ギデオン・ジュラ/Gideon Jura(MtG)

登録日:2011/03/27(日) 21:10:34
更新日:2024/02/29 Thu 22:09:21
所要時間:約 7 分で読めます




正義と平和のため、私はゲートウォッチとなる。

ギデオン・ジュラはマジック・ザ・ギャザリングに登場するプレインズウォーカーの一人。

正義感の強い人間の男性で、正義の色であるの代表的なプレインズウォーカーの1人といえる。
筋骨隆々なその姿はまさにアメリカのスーパーヒーローのイメージそのもの。

弱者を守るためだけに強力な力を使い、困っている人がいたらたとえどんな状況でも手を差し伸べざるを得ないお人よしとまで言える正義感を持つ。
心に激情を秘めながらも冷静沈着にして寡黙。プレインズウォーカーには珍しく前線に出ることを好み時には自らの犠牲すら厭わない。MTG界きっての漢である。
友でもあるジェイスとは別ベクトルでまさしく主人公のようなキャラクターといえる。

カードとしては自身をクリーチャー化する能力を持っていることが多い。たいていの場合は破壊不能も持っており、クリーチャー化による除去の危険は減っている。

ちなみに萌えチャンで有名な「燃え尽きぬ炎」にも登場しているが、キャラ付けがあまり進んでいなかったこともあってか、アメリカ的なヒーローである本家と異なり日本的なイケメンになり、性格もどことなく冷めた性格になっている。
むしろ、どちらかというとジェイスに近いキャラ付け。

チャンドラと次元ケファライで出会い、彼女が求めていた巻物の奪取をくじいたためか、彼女に恨まれている。
その際彼女と共に次元ディラディンでプレインズウォーク含む魔法を封じられ、仕方なく共闘することに。

以下に歴代での代表的なギデオンの性能を紹介する。

ギデオン・ジュラ/Gideon Jura (3)()()
伝説のプレインズウォーカー - ギデオン
[+2]:対戦相手1人を対象とする。そのプレイヤーの次のターンの間、そのプレイヤーがコントロールするクリーチャーは可能ならギデオン・ジュラを攻撃する。
[-2]:タップ状態のクリーチャー1体を対象とし、それを破壊する。
[0]:ターン終了時まで、ギデオン・ジュラは6/6の人間・兵士クリーチャーになる。それはプレインズウォーカーでもある。このターン、彼に与えられるすべてのダメージを軽減する。
6


ゼンディカーブロック最終弾、エルドラージ覚醒にて収録された記念すべき最初のギデオン。レアリティは神話レア。

さて、結構サラッとカードテキストを書いたが。もう一度よく彼の能力を見て欲しい。


特に初期忠誠カウンターの数辺り。数あるプレインズウォーカーの中でもダントツの6なのである。

+2能力を使えばなんと8。なにこの硬さ。

現在、相手プレイヤーのクリーチャーからプレイヤーやその他プレインズウォーカーを守ることが出来るという能力が評価され、青白コントロールやCaw-Bladeによく投入されている。

精神を刻む者、ジェイスとギデオンの兄貴が並んで出てきたりしたら……。考えたくもない。

まあジェイスは禁止になったけどね!

また、彼自身エルドラージを倒す事を使命としているからか−2効果でタップ状態限定とはいえ問答無用でクリーチャー撃破まで出来てしまう。
……エルドラージを倒すという使命を持ちながらウラモグを倒せない事については触れないであげて下さい。
更になんと自身をクリーチャー化して戦う事すら出来る。
それも5マナで6/6ダメージ軽減…
ただのクリーチャーだったとしても十分過ぎるスペックである。

なお、
このターン、に与えられるすべてのダメージを軽減する。

フレーバーテキストではありません。
プレインズウォーカーの特権といったところか。

因みにマナコストはあの悪斬の天使と全く同じである…。
余談であるが、彼の武器は彼自身かなりのイケメンで勇者の様な風格(FFのラスボスにも似たような姿の奴がいるが)を漂わせているのに、剣とかのいかにもヒーローっぽい武器ではなく鞭である。
また、効果も自身に強制突撃というドMな効果である。
そのため実はSMマニアなのでは…と言われてるとか…。


ゼンディカーブロックから少し経ったラヴニカへの回帰ブロックでも再登場。
正義の勇者ギデオン/Gideon, Champion of Justice (2)()()
伝説のプレインズウォーカー — ギデオン

