ファイアーエムブレム 聖戦の系譜

登録日:2010/05/17(日) 19:30:55
更新日:2023/10/23 Mon 21:30:45
所要時間:約 7 分で読めます








ファイアーエムブレムシリーズの4作目に当たる作品で、1996年5月14日に任天堂よりスーパーファミコン用ソフトとして発売された。
2007年1月30日よりWii・バーチャルコンソールで配信され、2016年8月27日からNewニンテンドー3DS、Nintendo Switchオンラインでも2021年5月26日から配信開始。
世界観を完全に一新し、シリーズの新たな境地を見せた意欲作で、
『聖戦』と呼ばれる戦争によって平和がもたらされたという伝説の残るユグドラル大陸が物語の舞台となる。

+ 目次

概要

ファイアーエムブレム 紋章の謎』と同じ二部構成だが、自国の平和や他国への侵攻を望む様々な国家(宗教組織を含む)が密接に関わり、
国同士の間で起こる戦争が物語の中心となっている。
悲劇的な展開も特徴で、開発者は本作の製作における趣旨について「戦争の悲惨さを伝えること」を挙げている。

支援会話システムの祖とも言える恋愛システムが搭載されており、親世代で結ばれたカップルの子供が子世代ユニットとして仲間になる。
今作品最大の売りにして非常に奥深いシステムであり、今なお色々な意味で議論が活発である。
これによって登場人物一人一人に思い入れや愛着がわき、
発売から20年以上が経過しても二次創作などが行われ、フィギュアが発売されるなど根強い人気を誇る。
CMにもある通り、まさに「愛の絆が武器になる」のである。
なおCMは下記を参照。


また、それに伴いシナリオにおいても遺伝子的な血の要素がかなりのウェイトを占める内容となっている。
故に近親相姦的な表現も多々あり、良くも悪くも禁忌的な物語が多くのユーザーを虜にした。
ディレクターの加賀昭三が「近親相姦フェチ」と呼ばれるきっかけとなったゲームでもある。
(後に加賀が製作に携わったティアリングサーガでもそれをほのめかす描写がある)

他にも『』、『』の3すくみや、
スキルシステム、騎馬ユニットの再移動など、後のシリーズにも受け継がれているシステムが多い。

一方で広大なマップの中の各地を転々とする戦闘マップや、プレイヤーの操るユニットの少数精鋭で偏った構成、
代替わりによる能力や神器の継承、癖のある確率計算、恋愛システム、武器ごとの熟練度など、本作ならではの要素も多く含まれている。
ちなみに神器の性能は後のシリーズと比べてもすごい方。ステータスに合計+30~80追加されるというやりたい放題っぷりである。
特に自軍が使える神器の中で唯一継承者を選べる「フォルセティ」は非常に激論を呼び、カップリングによって強さが非常に大きく変動するキャラもいた。
当時は「ダビスタエムブレム」などとも揶揄された。馬が強いゲームなのであながち間違ってはいない。

ストーリー(というか設定)が非常に重厚であり、固有名詞の嵐を乗り越えることができると沼にドハマリする。
前作のガーネフ*1のような絶対悪がせいぜいロプトウスくらいしか存在しないという独特な持ち味の作品。
アニヲタwikiでも本作の敵対勢力キャラのコメント欄は荒れ気味だが、実際にプレイしてみるとそうなるのも理解できるくらいに人間味があったり政治問題に振り回されたりという敵が多いのである。

そしてさらに上記の継承システムにカップリングという非常にナイーブな問題が加わり、当時はそれはもう骨肉の争いが繰り広げられた。
攻略目的のカップリングと趣味全開のカップリングが同じ土俵で言い争いを始めるせいでとんでもない有様。
当時のファンコミュは個人サイトの時代、つまり同好の士が集う小さな場所ということもありそれほど荒れなかったのだが(ファンコミュ同士の対立がなかったとは言ってない)、これが不特定多数が集まる場所になると地獄のような有様となる。
特にラケシスの婿の話は発売から25年ほど経った今もなお「これは冗談だからね」とくぎを刺しておかないとどんどん大荒れするパレスチナ問題かよ
「スマブラDXに出てたロイのゲームということで『封印の剣』を買ったぞ!面白いな!」と思ってコミュニティに行ったり2ちゃんねるやふたばの雑談系の板で封印の剣スレを立てると
聖戦勢が乗り込んできて話題を無視してカップリング議論を始めるという、今にしてみれば笑い話だがよくよく考えるとなかなかアレなこともしばしばあった*2
こういったことから次第に「聖戦世代 VS GBA世代*3」という対立構造にまで発展していくことになり、『蒼炎の軌跡』という第三勢力の登場でようやく収まりがついたのだった。

