月読ジゼル

登録日:2013/07/28 Sat 18:10:27
更新日:2024/02/18 Sun 22:03:50
所要時間:約 8 分で読めます





ゴルゴダの丘に咲く青い薔薇よ…

何人も抜け出せないその檻の中に咲き誇る瑠璃色の不可能よ

願わくば教えておくれ薔薇十字の魔王

黒く塗られし薔薇に込めたる憎しみを



月読ジゼルとは、『金田一少年の事件簿』の登場人物。 出演したのは20周年記念シリーズ最終作『薔薇十字館殺人事件』。

声:沢城みゆき / 演:藤井美菜


薔薇十字館に招かれた客の一人で、最近売り出し中の歌人。
ウェーブがかった長い黒髪に虚ろな瞳が特徴的な西洋風の美女だが、
漆黒のゴスロリファッションに身を包み、詩を思いつく度にその場で口ずさむ電波な部分を持つ所謂「残念な美少女」である。(一曰く、「俺の苦手なプッツン系」)
年齢は20歳だが、小柄な体型と童顔も相まって実年齢より幼く見える。
そして小柄なわりにかなりおっぱいが大きい
また、「月読ジゼル」という名前はペンネームっぽいがれっきとした本名である。キラキラネームとか言うな

妙ちきりんなポエムを詠う様は周囲を困惑させ、明後日の方向を見て訳のわからないことを呟きながらキラーンと星を浮かべていた。
基本的に美女に弱い金田一ですらその様子から「プッツン女」と評して苦手意識を抱いていた。

凄惨な殺人事件に巻き込まれているにもかかわらず、空気を読まずに追悼などと言ってはポエムを口にして、人を苛立たせる場面も多い。
西洋の古典に関して造詣が深く、凡人には理解不能な難解な比喩を多用する。
そんな我が道を行く彼女だが、“火”に何かしらのトラウマを抱えているようで、
金田一の仕掛けたドッキリでは半狂乱になってパニック状態に陥っている(ただしこれは薔薇十字館に集められた全員に共通)。
また、背中には大きな十字架型の火傷が残されている。

記憶力は良いようで、金田一が思わず口走ってしまった単語から高遠遙一の素性を真っ先に思い出していた。
ただし、そんな時でさえ即興のポエムを披露しながらである。










【以下、ネタバレ注意】










私は美咲ジゼル!

あなたに殺された美咲蓮花の娘よ!!

『地獄の傀儡師』にさえ挑戦状を叩きつけ、薔薇十字館を舞台に残忍な殺人を繰り返した恐るべき連続殺人鬼『ローゼンクロイツ』の正体。
あまりにも怪しすぎてあからさまなミスリード要員かと思いきや、本当に犯人だった亡霊兵士的なパターン。

遠縁の親戚である月読家に引き取られる前の名前は「美咲ジゼル」で、薔薇のブリーダー・美咲蓮花の一人娘として母子家庭で育っていた。
新種の青薔薇を完成させた母と共に、薔薇の博覧会の為にローズグランドホテルに宿泊するが、
青薔薇を盗もうと企んだ皇翔(すめらぎ しょう)・小金井睦・祭沢一心・禅田みるく・冬野八重姫の放火によってホテルは炎上。
(なお、冬野は強引に仲間に引き入れられただけで放火には消極的だった。計画では小火で青薔薇が焼失したと思わせ盗難を誤魔化すだけのつもりであったが、
予想外に火の手が大きくなったことに加え、ホテルの防火設備の欠陥が重なり、ホテル全焼という大惨事になってしまった)

偶然展示室にいる彼らの姿を目撃してしまった蓮花は、口封じに重傷を負わされた挙句に展示室に閉じ込められ、焼死してしまう。
扉越しに聞いた母の死に際の言葉から、ホテル火災とそれに伴う母の死が5人の人間の仕業だと悟っていたジゼルは、
母の遺体が抱きかかえていた5つの薔薇を見て、それが犯人たちを指し示す母のダイイングメッセージであることに気付く。

