翼竜(古代生物)

登録日 :2013/07/23(火) 01:49:05
更新日 : 2016/09/02 Fri 16:58:48
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「爬虫類の時代」と呼ばれた中生代。
長期に渡って地球の大地の生態系の頂点に君臨し続けていたのはご存じ恐竜である。

肉食恐竜や竜脚類などを抱える竜盤類と、多種多様な草食恐竜が属する鳥盤類という二つの系統が、
時代に応じて様々な進化を遂げ、地球の歴史を彩り続けていたのである。

一方、それと並行してもう一つの支配者が、地球の空を自由自在に舞い続けていた。

その名は『翼竜(Pterosaur)

脊椎動物の中で初めて空を「飛ぶ」能力を身に付けた動物たちである。


目次

・概要


まず最初に。知っている人も多いかもしれないが、翼竜は恐竜の仲間では無い
ましてや、恐竜から進化した鳥類とも関係は全く無い

一応分類上は恐竜と翼竜は「主竜類」と呼ばれる一団に属し、ラゴスクス類と呼ばれる同じ先祖を持つ関係だが、
恐竜誕生前の三畳紀中期の時点で既に別の道を歩み始めていたようだ。
そもそも足の骨格の構造からして、スマートな恐竜と違い翼竜はガニ股のままと差が大きい。

翼は現在で言うコウモリに似た形で、かなり長く伸びた前脚の指の間に膜を広げ、風を掴んでいたのだろうと言われている。
ただし膜の構造は少々異なり、親指以外の全ての指で翼を作っているコウモリとは異なり、
人間で言う薬指だけが長く発達して大きな膜を作っている(ちなみに翼竜の前脚は四本指)。

一見すると華奢な構造のため、翼竜は羽ばたく事が出来なかったのでは無いかと言われていた時期もあった。
しかし、その後膜の内部に神経や筋肉が張り巡らされていた跡が見つかり、
かなり自由自在に空を飛ぶ事が出来たと考えられている(中には滑空に特化したような種類もいたが)。
また後述の通り骨を空洞にするなどの軽量化が進んだ種類も多い。

ただ、その分陸上生活には慣れていなかったようで、前脚(翼)を地面についてよちよちと四足歩行で歩いていたようだ。
しかし大型種の中にはそのまま陸上に住んでいたのではないかと言われる種類もいる。

また、恐竜に羽毛が発見されるずっと昔、1970年代には既に羽毛を生やしていた事が確認されている。
現在の鳥と同様、体温の維持などに使われていたようだ。

食べ物は魚や虫などの肉食性のようだが、中には歯が細かい毛のように進化し、
現在のシロナガスクジラのように水中の微生物を濾し取って食べていたのではないかと言われる種類もいる。
ただどちらにしろ肉食性が大半だったのは間違いないようだ。プテラノドンのように歯が無い種類も多く存在していた。

ちなみに、翼竜の大きさは主に翼を大きく広げた時の翼の長さ(翼開長)で測られる事が多い。


・歴史


翼竜(正式名称は「翼竜目」)は大きく分けて、
小型で長い尻尾が特徴の「 嘴口竜亜目(ランフォリンクス亜目)
大型で尻尾が極端に短い「 翼指竜亜目(プテロダクティルス亜目)
二つのグループに分けられると言う考えが主流である。


図1.jpg
<図1:尻尾が長い翼竜「嘴口竜亜目」の代表格・ランフォリンクス>
(画像出典:『Rhamphorhynchus』 - wikipedia<※英語版>)

先に現れたのは 嘴口竜亜目 だが、一番古い化石の時点でいきなり完全に空に適応した翼竜の姿をしていた。

そのため何がどういう進化を経て翼竜になったのかは未だに分かっておらず、
皮膜を持った爬虫類が進化したのではないかという説もあるが未だにはっきりとした証拠は見つかっていない。

ただ少なくとも恐竜が最初に現れた頃には既に大空を翼竜が舞っていたのは確かである。
その後に続くジュラ紀でも大繁栄を遂げたのだが、その後一気に数を減らし、
白亜紀前期にはほんの僅かな数しか生き残っていない状態になってしまい、絶滅したと言われている。

