弾薬(カートリッジ)

登録日:2011/04/14(木) 22:22:20
更新日:2024/04/16 Tue 16:50:19
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ここでは弾薬(カートリッジ)についてお話しましょう。
口径の項目も参考に。

以下は基本的に現在の事を説明するが、旧式銃用には基本的に旧式の仕様の弾を使う。
銃は弾薬に合わせて設計されている為、無闇矢鱈と新しい物を使用しても意味が無いからである。

○「弾薬=弾丸」ではない
弾薬とは銃や砲などの火器を撃つときに必要な弾丸と火薬などを組み合わせた物。
カートリッジ又は実包とも呼ばれている。「弾薬=カートリッジ=実包」でOK

中身は小さな拳銃弾でも全長が70mmある物でも同じ。

  • 弾芯(ブレッドコア)…鉛の部分。
  • 弾芯を覆っている被甲(ジャケット)…弾芯の変形を防ぐ。…と同時にライフリングや機関部が鉛で汚れたり、体内に破片が残留して鉛中毒にならないようにする為でもある。

上二つが目標に飛んでいく部分、「弾丸」または「弾頭」の構成部品である。

  • 薬莢…フルオートでまき散らすあれ。
  • 雷管…起爆薬が入っており、ファイアリングピンに叩かれる部分。その上に発射薬(パウダー)が詰まっている。

あくまでも弾丸は飛んでいく部分なので、現代の銃では「弾丸を込める」ではなく「弾薬を込める」と表現するのが厳密には正しい。マスケット銃はこの限りではない。
ただ今でも慣例的に弾丸(タマ)を込めるなどの表現は通じるので過剰な指摘も野暮という物である。



ここからは弾薬を構成しているものを見ていこう。

発射薬

火薬だがダイナマイトのような「爆薬」ではない。
爆燃という燃焼反応をするのが無煙火薬等の「発射薬」(花火もこれ)で、爆轟という火炎の伝播速度が音速を超える燃焼反応をするのが「爆薬」。
現代では基本調合した無煙火薬を使用している。黒色火薬の数分の一で同じ威力が出せ、煙も黒色と比較すると非常に少ない。無煙と言うが全く無いわけではない。

発射薬は粉状ではなく、粒状や円柱状やマカロニ状になっている。燃焼速度を調整するためであり、粒が大きいものはゆっくりと、小さいものは早く燃焼する。
同じ量の割り箸と丸太、どちらが早く燃え切るかは容易に想像がつくだろう。

拳銃では銃身が短いので早めに燃焼を終える必要があるため速燃性発射薬が、ライフルのような銃身が長くライフリングがある銃は遅燃性発射薬が適している。


弾丸(弾芯被甲)

前に飛んでいく部分。画像の上部の銅色の部分。弾頭とも呼ばれる。

弾丸の形は色々ある。
  • 太くて短い拳銃用の「円頭弾(ラウンドノーズ)」(.45ACPなど)
  • 先端が平らな「平頭弾」(.40S&Wなど)
  • ライフルなどの遠距離射撃用の「尖頭弾」(7.62mm×39など)
等々

弾丸の種類にも色々ある。
  • 弾芯を鉛とアンチモニーの合金で包みさらに被甲で被い装甲貫徹力に特化した「徹甲弾」
  • 弾丸のお尻に硝酸バリウム等を含んだ火薬を入れ発砲時に弾道を光の線で表す「曳光弾」
  • 中に黄燐を入れ着火して燃焼を目的とする「焼夷弾」(着弾の衝撃で黄燐が空気に触れ自然着火する)
等々
なお構造的にバッティングしなければ弾薬にそれぞれ複数の性質機能を持たせる事は可能で「徹甲焼夷弾」や「徹甲曳光弾」「曳光焼夷弾」などが有り
三つから四つ以上の性質を有している物は性質を長々書いても読むのが面倒だったりするので「多目的弾」や「多機能弾」と略するケースも有る。


弾芯被甲(ジャケット)

この二つを合わせて弾丸という。弾芯は銅(被甲)で包まれており、弾丸の底まで被っているものを「フルメタルジャケット(完全被甲弾)」という。
逆に鉛が剥き出しの弾薬は「リード弾」と呼称する。

昔の弾は初速も遅いので銃身に汚れが付き難かったが、現在の高初速弾では銃身にたっぷり鉛のカスをくっ付けてしまう為、被甲されている物が多い。

先端が少し出ているものを「ソフトポイント」、先端が露出しかつ穴が開いて窪みが出来ているものを「ホローポイント」と呼び、この二つを纏めて「拡張弾」と呼ぶ。
これらは「ダムダム弾」とも呼ばれ、軍用で使用すると「必要以上に苦痛を与える」として国際法に違反する。(戦争以外での使用は禁止していない)
弾が潰れる事により、貫通せず、体内で暴れて運動エネルギーを放出する為である。激しい時にはめり込んで砕ける。
近年では被甲部分の材質や弾芯の形状を工夫したホローポイント弾が固有名を付けた形(ブラックタロン、ゴールデンセイバー等々)で発表されているが、
これらは総称として「ハイテク・ホローポイント」と呼ばれている。

