ニコル・ボーラス/Nicol Bolas(MtG)

登録日:2011/06/02 (木) 14:28:20
更新日:2023/03/02 Thu 12:11:39
所要時間:約 4 分で読めます




「下らない作戦もそれまでだな、プレインズウォーカーよ。身の程知らずのうぬぼれはどこへいった?」


ニコル・ボーラスとは『Magic the Gathering』に登場するキャラクターである。



概要

龍族の始祖「エルダー・ドラゴン」の生き残りであり、世界の暴君と称される強大で邪悪なプレインズウォーカー
1994年、MtG黎明期のエキスパンション「レジェンド(LEG)」で初登場。2006年の「時のらせん(TSP)」のストーリーで再登場を果たした。

その年齢は約2万5000歳とされ、多元宇宙最古の生命として知られる。
莫大なマナを操り、それを糧に強大な力を得ることができるプレインズウォーカーとしても最古クラスの存在。
そのプレインズウォーカーの素質さえも策謀によって更なる高みへ到達させた結果、全盛期には無限に限りなく近いマナを獲得。
無限の力、知識、限りなく完全に近い不老不死を以て神に等しいプレインズウォーカーの中でも最も全能に近い存在に昇華した。
それからも精神操作破壊的な魔法、悪魔的頭脳による知略を用い、数千年単位の計画で多元宇宙を支配しようとしていた。

しかし、その無限の力、知識、不老不死、そして己自身の記憶も含めてた存在の維持にはそれ相応のマナが必要。
そのため、全能に近い存在でアリながら全てを支配し暴虐の限りを尽くす帝王、否、龍神としての宿命を持つ。

しばらくして起きた「大修復」によって、多元宇宙中のプレインズウォーカーは「次元を渡る」以外の特別強大な力を失ってしまう。
それはボーラスも例外ではなく、プレインズウォーカーとしての才覚の恩恵を最も受けていた故に相当弱体化することとなった。
それからというもの全盛期の力を取り戻すべく各所で暗躍を繰り返す。それを通してストーリーの黒幕であり続けた。

信じられない程に長い生涯で蓄えた知識量は凄まじく、あらゆる種類の魔法に精通する。
龍には必要ない筈の航海術すら図書館一つに及ぶレベルの知識で習得していたほど。何というムダ知識

基本的には湾曲した二本角が特徴的な龍の姿をとるが、変身魔法に加え身体の大きさも変える事ができる。
ドラゴンとしての身体能力も高く、魔法を用いない物理攻撃ですらボーラスに敵う相手はまずいない。

ファンからの人気も高く「ボーラス様」と呼ばれ畏怖される悪と支配者のカリスマである。

カードとしては全てが象徴でもある・黒・を含んだ混色である他、数字として「7」が関係することが多い。



【主な活躍】

レジェンド(LGE)

既にプレインズウォーカーとして覚醒していたニコル・ボーラスは、豊かなマナに溢れる次元、ドミナリアマダラ帝国に目を付け、智謀を用いて掌握。
当時のボーラスはあまりの強大さから、その存在を現実に保つために・黒・の三色のマナを大量に必要としていた。
マナの元である豊富な川・広大な沼地・巨大な山脈を有するマダラはうってつけの土地だったのだ。

その後400年に渡り謎の皇帝としてマダラを支配していたが、その暴虐さ故に臣下のテツオ・ウメザワの離反を招く。
最終的にはテツオによってマナの供給源であるマダラの土地そのものを破壊され、ボーラスは討ち取られてしまう。
以降は精神体として、いつか訪れる復活の時に備え知識を蓄え続けていた。

時のらせん(TSP)

テツオとの決闘から数百年が流れた時代。
当時のドミナリアは、数々の戦乱と災害の影響で過去と現在が同居する混乱状態にあった。

時間流の乱れからマダラの沖合にある鉤爪の門に迷い込んだジョイララーダヴェンセール
龍師範を名乗り三人に接近したボーラスは、ラーダとヴェンセールの力を利用して肉体の復活を遂げる。
三人を救出すべく現れたプレインズウォーカーのテフェリーに決闘を申し込まれるも、これ返り討ちにする。
が、ここで前述の混乱を引き起こしている時の裂け目によって、多元宇宙全体が滅亡する可能性をテフェリーから知らされる。
テフェリー達一行は、この時の裂け目を修復する方法を探すべく旅をしていたのだ。
そしてテフェリーの調査よって「プレインズウォーカーの灯を捧げる」事が裂け目を修復する唯一の方法であると判明した。