ちなみにポケモンのプテラは名前に反してこちらの方に近い体型。


図2.jpg
<図2:尻尾がほとんど無い翼竜「翼指竜亜目」の代表格・プテラノドン>
(画像出典:『Pteranodon』 - wikipedia<※ドイツ語版>)

一方、ジュラ紀後期にはこのグループからより空に適応した 翼指竜亜目 が誕生し、
白亜紀の終わりを告げた大量絶滅まで地球各地の空を舞っていた。

初期の頃には非常に小さい種類もいたが、やがて数メートル級の超巨大な種類が大半を占めるようになった。
この進化の方向には様々な説があるが、その一つが「酸素濃度の増加」である。
飛ぶためには多量なエネルギーが必要となり、体中に十分な酸素が必要になる。
それが空気中にふんだんにあれば、大きな体でも十分空を飛ぶ事が出来た。

古生代に昆虫が大型化したのも同じ理由であるのだが、
中生代はもう一つの空を飛ぶ脊椎動物……「 鳥類 」が出現していたため、同じような大型化はもう無理であった。

そしてその「鳥類」……空飛ぶ恐竜が、翼竜の大型化を招いたもう一つの要因である。

確かに翼竜は自由自在に空を飛ぶ事が出来る能力を身につけているのだが、
現在の空の覇者である鳥類はそれを凌ぐ飛行能力を身につけていた。

捕食者である翼竜が現れても影響が無かった昆虫が、鳥が現れた辺りから大型化が止まったという事もその証拠かもしれない。

次第に翼竜は、鳥たちに空を奪われていった。

白亜紀末期の翼竜は、地球の歴史上で最大級の空飛ぶ動物にまで進化していた。
しかし、逆に言うと翼竜の生きる道はそれしか残されていなかったのである……


……と言うのが、最近までの定説だった。
ところが2016年、その常識が大きく覆されるかもしれない報告がなされた。
なんと白亜紀末期の地層から、ネコほどの大きさしかない 小型の翼竜 の化石が見つかったのである。
まだ肝心の化石が少ないので異論も多いが、翼竜は空に進出した新たなライバルたちと互角に戦い、白亜紀の終わりまで 真の空の王者 として君臨し続けたのかもしれない。


・主な種類


エウディモルフォドン(Eudimorphodon)

分類……嘴口竜亜目
年代……三畳紀後期
場所……ヨーロッパ
初期の翼竜の一種。既にこの時点で空を飛ぶ生活に適応した姿形になっている。様々な形の歯を持っていたのが特徴。

ディモルフォドン(Dimorphodon)

分類……嘴口竜亜目
年代……ジュラ紀前期
場所……ヨーロッパ
上記のエウディモルフォドンとは分類上はあまり関係ない。前歯は大きく、奥歯が小さいのが特徴。
1800年代には既に発見されており、その後の翼竜の研究においても重要な種類である。

ランフォリンクス(Rhamphorhynchus)

分類……嘴口竜亜目
年代……ジュラ紀前期~後期
場所……ヨーロッパ、アフリカ
尻尾の長い「嘴口竜亜目」の代表格として、名前を聞いた事のある人も多いかもしれない。
現在の水鳥のように、水面に近付いた魚を空から捕えていたと考えられている。
骨のみならず、筋肉などの軟組織の跡までくっきり残っている化石も見つかっており、翼の膜が頑丈であった事も分かっている。

ソルデス(Sordes)

分類……嘴口竜亜目
年代……ジュラ紀後期
場所……ヨーロッパ
1970年代に発見された翼竜で、骨ばかりでは無く翼の膜や軟組織の跡まではっきりと残っていた。
その中で体に体毛が生えていた事が判明。それ以前から言われていた「毛の生えた翼竜」と言う説を裏付ける結果になった。
ちなみに名前の意味は「汚物」。あんまりである。

プテロダクティルス(Pterodactylus)

