アーリータイプ(新機動戦記ガンダムW)

登録日:2012/03/02(金) 03:46:33
更新日:2023/09/01 Fri 03:01:05
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アーリータイプとは、『新機動戦記ガンダムW』に登場(?)する機体群。

◆概要

ガンダムシリーズのひとつ、『新機動戦記ガンダムW』。
そのぶっ飛んだキャラクター、シナリオ、モビルスーツ(MS)などからヒットした本作は後にOVA『Endless Waltz』という形で後日談が製作されたが、その際にある事が行われた。

TVシリーズではガンダム界の重鎮・大河原邦男によってデザインされたガンダムタイプのMSを、敵側機体のデザインを行ったカトキハジメがリファインしたのである。

ファンの間では「カスタム」、或いは「EW版」と呼ばれたその機体群は多くの少年少女、ロボヲタ、若干腐りかけのお姉様方をも魅了し、現在でもその人気は高い。


その一方で、ある疑問(というか好奇心)を抱いたファンもいた。
『EW』は『W』の後日談である為、登場する機体群は基本的に「強化後」なのである。

「じゃあ、強化前の機体ってどんなんなのよ?」
なお、デスサイズとヘビーアームズはEWの回想で描かれた第一話直前シーンにアーリータイプとはかなり異なる姿(ぶっちゃけパワーアップ後から目立つパーツを外しただけ)が映っている。
そんなファンの疑問に応える形で、『EW』劇場化の際、劇場パンフレットにカトキハジメのデザイン画が掲載された。

それが「アーリータイプ」と呼ばれる、「EW規準の強化前」機体群である。


早い話が「各ガンダムの強化前Ver.Ka」。
とはいえ本体デザインは強化後の機体と変わらず、主に武装面や細かなカラーリングの変更等がメイン。
これは、カトキ自身がガンプラ等での立体化を行いやすいように(つまり強化後から流用できるように)配慮している為。

……まぁそうなると「あれ?あんまりパワーアップしてなくね?」となりそうだが、設定としては武装面や、本体内部の「見えない部分」で大きくパワーアップを果たしている、という事らしい。


呼称に関しては、当時のガンプラ商標に倣って「カスタム」としたり、カトキ版伝統の「ヴァカ(Ver.Ka)」としたり色々あったが、現在は商品化の流れもあって「EW」或いは「アーリータイプ」に統一されている。

またその知名度が急に上がったのは、ウィングガンダムVer.Kaの立体化、及びその説明書に各機体の立ち絵が掲載された以降であり、後の「敗者たちの栄光」を含めた新ブランドをガンプラが立ち上げた、近年の商品展開では珍しい例といえる。


◆各ガンダムの変化

ウイングガンダム

とかく複雑なラインの翼が目を引く。
ゼロ(EW)の最大の特徴であった天使の翼は廃されたが、その翼の存在感は勝るとも劣らない。

本体は完全にゼロの色替えながらカラーリングがかなり複雑化しており、その翼も相まって情報量はゼロより多い。

武装面はカートリッジ式のバスターライフルにシールド、サーベルと元デザインを踏襲した形になるが、新たに予備カートリッジホルダーが配置されている。

コイツだけは別機体なのだが、本体デザインがほぼ同じってのはどうなんだろう。

余談だが、TV版で両者のデザインが似通っているのは元々ゼロはウイングの後継機(強化後)としてデザインされたから。
もしこの設定が採用されていたら、劇中のウイングの不遇は少しは改善されたかも。

ガンダムデスサイズ

ヘル(EW)の強化前。
本体デザインはほぼ同じだが、ヘルを強く印象付けていたアクティブクロークが廃された事でシルエットは大きく変化している。

武装面は元デザインと同じくビームサイズにバスターシールド。肩部マシンキャノンだけ無くなった。
ビームサイズが明らかにヘルと同じものなので、武装面ではむしろ強化されている。
無論、前述した通り一見同じものでも実はパワーアップしているらしいが。