一行を見逃した後、ボーラスはウメザワの血筋をドミナリアにもたらした精霊を追ってウメザワの故郷たる次元、神河に赴く。
その精霊、夜陰明神はドミナリアまで追われ、邪悪なプレインズウォーカー、レシュラックに助けを求めた。
が、最終的にボーラスはレシュラックを時の裂け目に放り込んで始末。崩壊しつつあるドミナリアを離れる。

やがて全ての裂け目が修復された事で「大修復」が起こり、多元宇宙の構造は大きく変化する事になる。
以後プレインズウォーカーの全能と不死は失われ、その特性は「次元を渡る」だけのものとなってしまう。
ボーラスは積み上げた力と知識が急速に失われていくのを感じながら、無念と共に行動を開始する。

また、この頃に屍術師のプレインズウォーカー、リリアナに4体の悪魔との契約を仲介している。

アラーラの断片ブロック

大修復から約60年後。
遠い昔に五つの断片へと分かれた次元、アラーラが、今ふたたび一つの次元へと統合しようとしていた。
何十年もの間アラーラを見守って来たボーラスは、次元が統合する際に生じる莫大なマナを吸収しようと画策する。
アラーラ各地に手駒を送り込んで争いの種を蒔き、動乱によってマナを増幅させようと目論んだのだ。

そんなボーラスの策略によって兄を殺された一人のレオニン(猫の亜人)がプレインズウォーカーに覚醒。
彼、黄金のたてがみのアジャニは、復讐のため兄を殺した犯人を追い求めボーラスへ辿り着く。
ボーラスはアラーラ統合の中心となる大渦で、アジャニの事など歯牙にかけずマナを喰らい始めた。
そこでアジャニは他者の本質を引き出す魔法「魂の光」を用いてマナの奔流からボーラスの写し身を出現させる。
思わぬ妨害を受けたボーラスは写し身との激しい戦いを繰り広げ、やがて姿を消したのだった。

同時期にボーラスはテゼレットサルカンの二人のプレインズウォーカーを手下としている。
また無限連合という組織も率いていたが、これをテゼレットによって乗っ取られてしまう。
ボーラスはリリアナやテゼレットの部下だったプレインズウォーカー、ジェイスを通して無限連合の奪取を目論む。
最終的にジェイスによってテゼレットの精神は破壊されたが、ジェイスによって無限連合が解散されたため目的は果たせなかった。
しかしボーラスは抜け殻となったテゼレットを回収して修復し、以後は自身の忠実な手駒として用いる事になる。

ゼンディカー・ブロック

ボーラスは豊富なマナが乱動する次元、ゼンディカーに太古の昔に封印された怪物であるエルドラージに目を付ける。
手下のサルカンをゼンティカーに向かわせ、計略を用いてその封印を解く事に成功する。
しかしこの際にサルカンはボーラスに幻滅、袂を別つ。

一見マナも手に入らないこの行動の目的は、多元宇宙全体の脅威に対する他のプレインズウォーカー達の動向を観察する事だった。
後にプレインズウォーカー達は力を合わせてこれに対抗するためゲートウォッチが結成する事になる。

ミラディン・ブロック~カラデシュ・ブロック

ボーラスは修復したテゼレットを金属次元、ミラディンへと向かわせ、そこで復活しつつある脅威、ファイレクシアの監視を命じる。
やがてミラディンが新ファイレクシアとして「完成」した事を知ると、ボーラスはテゼレットに次の任務を与えた。

テゼレットはアーティファクトと霊気の次元、カラデシュに送り込まれ、政府の要職に就いて反政府軍との戦いを指揮していた。
戦いは反政府側の勝利に終わったが、テゼレットは次元を超えて物質を転送する装置、次元橋を持ち帰る。
「大修復」で世界の構造が変化して以降、次元間の移動を可能とするポータルは全てその機能を停止していたのだ。
次元橋は非生物しか転送できないという制約こそあるが、

アモンケット・ブロック

ストーリーで語られたボーラスの行いの中でも悪名高いのがこのブロックでの活躍だろう。

アモンケットは五柱の神が統治する都市ナクタムンが存在する以外は広大な砂漠が広がる次元。
ナクタムンの人々は幸福で希望に満ち、「5つの試練」を突破するための鍛錬を続ける修練者でもある。
試練の最終段階で修練者は栄誉ある死を経て、聡明で情け深い王神に仕える栄光の来世に至る事になる。

