Z.O.E Dolores,i

登録日:2013/08/06 07:04
更新日:2023/04/12 Wed 11:53:19
所要時間:約 11 分で読めます




、それは誰かを愛すること。I、それは自分の存在。あ い、それは五十音の最初の二文字!

ZONE OF THE ENDERS Dolores,iとは、2001年に放送されたSFロボットアニメ。全26話。
製作はZ.O.E 2167 IDOLOを手がけたサンライズ。監督も同じく渡邊哲哉。シリーズ構成もOVAを手掛けた吉田伸(因みに今作は吉田が初めてシリーズ構成を務めた作品である)。
先のOVAとは密接な関係にあり、前もって視聴しておくとより深く物語を理解できる。

「成り行きで強力な兵器に乗ることになる」という導入は典型的なロボットアニメだが
主人公は所帯持ちのオヤジ、ヒロインは巨大ロボットという異色の作品であり、
実力派揃いの声優陣と戦乱の中で『家族』『愛』を描くストーリーは評価が高い。

Z.O.Eシリーズの時系列では無印Z.O.EとTESTAMENTの間の話にあたる。
地球-木星間の時差(最短で片道2ヶ月かかる)によりアンティリア事件の調査が進んでおらず、
地球と火星の関係が本格的に最悪化していないため比較的平和な描写が多く、
Z.O.E世界の一般文化を理解するのにはもってこいの一作。


あらすじ
フリーの運び屋をしている中年男ジェイムズ・リンクス。
妻との離婚と彼女の死亡通知を受けたことで彼の家庭は崩壊し、
今では移動中に妻の写真を見ながら飲んだくれる日々を過ごしていた。

ジェイムズはある日中身不明の荷物を地球へ運ぶ仕事を依頼される。
娘の誕生日プレゼントの資金調達のため怪しみながらも依頼を受けることにするが、
積荷を運んでいる最中に謎の男に船を襲撃されてしまい、絶体絶命のピンチに積荷の中から巨大なロボットが現れる。

ジェイムズを「運命のおじさま」と呼ぶ謎のロボット・ドロレスとの出会いにより
彼らの家族の絆を取り戻すための地球と火星を股にかけた旅が始まるのだった。


登場人物
  • リンクス一家
ジェイムズ・リンクス(声:玄田哲章
「俺は50じゃねえ!俺はまだ49だ!」
主人公。フリーの運び屋をしている玄田ボイスのマッチョマン
普段はどうにも頼りない陽気な中年男だがやる時はやる家族を愛する熱血オヤジ。愛称はジム。
「もう50なんだから」と言われると「俺はまだ49だ!」と張り合っちゃう49歳。地球生まれ。
元は地球の軍人。火星の軍施設にいたレイチェルに一目惚れし猛烈にアタックした結果見事彼女の心を射止めた。
二人の子供にも恵まれ幸せいっぱいだったが、地球と火星の関係悪化によりレイチェルは家族を捨てて家を出てしまい、
その事をきっかけに子供たちとも疎遠になり、レイチェルが死亡したという通知が届いたことで決定的な溝ができてしまう。
妻の死を信じられないジェイムズは軍を辞めて運び屋となり裏社会から独自にレイチェルの消息を捜し求めていたが成果なく、
親の勝手な振る舞いで子供たちをないがしろにし家庭崩壊を招いたことを反省し家庭修復に向けて一念発起する。

「わたくし、オービタルフレームのドロレスと申します。よろしくお願いします、おじさま」
ショッキングピンクの巨大ロボットという斬新すぎるヒロイン。
ジェイムズが運んでいた積荷の中から現れ、ジェイムズを「運命のおじさま」として慕う。
とても兵器とは思えない天真爛漫で夢見がちな少女のような性格をしており、振る舞いがいちいち可愛い。
常識を知らない彼女にジェイムズは手を焼かされつつも絆を育んでいく。

レイチェル・スチュアート・リンクス(声:榊原良子
「ジェイムズ…ドロレスを…誰にも…渡さないで…お願い…」
ジェイムズの元妻。若々しすぎるメガネ美人の47歳。火星生まれ(マーシャン)。
元はバフラムの研究者で、ジェイムズと結ばれてからは地球で主婦となっていたが、
10年前に故郷の危機に黙っていられず離婚して火星に戻り、史上初のオービタルフレーム・イドロの開発責任者となる。
5年前のダイモス事件で死亡したとされているが、ドロレスをジェイムズの下へと送り出したのは彼女であるらしく、
ジェイムズはレイチェルを求めて一路火星へと向かうことになる。

レオン・リンクス(声:宮本充
「あんたは物分りのいい風を装ってママを止めようともしなかった。あの時、家族は終わったんだよ…」
ジェイムズの息子。25歳。母親似でコンピューターに強く若くして大企業の部長補佐という役職に就いているエリート。
無能ではないのだが基本的にヘタレな二枚目半で、レイチェルのCGフィギュアを密かに自作しているマザコン。
離婚の原因がレイチェルにあることを知らないためジェイムズへの反発心が強く、露骨に嫌悪している。

