意志の力/Force of Will(MtG)

登録日:2010/10/03 Sun 17:59:05
更新日:2023/08/24 Thu 12:00:36
所要時間:約 9 分で読めます






「私の運命は私が決める。」



《意志の力/Force of Will》はマジック・ザ・ギャザリングのアライアンスに収録された青のインスタント呪文である。レアリティはアンコモン2*1


Force of Will / 意志の力 (3)()()
インスタント
あなたは、この呪文のマナ・コストを支払うのではなく、1点のライフを支払うとともにあなたの手札にある青のカードを1枚、追放することを選んでもよい。
呪文1つを対象とし、それを打ち消す。


マジックで最強のカウンター呪文は?と尋ねたら恐らくほぼ全員が答えるであろう2枚のカード、それが強化版《対抗呪文》こと《マナ吸収》とFoW、ウィルこと《意志の力/Force of Will》である。
現代のヴィンテージ環境では《マナ吸収》の代わりに《精神的つまづき》、モダンでは0マナでなんでも止められるためコンボデッキで使いやすい《否定の契約》が入るとは思うが。


マナコスト自体は5マナと重い。だが、このカードにはアライアンスのテーマ能力のひとつである代替コスト、いわゆるピッチコストが搭載されている。

代替コストはライフ1点とのカードを1枚追放と、それ自体は決して安くない。また普通に使った場合は1対2交換になるのでアドバンテージは失っている。

だが、それを考慮してもマナコストを払わずにプレイできるのはかなりデカい。

考えてみて欲しい。土地をフルタップしてもカウンターが可能という安心感がどれ程のものかと。そのため無駄なマナを払いたくない青系ウィニーやコンボデッキにも、大事なカードを確実に通すorマスカンを確実に止める為のカウンターとして投入された。

また代替コストに必要な青のカードについても、後半に使いづらくなる《魔力の乱れ》や《マナ漏出》のようなカードをコストに回すようにすればデメリットを軽減しやすい。

また、基本でない土地にしか効果のない《基本に帰れ》に代表される、特化したメタカードがメタ読みを外して手札で腐った場合も同様である。手札で持て余したプレインズウォーカーなんかもいいかもしれない。
このカードがあるせいで「青のカードは腐らない」「似たような別の色のカードに比べて重くても青だから問題ない」という現象を引き起こしている。

特筆すべきは後攻の際、相手の先攻1ターン目にも代替コストによってカウンターが可能である事。これによりレガシーやヴィンテージでまま見られる先手1ターンキルを阻止することが出来る、数少ないカウンター。
このカードの存在のせいで、レガシーでは「安定性もそこそこ高いクソみたいな1キルだが環境内に存在を認められる」というパターンも非常に多い。ベルチャー、The Spy、ティボ計あたりが代表的。
青をタッチしていないと一敗確定なのに環境内に青が多いので存在が許されるというもので、「レガシーは青いゲームだ」と揶揄されるのはこういったところにも起因している。その隙の無さは、まさに最強のカウンターの名に相応しい一枚である。

さらにこの「5マナ」という点も強く、続唱系のデッキが流行した頃は「続唱を阻害しない軽量カウンター」という独特の地位を得た。
青なら何でもコストにできるので、《ドリーム・ホール》デッキにおいて《衝合》で、青はこのカードを選び、白や緑などのカードの枠で多色カードを選んでピッチコストにあてがうこともできる。
《全知》などが出ている場合はこのカードの「素打ち」が可能である。手札もライフも切らずに打ってくるクソカウンター。勝てるかこんなもん

ただし、実際のところ弱点は結構多い。

代替コストもコストには違いないため、打ち消しがほぼ無意味となる《霊気の薬瓶》や手札を見られてしまう《思考囲い》は打ち消さないわけにもいかないが、打ち消せば1マナで手札1枚の差を付けられたも同然になってしまう。
こういった運用をするとき、プレイヤーは「Willを切らされる」と表現する。つまりアド損が響いて戦局が不利になってしまうのである。
逆に言うと青を握らないプレイヤーはこの弱点を突いて「強気のカードを次々と叩きつけてWillを使わせる」ことを主眼に置いて戦うこととなる。

自分で切るWillは強いが、切らされるWillは弱い。このジレンマは常に青使いを悩ませており、それを楽しむのがレガシーという環境の醍醐味とも言える。
このジレンマを解消してくれたのが《精神的つまづき》なのだが、それがもたらした地獄絵図はまた別のお話。

スタンダードではカウンターポストの隆盛を助け、エクステンデッド環境に移ってからも、青を扱うなら4枚必須と言われていた。
その後2014年にジャッジ褒賞として新イラストで登場。1枚10万円弱の値段がつく事態になった。数が少なすぎるので流石にこれを再録と言うのは厳しいだろう。
エターナルマスターズで目玉カードとしてついに再録がかかり、同時に意志の力という日本語名を手に入れた。レアリティは神話レアにまで上がっている。エタマス自体が限定発売かつプレミア価格ではあったが、その後再販されたことも含み流通量が増えたことで値段自体は少し下がったようだ。
しかし「初の日本語版」であったり「ジャッジ褒賞除けば初のfoil仕様」などという理由からエタマス版foil、特に日本語foilは値段が大暴騰。当初は10万を超える価格で取り引きされていた。
その後Amonkhet Invocationsにも収録されている。やっぱりプレミアなので値段への影響はあまり無いようだ。
2020年にはダブルマスターズにも収録。こちらには新規イラストの拡張アートバージョンが存在し、これは10万円を超える価格で取引されている。
その後もドミナリアリマスターに収録されるなど幾度となく再録されているが、それでも2023年現在で相場が1万円をゆうに超えている。統率者での需要も相まって、いくら再録されても需要が供給を上回り続ける状況にある。