[+1]:対戦相手1人を対象とする。そのプレイヤーがコントロールするクリーチャー1体につき1個の忠誠カウンターを正義の勇者ギデオンの上に置く。
[0]:ターン終了時まで、正義の勇者ギデオンは彼の上に置かれた忠誠カウンターの数に等しいパワーとタフネスを持つ、人間・兵士クリーチャーになる。それは破壊不能を得る。彼はプレインズウォーカーでもある。このターン、彼に与えられるすべてのダメージを軽減する。
[-15]:他のすべてのパーマネントを追放する。
4
クリーチャー化時のサイズが固定だった1枚目と比べて、こちらはサイズが不安定になってしまっている。
その分、忠誠度を大きく増やすことが出来る効果も持っているが、そもそも忠誠度を大きく増やすためには相手の場にそれなりのクリーチャーが並んでいなければならず、そういった状況ではギデオンが殴り倒されてしまうというオチだろう。
というかこの時期のスタンダードには《至高の評決》《終末》《漸増爆弾》などの優秀な全体除去があり、横並びする戦術自体が使いづらかった。
ぶっちゃけ横並び系のカードを対処するならそれらを使えばいいし、横並びしてこない相手には採用する意味がない。
強すぎた最初のギデオンから反省したとも取れるが、流石に採用率は低く、後に登場したギデオンと比べても見劣りすると言わざるを得ない。

なお、回帰ブロック~戦乱のゼンディカーにおけるギデオンはエルドラージと戦いながら、ラヴニカ*1ボロス軍に協力し、そちらでも戦うという忙しい毎日を繰り広げていた。
最終的に方向性の違いからボロスを離れるものの、ボロスの指導者であるオレリアはギデオンの影響を受けたらしく、後のラヴニカ第三部ではギデオンの「弱者を守る」というスタンスを受け継いでいる*2
後の灯争大戦では再びギデオンと協力体制を敷いており、彼は再度ボロス軍の戦士たちを率いている。


マジック・オリジンではジェイスやチャンドラらと共に過去の姿を描いたカードが収録された。

アクロスの英雄、キテオン/Kytheon, Hero of Akros ()
伝説のクリーチャー — 人間 兵士

戦闘終了時に、この戦闘でアクロスの英雄、キテオンと少なくとも2体の他のクリーチャーが攻撃していた場合、アクロスの英雄、キテオンを追放し、その後、これを変身させた状態でオーナーのコントロール下で戦場に戻す。
(2)(白):ターン終了時まで、アクロスの英雄、キテオンは破壊不能を得る。
2/1

歴戦の戦士、ギデオン/Gideon, Battle-Forged
伝説のプレインズウォーカー — ギデオン

[+2]:対戦相手がコントロールするクリーチャーを最大1体まで対象とする。それのコントローラーの次のターン中、そのクリーチャーは可能なら歴戦の戦士、ギデオンを攻撃する。
[+1]:クリーチャー1体を対象とする。次のあなたのターンまで、それは破壊不能を得る。そのクリーチャーをアンタップする。
[0]:ターン終了時まで、歴戦の戦士、ギデオンは破壊不能を持つ4/4の人間・兵士クリーチャーになる。これはプレインズウォーカーでもある。このターン、これに与えられるすべてのダメージを軽減する。
3

表面のカード名にある「アクロス」はテーロスの地名であり、これによりギデオンがテーロス出身であることが明らかとなった。
幼少期のギデオン――キテオン・イオラはいわゆる不良で、仲間の不正規軍と共にやんちゃしていたのだが、ある時死の神エレボスと対峙することになり、そしてキテオンの慢心からキテオン以外の不正規軍は全滅してしまう。
この衝撃からプレインズウォーカーに覚醒し、そして今の様な弱者を庇護する筋肉漢となった。

表面のスペックはかつてのサバンナ・ライオンを彷彿とさせるが、時代の流れもあってかなり強化されている。
伝説なので複数体並べられないのはウィニー系デッキにとってデメリットだが、どちらかと言えば変身後が本領発揮なのであまり気にはならないかもしれない。
変身後はいつものギデオンと言える能力。初期忠誠度は低いが、二つ目の+1で自分を守ることが可能。
変身前の種族が人間という事で、イニストラードを覆う影ブロックで復活した人間シナジーとは好相性。色もピッタリである。
ただ、このギデオンにとって最大の悲劇はコイツ↓がスタンダードで同居していた事だろう……