しかしそれは全てニコル・ボーラスの欺瞞である。
60年前の大修復の直後、ボーラスはアモンケット次元に赴いていた。
そして力を急速に失いつつある時間的制約からボーラス自身も認める荒々しい手段をもって、次元全体を支配下に置いた。

赤子以外の知的生命を全て殺害して歴史を抹消し、次元を統治する神々の記憶を改竄・洗脳。
自らを王神として崇めさせ、試練の文化を捻じ曲げ、アモンケットの人々にそれを信じさせたのだ。

この次元でのボーラスの目的は不死の軍勢を作り上げる事だった。
試練を突破して栄誉の死に至った者は皆、永遠衆と呼ばれる意志を持たぬゾンビに加工されていた。
5つの試練はボーラスが優れた兵士を得るための選別に過ぎなかったのだ。

その後ボーラスは用済みとなった次元を滅ぼすべくアモンケットへと帰還。
手始めに洗脳・封印していた三柱の神をナクタムンに侵攻させて五柱の神の内四柱を殺害。
さらに永遠衆の有用性を試すべく、町中の至る所で永遠衆の軍団による殺戮を起こさせた。
同時にアモンケットへと集結していたゲートウォッチの面々を難なく蹴散らし、絶望させた上でた放逐したのだった。

イクサラン・ブロック~ドミナリア(DOM)

ボーラスは都市次元ラヴニカのプレインズウォーカー、ヴラスカに依頼する形で、
イクサラン次元に存在するアーティファクト、不滅の太陽を手中に収める。

不滅の太陽はその昔、ボーラスをイクサラン次元に封じ込めるために制作されたものであり、
不滅の太陽が存在する次元において次元渡りが不可能となるという代物だった。

同時期に、ドミナリア次元にてボーラスはリリアナを手下とする事に成功する。
リリアナは契約から逃れるためにボーラスが仲介した四体の悪魔を打倒したが、悪魔が全て死亡した時に契約は仲介者であるボーラスへと移る仕組みになっていたのだ。

かくしてボーラスが全能の力を得るための計画は最終段階を迎える。

ラヴニカのギルド(RGN)・ラヴニカの献身(RNA)・灯争大戦(WAR)

ついに始まったボーラスの最終計画、それは多数のプレインズウォーカーの灯*1を収穫することで全能の力を得るというものだった。
手始めにいくつかのギルドに自分の息のかかったプレインズウォーカーを送り込みギルドマスターとする*2ことで各ギルドへの影響力を強める。
ギルド会談*3も決裂させることでギルド間の結束を妨害。
ギルドパクトの力戦を偽装して無理やりギルドパクトを改定しようとするラル・ザレックの計画もボーラス側の工作員ドビン・バーンの手によって失敗。
そしてついにボーラスはラヴニカへと姿を現す。

真っ先に立ち向かったミゼット様を難なく殺害すると、次元橋を開いて永遠衆を送り込み侵略を開始。
さらに不滅の太陽を起動し、次元間の標*4に呼び寄せられたプレインズウォーカーをラヴニカに閉じ込める。

永遠衆の指揮官としてリリアナ・ヴェス、次元橋の守護にテゼレット、そして不滅の太陽の守りにはドビン・バーン。
さらに追加の戦力として、アモンケットの神々から作り上げた永遠神を投入し、プレインズウォーカーから灯を刈り取っていく。

しかしプレインズウォーカーとラヴニカ人たちは団結してこれに対抗。
黒き剣を携えたギデオン・ジュラと復活したミゼット様の活躍で永遠神の半数を失い、テゼレットとドビンも敗走。
軍勢の大半を城塞へと撤退させる。

プレインズウォーカーたちが城塞への猛攻を仕掛ける中、ギデオンが空からボーラスへと黒き剣を叩きつけ…

『魔法の剣を持った英雄がドラゴンを倒すというわけか?そんなことは起きぬ。』

まったく歯が立たずに黒き剣は砕けた。黒き剣の力を妄信することすらボーラスの策略の内だったのだ。
盛大な勝利フラグを叩き折るボーラス様さすが汚い

ボーラスの高笑いが響く中、永遠にボーラスの下僕であることを良しとしないリリアナが、契約違反による死を覚悟で離反。
永遠衆と永遠神を操作し、ボーラスへと差し向ける。
裏切りの代価で体が塵となっていくリリアナを、なんとギデオンが自らを犠牲にして肩代わりする。
リリアナは怒りのまま永遠神を突き動かす。

