ジョーズ(映画)

登録日:2012/07/03(火) 14:26:51
更新日:2024/03/14 Thu 09:23:22
所要時間:約 5 分で読めます




ジョーズ(原題:Jaws)とは、1975年6月20日に公開されたアメリカ映画である。
1974年にピーター・ベンチリーが執筆した同名の小説を原作とする。


●目次

【データ】

製作国:アメリカ合衆国
製作:デイヴィッド・ブラウン
   リチャード・D・ザナック
監督:スティーヴン・スピルバーグ
原作:ピーター・ベンチリー
脚本:ピーター・ベンチリー
   カール・ゴッドリーブ
音楽:ジョン・ウィリアムズ
配給:ユニバーサル・ピクチャーズ
公開:1975年6月20日
上映時間:124分
次作:ジョーズ2




【概要】

スティーブン・スピルバーグの名を世界に知らしめた一作。
巨大な人喰い鮫による惨劇とそれに立ち向かう人々を描いた一大名作。
ジャンル分けはスリラー、パニック、ホラー等様々。

それまで栄華を誇った『ゴッドファーザー』を破り、1977年に『スター・ウォーズ』に抜かれるまで世界歴代興業収入第1位を誇った。

だが撮影は難航したらしく、脚本を巡って原作者ベンチュリーと揉めたり、上手くサメのロボットが動いてくれなかったりしてスケジュールを大きく狂わせ、予算も企画当初の3倍に膨れ上がった。

一時は撮影中止も検討されたが何とか撮り終え、撮影を終えたスピルバーグ氏はマッカーサーの名言を捩って「私は二度と戻らん!」と怒りの様相だったらしい。

しかしその内容は素晴らしく、ジョン・ウィリアム氏の緊張感溢れるBGMの効果もあって見事に大ヒット。当時のパニック映画ブームもあって本作以降動物パニック映画が乱発した。
現在に至るまでおおよそ本作を劣化コピーしたような迷作や、「どうしてこうなった」としか言いようがないというかサメである必要なくね?怪作が星の数ほど生み出されている。
詳しくは『サメ映画』参照。

因みにこの映画、よっぽど人々に恐怖心を煽ったようで、全く罪のない鮫を惨殺する人々や風呂場でさえ恐怖心を抱く人々が現れるようになったらしい。
少なくとも海水浴前に鑑賞会をしたら海に入れなくなってしまうので気をつけろ。




【あらすじ】

アメリカ東海岸ののどかな田舎町・アミティ島に海開きが迫る中、若い女性が変死体で発見された。
新任の警察署長ブロディは鮫の仕業と断定して遊泳禁止にしようとするが、夏の海開きが観光資源のアミティの市長達には受け入れられなかった。

そうして対応が遅れ、少年が新たな犠牲者となった。
少年の親が鮫に賞金を懸けた為に一攫千金を狙う者で混乱するアミティ。

やがて一匹のイタチザメが仕止められたが、ブロディに協力する海洋生物学者フーパーは異論を唱える。

惨劇はまだ序章に過ぎなかった……




【登場人物】

主要人物

◆マーティン・ブロディ(演:ロイ・シャイダー)
ニューヨークからアミティに赴任して間もない警察署長。
人喰い鮫への対策を提言するが、事なかれ主義の市長に弾かれてしまう。
4人目の犠牲者が出てようやく鮫退治の許可を得るが、幼少時のトラウマから海が苦手で、船上ではクイントやフーパーと違って鮫の強大さに狼狽えるばかりだった。
しかしオルカ号が沈められ、クイント、フーパーらが次々と鮫の餌食になっていく中、最後には勇敢に鮫へ立ち向かった。

数年後にも再び鮫に立ち向かい、これを退治する。
しかし、『'87』の時点では心臓発作で死去。『3』で息子の勤務する水族館が人喰い鮫に襲われたと聞いたショックのせいであった。
さらに『'87』では次男を鮫のせいで失うこととなり、家族共々人生の最期まで鮫に翻弄されることとなる。


◆クイント(演:ロバート・ショウ)
アミティの荒くれ漁師。
鮫狩りの達人だが、自分勝手で強情。
しかしそれは第2次大戦中の経験からで、鮫の恐ろしさを誰よりも知っている。
クイントは轟沈した戦艦インディアナポリス号に乗船しており、5日ものあいだ人喰い鮫の蠢く海域で取り残されていた過去があるのだ。
ゴーヤはクイントさんにごめんなさいしないといけないよね
賞金目当てに鮫退治に乗り出すが、鮫のあまりの強大さに漁船オルカ号を沈められた挙句壮絶に喰い殺された。
原作小説では、鮫に打ち込んだ樽のロープが絡まって海に引きずり込まれてしまい溺死する。

