L85A1

登録日:2011/08/14 Sun 14:53:11
更新日:2024/01/01 Mon 10:17:01
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L85A1とは、イギリスのRSAF(ロイヤル・スモール・アームズ・ファクトリー)が開発した銃。


○概要            

諸元
全長 785mm
重量 4.65kg
口径 5.56mm×45
装弾数 30
製造 RSAF(所謂エンフィールド造兵廠)→ロイヤルオードナンス社(英)

銃といえばガーランドやコルトのアメリカ、H&Kのドイツ、FNのベルギー、SIGのスイス、AKシリーズのロシア、その他諸々ひっくるめて欧米が有名所だと思う。

だが「イギリスの製造した銃」といえば何があるだろうか*1
そんな近代イギリス製の銃でも有名なのが縞パン&ワイシャツと今回紹介するRSAFのL85A1である。


○開発中…          


NATO弾が7.62mmから5.56mmに切り替わる中、イギリスも制式突撃銃であるFN FAL(イギリスではL1A1)の後継として開発される。

7.62mmをごり押しされ痛い目を見たからか「独自で弾薬作るもん!」と4.85mm×44弾というおかしな工作を始めるも、XL64、XL65、XL68、XL69と試作品だけ豊富で採用されず。

1980年代にベルギーのSS109(5.56mm弾)が登場すると「4.85mm<SS109」という評価を下されたので採用弾を乗り換え、1984年にようやく実用化された。


○出来ました!!!……あれ? 


本体はプレス鉄板、ハンドガードやグリップにプラスチック部品の導入を行うなど、生産性と耐久性の向上を図った低コスト。
外観もAUGと同じくブルパップ式を採用し小型化されて、全体的にスマート。

1980年代のライフルらしさに好感が持ったイギリス軍も大喜びで陸海空の全軍に導入し、華々しいデビューを果たしたが……

  • 銃剣を着剣できるが、その銃剣が銃口に穴の空いたグリップ部分を直接差し込む専用品。*2
  • ブルパップの照準線の短さを補うスコープをつけると、組み合わせ次第で4kg超という突撃銃以上の重さ*3でリアヘビー。

なんだかよい滑り出しではないようだ…

  • プラスチック製の半透明マガジンは残弾確認しやすいが、底部のバネが弱く弾を装填してくれない
  • 挿入口を広く取ったのはいいが、マガジンキャッチが弱く自重で落ちる
  • 排莢機構があるくせに弾を排莢しない
  • 排莢出来たとしてもボルトに直接取り付けられたコッキングレバーに引っかかり、空薬莢が薬室に叩き込まれる。
  • 装填されず排莢もされない細動不良(所謂ジャム)が起こる。

マガジンを外したり、コッキングレバーを動かして解決すれば儲けもので、分解しても直らずに工場送りになることも珍しくないこれが平均99発毎に起こるとあってはたまったものではない。
(ちなみに出撃一回に付き300発は携帯するのが普通です)

そしてどうしようもないのが「ファイヤリングピン折れ」。
薬莢の尻をぶっ叩くことで弾が発射するこの部品が折れると、銃はただの鉄棒なので、これまた工場送り。

これ以外にも、構えにくい、トリガーが重い、セレクターレバー等の操作がしにくい等々の問題が報告されていたのでさすがのイギリス軍も多数の改修を施し、L85A1となったが、依然としてトラブルは続く。

初期型:欠陥だらけ
→改良型:欠陥だらけ
 →更に改良型:平均99発で故障。
  ※この段階で20万挺を生産済み。


○L85A2へ更新      


それでも不満の声が多かったのか、当時BAE傘下だったH&K社改修に依頼。おかげで動作不良は平均25000発に一回の割合に減ったL85A2へと更新される。

改修していない場所はない」とまで言われるまでやったので費用もそれなりに掛かっており、20万挺を150億円、一挺あたり7万5千円(G36の本体価格の半額ちょっと)となってしまった。低コストとは…。

またアンダーバレルグレネードランチャーが使用可能な*4マルチウェポン化するなど、機能面でもいくつか変更。

レールシステムの追加やマグプル製マガジンの採用など細々とした改良も重ねられたのに鈍器呼ばわりされてはいるが今では普通に使える銃になり、運用が続けられている。





○L85A3へ更新      


そしてイギリス軍は更なる改良をH&Kに依頼し、2017年中からさらに進化したL85A3へと順次改修されていった。
目立つのはハンドガード形状の変更で、A2の4面レールを廃止し、上下2本のレールとM-lokスロットを採用したものになり、軽量化された。*5
またアッパーレシーバーとハンドガードの上部レールが一直線のピカティニーレールになっており、照準器の配置の自由度が向上している。



