッー!」な関係にあるという設定に。
忍者戦隊のブルー戦士ではない。

東京タワー斬りこと『オーラソード・ダブルディスパッチ』は『スパロボUX』では唯一の敵の合体攻撃。


◆金本平次
エイサップの悪友で、在日朝鮮人の三世。
エイサップ共々差別されていたそうで、被差別意識が非常に強い。地上波でやるなら間違いなく扱いに困るキャラ。
朗利と共に岩国のアメリカ軍基地でテロを起こし、共にバイストン・ウェルに飛ばされてからも一緒に暴れまわった。
中華料理が上手い。

アニメ版では生き残り、救助隊に朗利の救出を頼む姿が描かれたが、いろいろやらかした張本人のくせにどの面下げて救助を乞うんだと憤った視聴者は少なくなかった。
一方、小説版では朗利共々死亡する。溜飲を下げたい方はどうぞ。

ちなみに、『スパロボCC』ではゼクスによる必死の説得と刹那の起こした奇跡を観たことから朗利と共に最後の一線を踏み越える前に思いとどまっており、
その後はイノベイター達の傲慢なやり口に激怒したことから、なんと2人揃って自軍部隊であるカイルスに加勢。
そのままエイサップやサコミズ王たちと協力して、世界の平和を守る為に戦い抜いた。
被差別者意識についてもすっかり吹っ切れてたのか、ダンバイン勢との模擬戦ではアメリカ人であるトッド・ギネスと軽口を叩き合うほど。
テキストのみではあるが、エイサップとのトリプルディスパッチも披露している。
シナリオ完結後は、かつて自分達を止めてくれたゼクスの部下として、火星開発に関わっている様子。


◆アレックス・ゴレム
岩国市にある米軍基地の司令でエイサップの父親。
無国籍艦隊の「世界の各都市に水爆を落とす」というとんでもない計画に荷担する。
『スパロボUX』ではハザードのせいでますます苦労することに……。


《コモン人》

◆リュクス・サコミズ
CV.嶋村侑
迫水とコモン人の女性との間に生まれた娘で、アニメ版のヒロイン。父の野心を正す為リーンの翼の沓を持ち出す。
彼女の服装に関しては、富野監督の奇行面白エピソードが残されている。
地上界での騒乱が終わった後は地上に一人取り残され、エイサップと一緒に暮らすことになるが、それから一ヶ月後に桜に包まれながら地上界から姿を消した、
漫画版では二人は離れ離れになることを悟っている節も見られ、ラストシーンは鈴木君の独白もあって非常に泣ける。いつか福山氏の声付きで聞きたいものである。

「僕たちは知らなければならないのかもしれない」

「本当の愚かさと本当に尊いもの…」

「そして…」


「愛する人を守り続ける本当の意味を……」


◆コドール・サコミズ
サコミズの後妻。前妻の娘であるリュクスにとっては義母にあたるが、仲は良くない。
夫ではあるがサコミズに良い感情は抱いておらず、同じ部族出身で不倫関係にあるコットウ・ヒンと組んで暗殺を狙っている。
そして後半にて、その機会が訪れるが…。


◆アマルガン・ルドル
かつて迫水と共に戦っていた老戦士。
迫水率いるホウジョウ軍に反旗を翻す。


◆キキ・アッテル
アマルガンの部下の一人。帽子のおねーさん。


◆ヘベ・ゲッテル
アマルガンの部下の一人。隻眼のおねーさん。


《フェラリオ》

◆ジャコバ・アオン

フェラリオ最上級のチ・フェラリオに位置する老婆。ババアの癖に服装と体型がエロい。
『リーンの翼』の後半部分では非常に重要な役割を果たす。


◆エレボス
CV.堀江由衣
人間サイズのミ・フェラリオ。スパロボのカットインじゃ分からないがこっちの服装もエロい。
ジャコバに命じられ、エイサップについていく。


【オーラバトラー】
代表的なものを抜粋して紹介する。

ナナジン/アッカナナジン

ホウジョウ国の新型機。エイサップが搭乗する。
元々は「名無し」と呼ばれていたが、それを迫水が「ナナジン」と聞き間違え、「七福神」に由来するその名前になった。
後に赤くなって「アッカナナジン」となるが、OVA本編中では色が変わった理由については一切触れられていない。
これについては富野監督の要望で第5話にて唐突に赤色になったという経緯があり、
理由については後付で「成長したエイサップのオーラ力に反応して装甲の色が変わった」とされている。


シンデン

ホウジョウ国の新型機。朗利や金本が搭乗。


オウカオー

迫水真次郎の専用機。名前の由来は特攻機「桜花」から。




Wiki篭り追記・修正は暖かいよなぁ……?」

「へ、へへへへぇ…(失禁)」





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最終更新:2023年05月22日 15:52