ノエル・リンクス(声:日高奈留美)
「ちっちゃくったって家族なんだよ!」
ジェイムズの娘。23歳。女だてらに建設現場の監督を務めている。
父親似の勝気で姉御肌な性格で、兄よりもよっぽど人ができている。
兄と違い離婚の事情を知っているためジェイムズのことは過干渉さをウザがりつつもそこまで嫌ってはおらず、
むしろ家族を捨てて家を出て行ったレイチェルのほうに複雑な気持ちを抱いている。

  • ワイヤード(国連警察機構)
バーン・ドルフォーム(声:長島雄一 現チョー)
「見つけたわよ!ジョン・カーター!」
ワイヤードの本部長。何故かオネエ言葉で喋る。
Z.O.Eの世界におけるエンダー(地球在住以外の人間)差別の象徴とも言える人物で、
エンダー全てを汚物のごとく忌み嫌い、ジェイムズも火星の手先と決めつけて拷問まがいの尋問を加えた。
ジェイムズに煮え湯を飲まされたことから「ジョン・カーター」と呼び執拗に付け狙う。
※ジョン・カーターはエドガー・ライス・バローズ作のSF小説「火星シリーズ」の主人公。
地球の軍人だったが火星に飛ばされ、低重力下で無双の力を発揮して英雄となり火星の姫と結婚する。
ジェイムズを「火星に鞍替えした英雄気取り」と侮蔑した呼び名。

サメジ(声:立木文彦
「えー、本名はジェイムズ・リンクス…」
バーンの部下。ジェイムズ憎しで暴走するバーンの尻拭いをさせられる苦労人。

  • ナフス一派
ナフス・プレミンジャー(声:子安武人
「火星には魔法の力…メタトロンがありますからね」
火星最大規模を誇る兵器企業ネレイダム・ユニバーサル・テクノロジ(NUT)の会長。
左目や右腕など体の約半分がメタトロン製の義肢になっている。
バフラムに協力する一方で新型オービタルフレームやセベク隊などを配備し自らの戦力を高めている。

レベッカ・ハンター(声:中西裕美子)
「火星人と地球人がわかりあえるはずなどないんだ!」
ナフスの養女。ナフスの養子で構成された私兵部隊・セベク隊の隊長。
ナフスを父と慕い彼の言う事に盲目的に従うことを『家族の絆』と信じていたが、
ジェイムズというナフスと違った『父親』のあり方を知ったことで葛藤を抱くようになる。

  • バフラム
ノウマン(リドリー・ハーディマン) (声:中田譲治
「アヌビスこそ究極の魔法使いだよ」
アーマーン計画の中心人物にして現状最強のオービタルフレーム・アヌビスのフレームランナー。
アヌビスの圧倒的な力を見せつけるが、その力に自らも飲まれつつあるのを自覚している。
2年後にあんな風になるとは思えないほど理知的。



登場オービタルフレーム

ドロレス
およそ兵器とは思えないピンク色の装甲とピコピコ動く耳のようなパーツが特徴的な謎のオービタルフレーム。
非常に高度な自律型AIを搭載しており、フレームランナーなしでの完全自律行動が可能。
オービタルフレームの操縦に不慣れなジェイムズは操縦の大半はドロレスに任せ戦術アドバイスに徹している。
極めて高い性能を誇るが、ドロレス自体が自身の能力に無知なため加減が効かなかったり
逆に戦闘のイロハを知らないため格下に苦戦を強いられたりと問題が多い。

ラプター
汎用量産型無人オービタルフレーム。トリガラ呼ばわりされる細身のボディが特徴。
人的資源に乏しい火星軍が地球軍に対抗すべく開発した無人オービタルフレームで、
各種アタッチメントを装着し特定の機能を強化することで高い汎用性を発揮する。
基本的には指揮官機のマス・コントロール・システムによって遠隔統制されているが、有人機も存在している。
ラプターさんが活躍する21話を見るとあなたもきっとANUBISで無双するのが辛くなるはず。

オルタネイト
無印Z.O.Eでのヴァイオラの愛機であるネイトの後継量産試作型。
正式配属前の試験機ではあるが基本性能は現行のC型オービタルフレームで最高クラス。

セルキス
戦闘機のような高機動形態と2本のアームと1機のビーム砲を展開した
蠍を思わせるシルエットを持つ格闘形態の2つの形態を有する可変型オービタルフレーム。
最新機にも引けを取らない機動性と火力を持つが操作が複雑かつ反応がピーキーで乗り手を選ぶ機体。
無印ZOEではノウマンの愛機として名前だけ言及されていたが、本作で登場を果たした。