主なデザイン変更点は肩とバックパック。
どちらも元デザインに近い。

この機体、よく言われる事だがカラーリングが
デスサイズといえば共通認識として黒いガンダムなのだが、何故かこのアーリータイプだけ頭が白い。
機体色も、黒というよりは紺色である。
このためアーリーの中で最もオリジナルといえる
この2点からアーリータイプを嫌う人も多い。

カトキ氏が何故このカラーにしたのかは不明だが、もしかしたら従来の悪魔的な死神ではなく、「骸骨頭に紺の外套」という死神デザインをイメージしたのかもしれない。

ガンダムヘビーアームズ

本体デザインは完全に改と同じ。
まあTV版からしてバーニア類と武装しか変わってないのだが。
内蔵武装も改(EW)と同じ為、ミサイルの数で言えばTV版より遥かに多い。
ただし、実は胸部ガトリングの数が4基から2基に減っている。
TV版基準の赤を基調としたカラーで印象はかなり違うが、改の暗色系カラーは宇宙用の低視認性塗装らしい。
武装面では、TV版では左腕に直付けするビームガトリングが手持ち式に変わった事が大きい。
新たにマガジンもデザインされたが、そのせいでビームなんだか実弾なんだか……。
デザインがEWなためアーミーナイフは装備していないが、MGキット化の際に外付け武装としてリデザインされた。
これなら小説版の矛盾も解消できそうである。
ただTV版と違い刃を手首の外側にマウント(TV版は手首の後ろ側にマウント)する形式にした為、ガトリングと同じく従来のファンからすると賛否両論でもある。

ガンダムサンドロック

TV版ではバーニア類が違うだけなので、こちらでは改の完全な色替え。
TV版準拠のためビームマシンガンを装備しているが不憫である。


と思ったらMG化の際にシールドが新たにデザインされ、差別化が出来た。
またクロスクラッシャーもバックパックを使用しない形式で使用可能な設定である。
カラーリングは元デザインを踏襲している為、こちらの方が好きという人も多い。

シェンロンガンダム

本体デザインは(ry
しかしアルトロン(ナタク)で特徴的だった巨大な伸縮式ドラゴンハングは無くなり、代わりにやたらメカメカしい伸縮式のドラゴンハングを装備している。
あと、アルトロンでは「ツイン」と頭に付いてたビームトライデントの穂先が一つだけのビームトライデントになっている。
カラーリングも含めある意味でTV版に最も近いといえる。

アニメ版『ガンダムUC』でバンシィが新たに装備するアームド・アーマーVNがこのドラゴンハングに似ている為、武装名が不明だった頃は一部でドラゴンハングと呼ばれていた。




◆敗者たちの栄光

この機体群はファンの間で広く認知されていたものの、厳密に言えば「Wの一画稿」に過ぎない為、半公式的な扱いが長く続いていた。

が、ガンダムエースで連載が始まったコミック『敗者たちの栄光』にてこの機体デザインが採用された為、今では完全に公式デザインと言える。

同漫画内ではヘビーアームズの『イーゲル』、サンドロックの『アーマディロ』を始めとした追加武装も登場する為、ファン必見である。
また、カラーの設定画も掲載された。


プラモデル・玩具

しばらくの間は主役機(棒読み)のウイングのみが『Ver.Ka』扱いでFix FigurationやMGキットとして立体化していた(ちなみにFixは初立体化なので結構な人気だった)が、前述した『敗栄』のタイアップ企画として全機がMGキット化されるという凄い事態に。

MGウイングVer.Kaはかなり前のキットであるが、プロポーションやカラーリングの再現は驚くべきレベル。
しかし当時はまだスタンダードだった可動指やボールジョイント式股関節を採用していた為、今の目で見れば武器の保持や可動はやや厳しい。

2010年に始まった残り4機のキット化に際しては、直前に発売されたMGウイングガンダム(TV)で開発されたXXXGフレームと固定指を採用。
高い可動域と武器の保持力を得た。

もちろん、まだ微妙に保持が甘かったり若干可動に問題があったりする部分はあるが、元々やたら動かし難いカトキデザインに加え、やや小さい16m級MSのキット化と考えれば十分満足な完成度である。
特に後発のサンドロックとヘビーアームズに関しては、その短所が改善されたモデルとなっている。

……やっぱりというか、Ver.Kaのウイングの色替えがついでに発売されたが、新たに用意されたのはスタンド接続パーツのみ……。
可動指じゃバスターライフルは保持出来ねぇって言ってんだろ!

