柳龍光(バキ)

登録日:2012/09/22 Sat 16:49:16
更新日:2024/04/12 Fri 09:48:01
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「一つ質問をしよう」

「この地球上で最も強力な毒ガスとは何かわかるかね?」

「立ち合いたいと言うのなら、黙って仕掛ければよろしい。このようにッッ!!」


柳龍光(やなぎ りゅうこう)とは漫画『グラップラー刃牙』シリーズ第2部『バキ』の登場人物。

CV:江川央生(PV)、二又一成(2018年版アニメ)

目次

【概要】

死刑囚という以外、ともに無関係ながら『敗北を知りたい』という共通の目的のために脱獄、東京・地下闘技場へと集結した5名の最凶死刑囚のひとり。
日本人であり、地下闘技場の存在についても充分な知識を持っていた。
後の外伝小説「ゆうえんち」では、かつて投獄させられた存在についても示唆されている。

外見はオールバック刃牙の高校の用務員に変装したとき全く違和感を感じさせない程度の身長160センチ未満の小柄な中年男性*1で、他の死刑囚や対峙したキャラの殆どが巨体のため余計に小柄に見えるが、空道(くうどう)という古流武術を極めており高い殺傷能力を誇る。
それもそのはずで、空道は格闘術というよりはいかに相手を安全かつ一方的に無力化あるいは殺害できるかを追及した殺人術であり、
そのような技の数々を操る柳もまた格闘家というより殺法家とでも呼ぶべき性質を持つ『黒社会の住人』なのだ。

「大日本武術空道」の当主であるマスター国松という人物を師匠として従事していたが、何らかの理由で激突したようで、結果として師の左腕を奪った。
柳に左腕を奪われたマスター国松は、外伝小説「ゆうえんち」にて、まるで柳を恐れておらず、柳が自身の腕を落とした事について「殺せなかった時点で仕返しされるので失敗」「柳は仕返しで殺されるのが怖いからいなくなった」と評している。グランドマスター?レックス?知らんな。
柳は葛城無門との決戦の際に内心でマスター国松に関して振り返っており、実力と言うよりはその雰囲気を理由に従事することにしたことや正直な本音として今なお多少の恐怖心を抱いていることを振り返っており、マスター国松の読みは実際に当たっている部分もあった模様。

渋川剛気とは過去に因縁があり、かつて彼の左目を奪ったことから執念深く報復のチャンスを狙われている。

そして、「ゆうえんち」にてヒロイン・松本梢江の父親・松本太山を殺した張本人である事が明かされた。
当人同士はまだ知らないが、「SAGA」後の刃牙との再戦にて、父の仇とかつて殺した男の(むすめ)が相見えていた事になる。

「ゆうえんち」では柳の「敗北を知りたい」という言葉にかける情念についても
詳細が語られており、自身の殺法をもって人を傷つけ、相手が屈辱や絶望に塗れて死ぬ様を見て
愉悦を感じる真性のサディストであると同時に、その性向の裏返しとして
敗北に伴う喪失を心のどこかで待ち望んでいるマゾヒズムの発露から原作における凶行に走ったとされている。
一方で無門との決戦の際に劣勢になると「この世のどんな奴よりも努力してきた」と自己鍛錬への自信を見せ(本人曰く、渋川・独歩・勇次郎の3人よりも努力しているとのこと)、敗北をしたくない理由については努力が否定されるからだとも語った。
そして、敗北を望んでいたマゾヒズムに反して身体や意識の根底では敗北への拒絶反応を起こし、「自分が自分を生む」という自己意識において異常な反応が発生することに…。

日常が鍛錬レベルと言う生活を長年積み重ねていった結果、奥歯が歯茎と同じ高さまで平らに磨り減っており、常人離れした咬合によって発揮されるパワーの高さを物語っている。
柳は自身を生まれながらの天才ではないと過小評価しており、それ故に稽古や様々な暗殺術などを磨いてきたようだ。卑劣な戦法に抵抗感がないのもそれが理由。
本編で脱童貞で異常なパワーアップをした刃牙に弄ばれた際に大泣きをしたのは、天才型ではない努力家だと自負している柳からしたら当然の反応だったのかもしれない。

項目冒頭のセリフを発しながら相手を一撃で沈黙させることから、ついたあだ名は「猛毒柳」
のちに映像化された2018年アニメ版では「人間毒ガス兵器」という二つ名を付けられている。


【戦力】

優れた体術の技量も持つが、暗器や凶器の扱いにも長けており好んで使う。
そのどれもが恐るべき殺傷力を秘めている。


空掌(くうしょう)


「答えは酸素」

「ワカったときにはもう遅い」

柳の「猛毒」の異名の所以といえる技。
掌の中で小規模な真空状態を作り出すことで、強力な吸引力を作り出す暗殺拳法。
防衛庁から取り寄せたロケット砲も跳ね返す特製強化ガラスやコンクリートすら破壊する。