「恐怖で支配する者の最大の弱点は、恐れることをやめた者である」~永遠の終焉~

二柱の永遠神を押しとどめていたボーラスに、背後からミゼットが二股の槍を突き立てる。
アモンケットの神々のうち、ただ一柱生き残ったハゾレトから受け取った槍を。
その隙をついて永遠神バントゥがボーラスへ噛みつき、ボーラスが集めた灯を喰らい尽くした。その中にはボーラス自身の灯も
灯を失ったボーラスは断末魔を響かせながら消えていった……


この通りストーリーの大まかな流れだとかなりちゃんとした悪役をしている。
…のだが
  • 「兄弟のウギンを殺した人間を支配することで報復する。ウギンもきっと喜んでくれるだろう」と帝国を築く
  • ラル・ザレックを痴情のもつれに導いてプレインズウォーカーとして覚醒させることを狙う
  • ゲートウォッチの五人のコンプレックスをいちいち的確にえぐりぬいてぶっ倒す
  • アモンケットの壁画(自分+ゲートウォッチ五人)を自作する
  • ヴラスカに授ける航海の知識は(自分がドラゴンで要らないはずなのに)自前で覚えたもの
  • アゾールに助けを求める無辜の市民をアゾール像のてっぺんに置き去りにしてプレインズウォーク
妙に個人に対する思い入れが深いというか相手の目線に立った嫌がらせが好きというか、まめなところがあるおじいちゃん
ぶっちゃけ《対抗呪文》系のフレーバー・テキストの方が高飛車感があるほど。
基本セット2019時代ではウギンから見た真実とボーラスの考える真実がまったく違う話になっていることもあり、意外と人間味のあるおじいちゃんである。
日本のラスボス枠の悪役に多い「平民など羽虫程度にしか考えていない大物」「人間のつまらない感情など超越して大局を見る存在」を想像していると、ストーリーを読んでいてちょっと違和感があるかもしれない。
特に自分を模した《王神の立像》のフレーバー・テキスト「独裁者の腹立たしい笑顔。ラヴニカが耐えてきたものすべてに対する侮辱。」というものはイラストやストーリーの雰囲気に合っていることから爆笑を誘い、「呼び込み君*5の音楽に合わせて踊る立像」という動画まで作られたほど。しかもすぐに《立像崩し》で倒されてしまう。
他にも数日かけていよいよボーラスにもトドメが刺されるんだ!と散々盛り上げた挙句に《暴君の嘲笑》でギデオンを地面にビターンと叩きつけたりなど、プレビュー期間を大変に盛り上げてくれた。
あんなにプレビューが盛り上がった期間はおそらくMTGの長い歴史の中で存在しなかっただろう。ボーラスが長い時間活躍した悪役だったこともまた、盛り上がった原因と言えよう。
《悪への引き渡し》?多分成功した時の理想図だったんだろうさ


カードとして



ニコル・ボーラス/Nicol Bolas (2)()()(黒)(黒)()()
伝説のクリーチャー ― エルダー ドラゴン
飛行
あなたのアップキープの開始時に、あなたが()(黒)()を支払わない限り、ニコル・ボーラスを生け贄に捧げる
ニコル・ボーラスが対戦相手にダメージを与えるたび、そのプレイヤーは自分の手札を捨てる
7/7

対戦相手にダメージを与えれば手札を全て捨てさせることができる。
召喚、維持コストが重いので普通に使うのは厳しいが、リアニメイトや踏み倒しからの速攻付与で使い切り全ハンデスとして活躍した。


プレインズウォーカー、ニコル・ボーラス/Nicol Bolas, Planeswalker (4)()(黒)(黒)()
プレインズウォーカー ― ボーラス
[+3]:クリーチャーでないパーマネント1つを対象とし、それを破壊する。
[-2]:クリーチャー1体を対象とし、それのコントロールを得る。
[-9]:プレイヤー1人を対象とする。プレインズウォーカー、ニコル・ボーラスはそのプレイヤーに7点のダメージを与える。そのプレイヤーはカードを7枚捨て、その後パーマネントを7つ生け贄に捧げる 。