レガシーやヴィンテージの環境に活躍の場を移し、またカウンターに耐性を持つカードが増えた現在でも最前線で使われ続けている。そこからもこのカードのパワーを伺う事ができるだろう。
レガシー・ヴィンテージ環境でが最強と言われるのはこのカードの存在が大きい。というより、このカードとドロースペルの為だけに青をタッチする場合も。
ただし、「FoWカウント(青カウント)」という考えが使用者の間に存在するように、単に青いカードがそこそこあるから入れるというだけでは単なる手札事故要素にしかならず、こういうところもかなり難しいカードである。

なお、あまりの強さにエクステンデッド環境にあった時は常に監視され続け「監視カードリスト」に常駐していた。いつ禁止になってもおかしくないと言われていたが、エクステンデッド環境のレギュレーション変更により、結局禁止される事なくローテーション落ちした。


ちなみに、後世にこんなカードが出た。

Foil / 撃退 (2)()()
インスタント
あなたは、この呪文のマナ・コストを支払うのではなく、島(Island)カード1枚と別のカード1枚を捨てることを選んでもよい。
呪文1つを対象とし、それを打ち消す。

世紀のハズレパックと名高いプロフェシーで、数少ないトーナメントで使われたカード。
本家と比べるとライフ払いがなくなり、素のコストが安くなった代わりに、手札コストが倍の2枚(しかもうち1枚は島指定)になっている。
本家と違い気軽にピッチコストで唱えられなくなったが、それでもピッチカウンターは強烈。
手札が増えてきた中盤~終盤辺りで、タップアウトしている際などに唱えると良い。素のコストが若干安いので普通にマナを払ってのプレイは本家よりもやりやすい。
ちなみに本家と違って追放ではなく「捨てる」なので、マッドネスなど捨てることをトリガーにするカードや、墓地を利用するデッキなどでは本家よりも使いやすい場合がある。
また、コモンになったのでPauperでも使える。

英語のカード名は「Force of Will」とのダブルミーニングだが、箔押し加工を施されたカードという意味の「Foil」もあるので紛らわしい。(公式ではプレミアム・カードと言う)
因みに《撃退》のフォイルカードも存在するのでより紛らわしい。


そしてモダンホライゾンではこんなカードが。

Force of Negation / 否定の力 (1)()()
インスタント
あなたのターンでないなら、あなたはこの呪文のマナ・コストを支払うのではなく、あなたの手札から青のカード1枚を追放してもよい。
クリーチャーでない呪文1つを対象とし、それを打ち消す。これによりその呪文が打ち消されたなら、それをオーナーの墓地に置く代わりに追放する。

プレビュー直後から「令和のWill」と大騒ぎになったカード。
本家と比べると
  • 素のマナ・コストが2マナ安い
  • ピッチコストでライフを払う必要がない
  • 打ち消した呪文を追放する
という利点があるが、
  • 相手ターンにしかピッチコストで使えない
  • クリーチャー呪文は打ち消せない
という欠点を抱える。

特に自分ターンにピッチで唱えられないというのは見た目以上のデメリットであり、コンボを通す為の打ち消しとしての使い勝手は大幅に落ちている。本家が持つ「WillをWillで打ち消して結局コンボが通ってしまう」という問題点を、上手い具合に解消していると言える。
高速化が進むモダンにおける抑止力としては十分な性能で、現在では対コンボ用スペルとしてモダンでは勿論、レガシーでも5枚目以降のWillとして採用されている。

ちなみにこのカードは《○○の力/Force of △△》というカード名の各色ピッチスペルサイクルの1枚である。
元ネタがWillなのは言うまでもないだろう。


レガシーで青絡みのデッキが非常に強い原因とも言え、青にわずかでも絡むと値段が青に絡まない色、特に赤白や黒赤に比べると高騰する原因である。
たびたび「最強のカウンターである」という意見が出てくるが、上述の通り弱点も結構多い。
《マナ吸収》の方がテキスト自体は強く、対1マナ限定ではあるがライフ2点で使えるという性質で使用できる環境すべてで規制がかかった《精神的つまづき》は環境に著しい圧力をかけ続けた。また、純粋にコスト0で打つことができる《否定の契約》が優先されるデッキも多い。
そういう意味では、このカードは住み分けの余地を残した良カードと言える。

「マナ・コストの概念を壊すカウンターが環境の安全弁や著しい先手有利ゲーに対する抑止力になる」というバランス調整の面も含めて非常に有名なカードであり、これを元ネタにしたようなものを見るたびにMTGに詳しいプレイヤーはにやりとする。
すでに販売を終了したカードゲーム「フォース・オブ・ウィル」はそのシステムなどもあって、多くの人にその元ネタがMTGであると思われていた。
また、遊戯王の《宣告者》の初期カード群は当時……というか現在でも珍しい「手札誘発+特定カードをコストとして要求する」というもので、
これは見る人が見れば《意志の力》が元ネタだとわかったため、当時双方を知るプレイヤーから話題になった*2。他にもガイヤ・ソウルとボーライとか。
別にMTGが優れているという話ではなく、カードゲームの黎明期に遊んでいたプレイヤーたちにとってはそれくらいインパクトのあるカードだった
MTGはおろかトレーディングカードゲームのひとつの歴史を作ったカードだったと言ってもまったく過言ではないのである。


私の追記・修正は私が決める。


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最終更新:2023年08月24日 12:00

*1 当時は同一レアリティ内でも出やすさに差があった。UC2はR6と出現率が共通だったのである意味レアではある

*2 因みにコストが重すぎるためモンスター効果無効の《朱光の宣告者》が使われていたくらいで他の2枚は特に結果は残せていない。後に登場した《神光の宣告者》以降はパーミッション効果はそのままにより使いやすくなっている。