分類……翼指竜亜目
年代……ジュラ紀後期
場所……ヨーロッパ
世界で最初に化石が発見された翼竜で、1700年代の終わり頃に見つかった。
当時はコウモリの仲間か鳥類かなど物議をかもしたようだが、当時の科学者キュビエの研究によって現在の「空飛ぶ爬虫類」と言う形になっている。
大きさは多種多様で、翼の大きさが僅か数十cmのものからジュラ紀最大の数メートル級のものまで色々含まれている。
尻尾の短い翼指竜亜目で最古の種類だが、こちらもいきなり全ての特徴を併せ持っており、どういう過程で進化したのかは定かではない。

ズンガリプテルス(Dsungaripterus)

分類……翼指竜亜目
年代……ジュラ紀後期~白亜紀前期
場所……アジア、アフリカ、ヨーロッパ
中国で初めて発見された翼竜。長期間に渡って生息しており、地球各地の空を舞っていたようだ。
口の先端が上の方に反り返っており、後ろには歯のような突起が並んでいる。これが本物の歯なのかどうかは未だに見解が分かれていると言う。
これらを利用して水辺の貝や甲殻類の硬い殻をかみ砕き、中身を美味しく頂いていたと言う考えが主流。

アンハングエラ(Anhanguera)

分類……翼指竜亜目
年代……白亜紀前期
場所……南アメリカ
頭が非常に長く、口の先端が膨らんでいるのが特徴。
魚を食べる時にこれが水切りとなって抵抗力を抑える働きがあったのではないかと言われている。
比較的状態のよい化石が見つかっており、現在の主流の考えである「陸上では四足歩行の翼竜」の姿をより裏付ける結果になった。

タペジャラ(Tapejara)

分類……翼指竜亜目
年代……白亜紀前期
場所……南アメリカ
どこか不思議な響きの名前は、ブラジルの先住民トゥピ族の神話に語り継がれる「古き存在」という意味。
やたら大きなトサカが特徴で、中には頭の骨の何倍もの大きさのトサカを持っていたものも発見されている。ただし何に使われていたのかは不明。
歯が生えておらず、魚を食べて暮らしていたのではないかと考えられるが、中には果物を食べていた「草食性」の翼竜ではないかという説もあるようだ。

なお、前述の巨大なトサカを持つタペジャラに関しては、
別種の「トゥパンダクティルス(Tupandactylus)」に分類すべきであるという説が挙げられている。
獣電戦隊キョウリュウジャー』に登場するガーディアンズ獣電池「トペランダ」はこちらがモチーフ。

トゥプクスアラ(Tupuxuara)

分類……翼指竜亜目
年代……白亜紀前期
場所……南アメリカ
こちらもトゥピ族の言葉で「使い魔」と言う意味。
顔の大きさと比較して口が大きい。トサカはニワトリのような形をしており、
異性へのアピールの他に体温調節に使っていたのではないかと言う説もある。南米で初めて発見された歯の無い翼竜。
ちなみに『爆竜戦隊アバレンジャー』の「爆竜トップゲイラー」のモチーフはこれ。

ネミコロプテルス(Nemicolopterus)

分類……翼指竜亜目
年代……白亜紀前期
場所……アジア
翼の長さが僅か25cmと言う、プテロダクティルスと並ぶ最小級の翼竜。翼
を兼ねた前脚の爪が比較的発達しており、森の中で枝を行き来しつつ自由に飛び回り、昆虫を食べていたのではないかと言われている。

響きは似ているが「ネコミミプテルス」では無い。

プテラノドン(Pteranodon)

分類……翼指竜亜目
年代……白亜紀後期
場所……北アメリカ、ヨーロッパ
文字通り翼竜の代表格で、恐竜モチーフした作品には必ずと言っていいほど顔を出している
昔は「テラノドン」と言う呼び名が主流だった頃もある。ドラえもんの旧大長編の予告とかで聞けるよ。

