坂井悠二

登録日:2011/08/21(日) 02:12:47
更新日:2023/09/07 Thu 21:00:35
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「自分が何者でも、どうなろうと、ただやる」

灼眼のシャナのもう一人の主人公。
CV:日野聡(アニメ)/森田成一(ドラマCD)

高校1年生の少年。紅世の王・フリアグネ一派に喰われ死亡した『本物の坂井悠二』のトーチ(本人の残りカスから作る代替物)。
トーチとなった直後に宝具零時迷子が無作為転移してきて、『零時迷子』の“ミステス”(宝具入りトーチ)になった。
零時迷子の能力により、通常のトーチと違って封絶で停止せず、また毎晩零時に存在の力が回復する。
また、異常な感知力も得ている。


シャナとはフリアグネの手下に襲われた所を助けて貰った事で知り合い、彼女の刀から、「シャナ」と名付けた。
フリアグネとの戦いの際に街を守る為にシャナに協力し、実力では遠く及ばないながらも、その感知力などを通して敵の計画を阻止する大きな要因になるなど活躍した。
その後零時迷子の能力を知り、自分が時間経過では消えないことを知り、シャナの力になるべく鍛えてもらいながら、
生まれ育った街での人の暮らしへの未練、人外としていずれ人の暮らしを捨て戦いの旅に出るべき義務との狭間に葛藤すること、
人の世の影に存在する「この世の本当のこと」を知り、
自分が死者の代替物でしかも時間経過で消滅することについて当初はショックを受けていたが、実はそこまで気にしておらず、
なぜ自分がシャナやアラストールとの交流、色々な出来事もあり、本物の坂井悠二の偽物でしかない自分なりの答えを出した。

「ずっと考えてたことの答えが…やっと出たよ……消えてしまういつか、なんて、どうでもよかったんだ……今いる僕がなにをするか、だったんだ」
「……自分が何者でも、どうなろうと、ただやる、それだけだったんだ……」

もっとも、自分がトーチであり、本物の残りカスから作られた偽物でしかないことについては両親に対する申し訳なさなど、少なからず思うところがある。


性格は大人しい方だが人並みの我侭さや自尊心は持つ人物。
普段は頼りない方だが、有事における頭のキレはかなりのもの。
周りを活かすために残り少ない自分の力を使う、自分の同類とも言えるトーチを使い潰す作戦を立てるなど、目的のためなら自身の感情すら利用してでも容赦なく動く、
ある種のリアリストとも言える非情さを併せ持つ思考の持ち主。
「こうなったのは僕の責任なんだ。それに」
「捨てるんじゃない。生かすんだ」


ただ、理性で判断すべきことには頭が切れる反面、日常生活の感情だけで対処すべきことには疎く、気が利かない。
また、自分がトーチであり、またシャナの戦友として「恋愛」にかまけるなど不抜けたことは考えてはいけないと、自責していた。
そのため吉田一美からの好意に気づいていても答えることができず、
シャナからの好意も彼女自身が恋愛感情を排した関係を望んでいることもあって、好きになってはいけないと思っていた。

しかし吉田一美がトーチである自分を受け入れた上で告白してくれたこと、
シャナが恋愛対象として自分を求めてきたことを通して、二人を恋愛対象として見るようになる。
が、結局は自分の二人への想いも真剣に考えても分からなかったため、答えは出せなかった。
しかし、存在がどうであっても関係ない二人の強い想いを、自分がトーチであることを知っても変わらず接してくれる友人と関わる内に、
行かなければならない道における戦いを、留まりたい生活における大切な家族や友人を、それまでとは違った視点で見るようになっていく。
当初は力の感知と微弱な操作が出来るだけの弱い力しか持たなかったが、シュドナイの腕を吸収・同化したことがきっかけに、
力の使い方を把握し、鍛錬を通して人外としての力を少しずつつけ始める。

ヴィルヘルミナとの戦いと、彼女から自身の零時迷子を奪う何らかの敵の存在が明確になった後は覚悟として「シャナを守ろう、この僕が」と誓いと願いを口にした。
余りにも大言壮語な本心の願いに、言った本人も聞いたアラストールも大爆笑した……が、
この願いはその時の二人が思いもよらなかった形で後に実現することになる。

