新機動戦記ガンダムW Endless Waltz

登録日:2009/07/18(土) 11:53:40
更新日:2024/01/16 Tue 16:45:44
所要時間:約 7 分で読めます





静かなる軌道(サイレント・オービット)

「例えるなら、歴史とは終わらないワルツのようなものです」

過ぎ去りし流星(オペレーション・メテオ)

戦争平和革命という三拍子がいつまでも続く……」

永遠への回帰(リターン・トゥ・フォーエヴァー)


新機動戦記ガンダムW Endless Waltz(エンドレス ワルツ)




概要

新機動戦記ガンダムW』のOVA・劇場版のタイトル。『Endress』でなく『Endless』。
1997年に全3話のOVAが発売され、1998年に3話をまとめて追加映像を加えた劇場版が公開。
その際、GUNDAM THE MOVIE(ガンダム・ザ・ムービー)と銘打って『機動戦士ガンダム 第08MS小隊 ミラーズ・リポート』と共に同時上映された。


主題歌は
OVA…WHITE REFLECTION
劇場版…LAST IMPRESSION
歌手は二曲共に、TV版OPを担当したTWO-MIX(ボーカルはバーローこと高山みなみ、作詞作曲は永野椎菜)。
どちらも名曲として名高い。
「LAST IMPRESSION」の方は歌としては異例の7分32秒という長さ。

ちなみに、「WHITE REFLECTION」の方は『名探偵コナン』にも登場している。
高山みなみ氏は同作で、言わずと知れた主人公の江戸川コナン役を演じているのだが、
この曲が登場したエピソードではコナンと本人役の一人二役を好演しており、
さらに、コナンとして「WHITE REFLECTION」の一部を下手くそに歌うというシーンもあった(コナンは音痴という設定)。


小説版も発売。
OVAや劇場版で流れた「ヒイロの過去」や「トロワの過去」
「デュオ・マックスウェルという人物の由来」や「カトルの出生」「五飛が正義にこだわる理由」……
等が書かれている。


この作品が作られるにおいて機体のデザインも一新。

と簡単に挙げるだけでもこんな感じであり、武装面でもそれぞれの機体の特長を非常に強調したものとなった。
それでも機体のスペックはアニメと一緒だとか……。

ちなみに名称は一昔前まで「~カスタム」と表記されていたが、最近ではそのまま表記されるか、「~(EW)」という様に表記されるようになった。
これは描いた人が違うだけで、ウィングガンダムゼロやガンダムデスサイズヘルとは全くの同一機体(パラレルデザイン)だからである。
武装とかカラーリングが全然違うのに同一機体とか無理がある気がするがカトキデザインなので仕方ない。

尚「カスタム」と付いた経緯は、ガンプラを発売するにあたり、同一の商標ではユーザーが混乱するという配慮が元。
近年では「TV版の改良型」という誤認を廃する為、「Endless Waltz」または「EW」などと後ろに付ける事が多い。

最近のゲームなんかもほとんどこれだが、EW版はマジでTV版より性能が高かったりする。何故だ。


OVAクオリティの作画と、今までに無かった独自の展開が人気を博し、かなりの商業的成功を収めた作品。
作品のテーマも意外に深く、相変わらずの「泥臭く硬派なビジュアル系」といった作風。

特に特化したメカデザインは当時の少年達のハートを掴み、とにかくプラモが売れに売れた。
主役ガンダムやトールギスのみならず、敵量産機のサーペントさえ発売されたあたり、いかに人気だったか分かるだろう。
だがリーオートーラスは出なかった……畜生!

しかし、TV版のファンの全てが本作品を肯定している訳でもない。
多くはそのメカデザインが「突き抜けすぎ」「お聡美系か!」という理由や、TV版にはあった「ガンダムという存在の圧倒感」がないという理由。
そして何よりも、「近年はEW版ばかり優遇しすぎではないか?」という事。

ゲーム系なんかではもっぱら、

EW版>>超えられない壁>>TV版

だったり、話題にされるのもEW版だけだったり。
特にEW版が入ると高い確率でTV版がリストラされる為、TV版ファンはEW版を嫌っている事も多い。
……まあ、一部制作者の発言も原因だったりするが。

大体、TV版ガンダムWは主人公が反体制側なので、その辺りの問題が片付いているEWの方が出やすいのは当たり前である。
そのため、『スパロボ』でのいるだけ参戦に恵まれやすく、中にはマリーメイアやデキムさえも出て来ない作品もあるほど。
2007年あたりからゲーム作品においてTV版の機体も扱われることが増えたが、ストーリーの再現については相変わらずEW版が多い。