初期忠誠度5

プレインズウォーカーを破壊できる、当時としては数少ないプレインズウォーカー。マナコストはやや重いがその効果は強力で、+3という破格の忠誠度上昇でクリーチャー以外のパーマネントを破壊できるのが強い。今のMTGをプレイしていると忘れがちだが、土地を狙って事故らせることも可能。
しかもクリーチャーを破壊するのではなく永続コントロール奪取という、クリーチャーへの対処手段としては極めて強いことができる。奥義に至っては起動=よほど変な状況でもない限りほぼ勝利確定。
新しいカードタイプだったプレインズウォーカーを定着させるべく、「ラスボス感があり実際に強い」というかなり気合を入れて作られたカード。どうしてその優しさを赤に分けてくれなかったんですか?
実際この時期は7マナの《残酷な根本原理》を撃つことを目的にしたデッキ「残酷コントロール」が存在していたため、そういったデッキに1~2枚ほどフィニッシャーとして入っていた。

弱点は「プレインズウォーカーへの驚異となるクリーチャーへの対処にマイナス能力を使わなければならない」という点。現在の感性だと当たり前のように思えるだろうが、この時代の強いプレインズウォーカーのクリーチャーへの対処といえば、
《遍歴の騎士、エルズペス》……+1能力で1/1のトークン生成
《野生語りのガラク》……-1能力で3/3のトークン生成
《精神を刻む者、ジェイス》……-1能力でバウンス
《ソリン・マルコフ》……+2能力で2点ダメージ、ライフ2点回復
と即時性や粘り強さなどがあった。ボーラスは8マナと重いのにクリーチャーへの対処が後手に回りやすく、この時代と言えば《悪斬の天使》を皮切りにクリーチャーの性能がインフレしていた時期である。
ヘタにクリーチャーを対処すると《稲妻》圏内に入ってしまうということもあり、使いづらさが目立つ。
そのためこのカードを出しても勝利が確実になるとは言えず、結局スタンダードでもそこまで使われたカードではなかった。8マナと重いのにこれでは仕方がない。
早い話、当時《稲妻》が帰ってきたことで隆盛を誇っていた赤単バーンを相手には出ることも間に合わないようなカードだとか、続唱系のデッキが大流行していたせいでアドバンテージの概念がぶっ壊れていた時期にちゃんと定着してじわじわアドバンテージ勝負を仕掛けていくカードなんて入れている余裕がないのである。

決して弱いカードではないと褒める人もいれば、トーナメントシーンで重さを毛嫌いする人もいると評価が真っ二つになるカード。エスパーカラーだったら相当強かっただろうが……。
ただし重ささえどうにかできればかなり強いカードであることは間違いなく、当時のレガシーでは《ドリーム・ホール》から出すデッキが考案されたことがある。
もちろん他にもいい選択肢はたくさんあるのだが、3色を持つカードなのでコストにも困らないし自身がコスト役にもなれ、かつ3~4ターン目に出てきて土地を攻めながら定着できるため案外バカにできないのだ。

一時期は他のプレインズウォーカーとの比較に用いられるカードだった。特に《解放された者、カーン》が登場した時期は「無色で出せる上に7マナなのにボーラスとは強さの格が違う」と評判になった。
タルキール期はウギンの奥義を無力化できるという点で、ストーリー再現が好まれた。ウギンの奥義に対してボーラスが奥義を放つと無力化されて抑え込まれてしまう。


王神、ニコル・ボーラス/Nicol Bolas, God-Pharaoh (4)()(黒)()
伝説のプレインズウォーカー — ボーラス(Bolas)

[+2]:対戦相手1人を対象とする。そのプレイヤーは、土地でないカードが追放されるまで、自分のライブラリーの一番上からカードを1枚ずつ追放する。ターン終了時まで、あなたはそのカードをそのマナ・コストを支払うことなく唱えてもよい。
[+1]:各対戦相手は、それぞれ自分の手札からカード2枚を追放する。
[-4]:対戦相手1人か対戦相手がコントロールするクリーチャー1体を対象とする。王神、ニコル・ボーラスはそれに7点のダメージを与える。
[-12]:対戦相手がコントロールする、土地でない各パーマネントをそれぞれ追放する。
初期忠誠度7

God-Pharaoh(ゴッドファラオ)という二つ名がしばし突っ込まれる。
ストーリー中では今までで一番大暴れしていており、能力も強いものがなんと4つもそろっている。特に+1能力が強烈。
折しもアモンケットは重いカードが多かった=環境がゆっくりになると想定されていたため、「強い、絶対に強い!」と期待されていた。
しかし登場した時期が悪すぎた。アモンケットブロックの前、本当にすごいカラデシュブロックの軽くてヤバいカードが環境で大暴れしていたのである。
+2能力も一見強そうだが、めくれるカード次第では状況がさほど好転しないということもある。たとえば相手の《蓄霊稲妻》がめくれても、「7マナのカードを使ったボーナスが2マナのインスタントかよ」「そもそもこのデッキはエネルギーを使わないんだけど」という形でさっぱり噛み合わない。
そしてプラス能力がどちらも盤面に一切干渉しないのに、クリーチャーに干渉できる能力のマイナス値が大きすぎる。一応プレイヤーやプレインズウォーカーに対して7点火力として使うことはできても、これを連発できない上に盤面に干渉するプラス能力を持たないので割と不器用な動きになってしまう。
色拘束も厳しいし、重いパーマネントを使うのならエルドラージでも使った方がいいという話でもあった。グリクシスカラーのデッキとの相性もよくなかったということもあり、結局さほど活躍せずにスタンダードを去った。