零時迷子が謎の自在式の侵食を受けていること、中の人がいること、
鎧の姿をした正体不明の徒である“銀”がハローしてきて中の人が二人もいることが判明するなど、
自分の存在に関わる大きな事象が連続して発覚するが、自分に弟か妹ができること知ったことをきっかけに、
守りたいという気持ちがシャナだけでなく家族を、友人を、故郷を、これから生まれてくる者を、と大きく膨らみ、一つの願いに結実する。

「僕らが頑張れば」「いつか、守った未来でこの“徒”との戦いを終わらせられるのかな」

その願いを胸に鍛錬を続け、クリスマスイブには最弱の部類とはいえ、徒を一人で倒し、強敵サブラクとの闘いで大活躍をするなど、皆が認める成長を遂げた。

そして悩んでいた恋愛に遂に答えを出し、シャナの元へ向かおうとするが…


以下ネタバレ、原作未読及びアニメ視聴者は注意
















クリスマスイブに、“紅世の徒”の組織「仮装舞踏会(バル・マスケ)」の盟主“祭礼の蛇”と意識を融合し、その代行体となる。
“祭礼の蛇”は古代の戦いで封印されており、その代行体の動力として謎の自在式(大命詩篇)を使って零時迷子を改造していた。
改造中の零時迷子を通して悠二を観察していた祭礼の蛇は悠二の「この戦いを、いつか」という願いを感じ取ったことで気に入り、
本来は鎧の姿の装置を代行体とする予定だった計画を変更、鎧を悠二の体の中に組み込み、悠二の体と意識を残したまま代行体とした。

悠二と“蛇”の人格は二つの“暴君”を利用して共存しており、曰く「融け合っている」ような感覚で、お互いの知識を共有しながら、思考、声、口調は混在している。この状態での一人称は「余」。
“祭礼の蛇”は悠二に対して計画の全てを語っており、それはどういうものなのか、それによって何が起きるのか、その結果誰がどのように反応するのか、シミュレーションの結果まで含めて知らされており、その上で手を取った。
なので、洗脳などは一切されておらず、当の“祭礼の蛇”の方は大命のことに専心しているため、正真正銘、悠二自身の意志でシャナと敵対している。



その目的は「この世の本当のこと」を変える事。
“徒”がこの世に来ることで起こる、人間が食われ、フレイムヘイズは道具同然に戦い死んでいく、数千年続いてきた世界を変えようとしている。

「この世界は守り切るには広すぎる……誰も彼も、一人の例外もなく“徒”に襲われる可能性の中で偶然生を拾っているに過ぎない。
なのに、御崎市一つだけで、たった十数年暮らしただけで、こんなにも守らねばならない人たち、守りたい人たちができた」
「この手で『この世の本当のこと』を変えてやる。不条理の可能性を、この世から消し去ってやる。好きな人を守るために、好きな人たちを守るために」


[仮装舞踏会]の計画「大命」に協力する事を決意した理由は、
大命が“祭礼の蛇”の力を使い、新世界 「無何有鏡(ザナドゥ)」を作り上げるというもので、全ての“徒”をそこへ引き連れていく、というものだったため。
つまりこれが成功すれば、この世から“徒”がいなくなると知ったからである。


そうすればいくらフレイムヘイズが頑張ろうと“徒”から助ける事は出来ない人々を守り、同時にシャナを戦いの宿命から開放し共に生きること、
最初からシャナと敵対することも覚悟し、戦いの中で誓いを口にしている。

「シャナ。戦いの道具でしかない君も、その中にいる」
「どこまでも戦い続け、いつの日にか倦み疲れ、ただ倒れて消えてゆくというフレイムヘイズに……君に与えられた宿命も変えてみせる」
「僕が、君を守る」

外見も変わり朱色の衣と黒い鎧、教授制作の髪を思わせる竜尾が後頭部から伸びるオールバックとなった。
余りのその変貌ぶりと髪型からファンからフィッシュ竹中とネタにされる時がある。