そして、犯人の一人だと判明していた皇に母の死の真相を問い詰めた際、動揺した皇に襲われ思わず突き飛ばして死なせてしまう。
アニメ版では動揺して逃げ出した皇を階段で引き留め、階段から転落させて死なせてしまう事故に変わった。
殺意があったわけではなく突発的なアクシデントだったため、ジゼルはパニックを起こして館を飛び出し彷徨い歩くが、
原作版ではその直後に子供たちに奇術を披露している高遠の姿を目撃してしまった&それが自分の兄だと気づいてしまったことをきっかけに、
ドラマ版では凶悪犯罪者であるのに堂々と街中を肩で風を切って歩く高遠の姿を目撃してしまったことをきっかけに、
彼の存在を裏付けとして殺人者としての自覚を固める


実の兄が殺人鬼っていう事実は私に勇気を与えてくれた

これは運命なんだって思ったの

あの日、兄に出会ったのも復讐の悪魔の導き……

そうして半ば強引に自らを奮い立たせた彼女は、皇の死体に防腐処理を施したのち、
ホテルの客の中から薔薇の品種名を名前に含んだ人物を薔薇十字館に集め、
館における各人の反応を観察する中で皇と同じ母殺しの罪人たちを突き止め、復讐を遂行した。
イニシャルがS・Kの人間を集めて全員殺そうとしたどっかのマジキチジェイソンとは大違いである。

ちなみに背中にある十字架型の火傷痕は、当初一部の読者から「ミスリード」や「厨二病趣味が高じて」と予想する声が上がっていたが、
真相は燃えさかる部屋に閉じ込められた母を助けようと、必死にドアを背で押した際に負った痕
(ドアの表面には斜めにした十字架を浮き彫りにしたような意匠があり、奇しくも十字架の形に焼きついた)もので、決してファッション感覚で刻んだものなどではない
熱せられた金属を肌に強く押し当てたせいもあって相当ひどい火傷痕になっているらしく、未だに風呂に入る時などは痛みに呻くほどである。

ところかまわず詩を詠み始める電波っぷりは犯行に際しての演技かと思いきや、中学生時代からポエムを公衆の面前で呟いているのでどうも素だった模様。
母・蓮花は「才能がある」と絶賛していたものの、唐突に詩を詠み出した娘に対する反応としては若干親バカ気味だったと言えなくもない。
(ただし、母の死後にジゼルが出版した詩集はそこそこ売れている=他人からも一定の評価を得ているので、
詩才については完全な身贔屓というわけでもなく、むしろ安易に「奇行だ」などと判断せずに才能として見出した点は親としての観察眼が優れていたという見方もできる)



そして、彼女について語る上で絶対に欠かせない要素が、

高 遠 遙 一 の 妹

金田一少年シリーズにおける最大最凶の宿敵である地獄の傀儡師の、腹違いの妹なのである。
高遠への挑戦状に書かれていた「異母妹」の正体も、送り主の彼女自身だったのだ。
(ただし、館に集ったメンバーの年齢的に見て彼女以外に該当者がなかった。これを考慮したのかドラマ版では容疑者の一人が金田一達と同じ高校生に変更されている。)

父親については、天才マジシャン・近宮玲子と天才薔薇ブリーダー・美咲蓮花という才女2人を囲い、大がかりな館を息子と娘にそれぞれ遺しているなど謎の多い人物だが、
「ジゼル」という西洋風の名付けから察するに外国人である可能性もある。

今後は「高遠とタッグを組んで犯罪芸術家兄妹として暗躍するのでは!?」と一部で予想されていたが、そんなことは全くなかった。
むしろ兄妹としての関係は最悪以外の何ものでもない。生き別れだった兄妹の感動の対面どころか、互いに牽制と挑発を繰り返し、お互いに肉親としての情は皆無。
それもそのはずで、ジゼルの側で高遠をどう思っているかはともかく、
高遠の側からすれば「真犯人のスケープゴートとして罪を着せるのに好都合な存在だから」という自分勝手な理由で呼ばれたことを考えると、プライドの高い彼でなくても嫌悪や怒りを覚えずにはいられないだろう。
高遠も人の事をとやかく言える立場ではないが。

ジゼルが兄と巡り会ったキッカケが、最初に殺人を犯した直後、偶然にも遭遇したという点からも血塗られた宿命がうかがえる。
復讐劇を決意したのも「血を分けた兄が殺人鬼であった」ということを知り、殺人者としてのアイデンティティーを得たからであった。
『母親の復讐』という動機や、標的を薔薇に絡めるあたりは偶然にもよく似ている。何気に犯人の殺し方も高遠と似通っている部分が見られる。
(2つの事件の類似性については事件のページを参照)
そして、高遠は絶対に否定するだろうが往生際の悪さも……。
なんだかんだ言って結局仲は良好な一&二三とは対照的である。