結果として、ウイング(と流用のゼロ)は並べた時にやや違和感の残るキットになる事を強いられている……。


このほか、BB戦士ではウイングのみ発売。
オリジナルギミックとしてバスターライフル・シールド・ウイングを合体させて巨大なバスターソードにすることが可能。
このバスターソード、刃を形成するウイング部分を開くことでライフルの銃口が露出する。
つまりぶっ刺して零距離バスターライフルぶっぱが可能な鬼畜兵器。どこのルガーランスですか?


ゲーム

コイツらを出すというのは、言ってみればガンダムVer.Kaを出すようなものなので難しい…と思いきや、ちょくちょく出演している。

第2次スーパーロボット大戦α』にてゲーム作品初登場。設定上は「預かっていたウイングガンダムを若干の改装を加えた」となっている。
ちなみに入手時の会話でヒイロが愛着を持っているような描写があるが、原作での扱いを思うとなんか違う気もする…。
ノベンタ斬りことビームサーベル(突撃)で白兵戦もこなせ、バード形態だと小隊攻撃がバスターライフルになるため小隊員としても優秀。
基本性能もゼロとほぼ同等なので、十分最後まで使っていける。トーラスでは苦しいノインさんにも嬉しい。
しかし、ゲームエンジンがほぼ使い回しであるはずの続編『第3次スーパーロボット大戦α 終焉の銀河へ』では何故か未登場。
一部攻略本でシルエットで記載されていたことから、版権的な問題であると推察される。

Gジェネでは『オーバーワールド』にて、EW版ウイング(とEW版エピオン)が登場。
ウイングはEW版ゼロに合わせる都合が変形が戦闘アニメのみとなっている。つまり実質下位互換なのが悲しい…。
逆にエピオンは全てのステータスがほんの少しずつ上の上位互換となっている。
『クロスレイズ』では『敗栄』で設定された新規装備をひっさげての登場。

ガンプラを題材としたゲーム『ガンダムブレイカー』シリーズでは、ガンプラという扱いなので
ウイング、サンドロック、ヘビーアームズ、シェンロン、エピオンとEW版で登場している機体の方が多い。
(TV版があるのはウイングとシェンロンのみ。何故かデスサイズEW版は未登場。ヘルEW版はいるが)


◆余談

あまり知られていないが、劇場版以前に出版された模型誌『新機動戦記ガンダムWエンドレスワルツ最強プレイングブック』にて同じ発想でウイングガンダムの作例が作られている。
アーリータイプとは対照的に翼とカラーリングがゼロと同じで胴体に変更が加えられている。
また劇場版公開直前にコミックボンボンで連載されていたときた洸一による漫画版の第3話にも本来のオペレーションメテオのイメージ映像としてアーリータイプとはまた違うデザインで描かれている。
心なしか細いがTV版とほぼ同じウイング、本体がEW版で武器だけTV版のデスサイズとヘビーアームズ、EW版と変わらないサンドロック、ナタクの色をTV版に塗り替えて左のドラゴンハングを外してシールドを装備したシェンロンと言った感じ。
作者がtwitterで曰く「何故か「アーリータイプ」の作画許可がおりなかったので「EW参考Ver.ときた」で描いてます」とのこと。
版権がEW自体とは別になっていたのだろうか?


追記・修正はVer.Kaデザインになってからお願いします。

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最終更新:2023年09月01日 03:01