ジャンドコントロール/Jund Control(MtG)

登録日:2012/07/13(金) 15:12:56
更新日:2024/03/23 Sat 01:13:04
所要時間:約 5 分で読めます




ジャンドコントロールは、黒赤緑(通称:ジャンドカラー)の3色で構成されるビートダウン寄りの中速コントロールデッキ。
黒の除去とハンデス、赤の火力、緑の優良クリーチャーを併せたグッドスタッフ的なデッキ。

常に1対1以上のアドバンテージを取れるような構成になっており、攻撃的なパワーカードで一方的に押し切る。
それを体言するのが「続唱」能力であり、これは唱えた際にその呪文より低いマナコストの呪文が出るまでデッキをめくってそれを唱えることが出来る能力で、最低でも1つアドを稼げる。この能力をフル活用することで、アドバンテージの上で圧倒的優位に立つことが出来る。 


<主要カード>

Bloodbraid Elf / 血編み髪のエルフ (2)(赤)(緑)
クリーチャー ― エルフ(Elf) 狂戦士(Berserker)
速攻
続唱(あなたがこの呪文を唱えたとき、あなたのライブラリーの一番上のカードを、コストがより低い土地でないカードが追放されるまで追放する。あなたはそれをそのマナ・コストを支払うことなく唱えてもよい。追放されたカードを一番下に無作為の順番で置く。)
3/2

Bituminous Blast / 瀝青破 (3)(黒)(赤)
インスタント
続唱
クリーチャー1体を対象とする。瀝青破はそれに4点のダメージを与える。

他には同名カードを一掃できる《大渦の脈動/Maelstrom Pulse 》万能生物除去の《終止/Terminate 》手札破壊兼本体火力の《荒廃稲妻/Blightning 》など、軽量で優良な呪文を採用する。


<デッキの動き>
引いたカードを唱えてテンポよく殴ってれば勝ち、というグッドスタッフの見本にような構成。
かつ黒赤緑の3色なので対応力があり、パーマネントから手札まで万遍なく攻められる。
また続唱で打ち消しにも強く(唱えた際に誘発するため、元の呪文と続唱によりめくれた呪文と二つを打ち消す必要がある)、アドも稼ぎ易い青キラーなデッキでもある。

瀝青破・続唱(1アド目)
→ 血編み髪のエルフ・続唱(2アド目)
→ 荒廃稲妻(4アド目+3点火力)

などとめくれた日には青使いは台パンしたくなるレベル。《芽吹くトリナクス》《終止》《セドラクシスの死霊》あたりもブチギレたくなる。
また、続唱に頼らなくとも一枚一枚のカードが強いので、半端なデッキには適当に殴っているだけで勝ってしまう。
そのデッキパワーはアラーラの断片参入後ジワジワと勢力を伸ばし、遂には環境をジャンド一色に染め上げてしまった。
どのくらい強かったかというと、あのぶっ壊れカード「精神を刻む者、ジェイス」が「強いけど血編みから稲妻捲れたら死ぬよね」とか言われるレベル。事実、アラーラの断片ブロックが落ちるまで環境一線であり続けた。


<デッキの欠点>
三色である上に強力な多色カードを多用するため非常にタイトなマナ基盤を強いられ、土地事故が起こりやすい。
続唱での旨みが少ないことを差し置いても「不屈の自然/Rampant Growth」を採用することでマナ加速と安定化を行うタイプが主流になるほど安定感が無い。
唯一とも言えるその弱点を穿つため、白羽の矢が立ったのがこちらである。

Spreading Seas / 広がりゆく海 (1)(青)
エンチャント ― オーラ(Aura)
エンチャント(土地)
広がりゆく海が戦場に出たとき、カードを1枚引く。
エンチャントされている土地は島(Island)である。

…一見微妙なコモンカードであるが、特殊地形を山のように積み色事故を起こしやすいジャンドに対しては劇的に刺さることが判明。また、キャントリップ(1ドロー)付きで最低限いつ引いても腐らないため、特定デッキ対策にもかかわらずメインデッキから4積み出来る。

水没した土地で序盤をまごついてるうちに神ジェイスが降臨しデッキトップを操作されて更なる土地事故を誘発させられてグッドゲーム。なんて光景も見られるようになり、圧倒的優位だった青系デッキとの勝負を五分近くまで押し込まれてしまった。

ジャンド全盛期の青は弱いなんてもんではない、なにせ神ジェイス以外まともなカードが一枚もないのである。
ゆえに青を使うデッキ自体が少なく、このカードは「2マナでキャントリップのランデス呪文」として機能したのである。
特にジャンドは色拘束がかなり激しいデッキだったので、類似するカード《見紛う蜃気楼》も組み合わせ、
続唱からそれらのカードをバンバン唱えて相手を事故らせて勝つ「続唱ランデス」なんてデッキも生まれた。

