医龍-Team Medical Dragon-

登録日:2012/01/07 Sat 11:35:04
更新日:2023/05/23 Tue 01:03:45
所要時間:約 12 分で読めます




行くぜ、チームドラゴン!


『医龍 -Team Medical Dragon-』とはビッグコミックスペリオールで2002年から2011年にかけて連載された医療漫画。単行本は全25巻。
また4回にわたって実写ドラマも制作された。


【概要】

永井明原案、乃木坂太郎作画。
元々は医師・医療ジャーナリストの永井氏の原作でスタートしたが、2004年7月に永井氏が病没。
医療監修に吉沼美恵氏を据えて、乃木坂氏が完結まで書き上げることとなった。

他の医療漫画に漏れず、主人公は作中ではトップクラスの技量を持つ天才外科医。
物語のテーマに大学病院・医局の改革を据えており、政治的な展開も強い。またチームで手術を行うため、チームワークの大切さなども題材にされている。


【あらすじ】

腐敗した医局を改革したいと切望する女医、加藤晶は強力な切り札を探していた。
そこで目を付けたのは、かつて紛争地域で見た医療NGO「万人のための医師団」で活躍していた天才外科医・朝田龍太郎。
朝田の所在を突き止めた加藤は、彼に自分が執筆する論文の為バチスタを切ってみないか?と誘いをかける。


【主要登場人物】

◇バチスタチーム

朝田龍太郎
(演:坂口憲二)
主人公。かつてNGOで辣腕をふるった天才外科医。帰国後、地方でニートをやっていたところを加藤にスカウトされて医療の最前線に復帰する。
性格はお気楽でお調子者の元ヒモ。ケーキ複数個を平然と平らげる甘党。平時の軽さの一方で患者・生命には徹底して真摯に接し、時に暴力的になることも辞さない。
その独善的にも見える態度から他の医師からは嫌厭されがちだが、患者の関わらない職場関係では意外と人当たりは悪くなく、初出勤時では木原におべっかを使ったり他の医師にコーヒーを淹れようとしたりと最低限のコミュニケーションは取れている。
多くの人物が一人称視点で心情を吐露する中、彼だけは最終回までほとんどモノローグがない。
漫画版では年齢不詳だが、作中の描写やセリフを見る限り30代前半。その割には顔が若く、連載が進むに連れどんどん若返っていく。
ドラマではストイックでクール。だが、両方共に患者の命を守る時は天才としての面が出る。基本的に執刀医。

加藤晶
(演:稲森いずみ)
女医で明真大胸部心臓外科助教授。政治劇における主人公。女性初の教授を目指す野心家。
朝田の医局無視のやりたい放題に振り回される苦労人。朝田が来るまでは外科医のエースだった。

伊集院登
(演:小池徹平)
研修医。朝田曰く「医局で一番利己的な奴」。
朝田に振り回される苦労人その2。医局に染まりかけの時に朝田に会い、助手を勤める事になる。作中で最も成長した陰の主役。
特に優れた才能のない凡人だが、様々な経験を通して研修医としては並外れた力量を身につけていく。

里原ミキ
(演:水川あさみ)
抜群の反射神経とおっぱいを持つ器械出しナース。
外科医の欲しいアイテムを欲しいタイミングで出してくれる。外科技術であるグラフト採取もこなせる。
異母兄の霧島軍司からDVを受けていた過去があり彼を嫌っているが、実力と信念は認めていて肉親としての情もないわけではない。

藤吉圭介
(演:佐々木蔵之介)
内科医。ゴツい中年男性で、朝田からは「とっつぁん」と呼ばれる。
患者の術前・術後のケアを担当する。オペに入らないため少し影が薄い時もあるが、朝田が腹を割って話せる数少ない好人物で加藤も弱音を曝け出している。
内科医としても極めて優秀で、バチスタチームだけではなく他の教授候補陣からも全幅の信頼を寄せられている。
初期は頑固一徹と言った雰囲気のキャラクターだったが、徐々に物腰穏やかな人物として描かれていった。
ドラマでは手術についての視聴者の解説役。

荒瀬門次
(演:阿部サダヲ)
高度な技術を持った麻酔医。眠たげな小男。かつて麻酔論文のために多くの患者を死なせた過去を持ち、その罪を背負って露悪的に振舞う守銭奴。
ゆっくり七つ数えて最後に一言「ハイ落ちた」とどんな患者も完璧なタイミングで麻酔に落とすことができる(朝田曰く、この「ゆっくり数えて七つ」が患者が麻酔に落ちる理想のタイミングと語っている)ほか、
術中の患者の管理を一手に引き受けるため、朝田が本気を出す時は欠かせない技量の持ち主だが精神的には脆い部分がある。
後日談では朝田に甘いものの仕送りをしていた。