この先後半ネタバレ注意↓













重要人物

「ジェイムズ・リンクス…わたくしの運命のおじさま…」
「軌道エレベータ破壊」という命令を与えられたイシスのAIにレイチェルが
「軌道エレベータ破壊阻止」という相反する命令を与えたことでその矛盾を解消すべくシミュレートを繰り返した結果
自分のことに無知であり、なおかつそれを容認することのできる人格として偶発的に生み出されたAI。
レイチェルはドロレス・ヘイズの死に罪悪感を抱いていたため彼女の名前を取ってこのAIにドロレスと名前をつけたが、
実はイシスの残骸に残されたドロレス・ヘイズの記憶が彼女の奥に眠っていたため、偶然ながらその名はまさに正鵠を射ていた。
自分が死人であることを知り深く傷つくが、彼女に『家族』として手を差し伸べるジェイムズに諭され彼の娘として生きることを選択する。


ラダム・レヴァンズ(声:子安武人
「思い出してもらおうか、私の名を…この魔法の力とともに!」
ナフス・プレミンジャーの正体にしてZ.O.E 2167 IDOLOの主人公その人。
ダイモス事件で半身を失うほどの瀕死の重傷を負ったが、NUTの会長ナフス・プレミンジャーに
火星の希望を担う人物として保護され、メタトロン製義肢を与えられて半ば強化人間と化して復活。
先代のナフスよりその地位と名を譲り受け『武力による火星の地球からの解放』という夢を受け継いだ。
だが、最愛のドロレスを失ったことやメタトロン製義肢からの負の感情のフィードバックなどの影響により
火星解放の手段と目的が変質していき、火星を虐げドロレスの命を奪った地球への復讐のために
軌道エレベーターを倒壊させて地球を滅ぼすという未曾有の大惨事を起こすことを企むようになる。

終盤、かつての愛機イドロの残骸より造られたドロレスの姉妹機ハトールを駆って戦場に出現。
ドロレスよりマス・コントロール・システムを奪って以後は自身の憎しみや願望がメタトロンの
「魔法の力」により具現化したドロレス・ヘイズの亡霊に半ば操られるように
自分とドロレスだけの世界の実現という狂気へと落ちていく。


ドロレス・ヘイズ(声:桑島法子
「ラダム…あの子が呼んでるわ…」
5年前のダイモス事件においてレイチェルを庇い死亡したラダムの恋人。愛称はドリー。
死亡した際にイドロに触れていたことでその意識の一部がイドロのメタトロンに転写されており、
(実際に彼女の体からエネルギーラインが放出されているような描写がある)
それはイドロの残骸を用いて造られたイシス(ドロレス)とハトールへと受け継がれていた。


後半登場オービタルフレーム

イシス
ドロレスの正式名称。イドロの残骸を用いて作られた新型オービタルフレーム。
軍用機すら強制的に支配下に置く強力なマス・コントロール・システムを搭載し
大量の無人機を統制することで軌道エレベーター制圧作戦の中心となるべく設計されたが、
レイチェルによって「軌道エレベーター破壊阻止」の命令を与えられた後にラダムの下から逃がされた。

本来のイシスのAIは戦闘に特化した機械のように感情のないAIで、こちらが主人格。
そのためドロレスが危機に陥るとイシスがドロレスを乗っ取って表出していたが、ドロレスが自我を確立し、
主人格をイシスからドロレスに変更されて以後はイシスが表に出ることはなくなった。


ハトール
ラダムが奪われたイシスの代替として開発したオービタルフレーム。
ドロレスとは同じイドロの残骸を利用して作られた姉妹機にあたり、ドロレスと同等以上の性能を持つ。
しかしマス・コントロール・システムの再開発には時間がかかりすぎるためオミットされており、
(メタトロンコンピュータのプログラムはコピーすることができず、移動(トランスプランテーション)しかできない)
当初は不完全な状態だったがドロレスからマス・コントロール・システムを奪ったことで完全体となる。

ノウマンのアヌビスが使った技を参考にしたのか、ベクタートラップに自分自身を収納して
一時的に通常空間から姿を消し、敵の攻撃を回避しつつ奇襲をかけるという脅威の戦術が可能で、
メタトロンとの結合が進んだラダムが駆ることで絶大な戦闘力を発揮する。
AIボールにはドロレス・ヘイズの亡霊が潜んでおり、ラダムを破壊へと駆り立てている。


アブ・シンベル
200機ものラプターを搭載可能な全長500m超という史上最大の超大型オービタルフレーム。
当初はラダム陣営の旗艦であると思われていたが、実態は使い捨ての突入カプセルにして特攻機。
正面の空間を圧縮することで時速10万kmの状況下で無理矢理軌道を変えるほどの桁違いのベクタートラップを内蔵しているが
ブースターは使い捨てで帰還を一切想定していない。その役割は戦場への強行突入と本来の狙いから目をそらさせるための囮である。






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最終更新:2023年04月12日 11:53