一応《ニッサの誓い》を用いたプレインズウォーカー軸のデッキでは色拘束の問題を解決できるので用いられた……のだが、それが使えた期間は3ヶ月程度だったし、《炎呼び、チャンドラ》をはじめもっとましな選択肢はいくらでもあった。
そもそもこの時期は《ラノワールのエルフ》《不屈の自然》などがスタンダードから締め出されてしまっていた時期、つまり早期のマナ加速が弱い時代でもあった。8マナのカードが出せるまでゲームが続かないこともしばしばある。
つまり入るデッキがない、環境に恵まれないというタイプのプレインズウォーカー。そもそもアモンケット前後のスタンダードがそれほど人気があったわけではなく(大体戦乱のゼンディカー~カラデシュのせい)、さほど使われたカードではない。
カジュアルでさえ「ボーラス入れるんだったら《霰炎の責め苦》とか入れたいよね」「《王神の贈り物》とか《末永く》使った機械巨人リアニの方が楽しいし……」なんて言われてしまう始末。
一方、王神の名を冠した《王神の贈り物》や、イラストで活躍している《破滅の刻》はスタン落ちまで活躍した。


欺瞞の主、ニコル・ボーラス/Bolas, the Deceiver (5)()(黒)()
伝説のプレインズウォーカー — ボーラス(Bolas)

[+3]:各対戦相手は、それぞれそのプレイヤーが土地でないパーマネント1つを生け贄に捧げるかカード1枚を捨てるかしないかぎり、3点のライフを失う。
[-3]:クリーチャー1体を対象とし、それを破壊する。カードを1枚引く。
[-11]:欺瞞の主、ニコル・ボーラスは各対戦相手にそれぞれ7点のダメージを与える。あなたはカードを7枚引く。
初期忠誠度7

「プレインズウォーカーデッキ」として初心者に、PWの何たるかを教えるために出張。王神として悪逆非道の限りを尽くしたのに、大忙しである。
さすがのボーラス様も我らがMAROさんには逆らえない。*6
性能としては小回りが利かないが、単純かつ強力な力押し技が目白押し。パーマメント破壊と火力+手札回収で初心者の興味を注ぐには十分であろう。ガチで使うにはマナコストの多さと+能力の消極性(相手に選択を選ばせるため)が気がかり。

後にこの「初心者向けのティーチング役」として、MTGAのチュートリアルの相手を務めてくれる。
リアニメイト戦法の強力さを実践した上でセリフまでつけて教えてくれるが、ストーリーでの凶悪さを知っていると「孫に将棋を教えるおじいちゃん」のような穏やかさがあると評判。
まぁ初心者にニコル・シュートとか残酷コントロールとか使ったらそれこそ新参バイバイだもんねぇ……いい時代になったものである。


破滅の龍、ニコル・ボーラス/Nicol Bolas,the Ravager(1)()(黒)()
伝説のクリーチャー — エルダー ドラゴン

飛行
破滅の龍、ニコル・ボーラスが戦場に出たとき、各対戦相手はそれぞれカード1枚を捨てる。
(4)()(黒)():破滅の龍、ニコル・ボーラスを追放し、その後、これを変身させた状態でオーナーのコントロール下で戦場に戻す。この能力は、あなたがソーサリーを唱えられるときにのみ起動できる。
4/4

↓変身後

覚醒の龍、ニコル・ボーラス/Nicol Bolas, the Arisen
伝説のプレインズウォーカー — ボーラス

[+2]:カードを2枚引く。
[-3]:クリーチャー1体かプレインズウォーカー1体を対象とする。覚醒の龍、ニコル・ボーラスはそれに10点のダメージを与える。
[-4]:墓地からクリーチャーかプレインズウォーカーであるカード1枚を対象とし、それをあなたのコントロール下で戦場に出す。
[-12]:プレイヤー1人を対象とし、そのプレイヤーのライブラリーの一番下以外のカードをすべて追放する。
初期忠誠度7