ゼンディカーの同盟者、ギデオン(2)()()
伝説のプレインズウォーカー — ギデオン

[+1]:ターン終了時まで、ギデオンは5/5の人間・同盟者・兵士クリーチャーになる。それはプレインズウォーカーでもある。このターン、彼に与えられるすべてのダメージを軽減する。
[0]: 白の2/2の騎士・同盟者クリーチャー・トークンを1体戦場に出す。
[-4]: あなたは「あなたがコントロールするクリーチャーは+1/+1の修整を受ける。」を持つ紋章を得る。
4

戦乱のゼンディカーブロックでまたも登場したギデオン。
1番目の能力はクリーチャー化。サイズは小さくなったがそれでも5/5破壊不能が殴ってるのは脅威。登場時のスタンダードは追放除去が多いためその辺をケアする必要はあるが
また、同盟者のクリーチャータイプを持つため同盟者の部族シナジーを受けられる様になった。

2番目の能力はトークン生成。エルズペスを思わせる能力だが出てくるのが熊相当のトークンのため相手にしてみればうざいことこの上ない。
出てくるトークンは同盟者であるため場の同盟者の誘発を狙える点も大きい、それこそトークンが出てくるたび場のクリーチャーが全員絆魂・先制・威迫持ちになる笑えない事態になったりする

3番目の能力は栄光の凱歌効果の紋章を得る奥義。栄光の凱歌に比べ実質1マナ重いがなんと初期忠誠度から使用可能。また紋章であるためほぼ永続全体強化と見れば面で戦うウィニーにはありがたい能力。
無論普通のビートダウンでもまず腐らない能力であり、ギデオンを複数引きした場合でも腐らない選択肢として有用。

総じて重過ぎないマナコストに対してどれも汎用性の高い能力であり、登場当初からアグロデッキは勿論、ミッドレンジ、コントロール等あらゆる白いデッキで採用され、スタンダード落ちまで環境に居座り続けた類稀なるパワーカードである。
というか、後に公式コラムで「(同盟者)ギデオンはヤバすぎた」とまで言わせたほどで、イマイチ活躍しきれなかったオリジンギデオンの仇を取った形となった。

逆にこのカードが活躍していた時期というのはMTGがかなり不安定だった頃。
「スタンダードのローテーションを変更→やっぱり戻す」というアナウンスや、「プレインズウォーカーの唯一性ルールの撤廃」など普通に遊ぶ分にも影響を受けるルール変更が多く、
「同盟者ギデオンと付き合う時間が半年伸びた」「モダンでギデオン三兄弟という地獄みたいなデッキに苦しめられる」など、これらのルール変更のシンボルともいえる存在になった。
プレイヤーはこの頃から「ギデオンいい加減に消えてくれ」「死ね」などの罵詈雑言を吐くようになる。

背景ストーリー的にはジェイス、チャンドラ、ニッサと共にプレインズウォーカーの同盟である「ゲートウォッチ」を結成し、エルドラージも含めた多元宇宙のあらゆる脅威に対抗するべく活動するようになった。
ゼンディカーでウラモグとコジレックを倒した後、イニストラードに出現したエムラクールを倒しに行き、その後チャンドラの故郷カラデシュでは領事府から弾圧を受ける改革派に手を貸すこととなる。


試練に臨むギデオン/Gideon of the Trials (1)()()
伝説のプレインズウォーカー — ギデオン

[+1]:パーマネント1つを対象とする。あなたの次のターンまで、それが与えるダメージをすべて軽減する。
[0]:ターン終了時まで、試練に臨むギデオンは破壊不能を持つ4/4の人間・兵士クリーチャーになる。これはプレインズウォーカーでもある。このターン、これに与えられるダメージをすべて軽減する。
[0]:あなたは「あなたがギデオン・プレインズウォーカーをコントロールしているかぎり、あなたはこのゲームに敗北できず、対戦相手はこのゲームに勝利できない。」を持つ紋章を得る。
3

アモンケットでカード化されたギデオンは(キテオンを除けば)これまでだと最軽量。
従来のダメージ軽減、クリーチャー化に加え、ユニークな紋章精製能力を持っている。
紋章はスタンダードよりもモダン等のコンボとして生かす手段が多いフォーマット向けで、デメリットとして敗北してしまう各種カード効果を踏み倒すことが出来る。
流石に同盟者ギデオンほどのパワーではないものの、それでもその軽さとパンチ力に間違いは無いため、白いビートダウン系デッキやコントロールで採用された。