しかし、当の高遠はジゼルについては総じて否定的であり、次のような言葉を残している。


犯罪者の係累がみんな罪を犯す運命ならこの世は犯罪者だらけでしょう
彼女を殺人者に仕立て上げたのは御しがたい復讐心であって
私の存在は単なるきっかけにすぎない

それに、真相を暴かれたから全員を巻き添えに死のうとするなど
そんな子供じみた愚かな行為は私なら決してしません

犯罪芸術家たるもの、物語のエピローグはもっと美しく、
鮮やかでなくてはならない……

彼女は私に少しも似ていませんよ

確かに、彼が行った最初の殺人にしても、
母の仇討ちにしても、己自身の意思によって殺害を決意しているため、
殺害を決意した根源を自分の兄が殺人鬼だという運命に転嫁しているジゼルについて「自分に少しも似ていない」と断ずることももっともである。
その上ジゼルは高遠と異なりこれまで登場した犯人同様犯行中はかなり焦っており、真相を暴かれる際は終始半切れ気味であった。

原作版では、侮辱されたにもかかわらずナイフの切っ先を爆弾のリモコンのみに留めて殺害せず、
ドラマ版では、ジゼルを全否定しつつも自殺しようとする彼女を阻止した。
また、アニメ版では、ジゼルが犯行に使ったトリックをわずかながら褒めつつ「確かに私の妹ですよ」と認める台詞が追加されている。
(ただしこれはジゼルを気絶させた後で発した台詞であるため、当のジゼルは兄の言葉を聞いていない。照れ隠し?
これらに共通して見られるのは、恐ろしい殺人鬼である『地獄の傀儡師』が垣間見せた“兄”としての人間性だったのだろうか。
もしも、違う形で高遠と出会っていれば果たして……。

なお、その豊満なおっぱい美貌に加えて宿命的な血縁関係から、読者の人気が高まり再登場を望む声も多い。
特に、隠し持っていた証拠品を確保するためとはいえ「高遠にスカートをまくり上げられて恥ずかしがる姿が可愛い」と専らの評判である。
(地獄の傀儡師の罪状に強制猥褻が加わった瞬間であった)
さらに、背中に火傷を負っている事実を明かす意図があったためではあるものの、入浴シーンが描かれてかなりセクシーな姿を披露している。
ただし、アニメ版・ドラマ版では、放送倫理の関係でこれらのシーンはカットされるか控えめな表現に変更されている。クソッ!なんて時代だ!
……と思われたが、なんとアニメ版にて真相解明時のスカートめくり忠実に再現された。
アニメスタッフGJ。そして迫真の演技を披露してくれた沢城女史まことにGJである。






【以下続編に関する予想】

















金田一シリーズの20年後を描いた続編「金田一37歳の事件簿」音羽ブラックPR社の女性社員・氷川鏡美はジゼルの変装である可能性がある。
なぜなら氷川と一の対面シーンがジゼルの初登場時とコマ割りやセリフの入れ方などがほぼ同じだからである。年齢は「もぎたてSTRONGの事件簿」で32歳だと描写されているが、おそらく変装する際に詐称したのかと思われる。
また、彼女は本作に登場する犯罪組織「オリンポス十二神」のメンバーになっている可能性が高いが、高遠と不仲である彼女のことだから入る可能性は低い。
もしくは兄を出し抜き、一への復讐のために兄に従うふりをして事故物件を持ち込んでいるとしたら末恐ろしいものである。
いずれにせよ今後の展開に期待するほかない…。














で、どうするの? 地獄のアニオタさん

私を追記・修正する?

そうくると、思った……!

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • 金田一少年
  • 金田一少年の事件簿
  • 金田一少年登場人物項目
  • 薔薇十字館殺人事件
  • 地獄の傀儡師
  • 高遠遙一
  • 歌人
  • 電波
  • ゴスロリ
  • 薔薇
  • ローゼンクロイツ
  • 月読ジゼル
  • 藤井美菜
  • 沢城みゆき
  • 犯罪者
  • キレると粗暴
  • 兄と違って凡人
  • 短気
  • マザコン
  • 加害者にして被害者
  • 兄との不和
  • 救うべき加害者

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2024年02月18日 22:03