ちなみに彼の乗船していたインディアナポリス号は実在する戦艦であり、ある極秘任務の完了後に日本軍の潜水艦伊58によって撃沈された。
その極秘任務とは、後に広島/長崎に投下される原爆の部品の輸送。なんという因果……。
さらに、インディアナポリスの艦長チャールズ・B・マクベイ3世と伊58の艦長橋本中佐にはより皮肉な後日談が存在するのだが、ページの趣旨から外れるので是非とも各々で調べてみてほしい。


◆マット・フーパー(演:リチャード・ドレイファス)
ブロディに協力する海洋学者。
遺体を検視して襲ったサメの種類を特定するなど基本的には学術的知識を元に行動するが、大胆な発想や行動力もある。
原作では鮫に直接を打ち込もうと水中に潜るも防護ケージを破壊されて喰い殺されてしまったが、映画では奇跡的に生還した。
『2』にも名前のみ出てくるが、この時は南極で仕事中だったため駆けつけられなかった。


ブロディ家

◆エレン・ブロディ(演:ロレイン・ゲイリー)
ブロディの妻で長男マイケルと次男ショーンの母。
原作ではフーパーと不倫関係にあったが、映画では良き妻としてブロディを支えた。

◆マイケル・ブロディ(演:クリス・レベロ)
ブロディ家の長男。
父の言いつけを守って、鮫の来ない入り江でボート遊びをしていたはずが、父の予想を裏切って鮫が現れたせいで恐ろしい目を見ることになる。
海嫌いのマーティンが自ら鮫退治へ乗り出すきっかけとなった。

『2』では青年となって登場、父の言いつけを無視してヨットで遊んでいたところをサメに襲われ、『3』ではフロリダ・シーワールドのチーフエンジニアとして就職するも施設を襲撃したサメと戦い、『'87』では弟をサメに食い殺されたためアミティに帰還しサメへの復讐に挑む事になる。
このようにシリーズ皆勤賞キャラで、父と同じくその生涯はサメとの戦いの連続となった。
父と同じく2度にわたって巨大鮫と対決することになるのだが、彼がメインを張る続編の出来が散々なせいで、キャラとしても全然人気がない。

アミティ市

◆ヴォーン(演:マーレイ・ハミルトン)
アミティ市長。
市の経済は夏の海開きで成り立っていた為に海開きを強行した結果、被害を拡大させてしまった。
事なかれ主義で若干嫌味な人物だが悪人ではなく、海開きした海水浴場がサメの襲撃を受けて犠牲者が出たことで一転してブロディに協力的になる。
息子もその時の海水浴場にいたと語っており、それも理由の一つかもしれない。
今作でのブロディの奔走と活躍を嫌と言うほど知っているため、『2』では市の役人でただ一人ブロディの解雇に反対していた。



◆クリシー・ワトキンス(演:スーザン・バックリーニ)
夜の浜辺でパーティを楽しんだ後、海へ泳ぎに行った結果、鮫の最初の犠牲者となってしまった哀れな23歳。
彼女が犠牲になるシーンは物語の導入部分で、肝心の鮫の姿は一切映らず、恐怖に震えながら姿を消す彼女の姿が描かれるのみ。滅茶苦茶怖い。
クイントの最期と並び、モンスタームービー史上でも屈指の恐怖シーンとして人気。



サメ

ホホジロザメ(ブルース)

ネズミザメ科ネズミザメ亜目ホオジロザメ類に属するバケモノ
アミティを恐怖のどん底に陥れた犯人。
大きさは約8m、重さ3tと現実では確認されていないレベルのデカさ。(現実ではどれだけ大きくても4mで1t程度)

非常に獰猛な上に現実離れしたレベルの怪力で、鎖で繋がれた餌を桟橋ごと沖まで引っ張っていったり漁船の底を突き破ったり、自身を釣り上げようとしたオルカ号を逆に引っ張り回した挙句沈めてしまった程。
オマケに頭も良く、ピストルやライフルで撃たれても平然としていたりブイを3つ撃ちこまれても海中に潜れるタフガイ。
お前本当に鮫か?
まあ2作目じゃヘリに噛み付いて爆発しても火傷顔で追いかけてきたり、3作目じゃ体長10mオーバーの奴が出てくるし、4作目はほとんど亡霊みたいな奴だし、ほんとなんだこの鮫。

ブルースというのは撮影用のロボットに付けられた愛称で、全然似てないわすぐ壊れるわのひどい代物だったらしいが、スピルバーグの手腕で見事に隠されている。
彼は2003年に実施された『アメリカ映画100年の悪役ベスト100』にて18位にランクインする快挙を成し遂げた名優もとい名サメ、あるいは名ロボである。


◆イタチザメ

何もしてないのに賞金目当てのハンターに狩られた可哀想なヤツ。
クイントの話にも登場するように、現実にはホオジロザメよりもこちらの方がかなり危険なサメ。
作中での「とにかく何でも食べる」という描写は本当で、実際に「泳ぐごみ箱」「ひれのついたゴミ箱」の異名があるほど、貪欲で見境がない食欲の持ち主。
上記のブルースが鮫離れ(?)しているだけなのだ。