○派生型          


  • L86A1 LSW
銃身の延長とヘビーバレル化、バイポッドの追加などを施した分隊支援火器仕様。最初からL85A2相当の仕様で、後にL86A2にアップグレードされている。
リアヘビーな重量バランスが多少改善されたが重量は弾薬込みで約7kgに、銃身長は646mmに伸び*6、銃口初速が970m/sに上昇。射程と精度が向上。
内部メカも若干異なり、フルオート時はオープンボルト方式、セミオート時はクローズドボルト方式で作動する。
一度採用されたが、マガジン給弾かつ装弾数がL85と同じで銃身の交換もできないため火力に欠けるなどの理由からイギリス軍の分隊支援火器はFN MINIMIへ変更されお役御免となった*7
その後マークスマンライフルとして転用されたことが確認されているが、それらも最近ではルイスマシン&ツール社製の「L129A1 SSW*8」に置き換えられた。
余ったL86の一部はL85A3へ改修された模様。*9

  • L98A1、A2
訓練用モデル。A1が手動装填、A2がセミオート版。

  • L41A1
.22LR弾仕様。

  • L22
ヘリパイロットやドライバー用の短縮モデル。アイアンサイトが無く、光学照準器を標準装備。


○登場作品         


えるかわゆす

  • バイオハザード3
ラスベガスでチェイスが使用

  • 攻殻機動隊S.AC. 2nd GIG
「左目に気をつけろ」で国連軍に参加した英国兵士が使用。

  • ブラックラグーン
プライヤチャットの店の壁にある。

重いうえに高反動でジャム頻度が高く劣化速度も早い、おまけに売値すら安い地雷銃。
ある意味、愛ある再現と言えるかもしれない……。

MW2MW3にL86A1LSWが登場。
カテゴリはライトマシンガンに分類され、装弾数100発のドラムマガジンが装着されている。

擬人化した場合「病弱」「(見た目に相反する重量から)隠れ巨乳・着痩せする」「ドジっ子」といった属性を付けられることが救いと言えば救いかも。


○余談と補足と豆知識    


  • 不評なのだが、英国気質で周囲の意見を意に介さない為か、2020年頃まで主力火器として使用し続ける事が既に決定している。予算の問題だろうか。

  • バッキンガム宮殿での衛兵任務でも使用する部隊があるので観光ついでに見られるかも。

  • イギリス虎の子の特殊部隊SASでは初期からこの銃を見限っており、もっぱらM16辺りをずっと使っている。

  • H&K社はL85を普通の突撃銃に変えた為に米国防省から「ウチのM4もリメイクしてよ」とお呼びがかかりHK416を作り出しており、こちらはこちらで採用している国もあるらしい。



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最終更新:2024年01月01日 10:17

*1 例えば、ステンガン、マキシム機関銃、ビッカーズMk1機関銃、FRオーディナンス MC51、リーエンフィールドライフルMk.III等がイギリス製である。第二次世界大戦で活躍した名銃ばかりだが、反面現代の軍用銃開発においてはずいぶん下火。

*2 その為グリップ自体はゴム製で銃口を塞がない様銃口と同じサイズの穴が開けられている。

*3 M16もAUGも89式もAK-74、AKMもG36も3kg代で収まっている。これらより1kg程重いということ。AK-47は4kg超だが

*4 イギリス軍は元々ソケット式ライフルグレネード(銃の先端に取り付けて銃弾で飛ばすやつ)を採用していたのでL85には用意されていなかった。ただしアンダーバレルグレネードランチャーにはいくつかの難点が存在し、仏製のFA-MASや日本の89式など非対応機種もそれなりに存在するため、この部分は取り立てて責められる内容ではない

*5 試作段階ではHkeyスロットを採用したハンドガードも制作されたが、変更になった模様

*6 参考までに、H&KのPSG-1が650mmである

*7 ただし、それ以前から東側諸国を中心に採用されているRPKシリーズや、後に米海兵隊で採用された「M27 IAR」など、L86と似た仕様の分隊支援火器も一定の勢力を築いてはいる。

*8 7.62mm弾を使用する、アーマライトAR-10の近代版

*9 アッパーレシーバーにL86特有の穴が空いたL85A3が存在する