バント(野球・犠打)

登録日:2009/12/26(土) 17:57:42
更新日:2023/04/26 Wed 22:51:19
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バント(犠打)とは、野球において打者が意図的に内野ゴロを転がすことにより、進塁や出塁、あるいは得点を狙う技術である。

▽目次

◎主なバントの種類

○送りバント

その名の通り、1塁や2塁の走者を次の塁へ進めるためのバントである。
正確な名称は英語では「サクリファイス・バント」
日本語では「犠打」「犠牲バント」である。

日本プロ野球の指名打者制を採用しない試合で無死、一死で投手の打順を迎えた場合はこれを行うことが多い(投手は打撃練習に時間を割けず打力で劣ることが多いため)。

米大リーグのナショナル・リーグでは、スモールボールを好む監督が率いるチーム(アストロズなど)では投手が打席に立った際に見られることもある一方、
指名打者制のアメリカン・リーグでは滅多に見られない。
これは海外の選手の身体能力の高さに依るところが大きく、日本でも打力の高い外国人投手にはバントをさせず普通に打たせることがある。
逆もまたしかりで、たとえ正規の打者であっても打力が低く安打が期待しにくい選手なら状況によって犠打をさせる場合もある。

◇主な犠牲バントの名手
  • 川相昌弘(元巨人→中日)=現役通算533犠打の世界記録保持者
  • 宮本慎也(元ヤクルト)=シーズン最多犠打記録保持者
  • 関本健太郎(元阪神)
  • 桑田真澄(元巨人)←投手
  • 田中浩康(ヤクルト→DeNA)←現役最多犠打記録保持者
  • 山本昌(元中日)←投手の犠打数日本記録保持者
  • 菊池涼介(広島)←シーズン最多安打&最多犠打の同時達成(史上初)
  • 荒木雅博(元中日)

晩年の川相はバント専門の代打として登場するだけで、球場を大歓声で包ませた。
※川相のバント職人としての伝説としてはじめに1球ライン上にバント、次の球をバントして前の球に当てることができる、といったものがある。



○セーフティ・バント

セーフティ・バントは「セーフ」すなわち出塁を狙ったバントであり、基本的には俊足の選手が行う戦術である。
犠牲バントと異なり、日米・アジア関係なく俊足の選手なら塁に出る手段の一つとして普遍的に行われている。
またプロに比べて守備のレベルが低いことが多い学生野球の場合、打者が目立った俊足でなくとも投手への揺さぶり等を目的として行うこともある。
オールスターでホームランを予告した後に行った歯の白い強者(宇宙人)もいたりする。

基本は走者のいない時に行う戦術だが、前記した送りバントと合わせて
走者を進めつつ、自らも塁に生きようとするパターンもある。

また長打力のある選手が、内野が後退守備を敷いている時に奇襲をかける目的で行うこともある。

◇主なセーフティ・バントの名手
  • イチロー(マリナーズ)
  • リッキー・ヘンダーソン(元アスレチックス、通算盗塁数世界記録保持者)
  • 波留敏夫(元横浜→中日→ロッテ)
  • 小坂誠(ロッテ→巨人→楽天)
  • ホアン・ピエール(ホワイトソックス)
  • エンディ・チャベス(マリナーズ)
  • ルイス・カスティーヨ(メッツ)



スクイズ・バント

スクイズ・バントは走者が3塁に存在する際に行う戦術である。
何かの酒やガムのCMでも言っていたが「スクイズ(squeeze)」は「搾り出す」という意味があり、「得点を搾り出すバント」という意味である。

この戦術を行う際は、3塁走者に本塁への盗塁を行わせる必要があり、バットに当てられなかった場合ほぼ走者は挟殺プレーでアウトとなる。
そのため打者は身を挺してバットにボールを当てる必要があり、ベンチも的確なタイミングでの戦術の採用が必要となる。
打者がバントした後に3塁走者がスタートするスクイズも存在し、その場合は「セーフティースクイズ」と呼ばれる。

この戦術は主に高校野球で良く見られるが、日本プロ野球においてもたまに用いられる。
基本的には通常の送りバントと同じく、投手などの打撃に期待できない選手の打席で点が欲しい場合に用いられる。プロ野球ではギャンブルスタート絡みのスクイズはあまり見られず大抵セーフティースクイズになる。

また非常に稀なケースだが、ランナー2、3塁で二人の走者を本塁に還す「2ランスクイズ」という戦術がとられることもある。

近年では2014年に広島の菊池涼介が決めたことがある。この際は菊池自身もセーフになっている。相手のミス絡みではあるが2016年にDeNAの関根大気も2ランスクイズを決めた。
決めた相手はいずれもヤクルト。
また、2018年の夏の甲子園では金足農(秋田)が2ランスクイズを決めてサヨナラ勝ちしている。
2021年にはシーズン最終戦でオリックス・安達了一が楽天相手に2ランスクイズを決めた。
「身を挺して」スクイズをする選手としては石原慶幸(広島)が有名。
その派手な飛び付きっぷりから「空飛ぶキャッチャー」と呼ばれることもある。

◎余談

甲子園出場常連校の愛肛大冥殿…もとい愛工大名電が多用する事でも有名。
甲子園で送りバントやセーフティーバントが決まると『ナイスメイデン』と賞賛され、失敗すると『ダメイデン』とがっかりされる。
ワンアウトじゃない。0.5アウトだ。

高校野球では使用されることが多いが、プロ野球では監督によって使用量は大きく異なる。
2009年ペナント中、4点負けている8回にバントさせた某九州のチームの監督は某巨大掲示板で「勝つ気無いのか?」とかなり叩かれた。

堅実な作戦ではあるが、当然ながら打者分のアウトを献上するので大量得点の機会は減る。
監督の能力や勝負勘が試される戦術と言える。

人によりバントの価値観はかなり違うため度々、大型掲示板で議論が行われたりする。

理論上は損な作戦であり、野球が数字で語れないことの代表例である。
野球を統計で見た「セイバーメトリクス」によるとノーアウト1塁よりワンナウト2塁のほうが得点率は下がるとされているため、
盲目的に送りバントをするというのは悪い戦術ではないか?という風潮が高まっている。
単純な統計ではそうなのだが、実際にはノーアウト1塁の場合凡打でダブルプレーという確率も高まるため、場合によりけりである。
なので「次のバッターに安打が期待出来ないピッチャーなどの場合、ゲッツー喰らうよりはマシ」という点で送りバントの選択肢は悪くはない。
ヒットは打てるのにゲッツー率が異常に高い人の場合?俺は知らん。

また、とある野球ゲームではバントでホームランが出来たりする。

大リーグでは「アンリトゥンルール」という物が適用されており、7点差以上の点差が付いた試合でバントや盗塁を行うのは「死者に鞭を打つ行為」だとして禁止されており、成功しても公式記録とは認められないらしい。
この件に関して元中日監督の落合博満が自らの著書で、ルーキーだった頃の大島洋平が大量リードした場面でセーフティーバントを試みた際に大リーグの関係者から批判された例を挙げ、

「どれだけ大差が開いていようと勝つ為に死力を尽くすのは、プロである以上は当然の事。」
「審判が試合終了のコールを告げるまでは、試合というのは何が起こるか分からない。」
「大島だってレギュラーを取るのに必死で、何とかして塁に出ようと工夫した結果がセーフティーバントなんだ。」
「死者に鞭を打つ行為だと言うが、うちのチームだって大差がついた状態から大逆転された事がある。」

などと持論を展開し、大リーグを痛烈に批判していた。


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最終更新:2023年04月26日 22:51