ちなみに、一応本作品はTV版の「パラレル的続編」らしいが、脚本家が続編小説を書いている辺り、関係者では正史として扱ってるよう。
ただ、隈澤氏は「自分は別に続編と言っておらず、サンライズがそう付けた」と『フローズン・ティアドロップ』のあとがきで語っているので、そこらへんは根が深そうな問題である。


なお、OVAと劇場版どちらから見た方がいいか迷う方もいると思うが、基本的にはOVA→劇場版(こちらで新規場面の展開を補完)がオススメである。劇場版に関しては「サリィ・ポォの人質救助シーン」、「ドロシーによる民衆扇動シーン」、「新規ED映像」などが追加されているためOVAより展開が理解しやすくなっていることも留意しておこう。

2011年8月にはブルーレイでHDリマスター仕様が発売決定。
初回限定版には劇場版パンフレットや小冊子、フィルムが付くという嬉しい仕様になっている。

ちなみに、ガンダム作品でクリスマスと言えば?という問いには本作か『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』に二分されることが多い。
どちらもOVA作品であるが、『ポケ戦』が悲劇的な結末であることに対して、こちらはどちらかと言うとハッピーエンドに近いという違いがある。
ガンダムファンならクリスマスの日はどっちの作品を観るべきか、それも大いに悩ましい問題なのかもしれない。


■ストーリー


時はAC196年、クリスマス。
地球統一軍とホワイトファングによる全面戦争「イヴウォー」の終結から一年の月日が流れ、世界は平和の道を歩き出していた。

ガンダムのパイロットたちは「平和になればガンダムは必要ない」という信念の下、自分たちのガンダムを太陽に向けて廃棄する。
一機、五飛のガンダムを除いて……

そんな折、外務次官リリーナ・ドーリアンが何者かに誘拐される。
そしてその犯人であり、トレーズ・クシュリナーダの正統な後継者を自称するマリーメイア・クシュリナーダが、リーオー、そして新型MS・サーペントを主力とした武力で世界に対して宣戦を布告する。
デュオとヒイロはそれを阻止すべくマリーメイアの下に乗り込むが、その二人の前に現れたのはかつて共に戦ったトロワ、そして唯一ガンダムを廃棄しなかった五飛であった。
一方、カトルは廃棄したガンダムを取り戻すべく廃棄資源衛星へ向かう。

こうして平和のための最後の戦いが始まったのであった……



■キャラクター


ヒイロ・ユイ(CV:緑川光)
「俺達はあと何人殺せばいい…?」
主人公。相変わらず人間離れした各種アクションを魅せてくれる。
相変わらず名(迷)言が多い。

リリーナ・ドーリアン(CV:矢島晶子)
「私達に必要なのは主義や主張ではなく、平和を望む心です!」
ドーリアンに戻った元女王。
攫われたりしたが、相変わらずタダで転ぶおとなしいお姫様ではない。

マリーメイア・クシュリナーダ(CV:佐久間レイ)
「私は違う。私は勝者となるのです」
ザ・エレガント閣下の忘れ形見。
ある意味今作のヒロインとも言えるロリっ娘。

デュオ・マックスウェル(CV:関俊彦)
「これでも『負け続ける戦い』は得意でね!」
相変わらず貧乏クジ担当の人気No.1男。
殴られ損なのはいつもの事か。

トロワ・バートン(CV:中原茂)
「こいつらはかつての俺達と同じだ……」
相変わらず気を遣うイイ奴。でも素直じゃない。
ノンオプションのヘビーアームズで大気圏突入した猛者。

カトル・ラバーバ・ウィナー(CV:折笠愛)
「やっぱり今度も、負ける戦いだな……!」
砂漠の王子様。
かなり活躍が多い。だがマグアナックは……

張五飛(CV:石野竜三)
「俺は貴様と戦ってみたかった…。」
ごひ。
正義バカだが、今作は敢えて『悪』であるデキムに付いた。

プリベンター・ウインド(CV:子安武人)
「平和に馴染めない男も、少しは役に立つということだ!」
ゼクスじゃないよウインドだよ。
でも誰にもウインドって言って貰えなかった。
相変わらずの超人パイロット。