プレインズウォーカーになる前の若きボーラス、そしてプレインズウォーカーに覚醒した直後のボーラスを描いた両面カード。
収録されたのは基本セット2019だが、アイデアとしてはマジック・オリジンの各種両面カードと同じである。
表面は単体のクリーチャーとして見ても高性能。4ターン目に置ければ当然強いし後半で引いても変身で無駄になりにくい。
裏面は4つの能力を持つプレインズウォーカー。ぶっちゃけどの能力も強いので、可能になり次第変身して制圧をしたい所。
リアニメイト能力は対象に制限がないので、相手のテフェリーを釣り上げてキッパッペッしてもいいし、自分の墓地に眠る表面を釣り上げて変身と釣り上げで毎ターンループさせるのもかなり強力。
難点としては、やはり変身にかかるマナが非常に重い事と、飛行を持っているのでスタンダード環境に蔓延する飛行除去に引っかかりやすい事か。
当時は該当する色のデッキに好んで用いられ、ようやくトーナメント級のボーラスが来たと評判だった。やはりこのゲーム、軽さが正義なのである。


龍神、ニコル・ボーラス/Nicol Bolas,Dragon-God()(黒)(黒)(黒)()
伝説のプレインズウォーカー ― - ボーラス

龍神、ニコル・ボーラスは、戦場にある他のプレインズウォーカーすべての忠誠度能力をすべて持つ。
[+1]:あなたはカードを1枚引く。各対戦相手はそれぞれ、自分の手札からカード1枚か、自分がコントロールしているパーマネント1つを追放する。
[-3]:クリーチャー1体かプレインズウォーカー1体を対象とし、それを破壊する。
[-8]:伝説のクリーチャーもプレインズウォーカーもコントロールしていない各対戦相手はそれぞれこのゲームに敗北する。
初期忠誠度4

王神から龍神に変わったボーラス様。色もこれまでの金色のドラゴンから黒地で輝くいかにも強そうな感じになった。
クリーチャーである《破滅の龍》を除けば何気に最軽量。その分色マナシンボルがずらっと並んでおり、キチンとマナベースを整えなければならない。
プラス能力は相手に選択権があるものの、こちらも1ドローが出来るので見たまんまアドバンテージを稼げる。追放なので相手の墓地を増やさないのもグッド。
小マイナスは恒例と化した生物とPWへの除去。今までのものと違って大ダメージではなく直接除去なので、多少ではあるが信頼性が上がっている。
奥義はかなり珍しい、使用時点で勝敗を決してしまうもの。これまでプレインズウォーカーの奥義は「打てば勝ち」と言われる類のものは多かったが、直接敗北させるのは初となる。

こちらの奥義の場合、防ぐにはインスタントタイミングで伝説持ちを場に出すor釣り上げなければならないため、妨害手段はかなり限定される。
そして他PWの忠誠度能力を使える常在型能力も持っている。そんな場ならまず勝ちだが、《覚醒の龍》が居れば1ターン4ドロー、ジェイスの奥義をパクれば無限にボーラスなど夢のようなコンボがいくつも実現できる他、強力だが初期忠誠度や重さ、能力の組み合わせが災いして使いにくい効果を運用したりと小回りも効く。
ただ結局のところ、使用できるプレインズウォーカーが50種類くらいあった環境だったにもかかわらずさっぱり使われることなくスタン落ちした。
間の悪いことにここから環境が非常にインフレしていったこともあり、デッキの研究において早々に見限られてしまったというのもある。PWデッキのものを除けば一番使われなかったボーラスだろう。
重くてもダメ、軽くてもダメ。「偉大なラスボス」をカード化するというのは本当に難しいことなのだということをヴォーソスに教えてくれたのである。

日本語版のみ存在する限定イラスト版は、特撮作品のイラストやガンプラの箱絵などで有名な超大御所イラストレーター開田裕治氏が担当。
ぱっと見はドミナリアメンヘラトカゲらしくショボく見えるためたいへん不評だったが、何度も見ているうちに良く見えてくるともっぱらの評判。
最大の問題はこのカード自体が入るデッキを極めて選ぶことだろう。つまりせっかくイラストがよくても、使いたくても使えないのだ。