アモンケットでは故郷であるテーロスの傲慢な神々と比較して、人々との距離が近いアモンケットの神々に感銘を受けていた。
しかし、神々が修練者に課す試練の最後が修練者の死によって締められるという事を知ると、一転して神への造反者となった。
その後、アモンケットに降り立った王神と交戦するも圧倒的な力の差で敗北し、初出時から使い続けていた愛鞭のスーラを無くしてしまう。
何とかドミナリアへと逃げ延びたゲートウォッチ一行は、ボーラスへの対抗策を練りつつもドミナリアを脅かす陰謀団を倒すための行動を始める。
そして、陰謀団の要塞で新たな獲物として黒き剣*3を入手し、陰謀団を支配していたベルゼンロックを打ち倒し、ボーラスとの最終決戦の場であるラヴニカへと赴く。

ゼンディカーの同盟者と区別するために、通称「試練ギデ」「3ギデ」。そこまで強いカードというわけではなかったのだが、
本来スタンダードで同居するはずではなかった《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》とともにスタンダードで存在感を見せて様々な電波デッキを虐めたことや、
いいかげんギデオンばっかでプレイヤーが飽きてきたこと、その「試練に臨む」という他のギデオンに比べてなんか軽い名前などから批判の声が大きくなる*4


黒き剣のギデオン/Gideon Blackblade (1)()()
伝説のプレインズウォーカー — ギデオン

あなたのターンである限り、黒き剣のギデオンは破壊不能を持つ4/4の人間・兵士・クリーチャーとなる。これはプレインズウォーカーでもある。
あなたのターン中に黒き剣ギデオンに与えられるダメージを全て軽減する。
[+1]あなたがコントロールしている他のクリーチャー最大1体を対象とする。ターン終了時まで、それは警戒か絆魂か破壊不能のうち、あなたが選んだ1つを得る。
[-6]土地でないパーマネント1つを対象とし、それを追放する。
4

灯争大戦に収録された、黒き剣を携えたギデオン。灯争大戦に収録される他のプレインズウォーカーと同様、常在型能力を持つ。
ついに能力抜きでクリーチャー化出来るようになった。召喚酔いの影響を受けるため、着地直後から殴れないのは注意。
+1能力はクリーチャー強化、マイナスは万能除去といずれも腐りにくい能力を持っている。+能力は場にクリーチャーがいなくても使える。
登場時のスタンダードには同マナ域にベナリア史という優秀なエンチャントが存在するため、どちらを優先するかは自分や相手のデッキと相談しよう。
そして恐らく、通常のカードセットに収録される最後のギデオンである。

なぜなのかというと灯争大戦のストーリーで、ギデオンは死んでしまうからである

リリアナがボーラスを裏切った時、彼女とボーラスの間で交わした契約により、リリアナが消滅しそうになる。
リリアナは覚悟を決めるが、彼女の前にギデオンが現れた。ギデオンは彼女の契約の代償を肩代わりしようと試みたのだ。
利己的なはずのリリアナが制止しようとするも、彼は自らの消滅を選び…そして鎧だけが残った。

戦いが終わった後、勇敢な犠牲者である彼の死に多くの人が悲しんだ。
チャンドラに至っては消滅の原因となったリリアナに対し恨みを抱くことになってしまっている。

彼の鎧はチャンドラ、ニッサ、オレリアらの手によって葬儀が施され、テーロスに埋葬されることになった。
ゼンディカーを、イニストラードを、カラデシュを、ドミナリアを、ラヴニカを、多くの人々を、そしてリリアナを救った英雄の像がそこに建った。



テーロスの死の国、そこで1人の青年キテオン・イオラが、自身の慢心で死んだ不正規軍の友たちと再会し、そして「心温まる贖罪」を遂げた。

キテオンは人生の日々で戦争を知り尽くしてきた。その彼がついに平和を知った。

「義を見てせざるは勇無きなり」という言葉を体現するという、当時のMTGにしてはとんでもなく珍しい熱血漢であり、登場当時からそのキャラクターのオリジンも明かされていなかったため「男の中の男」のように好ましく思う人もいた。
戦いに明け暮れた彼は今、故郷テーロスで安らかに眠っている。

"I will keep watch."