一見役に立たないように見えるカードが、環境によって一躍脚光を浴び大活躍する…というメタゲームの醍醐味とも言える例であろう。




…と思ってたら2012年秋、新ブロック・ラヴニカへの回帰の参入によりまさかのスタンダードで復権。
多色環境であるラヴ帰の初っ端に黒赤・黒緑が土地と共にサポートされたことにより実現した。
主に採用されるカードは
  • 出た瞬間に5点ゲイン、そして自身が5/3生物でありながら除去されても3/3を残すという正に「耐える」ための生物「スラーグ牙」
  • ついに来た直接のプレインズウォーカー破壊、マナコストも2マナと良好で生物にも撃てるため腐りにくい「戦慄掘り
  • マナ加速をしながら3/1先制にもなれるためある程度戦場ににらみを効かせられる「ラクドスの魔鍵
  • ハンデスしながらダメージ、相手がよほど高速で展開してない限りX=3程度で十分相手のプランを崩壊させられ局面次第なら最後の一押しにもなる「ラクドスの復活
  • 出た時点でタフ2以下に人権なし&大型生物なら私のドレイよ、な女王様フィニッシャー「オリヴィア・ヴォルダーレン
またサイドボードには、「赤が混じって打ち消されなくなった記憶殺し」こと「殺戮遊戯」も採用される。

PWを焼ける、強烈なハンデスを備えているなどの性質上同環境の白青系コントロール相手には強いが
全体除去が奇跡頼りの《忌むべき者のかがり火》ぐらいしかないためビートダウンには比較的弱い。
弱点・長所がハッキリしているが環境初期において実績を残したトップメタの一角であることに間違いはない。

その後もパーツを変えつつも散発的に同様のデッキはスタンダードに姿を見せており、ジャンドカラーはマジックにおける除去コントロールの代表色として認知されつつある。



<余談>
現在ではフォーマットを移し、エクステンデッドやモダン、レガシーといったフォーマットでも活躍している。
続唱による驚異的なアドバンテージ獲得能力は健在だが、高速ビートダウンの親和やスレッショルド、瞬殺コンボの欠片の双子などの速度に対しては若干分が悪い。
下の環境では《闇の腹心/Dark Confidant》《タルモゴイフ/Tarmogoyf》《思考囲い/Thoughtseize》《ヴェールのリリアナ/Liliana of the Veil》《突然の衰微/Abrupt Decay》《トーラックへの賛歌/Hymn to Tourach》などなど古今東西のパワーカードを叩きつけられるため非常に隙のないデッキに仕上がっており、モダンでは長きにわたりトップメタの一角だった。
《罰する火》《血編み髪のエルフ》の禁止に続き、安定したマナ基盤とダメージソース、墓地対策まで兼ねていた《死儀礼のシャーマン》も禁止を食らいデッキパワーは落ちている。
エルフは後に帰ってきているが、シャーマンはレガシーでもお縄に掛かったため、完全体ジャンドはもうヴィンテージでしか組むことができない。
実質的にジャンドだけで禁止カードを3つも生んでることから、どれほどこのデッキが強力だったか良く分かる。

その後も複雑な変遷を重ねており、特にモダンでは「高額カードを山積みにしたグッドスタッフ」という趣になっている。
レガシーで禁止にされた《レンと六番》と、レガシー最強のPWのひとり《ヴェールのリリアナ》を使ったハンデスパッケージなどが有名だが、
これ以外のカードチョイスはいわゆる派手な動きとは無縁の、着実かつ強力に相手を抑え込んでいく動きであることが多い。
つまり非常に解説が難しい。コントロールデッキ全般にも言える話なのだが、ジャンドに関してはその理論が使用者ごとに非常に異なっており、
下手に自分の思想を話すとモグリ扱いされたりするせいでなかなか解説が難しい。
ただしジャンドを使うのがうまい人は大体MTGに限らずカードゲーム全般がうまいため、そういう意味では勧めやすいデッキかもしれない。

ただひとつ言えるのは、一朝一夕でモノにできるデッキではないということ。高額カードが多く、使い方も難しい。
上級者向け、悪い言い方をすればそれだけMTGに入れ込める我の強い人が握るデッキ。それゆえいさかいも起きやすいってわけ。
正解のない話ってマウンティングしやすいし、そういう意味でも良くも悪くも「MTG」というゲームを象徴するデッキである*1
しかしMTGといえば青いゲームという時代も今は昔。モダン以上では青抜きデッキも当然であり、レガシーでも次第に珍しくなくなってきている。

ちなみに「ジャンド」と呼ばれるデッキは遊戯王にも存在する。
あちらはキーカードの名前がデッキ名の由来になっている。
両方のゲームをプレイしている人に「ジャンド」と言うと混乱する可能性がある。
実際に「ジャンド強いよね」「ジャンドってどう強いんだ?」って話をして次第に噛み合わなくなっていく…なんていう、アンジャッシュのコントみたいなこともしばしばあった。
現在でも「昔ジャンドってデッキがあったよな」からこんなやり取りが生まれたりする。とはいえ双方のプレイヤーに知られているネタなので、わざとすっとぼけて遊ぶパターンも多い。
遊戯王をやめてMtGに移る者、あるいはMtGをやめて遊戯王に移る者が、今のホームグラウンドのジャンドだと思い込んでしまったりもするわけだし。

詳しくはこちらへ>ジャンクドッペル(遊戯王OCG)


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最終更新:2024年03月23日 01:13

*1 一時期ある店で「使用者に解説してもらうコラム」というのがあったが、わけのわからない美学だらけで使い物にならなかったことがある。わざとじゃないなら強烈だし、わざとやっているなら大問題だ。当時は日本人プレイヤーの間でも賛否両論ある店だったため、わざとこういったふざけた回答をしたのではないかいう推測もある。我の強い人が握ると言ったが、つまりそういうことである