簡単に言えば、掌を使った吸盤みたいなもので、国松によるとボーリングボールのような固いもの・重いものほど吸い寄せやすく、逆に柔らかく軽いものほど吸い寄せにくいとされている。
だが柳は空中でこの技を使うだけで数十センチ下の床に置いた和紙やマンガの原稿用紙さえ手中に吸い上げてしまうほどの技量を持つ。
この技の最大の真価は大気の真空化に伴い、空気中に含まれた酸素濃度を6%程度まで下げ、酸素をこの世で最も危険な毒ガスに変えてしまうことにある。
この濃度の酸素を呼吸器から吸うと人体は瞬く間に機能を遮断され、意識を失ってしまう。
柳はこれを「神の意表を衝く技」とも呼んでおり、技の正体を知らぬバキを一瞬で戦闘不能に追いやった。

「ゆうえんち」ではこの技を使いシコルスキーばりの登攀術を披露した他、物を吸いつけて即製の鈍器として使用したり、更にはその吸引力で人間の皮膚と肉をむしり取ってしまう恐るべき芸当も行った。また渋川の左目を奪った技であるとも明かされた。その凄まじい威力から新聞で「妖怪皮剥ぎ男」と書かれたことも。
なお国松は、足でこれを行う空足(くうそく)を編み出した。本人の話では対柳龍光用に開発した技。
また弟弟子の神野仁もこれを使い柳と壮絶な空掌対決を行った。


暗器・武器術

都内某所の隠れ家に様々な暗器(隠し武器)や武器を所有しており、それらを日常的に携帯、有事の際には手足の如く巧みに使いこなす。
また時には身につけた物や拾った物を使い即製の武器を作り出すこともある。

  • 手の内に隠す鉤爪つきメリケンサックのようなインドの暗器『バグ・ナウ(虎の爪)』、
  • 研ぎ澄まされた二丁の鎌をヌンチャクのように紐で繋ぎ、高速で旋回させることで不可視の斬撃を加える『風神鎌(ふうじんがま)
  • 固いものを切ればしっかり刃こぼれするリアル志向の『名刀』
  • 石を使って先10㎝ほどを刃物のように研いだベルト
  • 石などで作製した即製の分銅、など。

ただ本部以蔵はこれらや後述の毒手を指し、『磨いた五体以外の何ものかに頼みを置く……そんな性根が技を曇らせる』と断じ、事実大きく技量に開きのある柳を圧倒した。
実際、柳は武器も後述の毒手もハッキリ言って必要ない。
それなのに、柳は自分のサディスト精神を満たす為、相手を一方的に嬲りものにしたいからという理由で武器を多用している。
歯がすり減るほどの「努力」を、自分で否定してしまっているのである。
本部に「最早救い難い」と吐き捨てられるのも当然だろう。


鞭打(べんだ)

肩から先を液体化させるようなイメージで脱力させ、しなやかにスナップさせた掌を打ち下ろし、鍛えられた肉体ではなく、全身をくまなく覆う皮膚に『痛み』という形でダメージを与える秘拳。
その動きや特性がの打撃に近いことからこの名がついた。

老若男女・あらゆる肉体に公平な効果を発揮する画期的な技であるが、
自然界では強いて言えば女性の平手打ち程度ではある。
しかしながら国松が行った試技においてすら、固定されていないコーラの瓶を寸断してしまう程の速さから繰り出されるその威力たるや、大の大人ですら激痛に耐えられず肉体が死を選択してしまうほど。
特に柳の鞭打は後述の毒手との組み合わせは『水銀の鞭』と例えられるほど凶悪無比。
柳はこれを「蛇毒」と名付けていた。

使い勝手がよく、タフな相手を切り崩すのにも有効なために後に刃牙や勇次郎も用いている。
尤も、勇次郎は『所詮は女子供の護身技、大の男が使うシロモノじゃねえ』と語っていたが。


毒手(どくしゅ)

空道最強最悪の殺人術。
「朱砂掌」とも呼ばれ、闘将の方のラーメンマンとか男塾死天王のそれを想像してくれれば大体あっている。

秤で正確に計量した天然の毒物*2や水銀(前述の朱砂掌の由来となった)をすりつぶして砂に混ぜた毒砂に素手で突きを打ち込み、を浸透させては解毒効果のある溶液での洗薬を交互に繰り返すことで、手そのものを毒の塊に作り変える秘術。

数ある空道の修行の中でも最も苦痛を伴う荒行であり、毒の痛みに耐えかねて手首を切断する者すら出るという。
五日目に入り手の色がサツマイモ色になると完成。
科学的でこそ無いが人体へのマイナスという点では十分すぎる物で、触っただけで花がしおれ、
一度打たれればその箇所の肉は腐り骨髄は侵されてたちどころに即死、目にかすれば即・失明してしまう。