ただしこれらが荒れるのはあくまでもプレイヤーの愛が深いゆえのこと。代替品のない傑作なのは確かであり、譲れない部分があるからこそぶつかり合ってしまうのである。
その独特なシステムや親カップリングを前提にした子供の独特な立ち位置、そもそも作中で近親相姦が行われるというタブーに全力で踏み込んだストーリーなどから現在でも非常に人気の高いゲーム。
FEオンリーイベントとして長寿な「炎の聖戦」の聖戦も、この聖戦の系譜の同人活動が盛況だったことに由来していると思われる。
ファイアーエムブレム ヒーローズで実装されている本作のキャラのうち、
親世代のキャラについては聖戦発売当時から活躍しているようなベテラン声優が起用されていることが多い。原作ではモブ同然のキャラなのに声優がやたら豪華なんてこともある。

ゲームのやりこみ度は非常に高くストーリーは奥深いのだが、その一方で難易度自体はそんなに高い方ではない。ぶっちゃけ「剣と風魔法」で大体片がつく。
また本作は疑似乱数が1つのテーブルに依存しているため、「同じように行動すればまったく同じ結果が生じる」ようになってしまっている。
そのためRTAや普通のプレイ動画はさっぱり盛り上がらず、何らかの縛りを設けて既存のプレイと違った形で普段絶対に意識しないようなものをメインに据えるのが盛り上がる。


◆ストーリー

【第1部/親世代篇】

かつてユグドラル大陸に暗黒神ロプトウスが降臨し、配下のロプト帝国によって子供狩りや人々の虐殺によって、恐怖の限りを尽くした支配を行われていた。
だが解放軍戦士12人にが降臨して生まれた十二聖戦士によって、ロプト帝国は滅亡する。
英雄となった十二聖戦士たちは各地に散り、グランベル七公国と周辺五王国を建国、後にグランベル王国を勃興させた。

それからおよそ100年後、757年に東方のイザーク王国の動乱沈静のためにグランベル諸侯の軍が遠征に向かう。
その間に同盟関係にあった隣国、「蛮族の国」ヴェルダン王国の王子ガンドルフが突如としてグランベル王国との国境を越え、ユングヴィ城を制圧する。
その後、矛先をシアルフィ城へと向け更に侵攻を続けてきた。

イザーク遠征に出征した父・バイロン卿の留守を任されていたシアルフィ家の公子シグルドは、
友好国ユングヴィを救うため少数の部下と共に迎撃に出る。

それがやがて起こる恐ろしい出来事の前触れであることを、このときは誰一人として知る由もなかったのだった……。


【第2部/子世代篇】


反逆者に仕立て上げられたシグルドがバーハラの悲劇によって葬られてから十数年後。

世界はロプト教団の暗躍によってロプトウスの生まれ変わりとして覚醒したグランベル皇子ユリウスによって、再び暗黒に包まれようとしていた。
多くの国は彼に降り、恐怖政治が敷かれていた。

しかし世界にはまだ少数の反抗勢力が残っていた。
その中の一つに後に世界の希望となるシグルドの息子セリスがいた……。


◆主な登場人物(第1部)


第1部の主人公。シアルフィ公国の公子。
最初から強いロードナイトにして、RPG三大不幸主人公の一人。

シグルドの部下の騎士赤い方

シグルドの部下の騎士の緑の方。

固い!強い!遅い!
みんなのアイドルで自宅警備員。

ヴェルトマー公国の公子で、想いを寄せるエーディン救出のために参加する。

アゼルの親友でドズル家のイイ男。耐える壁役担当。

レンスター王国の王子でシグルドの士官学校時代の友人。

シグルドの妹でキュアンの。妹で人妻。大事なことなので2回言いました。

キュアンの部下。
この中では唯一、第1部と第2部通して登場する。

ユングヴィの弓騎士。
エーディンを守り切れず一度は倒れるが、シグルド軍に救出され参加する。

ユングヴィの公女。
冒頭で美しさを理由に連れ去られたり、多くの男性キャラクターと縁を結びやすかったりする魔性の女。あなた達はけだものです。
なお結婚していた場合は、第2部でも生存が確定している唯一の女性。

エーディンと一緒に救出されたショタ盗賊

イザークの王女で、甥のシャナンを連れて戦火を逃れていたが、
ヴェルダンの筋肉王子どもに人質に捕られ用心棒として働かされていた。
キルソ剣士の系譜。彼女が緑に光ったら大抵の奴は死ぬ。