ちなみにダムダム弾とは、昔イギリスの植民地ダムダムという工廠で造っていたライフル銃用ソフトポイント弾。
当時はここでしか作ってなかった上、その殺傷力が有名になったので、それが拡張弾の総称みたいに呼ばれている。

なお小説・漫画等の娯楽作品では、FMJの頭の被甲をナイフ等で剥いて弾芯を出し、そこに十字傷を付けた物をダムダム弾とか言っているが、
これはどうやら向こうの銃に詳しくない作家が作ったデタラメらしい(ちなみにマスケットの丸弾時代には十字刻みは実際に行われていた事ではある)。
現実ではマトモな銃でそんな弾を撃ったら、剥いた被甲の切れ目や鉛部分がライフリングに引っかかったり、空気抵抗で傷の部分から鉛が割れて使い物にならなくなってしまう。
精々マトモなライフリングの無い物も少なくない上に使うのが比較的短距離の使い捨て廉価銃であるサタデーナイトスペシャル用の用途でしか使えない技術だろう。

薬莢

銀幕上で「キーン」といった甲高い音を出して落ちて、後々踏んづけて転ぶあれ。
主に真鍮や鉄で作られ、弾丸と発射薬、雷管を固定・保持し、湿気や熱から発射薬を保護する役割を持つ。
燃焼は薬莢の内部で行われるため、熱の大部分を受け止め、排熱も担う。
使用後に回収して洗浄・再整形して発射薬を詰めて弾丸をつければ再利用可能なので、自衛隊は米軍との合同演習でも回収している。
「ダダダダダ」と残弾を景気良く発砲する米軍の傍らで「いち、にい、さん…」と薬莢入れ*1を覗く自衛隊という光景は珍しくない。
これは予算が少なかった昔の名残とも言われるが、他にも弾の横流しや不正備蓄を防ぐためという立派な理由がある*2
ちなみに今はお土産用に再利用不可な形に加工するか、使い回すにしても材料レベルに還元してリサイクルするのが一般的。
ただ、同じ銃で発射するのならば、新品の薬莢より1~2度使った薬莢のほうが、チャンバーにぴったりフィットするので精度が高くなるという意見もある。
時代や場所によっては空薬莢を拾って日銭を稼ぐ「薬莢拾い」が居た程。ゴミとして使い捨てるには惜しい資源なのだ。

また、近代の軍事では戦闘で使った空薬莢は可能な限り回収するようにしている。
理由としては落ちている空薬莢の量に応じて『この場所で戦闘があり、またどの程度の規模の戦闘があ、どのくらい弾薬を消耗したか』を敵に悟られる危険性等が挙げられる。

単純に発射薬を詰め直して再利用している弾はリロード弾と呼ぶが、よほどの知識・技術・選定力がなければ大変危険。
下手に火薬の量を増やしたりすると銃が耐えきれず、マガジンやスライドが吹っ飛んで指や鼻が無くなったりします。
逆に雷管しか付いてなかったり発射薬が足りないと、銃身内で弾が止まったりして完全分解しないと直せない状態になったりもする。

口径の項目にもあるが、9mm×19の「19」はこの薬莢の長さを示す数字である。
薬莢のお尻を「リム」と呼び、形状によって「リムド」や「リムレス」などいくつかの種類に分類でき、NATO式口径表記では稀にリム形状の識別用にアルファベットを書く。
(例:9mm×23SR)
現代の戦車用砲弾の薬莢は焼尽薬莢という、燃え尽きる素材で作られた薬莢で、昔の戦車のように車内が薬莢だらけになることはない*3
G11の弾薬は薬莢が無く、発射薬が剥き出しの「カートレス弾」で、軽量かつ排莢の必要もないが色々と問題も多かった。
薬莢と発射薬の中に弾頭が埋まっている構造の弾薬を「テレスコープ弾薬(CTA)」と呼ぶ。こちらは口径に比して全長が短く高速連射に適しており、対空機関砲用として研究が進められている。




雷管

1830年ごろの発明とされている。これの発明により確実に発射薬に着火出来るようになった。雨や湿気に影響を受ける事が無くなったのである。
中には雷汞(らいこう)と呼ばれる、衝撃に敏感なちょっと特殊な火薬が入っている。こちらは発射薬とは違い爆薬である。



弾薬も小さいながら工業製品なので扱いは丁寧に。これの質がジャムの発生に大きく影響する。

ちなみに日本で弾薬を持っていると懲役刑となるので要注意。空薬莢はちゃんと撃てない状態に加工してあればセーフ。
グアムやハワイ等の試射場で撃った後の空薬莢でも、税関で見つかれば色々面倒らしい。
欲しいならお土産屋のキーホルダーを買おう。海外でなくとも京都の太秦映画村にあったはず。



以上で弾薬(カートリッジ)の話を終わります。


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最終更新:2024年04月16日 16:50

*1 排莢口を覆うようにくっついた袋や箱のこと。カートキャッチャーなどとも呼ばれる。ただしジャムの原因になることもあるため、射撃訓練では射手の横に網を持って立ち、薬莢を受け止める「セミ取り」をすることが多い

*2 「渡した弾」と「戻ってきた薬莢の数」を数えることで、こっそり弾薬を溜め込むことを防止している。これを許してしまうと最悪大量に弾を溜め込んでクーデターを起こす等の可能性がある

*3 それでも基部の所だけは金属製なので残るが