科学に造詣の深いオリバさんの分析によると、神経毒で、血中に混入したら大問題(シリアスプロブレム)とのこと。
ただし、あらゆる毒に強い耐性を持った範馬の血という名の主役補正には若干効果が下がる。
また、必殺の威力を持つ反面、自身の『空掌』というアイデンティティを自ら放棄したという事に他ならず、毒手に頼りきる事でわずかながら隙が生じてしまっており、
その事が後に彼自身の足を引っ張る事となってしまった。

空道の毒手の源流は中国発祥であり、日本に伝来したのは戦国時代で、前半七巻の陰手のみ。時の戦国武将・今川義元の命により、忍者のみ習得を許された。
本来の毒手は後半五巻の陽手を加えた全十二巻で完成する技なので柳の使う毒手は不完全。
陰手で受けた毒は限られた状況下で陽手の毒を受けることで毒が裏返り、解毒に転じる。
刃牙は大擂台祭で中国有数の毒手の使い手、李海王の攻撃を受けることで復活できた。

なお、余談だが、毒手拳は、少林寺に伝わる実在するとされる拳法である。

足先蹴り(そくせんげり)

「ゆうえんち」での松本太山戦で使用。
つま先で蹴る技で、格闘技ではトゥーキックと呼ばれ愚地独歩も使うなどそれほど珍しい技ではないが、柳が蹴り技を使ったのはこれが初である。

この他に国松によると、活手、殺手、縛法という技があるらしいが詳細は不明。


【劇中の活躍】

殺傷力こそ高いものの、自分に敗北を教えてくれるほどの強さを持った相手以外に興味はないのか、
無関係の一般市民を襲ったりはしないほか、闘士相手でも王手をかけた時点で興味を失って立ち去ってしまう。
被害そのものは他の死刑囚に比べて少ないと言えるだろう。
ただし、『ゆうえんち』ではマスター国松から奪った腕を咥えて歩いていたところにやってきた警察官5人を徹底的に甚振って瀕死に追い込んだことが語られているなど、少し関与すれば善良な人間にも攻撃をする辺りは害悪度自体は高い。

渋川が弱くなったと感じて失望する一方で地下闘技場最強の若きチャンピオン、刃牙には何かと接触してくることが多かった。
用務員に変装して襲い掛かったり、刃牙が梢江との連日連夜の熱く激しい情交で全てを出し尽くした直後を見計らって野試合に誘ったりと姑息ながら周到なタイミングで襲撃してきた。
ただ、一度目は不意打ちの空掌で勝利できたが、二度目の交戦時にはすでに(性《SAGA》的な意味で)童貞を捨てたことで最愛という強さを手に入れ飛躍的なパワーアップを遂げた刃牙がはるか高みを行っており、通りすがりのなんかふしゅるふしゅるイッてる玉なしの露助と二人がかりで攻めたにもかかわらず返り討ちに。
頼みの毒手も即効性がなく(後々重篤なダメージを与えることには成功していたのだが)、挙句の果てには賢者タイムで優しくなったのか、『愛するものを守れれば良い』などとこの作品らしからぬ理屈を吐いた刃牙にダッシュで逃げられる。
形の上では『逃げられた』わけだが、実際は『見逃してもらった』という敗北ですらない事実を突きつけられた。

その後、愚地克巳と友情を結び、国外に逃亡しようとするドイルをいじめて憂さ晴らしをした後(ドイルは結局オリバに捕縛される)、
完全なる決着を望む渋川老の決闘状を受け取り、公園で待ち構える。
しかし、その後に待っていたのは公園最強の生物による容赦なき粛清だった(該当項目参照)。

さらに駄目押しのごとく、通りすがりの公園限定ではない地上最強の生物に「オメェの負けだ」とジャッジされるも、「この戦いの勝敗を決めるのはアンタではない」逆ギレ同然に口答えをしてしまう。
そのため、『勝負に応じた』と看做され逆ギレ返しに近い形で裏拳を叩きこまれて一発KO。
顎を砕かれ顔面が崩壊、血の海に沈んでフェードアウトしてしまい、唐突に死刑囚編も完結をむかえるのだった…。

本部がどう思ってたのかは不明だが、客観的に見ればこの勝負は柳の完全敗北。
それなのに「敗北を知りたい、だが負けたくない」という矛盾した心理が、敗北を認める事を拒んでしまった。
ハッキリ言って見苦しいにも程がある。
勇次郎に制裁されるのもやむなしと言えるだろう。

なお、これはあくまでファンの考察のひとつだが、勇次郎が乱入したのは
「せっかく手潮にかけて育てた刃牙を、毒手で殺されそうにされている(=自分の10数年を台無しにされそうになった)事への復讐だったのではないか」
とも言われている。


風の噂では後に某人気漫画家のアシスタントになったとか、ウナギ屋さんになったとかならないとか…



追記・修正は毒功を完成させてから行ってください。

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最終更新:2024年04月12日 09:48

*1 むろん、高密度の筋肉を搭載しているが

*2 ハンミョウやムカデなどの毒虫や毒草など