代行体製作のための『暴君』が体内に組み込まれているため、“蛇”の強大な統御力、創造の力を使用できる。
世界の狭間への穴「神門」の創造もこなした。

しかし、悠二は一年未満の鍛錬経験しかなく、とんでもない怪力と頑強さはあるものの技量は初心者の域を出ていない。

なので戦力増強のために教授の改造が施されており、竜尾や、暴君の多重顕現機能を利用した補助武装などが付け加えられている。
特に竜尾は伸縮自在に動き、攻撃・防御・移動・補助などに活躍する主力武装である。
火消しの指輪“アズュール”、吸血鬼(ブルートザオガー)などの宝具も当然所有している。
その成果あって、シャナ、マージョリー、ヴィルヘルミナの三人を相手に、相手の手の内を知っている利点、
相手は精神的に自分が敵であることを受け入れきれてないという点を突き、マージョリーたちを無力化、シャナも相性の良さもあって打倒した。

だが、後に迷いを振り払ったシャナには押され気味。


そして、封印された祭礼の蛇の神体を復活させたが、ここで持ち前の頭のキレを発揮。
ヘカテーによる声の拡散の自在法を模倣し、戦場一帯に声を響かせることで“祭礼の蛇”として二度目の宣布を行ったのだが、この内容が問題。

要するに、「新世界が完成すれば、我々がそこに全ての“徒”を連れて行く。その後は、“紅世”から渡る“徒”は新世界に行くから、こちらには来なくなる。
つまり、フレイムヘイズの戦いは既に終わったのだから、あとはただ我々を見送ってくれ」というものであり、創造神の立場からすれば単なる事実の布告だったのだが、死闘の中かつ撤退戦の最中だった討ち手たちはこれを聞いてしまったことで惑乱、戦死者が余計に増える結果となった。

趨勢が完全に決した状況で対立構造自体を瓦解させて士気に致命傷を入れる、という追い打ちをかけたわけである。



ともあれ決戦の後、彼らの出逢いの地の御崎市に移動。シャナとの最終決戦に入った。


「悠二」


「シャナ」


「「決着を―――」」


以下結末の為、注意 






戦いの果てに大命は成就。
蛇と分離し、悠二は贖罪の為に無何有鏡で一人で徒と人間の共存を為すためにシャナと闘うが、かつての自分の言葉とそれを大切にしていたシャナの想いに陥落。
リャナンシーの置き土産により、ボロボロになっていた“ミステス”としての体が一個の独立した存在として「転生」、人間でもトーチでも“徒”でもない、全く別の確固たる存在となった。

そして、満を持してシャナに告白し、二人にして三人で無何有鏡に旅立った。その後は人間と徒の共存を説きながら世界を廻っている。



「私は悠二が誰よりも好き。ずっと一緒にいたい」
「シャナ、君が好きだ。世界を変えてやる、と思えるほどに」



ちなみに新世界ではそのとんでもない大立ち回りと、代行体であった頃とは反対に“徒”を抑えるスタンスになっていることから、“徒”からもフレイムヘイズからも要注意人物と認定されており、外界宿と“天道宮”には出禁を食らっている。
また、世界中を巡って歩くその姿から“廻世の行者”という異名で呼ばれるようになった。

代行体であった頃の能力はほぼそのまま有しており、黒い炎や無茶苦茶な怪力と呆れた頑丈さも健在。
ただ、当時の主力であった後頭部から伸びる竜尾については、健在ではあるものの元が教授の改造だったためか、未だに再構成が出来ていない。
戦闘形態でない時は黒いマフラーとして巻きつけている。

リベザル曰く、頭のキレは長所であると共に短所でもあり、思考が鋭く早く広いために描くビジョンが大きくなりがち。
もちろん悠二当人はその実現のために動くのだが、現実が追い付いて来られなくなった場合「恐ろしい悪謀」を発揮して周囲を巻き込み、無理やり近づけてしまう。

