H&K HK416

登録日:2012/01/30(月) 00:07:35
更新日:2024/03/07 Thu 05:48:33
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諸元(D14.5RS)
全長 787〜890mm
銃身長 368.3mm(14.5インチ)
重量 3.5kg
口径 5.56mm×45
使用弾薬 5.56mmNATO弾
装弾数 30
発射速度 650発/分
発射形式 セミ/フル
作動方式 ガス圧利用ショートストロークピストン式
ロータリーボルト/マイクロ・ロッキング・ラグ閉鎖

【概要】
HK416はドイツの銃火器メーカーH&K社が、英国の正式ライフルL85を改良した技術力を見込んだアメリカ軍により、同軍の正式ライフルであるM4カービン改良の要請を受けて、
M1911のカスタムに定評がある元デルタフォース隊員のラリー・ヴィッカーズを監修に据えて開発したアサルトライフルである。

H&K社の魔改造により既存のM4カービンに比べ、信頼性、耐久性、拡張性が圧倒的に向上している。



【M4カービンからの主な改良点】
○M4カービンを始め、M16シリーズはリュングマン式と呼ばれる作動方式を使っていた。
リュングマン式は発砲した弾丸の発射ガスを直接機関部に吹き付け作動させている。
そのため他の方式に比べ部品数を少なくでき、銃本体の軽量化が図れるほかボルトグループの作動による重心変動が少なく、反動が軽いため高い命中精度が期待出来る長所がある。
しかし高温高圧のガスが機関部に直接吹き付けるため部品の寿命が短く、機関部が汚れやすく簡単に作動不良を起こす欠点が存在した。
特に機関部の脆弱性はM16からA1、A2、M727、を経てM4カービンに至るまで共通した欠点であった。

H&K社はリュングマン式に代わりG36XM8に組み込まれ、すでに高い実績を示したショートストロークピストンを機関部に移植した。
これによりHK416は高い耐久性を獲得した。

実際M4とHK416の耐久性を比較した動画では、泥水に浸けたM4は引き金を絞った瞬間弾倉を落とし、機関部から派手に泥水をぶちまけ使用不能になったが、
HK416は泥水に浸けた後も快調に射撃をつづけている。

○新型のスチール弾倉を標準装備。(←によりジャムを減らす事に成功したが、戦場ではスチールは重いといわれマグプル社のポリマー弾倉を使う兵士が多い)
○H&K社の回転ドラム式オープンサイトへ変更。
○銃身をフローティング化。これにより銃身に余分な振動が加わらず高い精度が期待できる。
余談だがこの銃身のフローティング化は精密な射撃が要求される狙撃銃に採用されている。しかし、HK416自体は射撃精度不足でトライアルから落ちたりもしている。
○コールドハンマー(冷間鍛造)製法による、耐久性の高いバレルの採用。
○アッパーレシーバー上面、ハンドガード部にピカティニーレールを標準装備。拡張性が向上。

等々の改良が加えられている。



【H&K社の思惑】
今までG3、MP5PSG-1等に代表される独自の技術による高性能な銃を作ってきたH&K社がM4カービンのクローンともいえるHK416を開発したのにはある事情があった。
2000年代に入り米軍内ではM4等のM16シリーズに代わる次期製式ライフルの選定が検討されていた。
もし米軍製式採用となれば世界最大規模の軍からの大型受注が見込め莫大な利益が転がり込み、
更に世界最強と言われる米軍からのお墨付きともなれば他国からの受注も有り得る。
また映画やドラマ等のメディアにも多く露出しH&K社の広告塔の役代わりも果たしH&K社の知名度を更に上げるなど大きなメリット生まれるのは明らかであった。
(実際イタリアのピエトロ・ベレッタ社のM92は米軍に製式採用された結果、韓国軍等の諸外国の軍や警察機関に採用され、
 ハリウッド映画の主人公達も使用したため、民間市場でも売り上げを伸ばした)


