M14

登録日:2011/06/15(水) 13:22:31
更新日:2024/03/10 Sun 19:20:07
所要時間:約 6 分で読めます




1959年、新米兵士の僕は彼女に出会った。

「あ、あのっ、M14って言います!新米ですけど、姉さんみたいに頑張ります!!」


M14とは主にアメリカ合衆国国営、スプリングフィールド造兵廠が開発した自動小銃である。1959年から使用され、ベトナム戦争を始め様々な戦場で戦った。



■開発経緯
M14採用前、アメリカ軍はM1ガーランドを使用していた。ガーランドは第二次大戦では他国を圧倒する性能であったが、朝鮮戦争では最強とは言えなくなった。
ソ連のSKSカービンやAK-47が少数ながら配備されていたからである。

その為国防省は、「しぶしぶ」次期主力小銃を開発した。

どうして「しぶしぶ」なのかを説明すると

1、核兵器やその他変態兵器の開発が忙しかった。
2、現状(M1ガーランド等)で結構満足していた。
3、まだ使える銃が余っている。全部新しくすんの面倒。

そんなダラダラムードの中、「まあガーランドに使う.30-06弾もWW1の頃から使いづらいからってあれこれ改良案を立ててたしな……新型弾薬とそれ用の小銃は必要だよな……」とM14の開発が始まった。

「え、えへへ…訳があったなら仕方ないですよ。」

開発部はM1ガーランドをベースに、銃身を切り詰めたりして軽量化しつつフルオート機能を付けるなどして開発した。
ただ国防省はこの銃を単なるM1ガーランドの改良・置き換えのみならず、当時使用していた歩兵用の小火器……BAR、M1/2カービン、M1トンプソン、M3グリースガン……の『全ての代替とし、それをM1ガーランドの生産設備から低コストで転換し大量生産する』という大言壮語壮大な構想を抱いていた。
まあ生産設備の転換は実際にやってみたらうまく行かなかったんだが

弾薬は7.62×51mmを使用。アメ公大好き大口径で、ストッピングパワーに優れていた。
因みにこの弾薬はNATO弾として登録された。

米国「NATOで使う弾を決めよう!ウチで主力で使ってる7.62mmがあるんだけど、それで良いよね?」

英国「ちょ、俺んとこと違うんだけど。てかそれフルオート不向きじゃ」

米国「良 い よ ね !?

英国「(泣)」


「私一人で何でもできる。そして弾がちょー強いんです。えへん。」




■そしてベトナム戦争へ

「わわわっ!?こんな所に敵が隠れて…!?」


建て主はM14が好きだ。そりゃあもう、名前を付けて毎日一緒に寝るくらい。

だが、認めなきゃならないことがある。M14はベトナム戦争ではほぼ活躍できなかった。



順を追って説明しよう。まずは、「ベトナム」と言う特徴的な戦場だ。
ご存知の通り、ベトナムは国土の殆どがジャングル。高温多湿な気候は木製の部品が多いM14をそのままの意味で腐らせた。
更に地の利のある「ベトコン」は、米軍を隠れて待ち伏せ、至近距離から奇襲すると言った戦法を取った。
これに、長くて取り回しの悪いM14は対応しきれなかったのである。


「でもフルオート機能が…ブ、ブレて当たらない…」

そう。フルオート機能も、M14では効果的に扱えなかった。
第一に、弾薬。先ほど英国紳士が言っていたが、7.62mmは反動が大きくてフルオートには向かない。
更に、M14は曲銃床である。ストックの項目が詳しいが、M14は銃床が曲がっており、狙いは定めやすいが反動は強烈になった。
しかも口径がでかいということはかさ張るということでもある。かさ張れば重量も増えるし、当然輸送可能な量が減り、さらに身に着けられる弾薬の絶対数は少なくなりと負のループ。
当時徴兵された素人同然のモヤシ達にとっては口径が無駄にでかい割に扱いにくさこのうえなく、
M14を真に評価しマトモに活用していたのは訓練という訓練を積んで公正な評価を下せる経験も積んだ海兵隊という全体から見ればごく少数しかいなかった。


直床式や折り畳み式ストックを着けたバージョンも出たりしたが、最早造兵廠の足掻きにしかならず……

とうとうアメリカも7.62mm弾とM14に愛想をつかし、1964年、ベトナム戦争真っ最中に、M14は製造停止されてしまった。
M16に順々に置き換えられ、戦場を離れていったのである。
スプリングフィールド造兵廠は閉鎖された。

ちなみに自衛隊でも配備しようとしたが、

自衛官A「わりぃ…俺っちには扱えないわ」
自衛官B「やはり日本人には日本人にあった小銃が…」
自衛官C「肩蹴っ飛ばされてんじゃねえんだからさ…」

こうして開発されたのが、64式小銃である。



「やっぱり私じゃ、お姉さんみたいには活躍できないのかな……」


みんな、ごめんなさい。





-ふざけるな!-
-追っかけろ!玉落としたか!?-











「……え?私に、ですか?最も不名誉な銃と言われた私に?
 …いえ、やります。もう一度、やらせてください!」

時は流れ、冷戦は終わりを告げた。アメリカ軍は、イラクやアフガニスタンと言った砂漠や荒れ地に赴く事が多くなった。
砂漠や荒れ地は非常に見通しが良い。AK47に待ち伏せ奇襲されることは少なくなり、長距離での撃ち合いが多くなる。
更に、砂は吹き荒れ、精密化された華奢な銃は次々と壊れていく。グリースを塗ったM16なぞなおさらである。

そんな中、M14は再び戦場に姿を現した。
ベトナムでは苦戦したAK47の射程外から、M14は一方的に銃弾を浴びせる事ができるのだ。
しかも、M16の5.56mm弾より遥かに大口径で強力な弾丸を。より正確にバカスカと。

現在はM14EBRやM21など、近代改修型等がマークスマンやスポッター用のライフルとして使用されている。
かつて米国軍史最大の恥と言われた銃は今、ベテラン兵士に愛用される歴史的な銃になったのである。

ただし、イラク等の砂塵環境下における信頼性低下が問題となっている。更に7.62mmは5.56mmに比べて持ち運べる弾の数が減ってしまう事も依然として事実。
トドメとばかりに、元々狙撃用としては精度の低いM21から、ボルトアクション式だが命中精度に定評のあるM24*1やM110*2に更新されつつあるのが現状。
ぶっちゃけM14が再び脚光を浴びていたのは単にM16の中東での運用経験や戦訓の不足による一時的なモノでしかなかったんじゃ?、なんて話もあったりなかったり……

基本設計がM1ガーランドを踏襲しているから、使い勝手は悪いし仕方ないよね?
でもFALよりはトリガープルは軽いよ!

M14系統はまだまだ苦難の道を歩む事になりそうだ。

ちなみにイスラエルのTCI社(旧TEI社)の「TEI M89SR」やアメリカのShort Rifles Stock Systems社の「BULLDOG」にように、
内部機構を殆ど弄らずにブルパップに改造されたM14も存在している。


「えへへ…また、会いましたね。
 万能には程遠いけど、私、精一杯頑張るから、追記・修正してくれると嬉しいな。」

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最終更新:2024年03月10日 19:20

*1 レミントンM700ベース

*2 M16を大口径化したSR-25ベース