◇取り巻く人々

  • 木原毅彦
(演:池田鉄洋)
胸部心臓外科助手。頭頂部が薄く長髪なので見た目は「落ち武者」っぽい。
休日はゴルフ、ミスは隠蔽、教授には絶対服従など「医局員」を体現したような人物。マザコンで根は優しく、偉そうにしていても仲間意識は強い。
腕自体はヤブという程ではないが、やや微妙と言ったところ。
最終的にマシになっていき、凡庸な自分の使命を自覚して落ちこぼれた研修生の指導に当たるようになる。
ドラマではチームドラゴンのサポーターみたいな役兼愛すべきバカに落ち着く。中の人のはまり役。

  • 鬼頭直人
明真大学救命救急教授。渋ダンディな伊達男。朝田を金になる医者と見定め、自陣営に引き入れるために教授選の第三勢力を立ち上げる。
ERのトップにして、本気を出した際の技術力も朝田に負けず劣らず。策略家ではあるが、意外にも腐敗した医局の中ではかなり真っ当な人物。
加藤いわく「病院が呼び込んだ金儲けのための尖兵」だが、金より命を助ける事に執着し、それが金になるという考えを持つ。
朝田とはお互い友情を感じており、金や朝田の技量を抜きにしてもERで一緒にやっていきたいと考えている。
ドラマ版では鬼頭笙子(演:夏木マリ)という女性。

  • 野口賢雄
(演:岸部一徳)
胸部心臓外科教授(ラスボス)。丸メガネと禿頭が特徴的な小柄な老人。
政局に恐ろしく強い政治家であり、作中ではたびたび「権力の妖怪」と表現される。個人としては愛妻家で、息子夫婦も大切に想っている。何気に朝田と気が合うタイプで朝田にとって損得抜きで飲む野口との酒は楽しいものであったりする。
ドラマでは教授だったりマネージメント部長だったり役割が変わる。もはやネタキャラ。
原作では最後の最後まで教授選の行方を左右し朝田と同じ高みにいる人物とされている。

  • 霧島軍司
(演:北村一輝)
北日本大学の外科医で、かつて朝田に医療過誤の罪を被せて北日本大から追い落とした男。物語途中で野口の建てた教授候補として明真にやってくる。ミキの異母兄。
朝田との再会や伊集院との出会いを経て建前にすぎなかった「凡人医師を守るための医局」を本当に作るべく改革を目指す。原作ではとにかく報われないが最後の最後で再び立ち上がる。
……ガチホモではないはず。
中盤以降彼の視点で物語が進行することも多く、またエピローグでも最も出番が多いため、彼もまた主人公(もしくはヒロイン)の一人とも言える。
ミキからは軽蔑されているが、エピローグでは真吾を含めた三人で、一緒に朝田の生まれ故郷の海に訪れている。
朝田へのコンプレックスを克服してからは朝田の技量を公にも認めミキに対しても割り切った態度をとる。

  • 国立笙一郎
鬼頭が教授候補として招致したUCLAの元教授。高いカリスマ性と技術力を持つ外科医。
霧島とは対照的に「海外標準の高い競争力をもった医局」をスローガンに掲げ、過酷になっていく日本の医療を変えようとしている。
息子に日米文化の長所を受け継いでほしいと期待しているが、その思いが重圧になっていることには気づいていない。
威圧感を与える重々しい雰囲気の持ち主だが、案外天然な頑固親父。
ドラマ版には登場しない。

  • 国立真吾
国立の息子。年齢に見合わない妙にドライな部分を持った中学生。
父を尊敬しつつもコミュニケーションの不和が長く続いており、懊悩する彼の行動が終盤に大事件を引き起こす。
霧島軍司と交流を深め、エピローグでは二人で庭先に埋めたイルカの骨を掘っていた。
こちらも父親同様ドラマ未登場。

  • 中田浩道
胸部心臓外科では朝田&加藤に次ぐ腕利きの外科医で、要所要所で美味しい出番が多い。
教授選ではあえてどの派閥にも属していなかったが最終盤の演説は結果に大きく影響を及ぼす。
最終的に助教授に昇格し、臨床の責任者として若手の指導を引き受けることになった。

【ドラマ版】


第1期の放送当時は原作が連載中であったため、原作をなぞったのは第3回バチスタ(原作1~11巻半ば)まで。
第2期以後はドラマオリジナルエピソードを中心に、原作に存在した要素をちりばめたような構成になっている。

ほか変更点として
  • 朝田の性格:軽佻さを省いてストイックさ・クールさを強調
  • 鬼頭の性別:男性から女性に(笙子の名前も、出てこない国立の役目を担わせるため?)
  • チームの名前:原作に固有名詞は存在しない(強いて言うならば「バチスタチーム」)が、ドラマ版では「チームドラゴン」という名称がつけられている
  • 第3回バチスタ中の急患:原作では木原の母だが、ドラマで運ばれてきたのは霧島軍司
  • 第2期以後の野口の肩書:原作では一貫して教授であったが、ドラマ1期最終回で退官(免職?)したため、シーズンごとにころころ変わる