ルクレツィア・ノイン(CV:横山智佐)
「さよならは言いませんよ、ゼクス!」
ゼクスの嫁。相変わらず愛が深い。
コンビネーションは健在で多数のサーペントを葬った。

レディ・アン(CV:紗ゆり)
「さて……どうなさいますか、トレーズ様?」
丸くなったレディ。
地味に活躍してる。

●マリーメイア兵士(CV:梅津秀行)
「ウイングゼロの照準は、コンマ二桁まで狂いがありません!」
名(迷)言を残した兵士。
中の人は後のシリーズでおやっさんやってたり。

●女の子(CV:宮村優子)
「お兄ちゃん、迷子?」
ヒイロのトラウマ。
地味にみやむーだったりする。
かわいい。

ドロシー・カタロニア(CV:松井菜桜子)
「あなた達は犬ではなく、犬に振られる尻尾なのよ」
劇場版のみのゲスト。地球圏最強の眉毛お嬢様。
相変わらず素晴らしい言葉責めと金色っぷりでした。




■余談

今でこそセル画成熟期の技術を注ぎ込んだハイクオリティな作品として知られる作品だが、実際にはかなり数奇な過程を経た作品である。
そもそも『W』がヒットした要因は、華美なキャラクター達の活躍によって女性支持層が非常に増えたことが大きい。
無論、その頭のおかしい予測不可能な展開やケレン味とリアリティを併せ持ったメカニック、声優陣の熱演も大きな反響を呼びはしたが、
もはやサンライズとしてはその女性ファンの影響力は無視できないものだったのである。
特に当時、今で言う腐女子や夢女子、いわゆる『オタク女子』がアニメ界隈では目立ち始めた時期だった*1
その結果、『W』のOVAに求められたのは「そこそこの予算、そこそこのクオリティで、あまりMSを出さずにキャラをメインにしたOVA」だったのである。

しかし、本編を視聴した人間なら分かる事だが、明らかに『ガンダムW』は単に美少年がキャッキャウフフして華やかな雰囲気を出すだけの作品ではない。
むしろぶっ飛んだ一風変わった展開こそ多いものの、明確に製作者に骨太な「芯」がなければ作れない作品である。
その骨子となったのは、スタッフ達が当初池田監督に言われた「単に美少年が出るだけの『商品』を作るな、『作品』を作れ」という言葉だったことを青木監督は語っている。
そのマインドを受け継いで地獄のような現場を乗り切っただスタッフ達はそのプロデューサーの指示に不満を感じてはいたが、彼らも会社の言うことには従わなければならない。
作品を作るのもタダではないのだ。


が、この時、ある男が行動を起こした。
誰あろう、TV版ではOZのメカニックを担当したカトキハジメ氏である。

彼は青木監督に、「ウイングゼロのデザインをちょっとリファインしてもいいですか?」と尋ね、当時どうせMSをそんなに活躍させる予定もなかった監督は承諾。
そうして出来上がったのがアレ、ウイングゼロ(EW版)である。
元々TV版の時点で羽根つきガンダムの構想をしていたというカトキ氏だが、よもやあんなデザインが出てくるとは誰が予想しえただろうか……
ちょっとってなんだよ(哲学)


しかしこのデザインがスタッフに火をつけた。
カトキ氏のガンダムに大きな感銘を受けた作画スタッフが、冒頭の『EVE WAR』を超作画で仕上げてきたのである。
そしてこれが他のスタッフに飛び火し、結果的に本作は非常に作画クオリティの高い作品として完成した。
なお、1・2巻でMSがあまり活躍しないのは前述したプロデューサーからのオーダーが影響しているが、それでも節々の戦闘作画にスタッフの意地が見受けられる。
そして終盤においては周知の通り、スタッフは今までの鬱憤を晴らすかのように迫力ある戦闘シーンを世に送り出した。


もしもカトキ氏がちょっと(?)デザインをリファインしなければ、そしてスタッフに池田マインドが受け継がれていなければ本作はもしかしたら今ほどの市民権を得られなかったかもしれない。
そう考えると、まるで『ガンダムW』作中さながらの奇妙な運命である。らしいっちゃらしいかもしれないが。





Wiki籠もり……動けるか……?
……いいだろう。これが最後の追記・修正だ……!

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最終更新:2024年01月16日 16:45

*1 これ自体はその時に始まったものではない。例えばファーストガンダムでもガルマやシャアにお熱な女子がいたし、カミーユの少女じみたデザインも女性層を意識してのものである