……と書くと結構ハードなキャラなのだが実際の描写はなかなか面白い男で、上記のSMマニアなんてネタが的外れで寒く見えるレベル*5
ドレスコードに引っ掛かる外見で高級レストランに単身乗り込んできたり、パーソナルスペースの広いニッサに若干煙たがられたり、リリアナとは相いれないタイプなので散々不名誉なあだ名をつけられたり、
破壊不能をいいことに単身で敵陣に乗り込んで大暴れしたり、リリアナが勝手に部屋を占拠したので床で寝る羽目になったり、《新たな信仰》→《残酷な現実》の即落ちっぷりが面白かったりとストーリーで散々やりたい放題して笑いを添え、
「ストーリーってなんか専門用語が多いし複雑なだけなんだろ?」と思っていた人々の認識を大きく改めた。
イラストも面白く、リリアナのゾンビと共闘する《集団的努力》ではあからさまにイヤそうな顔をしていたり、ドミナリア版の《ギデオンの叱責》ではグーで悪漢をぶん殴るという体育教師みたいなことをやっていたりと常に笑いを添えてくれた。

リリアナとは相いれないと言っても彼自身は最後まで彼女を理解しようと努力し、「ドミナリア」では彼女自身がはっきりと拒絶してもしつこく助けの手を差し伸べ続けた。
ストーリー中にジェイスが「リリアナは裏切る。肩入れするな」と強硬に主張して結果的に裏切ってしまった時にすら最後までリリアナのことを信じ続け、結果としてそれが灯争大戦の大団円につながるなど、彼が果たした役割は非常に大きい。

何より彼の見せ場がWeb連載の時期と大きくかぶっていることもある。分かりやすい理念を持ち、打算や裏表のない熱血漢が分かりやすい戦い方をするというのはやはり爽快なものである。
Web連載されていないストーリーというのは情報が非常に断片的になりやすく、中にはまったく違うことを言っている情報源すらある*6アラーラ~イニストラードはその最たる例だった。
各々が都合のいい部分だけを取り上げてネタにするものだから、ギデオンが登場した「エルドラージ覚醒」も、
  • 《臨死体験》のフレーバー・テキストを考えるにエムラクールのことは何とか撃退したのだろう
  • ギデオンが一時撤退したって話を聞いた、偉そうなことほざいておきながら逃げたに違いない
などの派閥がそれぞれの間違いを指摘し合うなど、当時のヴォーソスは本当に地獄だった。
それを非常にわかりやすい一次情報源としてまとめてくれるWeb連載はとてもありがたく、マジック・オリジンの頃から出ずっぱりだったギデオン(とジェイス)はその中でもMTGのストーリーに引き込んでくれる好漢だったのだ。


そしてこれまでそのスタンダードを定義するレベルのカードパワーやMTGが不安定だった時期にその活躍が重なったことも含め、散々「消えろ!」「死ね!」と言われ続けたギデオンだが、
いざ灯争大戦で本当に死んでしまうと「死ねとか消えろとか言ったけど本当に死ぬなんて」とその退場を大きく惜しまれた。
灯争大戦はそのストーリーに加え、「アメリカのデモ行進とか自己顕示欲の塊みたいな像といったネタ性の高いイラスト」「かっこいいフレーバー・テキストが怒涛のように押し寄せてくる」「空気を読まずに殺し合ってるバカ2人」「突然出てくる各ギルドの最終兵器」など、
次から次へと熱い情報が流れ込んでかつてないほどにプレビューが大盛り上がりした時期だったが、そのクライマックスシーンのひとつがこのギデオンの死、そして同時に発売が発表されたプロモカードセット「Signature Spellbook: Gideon」版の《安らかなる眠り/Rest in Peace》*7である。

"I will keep watch."というフレーバー・テキストもまた芳醇で、ゲートウォッチの一員であり続ける、見守り続けるなど様々な意味が込められている。
MTGでは珍しいことに「プロモカードなのに真っ当な意味で非常に人気の高い一枚」である。

