サイカレス(MtG)

登録日:2010/05/27(木) 22:42:39
更新日:2024/01/29 Mon 18:26:10
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MtGに限らず、カードゲームでは時として大会の中心となるような強力なデッキが登場する。そして、そのようなデッキは周囲から対策され、それに応じてさらに姿を変えていく……。

サイカレスはそんなデッキのひとつである。

このデッキが誕生したのは02年度の日本選手権。

この頃のスタンダード環境では「激動サイカトグ」、「サイカ」と呼ばれる「激動」という呪文と「サイカトグ」というクリーチャーを使ったコンボデッキが存在した。


サイカトグ / Psychatog (1)(青)(黒)
クリーチャー− エイトグ(Atog)
カードを1枚捨てる:サイカトグはターン終了時まで+1/+1の修整を受ける。
あなたの墓地にあるカード2枚を追放する:サイカトグはターン終了時まで+1/+1の修整を受ける。
1/2

激動/Upheaval
(4)(青)(青) ソーサリー
すべてのパーマネントを、オーナーの手札に戻す。


「場をまっさらにしてデカイので殴れば相手は死ぬ」、ハルマゲドン/Armageddon(MtG)が登場した時からある古典的な戦法ながらも、
非常に強力なデッキであり、スタンダード環境では勢力の中心となっていた。

逆に言えば対策される(メタられる)可能性が非常に高かったのである。

そして大会当日。偶然にも二人のプレイヤーが同じ結論にたどり着く。

「……サイカトグ抜けば良いんじゃね?」

メタ対策にデッキの主軸を抜く……。暴論に見えるかも知れないが、ファイアーズからヤヴィマヤの火を抜いたノーファイアーなどの例もあるのだ。

そして彼らはデッキリストからサイカトグを消し、大会へと臨み……そして伝説となったのである。
















……悪い意味で。

実は彼ら二人(敢えてプレイヤー名は伏せる……)も普通のサイカデッキを持って大会に挑もうとしていたのだ。(そもそも、当時は他に青緑マッドネス、黒コントロールという有力デッキも存在しており、サイカのみメタられるとは考えにくい)
しかし、そこで事件は起こった。


マジックの公式大会において、参加者は使用するデッキの内容を事前に専用の用紙に記入し、提出する義務がある。これは不正を防ぐためのものであり、両氏も当然キチンと記入を行った。……ハズだった。


提出後に用紙を確認できるのだが、その時ふと気が付く。




「あれ? サイカトグが入ってない?」




なんとデッキの中核を担うサイカトグが書かれていなかったのだ。痛恨の記入ミスである。
推測だが心理的には「サイカトグは絶対入るけど他はまちまち、間違えないようサイカトグ以外はきちっと確認しなきゃ!」と思ってサイカトグ自体を確認するのを忘れたのだろう。
古今東西よくある「よく間違える他の事に気を取られて、一番間違えちゃいけないことを間違える」事例であろう。

にしてもサイカトグが無ければただの青黒コントロールである。しかも困った事に、他のクリーチャーは「夜景学院の使い魔」と「マーフォークの物あさり」のみで、サイドボードにも入っていない……。
ちなみに両クリーチャー共にあくまでコンボの手助けをするためのものでパワーは僅か1。かと言って他に勝ち手段になりそうなものはなく、このクリーチャー達で相手のライフを削るしかない。非常に厳しい。

仲間内の野良試合なら笑って済ませられる事態であろう。しかしやらかしたのは公式大会。しかも日本選手権という大規模大会である。ルールは厳格に運用される。

そのため受理されてしまったリストを修正する事は出来ず、リストに無いカードは当然使えない。
二人は泣く泣く、唯一許されている基本地形の投入で不足分を補い、大会に望んだのだった……。













ところが、蓋を開けてみれば意外に善戦して、片や3勝3敗、片や2勝4敗とまずまずの戦績。


結果については色々な要因が考えられるが、何よりも両氏の優れたプレイング能力がもたらしたのは間違いない。


その偉業と後世への戒め(デッキリストは提出前にちゃんと確認しようね♪)も含め、このデッキはサイカトグが足りないサイカ、すなわち「サイカレス」と呼ばれるようになった。
ちなみに、公式ルールに“デッキとリストが食い違う場合”の例示として面白い記述があった。
『(C) プレイヤーのデッキリストに56枚しか記されていなかった。デッキには60枚入っており、《サイカトグ》4枚がリストから抜けていた。』








……明らかにこの件である。
(現在は払拭になってしまっている)

なお、現在では同様のミスをやらかした場合はデッキに合わせてリストを修正する事ができる(その代わりリスト提出後直後のマッチで1ゲームロスされる)。もちろん、最初からキチンと書いてあるべきであるが。



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最終更新:2024年01月29日 18:26