この他にも様々なカードで登場しており、アラーラ・ブロック、「破滅の刻」、「基本セット2019」あたりではフィーチャーされていた。《闇の暗示》のような専用のサポートカードも存在している。
ボーラス絡みのカードでは《残酷な根本原理》《王神の贈り物》《破滅の刻》あたりはトーナメントでもよく使われた。レガシーでも一時期《衝合》が《ドリーム・ホール》や《全知》から使われるサーチカードの定番枠だった。
他にもファンデッキを組んでみると意外と面白い(強いとは言ってない)《多相の戦士の真髄》《悠長な再構築》《力の頂点》なんてカードもある。
10年以上にわたり悪役をつとめてきたキャラクターなのでファンも多く、MTG wikiには登場カードが余さずまとめられている。


ニコル・ボーラス /闇/文明 (8)
クリーチャー:エルダー・ドラゴン/プレインズ・ウォーカー 7000
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
W・ブレイカー
このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、相手は自身の手札から7枚選び、捨てる。
このクリーチャーが攻撃する時、相手のクリーチャーを1体、破壊する。

MTGの姉妹作であるデュエル・マスターズに参戦したボーラス様。
詳しくは専用項目にて→エルダー・ドラゴン(デュエル・マスターズ)


ニコル様の登場するフレーバーテキスト



『罪なき者は罪ある者の犯罪の報いを受けるのか? もちろんその通り。それこそが弱者の運命と言うものだ。』
『最高の手駒とは、自身の手駒を持っている手駒だ。』
『生と死は取り替えが利く。』
「ニコル・ボーラスは手下と犠牲者を区別しない。」
『私に敵対すること以上の愚行もあるまい。』
『それが信仰の最後の拠り所であると悟ったとき、恐怖を完全に理解することになる。』
「ニコル・ボーラスは力を最も悪用する者に力を与える。」
『下らない作戦もそれまでだな、プレインズウォーカーよ。身の程知らずのうぬぼれはどこへいった?』
『ここでは一切の存亡は我の手の上よ。おぬしらゲートウォッチもな。』
『おぬしは契約を履行しなかった。おぬしは我のものだ。我に仕えるか、さもなくば死ぬがよい。』
「多元宇宙を救った大修復は、同時にニコル・ボーラスの力を磨り減らした。」
「かつての栄光を取り戻すまでニコル・ボーラスに休息はない。」
『我が望めば、その通りになる。』
『神々までもひざまずくのだ。』
『全き服従、我の望むものはそれだけだ。』
『魔法の剣を持った英雄がドラゴンを倒すというわけか?そんなことは起きぬ。』
「恐怖で支配する者の最大の弱点は、恐れることをやめた者である。」
「何千年にもわたって勝利を画策してきたボーラスは、敗因を熟考する永遠の時間を手に入れた。」



ニコル・ボーラスは追記と差し戻しを区別しない。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • MtG
  • プレインズウォーカー
  • ドラゴン
  • チート
  • エルダー
  • 暴君
  • 師範
  • 帰ってきたニコル
  • 帰ってくれニコル
  • LoV
  • レジェンド
  • クロニクル
  • ボーラス様
  • だいたいこいつのせい
  • 最凶最悪
  • 元凶
  • ジェイス
  • テゼレット
  • リリアナ
  • ドミナリア
  • ニコル・ボーラス
  • ドミナリアメンヘラトカゲ
  • 王神
  • 龍神

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2023年03月02日 12:11

*1 プレインズウォーカーになるために必須のもので、それ自体が強大な魔力を秘めている。

*2 ラヴニカのギルド・ラヴニカの献身のギルド指導者サイクルはクリーチャーとプレインズウォーカーが混在しているが、プレインズウォーカーはボーラス側とされている。ただし完全に忠誠を誓うものから単に利用されているだけのものまで内訳は様々。

*3 すべてのギルドの協力をもってギルドパクトを改定し、ニヴ=ミゼットが強大な力を得るという計画だった

*4 様々な次元からプレインズウォーカーをラヴニカへと呼び寄せる装置。ボーラスと戦う戦力を集めるためにミゼットが用意していたものだが、実はボーラスの工作員が精神魔法でミゼットの思考を誘導して作らせたものである。

*5 スーパーなどに置いてある音声再生装置。「ぽぽーぽぽぽぽ ぽぽーぽぽぽぽ」の妙に耳に残る音楽で人気を博しはじめたのがこの時期。

*6 「PWデッキ」は初心者に威圧感を与えないために比較的わかりやすい能力にまとめており、なおかつ上級者が購入意欲を上げないよう意図的にトーナメントレベルではない性能に抑えている。