【余談】

◆モチーフ

モデルとなった事件が存在する。
1916年のニュージャージー州で相次いでホオジロザメに襲われ、4人が命を落とした事件だとされる。
犯人と思しき鮫は後に剥製業者の網の餌食になった。本当に犯人だったのかは不明なのだが、少なくともそれ以来事件は起こらなかった。
因みにこの鮫、淡水の川に現れて人を喰ったようだが、川に現れたのは淡水でも生きられるオオメジロサメではないかという意見もある。
どのみち、背筋の凍る話には違いない。

この事件そのものも多少脚色されているが、ほぼ事件を忠実に描いた『ジョーズ 恐怖の12日間(原題:12 DAYS OF TERROR)』というタイトルでテレビムービー化されている。
サメの恐怖は勿論、1916年を再現したどこかノスタルジックな雰囲気が特徴。一見の価値あり。

◆撮影でのサメ

鮫は本来、全編電動式マペット(ロボット)を使って動かすはずだったが、浮力の計算と実態(前後バランス等)がうまく合わず、おまけに水密が不完全でよく壊れた。
その為、本来背中が見えるはずのシーンでサメが沈み、背びれしか見えない状態になってしまうこともままあったらしく、
しまいには本当に背びれと背中の部分だけ外して水中を走らせて撮影せざるを得なくなる有様だった(潜水艦に詳しい人には、バラストタンクがカラなのに「潜行舵ちょい下げ」の状態にマペットがなっている、というと分かりやすいか)。

しかしこの「背びれだけ」という姿が、鮫の恐怖を逆に煽り、人食い鮫の象徴とも言うべき知名度を得たのは皮肉である。
意外にもこの「敵が見えない恐怖」というのがパニック映画で大当たりの秘訣になったりするのだ。ジュラシックパークとか。
以後も「とりあえず水面から背びれだけ出せば鮫になる」「水中でバタバタ藻掻いて血糊を流せば鮫に喰われたことになる」ということでゾンビと並んで低予算モンスターパニック映画の強い味方となり、鮫映画が次々と制作されるようになる。

ただ、スタッフ的にはサメのロボットが不完全だったのが心残りだったらしく、『3』では口から取り入れた水をエラから排出した際の勢いで自力進行ができるハイテクな物が用意された。
映画の出来はそれに反比例してひどいことになってしまったが。




【続編】

『2』『3』『'87 復讐編』の3作が存在する。

『2』

スピルバーグこそいないものの、主演のロイ・シャイダー、音楽のジョン・ウィリアムズ、その他多くの製作スタッフが続投しており、第1作の雰囲気をしっかり引き継いでいる。監督のヤノット・シュワルツ(のちに『CSI:マイアミ』などテレビドラマ界で活躍)の手腕も確かであり、外連味は増したもののそれなりに面白い佳作と言ったところ。
ヘリコプターにも食らいついたり顔面を焼かれてもなお襲い掛かってきたりと、より一層パワーアップした鮫の怪物振りや、ラストのブロディと鮫の一騎打ちなど、見どころは多い。
鮫の末路はユニバーサル・スタジオのアトラクションに流用されている。

『3』

しかし、『3』は非常に陳腐な3D映画であり、目も当てられないほどひどい内容と化している。
公開年のゴールデンラズベリー賞に5部門もノミネートされたのはある意味伝説。
とにかく人選にやる気がなく、キャストもスタッフもほぼ無名揃いなので、出来の悪さもさることながら、前作までの作品とのつながりもほとんど感じられない出来となってしまっている。
一応、『愛と青春の旅立ち』でアカデミー賞を射止めたルイス・ゴセット・ジュニアが出ており、また後に『エデンより彼方に』で名優の仲間入りを果たすデニス・クエイドが主演を務めているなど、面子は微妙に豪華であり、映画ファンならば「こんなところにこの人がいるよ……」という驚きを楽しめるかもしれない。
もっと言えばあのリチャード・マシスン(スピルバーグ氏の出世作『激突!』の原作者)が脚本に参加している。しかし監督や製作によって様々な改変がなされた結果、酷い出来になってしまった。

『'87 復讐編』

そして『'87』に至っては、「『3』よりつまらない映画があったのか」と驚くほど悲惨な出来である。

この悲惨な続編制作が、映画史に残る偉大な作品に始まり計4作も作られた人気シリーズなのに“シリーズファン”がいないも同然の少なさ、という異例の事態を招いている。
スピルバーグ自身も、この続編制作に嫌気がさしており、後に『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2』でネタにしている。

ちなみに一昔前のレンタルビデオショップには、『ジョーズ'96 虐殺編』とか『ジョーズ'98 激流編』といった、いかにも『'87』の続編のようなタイトルのサメ映画が並んでいたものだが、これらはすべてただの便乗邦題であり、このシリーズとは全く関係がない。もちろん中身は『'87』と似たり寄ったりかそれ以下のひどい代物なので、余程のサメ映画ファンじゃなければレンタルするのはオススメしない。




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最終更新:2024年03月14日 09:23