ギデオンはメインストーリーがWeb連載されるようになってから、ネタでもガチでも常に輝かしい活躍を繰り広げてきた男だったため、その死も大きく惜しまれた。
その死は多くのプレイヤーにショックを与え、引退者の中にすら「ギデオンがツイッターで話題になっていてその死を知った」という形で往時をしのぶ者もいた。
同時に一切晩節を汚すことなく上質な退場ができたことを喜ぶ声もまた多かった。死んだことを、という意味ではなくいい退場シーンをもらえたことを、である。
というのもMTGのキャラの死亡に関するシーンといったら……

  • キャラクター(と読者)の期待を裏切ってから死亡(ウルザ、ジャラド)
  • 敵の手に落ちてから散々晩節を汚してまったく同情できなくなってから死亡(アーテイ、クロウヴァクス)
  • 死亡シーン自体はカード化されているが誰が死んでるかよく分からない(ヴォルラス、サーボ)
  • 連載や翻訳、情報源の更新が途中で終わってしまったせいで生死すらよくわからない(大縄口、スリヴァーの女王、ローウィン・シャドウムーア全般)
  • これまでのあらすじやダイジェストで死亡(スロバッド、グリセルブランド)
  • 周囲の制止も聞かず自分勝手な行動で迷惑をまき散らし周囲に呆れられたあげく自滅に近い形で破滅し死亡(ドムリ・ラーデ、ルーカ)

などろくなものがなく、これに加えて

  • 死んだと言われてたが元通りに生き返る(エルズペス、ダクソス。あっさり灯を取り戻したテフェリーもこのパターンに近い*8
  • 言葉遊び的に「死んだと明言していない」のであっさり再登場(ヤヤ・バラード。ウギンもかつてはこのパターンだと思われていた*9
  • 上のパターンの印象が強いせいでどうせ甦るだろうという憶測や熱望が伝言ゲームで「生存している」という噂に変わっていくもの(かつてのヨーグモス)
など、とにかく「かなり」雑なのである。そういった悪い意味での信頼感があったMTGにおいて、これほど劇的に退場した例は皆無だったのだ。

また、ストーリー上で古いキャラが同窓会のように集うインベイジョンや時のらせんなどは「古いキャラクターを清算して設定を整理する」という役割を持たされることが多かった。
いかし蓋を開けてみれば死んだキャラはギデオン、ドムリ、ダクなどわずかだったことも、彼の劇的な退場を印象付けた*10

しかも彼は肉体すら残らずに死んでしまったため、「死の国へ行った(肉体的に死んだわけではない)」という理屈でよみがえったエルズペスや、「封印されてしまった(肉体的に死んだわけではない)」ボーラスのような、いわゆる再登場に備えた伏線も今のところは折れている状態だ。
そのキャラ人気から甦ってほしいという声も多いが、この「甦るのが絶望的な状況」が彼の死(とその原因であるボーラスの契約の絶対性)をなおのこと印象深く、そして味わい深くしている。
そして《心温まる贖罪》《安らかなる眠り》のイラストやフレーバー・テキストにより「ああ、よかったなぁギデオン」と涙ぐませることにも成功しているのだ。
つまりこれまでのストーリーにおける失敗を反省したり、その悪い意味での信頼感を逆手に取ったことで、彼の死が劇的なものとして扱われているのである。

しかしギデオンはそのリーダーシップと献身性、お人好しな脳筋馬鹿としてのキャラが非常に人気であり、シナリオ的にもこいつが中心にいると非常に動かしやすいという事情があった。
「ゼンディカーの夜明け」では、ギデオンならどう説得しただろうかと悩みながら仲たがいをするニッサとジェイス。
そして「ストリクスヘイヴン:魔法学院」では、ギデオンを蘇らせたいと知識を必死に求めるてるうちにテロリストの存在を感知し自分なりにギデオンのように他人に救いの手を差し伸べる行動に出るようになったリリアナ。
その死をネタに(というと言い方は悪いが)物語が展開されており、ゲートウォッチの中では彼は今でも大きな影響をもたらし続けているのである。
特にストリクスヘイヴンの《過去対面法》ではイラストに登場しており、そういう意味ではまだまだ死んだキャラではない*11

今のところギデオンの新カードが出る気配はないが、基本セットでボーラスやテフェリーがフィーチャーされた時にはストーリーラインですでに死亡・退場しているキャラが新しくカード化されており、
統率者系の特殊セットにおいてもかつてのキャラがカード化されるなど、新カードが出ないと明言されているわけではない。

しかしもしカード化してしまえば、彼の死が与えたMTGへの熱や、死という設定に対する信頼性が冷めてしまうことは言うまでもないだろう。
このタイミングの見極めに失敗するとあらゆる要素が台無しになってしまう*12

ちなみにゲーム的にはギデオンを参照するカード、特に《ギデオンの勝利》が強化されないこと以外特に問題はなかったりする。むしろ出ないでくれ、もうスタンダード支配されるのはこりごりだよ……。


"I will keep Tsuiki."