翼の大きさは最大で9mにもなるが、現在のアホウドリのようにあまり羽ばたかず、
グライダーのように飛びながら海にいる魚を空から捕っていたと考えられる。

よくテレビ番組や映画などでは後足で人間を持ち上げてさらうという描写があるが、
軽量ボディのプテラノドンには無理であると言う考えが現在の主流。

細長いトサカを持つ「プテラノドン・ロンギケプス(P. longiceps)」と、
幅広いトサカを有する「プテラノドン・ステルンベルギ(P. sternbergi)」という二つの系統に分けられる。

知名度が高いのは前者のようだ。
ただ、このトサカが何に使われていたのかは今もなお議論の的。
オスよりメスの方が小さかったようで、性別の差を示していたのではないかとも言われている。

ちなみに白亜紀を代表する恐竜であるティラノサウルスと共演する作品は数多いが、
実際は全くと言っていいほど生息年代は被っていない。

ニクトサウルス(Nyctosaurus)

分類……翼指竜亜目
年代……白亜紀後期
場所……北アメリカ
プテラノドンに近い種類の翼竜。
こちらはティラノサウルスやその仲間と同年代にいた可能性があるようだ。
大きさはプテラノドンと比べて小さく、翼の大きさは2m~3m級だが、それでもアホウドリより大きい。
最大の特徴は、頭の骨の何倍もの長さがある、枝分かれした超巨大なトサカ。
同じような特徴を持つタベジャラのように巨大な膜が張られていたと言う説もあるが今のところ証拠は見つかっておらず、
どういう事に使われていたのかも謎である。

プテロダウストロ(Pterodaustro)

分類……翼指竜亜目
年代……白亜紀後期
場所……南アメリカ
最大の特徴は口の構造。
現在のシロナガスクジラやザトウクジラのように下の顎には歯に代わって大量の「毛」が生えており、
これを利用して海面に住むプランクトンを濾し取って食べていたと考えられている。

ケツァルコアトルス(Quetzalcoatlus)

分類……翼指竜亜目
年代……白亜紀後期
場所……北アメリカ
史上最大級の翼竜かつ史上最大級の空飛ぶ動物
中生代の最後まで生き続けた翼竜の一つでもあり、間違いなくティラノサウルスと同じ時代を生きていた。
『ドラえもん のび太の恐竜2006』では原作やリメイク前のプテラノドンに代わって登場している。 

翼の大きさは色々と揉めているが、現在の所最大12m級であった、という考えが主流。
こんなに大きくて飛べるのかという意見もよく聞かれるのだが、巨体に似合わず軽量化が進んでおり、
体の大きさと比較して体重はかなり軽かったと言われている。

また最近の考えでは上昇気流を使わずとも翼の構造を上手く利用して、あっという間に空に羽ばたく事が出来たかもしれないとされている。
推定最高速度は時速50~60キロ。

ちなみに当初は「史上最大の翼竜」や「史上最大の飛翔動物」と呼ばれていたのだが、
もっとでかい可能性のあるやつらが出てき始めたためにとりあえず『級』に落ち着いている。

肉食性だったのは間違いないようだが、魚を食べていた、死肉を漁っていた、
もしくは飛ばずに地上を歩いて小動物を食べていたなど様々な説が出されている。

ちなみに足跡が見つかっているので歩行は確実にできる

名前の由来は某タクシー赤き竜さんと同じ、アステカ神話の文化神・農耕神『ケツァルコアトル』

ハツェゴプテリクス(Hatzegopteryx)

分類……翼指竜亜目
年代……白亜紀後期
場所……ヨーロッパ
多数の島々が点在していた中生代末期のヨーロッパを支配していたであろう翼竜。
ケツァルコアトルスと同じグループに属し、こちらも史上最大級の翼竜である。
ただし骨の構造はあまり軽量化が進んでいなかったようで、四足歩行で歩く「陸」の支配者だったのではないかとも言われている。
一方でムキムキの筋肉を利用して一気に空を舞う事が出来たと言う説もあり、暮らしぶりは謎のままである。





追記・修正は空に憧れる人たちがお願いします。

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