封仙娘娘追宝録

登録日:2009/07/25(土) 00:37:07
更新日:2024/03/28 Thu 14:22:25
所要時間:約 5 分で読めます




封仙娘娘追宝録(ふうせんにゃんにゃんついほうろく)


作者:ろくごまるに
出版:富士見ファンタジア


宝貝(パオペイ)という仙人が作り出した道具を追い求めて旅をする和穂と殷雷を主人公とした中華風ファンタジー

長編11巻、短編5巻 完結済み



あらすじ


物語は和穂が仙人になるための試験を受けるところから始まる。
試験に無事合格し仙人になった和穂だが己の不注意により師匠の龍華の工房で爆発事故を起こしてしまう。

その爆発により龍華が過去に封印した欠陥宝貝の封印が解かれてしまい、仙界より人間界へと逃げてしまった。*1

その数727

そしてその影響による死者は未来も含め

二兆六百九十八億二千四百万とんで三人

しかし和穂はお咎めなしだった。
なぜならば宝貝が人間界に散らばった時点でもう既に人間界は"変わってしまった"からである。
その世界に仙人が干渉することはさらに人間界の質を変えてしまうことになる。

しかし、責任感の強い和穂は納得出来なかった。

「私は仙人をやめて人間に戻ります。それで人間界に戻り、宝貝を回収します。」

仙人の長、神農はこれを許可し回収に必要な最低限の宝貝だけを持たせ人間界へ送り出した。

しかし、欠陥宝貝の中に一人だけ新米仙人の失敗に付け込んで逃げるのをよしとしない宝貝が存在した。
それは刀の宝貝『殷雷刀』である。

殷雷は和穂を心配する龍華達に頼まれ護衛として共に人間界へと渡ることになる。


用語

仙人


仙界に住む人々であり、仙界に渡るには天地の理を理解しなくてはならず、もはや人間とは異なる存在。
仙術を使ったり宝貝を作ったりすることが出来る


宝貝

仙人によって作り出された神秘的な道具。優れた能力だけではなく意思を持ってたり、人の形に変化できるものもある。
基本的に人に使って欲しいという道具としての業を持つ。



登場人物


和穂

本編主人公
年は15、6の女の子でちょっと眉毛が太い
和穂は他の仙人とは違い赤子の時、人間界と仙界が交じりあった僅かな間に龍華に拾われたため、年相応の精神年齢である。
だが仙人にとって最も重要な『柔軟な思考』と『物事を正しく捕らえる能力』を兼ね備えている、おそらくラノベ界で最も本当の意味で頭のいいヒロインの一人。

殷雷刀

刀の宝貝で雷を操る能力を持つ。
情に脆いという欠点があり、龍華や護玄の説得により和穂の護衛となる。
武器の宝貝なので武芸百般に通じている。

龍華

和穂の師匠であり母親。
捨てられていた和穂を拾い我が子の如く育てた。
仙人としての腕前は超一流。宝貝づくりの達人として名が高い。

護玄

仙人で龍華の友人。何かと振り回される苦労人。
殷雷に宝貝の素材である真鋼で出来た棍を渡す。



この物語は作者の物語構成力が凄まじく、正に名作と呼ぶに相応しいものになっている。
何気ないものが伏線となり伏線を回収したと思ったら更に謎が深まり、正に『作者の手の平に転がされる』という表現が相応しい。

特に『刃を砕く復讐者』からの怒濤の展開は読者に息つく暇を与えない。

また短編の方も基本的にコメディチックだが小咄的な面白さであると同時に、不意に出てくるとてつもなく重みのある話が素晴らしい。

『くちづけよりも熱い拳』
『刀鍛冶、真淵氏の勝利』
『夢の涯(はて)』

等を例に挙げておく


この物語は95年8月に始まり09年2月に完結した。

その間なんと14年弱である。

なぜこんなにも長いかというと作者が遅筆なのもさることながら、病気で長期離脱を繰り返したからである。

特に刃を砕く復讐者の(上)と(下)の間は凄まじかった。

想像を絶する引きで上巻を閉め、待たされること…


6 年 !!


その間に2chではろくごスレが立てられ、スレを消費し続け、住人達は「夏はまだか、夏はまだか」と歎き続け(当初の発売予定は夏だったため)、積み上げたスレは23にもなった…

実際に発売された時にはフラゲ感想禁止騒動、スレを1日で使い果たす、店頭で自分の目で見たら涙がとまらなくなった住人が続出するなど事件が起こった。
なお、この悲劇は数年後、最終話の下巻で繰り返されるのは別の話しである…
上下巻の間がないこと前提のキャンペーンも打たれたので尚更大打撃であった


この項目で少しでも興味を持ってくれた方
Amazonで中古が投げ売り状態 2016年、電子書籍になっているのでぜひ見てみてほしい

後悔はさせない

なお、読む場合は刊行された順に読むことを強くオススメする



最後にこの作品について

この物語には"ハッピーエンド"は有り得ない

世にあるこの手の物語では
「失われた物を全て取り戻せば万事解決」
となるのがほとんどだろう

しかしこの物語では宝貝が失われてしまった瞬間で今までの人間界とは決定的に異なってしまった。

それは例え宝貝を全て回収したところで直るわけではない

つまり、和穂が宝貝をばらまいた時点でこの物語の終着点は決まっている。

だがこの物語はまごうことなきハッピーエンドを迎える。


ライトノベル史に名を輝かせるに相応しい怒濤の展開を、あの作者の手の内に転がされる快感を、一人でも多くの人に知ってもらいたいものである。





「ギー。追記・修正をする確率が半分。感想コメントを書き込む確率が半分。どちらが正解かはシラヌ。シラヌ」



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最終更新:2024年03月28日 14:22

*1 このくだりは『水滸伝』(の冒頭部)が元であるとか