【ドラマオリジナルの人物】

◇2期

  • 善田秀樹
(演:志賀廣太郎)
北洋病院院長。昔の野口の同僚だが今は仲たがいする間柄になってしまう。

  • 片岡一美
(演:内田有紀)
2期1話の患者。その正体は外資系投資会社の重役で、野口と業務提携を目論むパートナー。
やっかいな朝田を始め、チームドラゴンと敵対する事になる。

  • 松平幸太朗
(演:佐藤二朗)
北洋病院消化器外科の医師。名医と持て囃されたが院内抗争で消耗し、論文改竄に手を出してしまった過去を持つ。
アル中の飲んだくれだったが、昔助けた女の子の声で復活。
心肝同時移植では肝臓の摘出を行った。酒を止めてからはコーラを飲んでいる。

  • 小高七海
(演:大塚寧々)
チョコレート中毒の美人麻酔医。
緊急手術で息子との約束を破った結果、発作で倒れた息子が半身不随になって以来無気力に。
こいつも闇落ちしていたが自分の息子を守るため復活、荒瀬とは対称的に麻酔の導入が高速。

  • 外山誠二
(演:高橋一生)
性悪の血管外科医。手術スピードでは朝田より上(早さにこだわるあまり雑だったために再発した)。
事あるごとに自身の技術を誇示していたが、朝田達に触れる事により改心し、まともな性格になる。
ちなみに中の人は耳をすませばの天沢聖司やジュウレンジャーのカイ。

  • 野村博人
(演:中村靖日)
対人恐怖症気味の臨床工学技士だが技術力は高い。
かつて外科医に医療ミスを被せられたことがある。こちらも朝田に触れ克服。その後はもっぱら外山イジリに励む毎日。

◇3期

  • 黒木慶次郎
(演:遠藤憲一)
カテーテルの世界的権威。元心臓外科医で教授に医療ミスを押しつけられたことがある。
伊集院を勧誘したり、暇さえあればよくエレベーターに乗っている。カテーテルチームの服装が黒子。
彼もまたチームドラゴンの一人である。劇中で病死、永久欠番の10人目に。

  • 真柄冬美
(演:谷村美月)
新人研修医。ダメな医局員とも違うが患者を救いたいなどという情熱はなく、めんどくさい事はせずにとっとと帰る主義。

  • 北川響
(演:初音映莉子)
3期で登場しないミキの代役。器械出しの速度は同格、そして出番が少ない。

  • 真鍋徹
(演:今井悠貴)
3期中盤から登場した患者の少年。
自殺未遂を起こし、徹を救おうとした朝田が病院の屋上から転落して重傷を負う
つまり、ドラマに登場しない国立Jr.の起こした事件のトリガー役

◇4期

  • 桜井修三
(演:平幹二朗)
桜井総合病院院長。朝田の恩師。

  • 岡村柾
(演:高橋克典)
L&P病院の経営コンサルタント。野口と共謀しインドに新設する病院にチームドラゴンを送り込もうと画策する。
元々はアメリカ屈指の脳外科医。
婚約者の死を機にビジネスによる医療改革を志して経営者に転身した。
患者を巡って野口ともたびたび対立。最終回では10年ぶりに手術に立ち、チームドラゴン11人目に


【補足】

  • バチスタ手術(左室部分切除術)
本作のキーとなった術式。ブラジル人医師Randas.J.V.Batista博士考案。
左心室形成術の一つで、拡張型心筋症に伴い機能しなくなった心筋部位を切除し、正常な大きさに再形成することでポンプ機能を回復させる。
重度の心不全に対して心臓移植の代替となる手術だが、受けるためには心筋の正常な部位などの条件が必要となる。
現実のものをベースとしてはいるものの、作中のバチスタ手術は事実上《難しい手術の記号》となっていることには留意が必要である。

  • ドラマは4期放送。1→2→3→4とするに連れて下がっていったが、どのシーズンも10%をきった回は一度もなかった。
  • ドラマでは魅せる手法が多いため患者が死ぬ事はなかった。原作では1度術中死しており、その後どう向き合うのかが描かれている。
  • ドラマの劇伴の担当はガンダムUCや青の祓魔師、アニメ版戦国BASARAの澤野弘之。相変わらずのハイクオリティで盛り上げてくれる。
  • 藤吉の娘の生死が原作・ドラマで異なる。
  • 作者の乃木坂太郎は『史上最強の弟子ケンイチ』の作者と親交がある。そのせいか初期の作風が若干『ケンイチ』に近い。
  • ドラマ「ドクターX 〜外科医・大門未知子〜」の第7シーズンで、「漫画の世界にしか存在しないようなスーパードクタ-」に言及するための小道具として、本作の単行本がチラッと登場した。ドラマ版で散々チームドラゴンを苦しめた岸部一徳と内田有紀が「ドクターX」では主人公側の医師として出演しており、奇妙な縁がある。


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最終更新:2023年05月23日 01:03