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • MtG
  • 神話レア
  • プレインズウォーカー
  • ドM
  • ヴェイン・ソリドールではない
  • ギデオン・ジュラ
  • テーロス
  • ギデオン
  • ゲートウォッチ
  • 筋肉
  • スーパーヒーロー
  • 正義の味方
  • ヒーロー
  • イケメン
  • 燃え尽きぬ炎
  • アメコミの主人公
  • 兄貴
  • マジックザギャザリング
  • 自己犠牲
  • ボロス軍
  • 鞭使い
  • 正義
  • 善人
  • 英雄
  • いい男
  • キテオン・イオラ

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2024年02月29日 22:09

*1 エルドラージに立ち向かう戦力の確保のため、ラヴニカにあるというプレインズウォーカーが集う組織を探していた。

*2 《ギルドとの縁切り》のフレーバー・テキストはオレリアに怒りをぶつけるものだが、後にはオレリアがギデオン専用のペガサスを調達してくれたりと非常に良好な間柄である。あのセリフはなんだったんだろう……

*3 かつてダッコンという者が使っていた、魂を吸い取る剣

*4 かつてスマブラの桜井政博氏は「スマブラ拳!」というスマブラ情報サイトで、ジョジョの格ゲーの「恐怖を乗り越えた花京院」に対し『いいなぁこの手。「おなかがいっぱいのピカチュウ」とか「コンビニから帰ってきたルイージ」とか「栄養満点のフォックス」とかカンタンに量産できそう。』と相当皮肉っていた。話が逸れるのでこの話題はここで終わるが、要はこれと同じで「都会になじんできたニッサ」だとか「母と再会し大喜びするチャンドラ」だとかいうもんでいくらでも作れてしまうのが問題で、そんなもん出すならティボルトやダク・フェイデンみたいな一発屋を出してくれよ、ってこと。特にギデオンは「クリーチャー化するプレインズウォーカー」という点で非常にワンパターンだったのだ。

*5 実際当時はよくマゾアピールなんて言われていた。

*6 例えばギデオンの武器の名前は「スーラ」なのだが、これが「ウルニ」と記載されたものが公式サイトの中にある。これはインドのウルニという鞭状の武器をモチーフにしているからだ。

*7 海外ではR.I.Pで「冥福を祈る」という言い回しになる。元々は墓地対策にシャレでつけられた名前だが、彼の場合は文字通りだ。

*8 こういった批判を避けるためか、最近はソリンやボーラス、ヘリオッドのように「拘束罰を受け続ける」というものになった。これなら拘束を解く介入者がいればいつでも戻ってくることができる。

*9 「Jaya's gone.」は本来の英語の言い回しを考えると「ヤヤは死んだ」と訳されるべきで、さすがに「どっか行った」って言い回しで使うにはあまりに言葉遊びが過ぎる。MTGにはこういった玉虫色の伏線が多く、議論を好む熱いヴォーソスはこの言葉を都合よくとらえて喧伝し、議論を好まない冷めたヴォーソスは何も言ってないのと同じだと白眼視していた。

*10 ダクもカード化してないとはいえ最期とばかりに見せ場がたくさんもらえた。ドムリに関してはボーラスの残虐性を見せつける舞台装置として退場した感はある。

*11 そういう意味で完全に死んだキャラというと、ナイン・タイタンズの面々やシファ・グレントなどが挙げられるだろうか。

*12 熱が冷めきったときに再登場しても意味がないのは当然だが、熱がまったく冷めないうちに再登場するとすべてが台無しになる。ある有名なソシャゲには「知らなかったとはいえ人を殺して街を滅ぼしてしまったので、その贖罪の旅に出る」という結末のイベントから『3日も経たないうちに』そのキャラが贖罪の道すがらという設定でプレイアブル実装され、「贖罪RTA」としてキャラ叩きの材料にされてしまった。どれだけ丁寧に作っていても、復活が早すぎるとどうなるかという好例である。