米軍製式ライフル選定の情報を得たH&K社はG36をベースにXM8を開発し米軍で行われる選定トライアルに提出した。
FN SCAR等の強力なライバルを押しのけXM8は見事製式採用の内定を貰い、H&K社もホクホク顔でアメリカ国内に生産工場を作り始めた。
しかし海兵隊や特殊部隊からの猛反発により、XM8は選定の内定取り消しを喰らい、次期製式ライフルの計画も白紙に戻されてしまう。

しかし改良に改良重ねたM16シリーズの性能が限界に達していたのも事実であった。
そこで米軍は選定トライアルで優秀な成績を残し、英国のL85を改良していた実績もあったH&K社にM4カービンの改良を要請したのである。
H&K社としてもXM8への繋ぎとM16シリーズからH&K製の銃の操作への慣れを考慮してこの要請を受けた。

しかし後日改めて行われた選定トライアルではFN SCARが採用された(が後々取り消しになっている)のだが、のちにフランスでFA-MASの後継として採用されたり、
ノルウェー軍も制式採用していたり、当の米SOCOM傘下の特殊部隊でもお馴染の銃として使われており*1、特殊部隊の定番装備となりつつある。
また派生のLMGの代替となるM27 IARが米海兵隊で採用されている。



【派生型】
◆HK416C…銃身長を9インチ(229mm)に短縮し、通常の伸縮式ストックからMP5A1/A3やMP7のような伸縮式ストックを採用。
鞄に秘匿しVIPの護衛に使用される。

◆D10RS…銃身長を10インチ(254mm)に短縮。室内戦や市街地戦などのCQB用。

◆D14.5RS…銃身長が14.5インチ(368.3mm)の通常モデル。

◆D16.5RS…銃身長を16.5インチ(420mm)に延長。遠距離戦用。

◆D20RS…銃身長を20インチ(508mm)に延長。狙撃用。

◆M27IAR…アメリカ海兵隊M249の後継として採用された分隊支援火器モデル。銃身長は16.5インチ(420mm)。
後継といってもM249を完全に更新するわけでなく、M249と併用される模様。
M249に比べ射撃精度と軽量で取回しに優れる半面、ベルトリンク式給弾式ではなく弾倉式を採用し過熱した銃身を簡単に交換できないため発射速度が遅くなるという欠点がある。

◆HK417…HK416の7.62mm×51NATO弾仕様。これにも多くの派生があるため、詳しくは項目で。




【余談】
◇当初HK416はHKM4という名称であったが、M4カービンを製造していたコルト社から実に大人気ないロビー活動によりHK416となった。
◇元々M27 IARの米海兵隊採用時、M249に慣れ親しんだ海兵隊員は制圧射撃能力を巡って疑問視していたのだが、いざ使ってみると命中精度が段違いだったため評価は高い模様。

◇現在は消されてしまったが以前海上自衛隊の予算表の中に研究・評価用としてHK416の弾薬の購入が書かれていた。
海上自衛隊の陸警隊でHK416が採用されたという話も聞かず、そもそも装備をするその必要性も無いことから、
海上自衛隊の特殊部隊特別警備隊で試験・評価及び採用されているといわれている。

◇陸上自衛隊の特殊部隊特殊作戦群(陸上自衛隊)にもH&K社製特殊小銃という記述があるため本銃が納入されている可能性もある。

◇一時期米軍の特殊部隊員と思われる兵士達がM4カービンのロアレシーバー(グリップとかストックとかの部分)にHK416のアッパーレシーバー(銃身とか機関部とか)を装着している写真が多く見られた。



エアガンでは、主に台湾系メーカーが販売しています。
特にVFCの製品は、全体の造りもなかなかリアルな上、特徴的なガスピストンをリアルに再現!!ただ、電動ガンには全く意味の無い機能。



追記・修正はFN社よりH&K社派という方お願いします。

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最終更新:2024年03月07日 05:48

*1 特に2011年のDEVGRUによるアルカイダのボスであったウーサマ・ビン・ラーディン(ウサマ・ビンラディン)殺害ミッション「オペレーション・ネプチューン・スピア」で使われた例が有名。