[仮装舞踏会]でも要注意人物扱いであり、ピルソインなどは警戒を強めているが、反対に重臣面子は割と好意的。
中でもハボリムは回転の速い思考と広い視野を買っており、後々のためにも体系的な軍事学問を教えるべきだと力説しているらしい。

簡潔に言うと、地獄みたいに過酷で文化も産めない世界(紅世)の住人の一部が魔法をつかって自分の好き勝手に暴れられる異世界(地球)を見つけて移り住んでいる。地球での食料かつMPの元になるのは、基本は近しい生物である人間だけ。食われた人間は存在しなかったことになり、周囲の人間の記憶なども改変される。紅世の住人が地球で好き勝手に暴れまわってから紅世でも世界の歪みが感知され、このままでは地球と紅世の両世界が崩壊すると判断してそれを危惧する紅世の住人の一部がこれ以上世界をゆがませないために自分が地球に移住することなく地球で暴れる同胞を討伐するために、同胞によって親しい者を殺されたなどの恨みを持つ地球の人間と契約して不老化した人間(フレイムヘイズ)に自分の力の一部を用いて討伐してもらう。こんな、ある意味マッチポンプというか不毛な殺し合いを何千年も続けているのが今作の舞台。
その後、紅世の神と呼ばれる強大な存在(祭礼の蛇)が自分の天敵となるフレイムヘイズと親しく頭の働くリアリストである坂井悠二と交渉し、殺し合う世界を終わらせてシャナを守るためにも、紅世と地球とは異なる新たな異世界・無何有鏡(地球のコピーといえるが、地球よりも過ごしやすい世界)を創造することに合意して協力する。しかし、フレイムヘイズにとっては、自分の仇や怨敵ともいえる紅世の住人が勝ち逃げのように無何有鏡に渡ること、結局無何有鏡でも紅世の住人が好き勝手に暴れて根本的な解決に至らないのではという懸念からそれを阻止しようとするというのが物語の流れである。

  • “文法(グランマティカ)”
御崎市での決戦の際に、火事場の馬鹿力で発動させた固有の自在法。名前はリャナンシーが去り際につけた。
「中核で黒い炎が燃える透明な自在式」を発現させ、これを複数組み合わせることで様々な効果を発揮する。
防御から捕縛に攻撃、とにかく自在法でできることは「理屈が通ればなんでもできる」という多岐万能っぷりが特徴で、決定的な対策は事実上、ない。
名前の通り、言葉を組み合わせて意味を作る文法のような自在法である。
ただし、性格上の欠点である「理屈一辺倒で極端」な部分も反映されており、発揮される効果は組み立てた時点で決定されたものに限られ、それ以外の用途に使えない欠点がある(劇中では習得直後、これが原因で世界の改変を許している)。
なので、実はパワーで速攻をかけてくるシャナが天敵。
新世界に渡ってから結構熟練したようで、展開規模と速度が上がったほか、一度に二つの効果を発揮できるようになり、汎用性がどんどん上がっている。
外伝では探知や自在式の解析・操作も行えるなど、汎用性が右肩上がり。
この特性には創造神の代行体だったことも影響しており、鍛え上げれば“祭礼の蛇”と同規模の事象も理論上は起こし得る。
つまり、創造神の権能は「“徒”の願い」という多くのピースを集めてまとめ、創造という結果をもたらすが、「文法」も「自在式」というピースを束ねて「自在法」という結果に導く、という共通点である(あえて言うなら創造神は「数式」でこちらは「文章」というべき違いがある)。
どちらも、導き出す結果が「機能として決定されたもの」で固定される、という部分も同じ。
なお、これも“祭礼の蛇”と融合した影響か、「自身の本質を体現した自在法」という在り様はフレイムヘイズよりも紅世の徒のものに近くなっている。

  • “オベリスク”
“文法”の応用で組み上げた、塔型の自在式を構築する自在法。広範囲の感知を行う。
悠二にとっての思想の手本である[革正団]と、そのメンバーであるドゥーグへのリスペクトとして、彼らがかつて作り上げた塔「オベリスク」の名をつけている。


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最終更新:2023年09月07日 21:00