ヴェルダンの末っ子王子。
筋肉な兄貴たちと違いスマートなイケメン。
ヴェルダンの神器キラーボウの使い手。

ヴェルダンの深い森に住む美少女。
シグルドとお互い一目惚れをし電撃結婚を果たす。
しかし呪われた運命が待ち受けており……

闘技場にいた腕利きの剣士で、自分を倒したシグルド軍の強さを認め参加する。
実はソファラ領主の息子で、アイラの親戚にあたる。

シグルドの友人エルトシャンのブラコン妹。

旅の吟遊詩人。その正体はシレジアの王子。
第2部にも軍師として登場する。

レヴィンについてきた旅の踊り子
生まれに謎が多い人。
何故かブラギの血筋を持っている事とクロードの話から、『クロードの妹』という説が有力視されている。

マクベスに雇われた傭兵騎士。大人の男。
しかしマクベスが気に入らないのであっさり裏切って仲間になる。

シレジアの天馬騎士
レヴィンを追ってはるばるアグストリアまで来た。

行方不明になっていたエーディンの姉。
記憶を失い、拾われた海賊団のリーダーとなっていた。
実は彼女も生存組。その後の話は『トラキア776』を。

エッダ公国の公主。
世界に広がる不穏な影を感じ、神託を受けるために旅していたところをシグルド軍に拾われる。

フリージ公国の公女。
クロードの護衛として勝手についてきた。流れで神父様共々シグルド軍に身を寄せることに…。



上記のうち、フリーな男女を一緒に出撃させる、隣接させるなどで恋愛度が蓄積されていき、一定数に達すると恋人同士になる。
恋人同士になると補正が受けられる、資金をあげられる、ランダムで必殺が発生するようになる。

そして何よりも大きな目玉が、第2部で彼らの子供たちが登場するようになる。
親の能力、スキル、使える武器を継承するので、組み合わせによっては第2部序盤から無双も可能。
なお恋人にしなかったり、母親が死んだりしている場合は代替の平民キャラが登場する。


◆主な登場人物(第2部)


第2部の主人公。
シグルドとディアドラの息子で、疎開を命じられたオイフェとシャナンによってイザークの僻地・ティルナノグで育てられていた。
しかしそこにも敵の手が迫り、挙兵を決意する。

  • オイフェ
シグルドに従っていた騎士見習いであり、解放軍の幹部。今作におけるジェイガン枠。
第1部ではショタ軍師だった彼も今では立派なおっさんです。
なお初期レベルは高いが初期値も高めな上に成長率も全体的に良好。バルド血統により剣レベルAに追撃と必殺持ちで攻撃面に不足もなく、直接攻撃や手槍で充分活躍できるが初期魔力も9あるので魔法剣もある程度使いこなせたりと結構な起用万能枠。
ノイッシュとアレクを足して更に+したような人とよく言われる(突撃はないが)。

同じく解放軍の幹部。
長い年月は彼をショタから立派なナバールへと変貌させた。
ナバールの裏設定的には、マジもんのセルフリスペクトキャラかもしれない。

レヴィンが連れてきた謎の美少女。
実はアルヴィスとディアドラの子で、セリスの異父兄妹に当たる。

キュアンとエスリンの息子。
まだ幼く預けられていたため戦死した両親と共におらずレンスターで育てられていた。
トラキア776』では主人公。ここでは受難の日々を仲間たちと共に駆け抜ける。

エルトシャンの息子。
パパとは違い騎士というしがらみはなく、状況の違いなどによりすんなりと仲間になる。

リーフの姉で、トラキア王トラバントに連れ去られ、娘として育てられていた。

  • ハンニバル
トラキアの盾と唱われる将軍。
でもポジションはアーダン。


◆その他


ヴェルトマーの公主。
冷静な青年だが、その内には野望を秘めており、弟のアゼルには恐れられていた。
トントン拍子で出世し、第2部ではグランベル皇帝になっている。この大陸の歴史の教科書には良くも悪くも名を残せそうな男。

世界の影で暗躍するロプト教団の大司教。本作の黒幕にして執念の男。キャラクターとはユニットとしての強さだけがすべてではない。

シグルドの士官学校時代の友人。
アグストリア王シャガールに忠誠を誓っており、シグルドとは敵対することになってしまう。

アルヴィスの息子。
ロプトウスの生まれ変わりとして覚醒しており、実質上の実権を握り世界を恐怖政治で支配している。


  • ヴォルツ
ふっ、俺よりうまく追記修正できるヤツはいねぇよ。この世界ひろしと言えどもな……。

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最終更新:2023年10月23日 21:30

*1 ガーネフ自身もミロア司祭に「オーラ」の魔導書を継承されたことで嫉妬や憎悪に囚われたことで歪んだキャラなのだが、聖戦の系譜では作中で善とも悪とも言い切れないことを行うキャラがやたら多い。たとえば「今や我らが手中にある!」と「死ね、ハイエナどもめ!」なんて聖戦の系譜を知らない人に見せたらどっちが善玉かこれもう分かんねぇな?

*2 さらに加賀昭三氏が担当した「ティアリングサーガ」や「エムブレム商標問題訴訟」などもあって話題が尽きなかった。ベルウィックサーガ以降はFEと完全に分けて語られるようになったこと、FEが加賀氏の手から離れて非常に長い時間が経ったことですっかり落ち着いた今となってはバカげた話だが、当時は「FE・TS」とひとくくりにされていたのでこういう問題が起きてしまった。

*3 『封印の剣』以降は加賀昭三氏が関わっていないため、カービィにおける「桜井作品・非桜井作品」のようにざっくり分ける人も多かった。