七色いんこ

登録日:2012/04/08(日) 00:39:28
更新日:2022/10/13 Thu 12:56:25
所要時間:約 5 分で読めます





これが七色いんこの素顔かって?
フフ、そうじゃない
これもメーキャップのひとつ…



『七色いんこ』とは、週刊少年チャンピオンで連載されていた、手塚治虫の漫画作品の一つである。
単行本全7巻。文庫では全5巻。

ブラック・ジャック』、本作終了後連載された『ミッドナイト』とまとめた『手塚職能アウトロー3部作』の一つ。

手塚が宝塚に縁があったためか演劇をテーマにしており、
何かしらの演劇作品をサブタイトルや各回の題材として取り上げる、その筋のファンにはたまらない作風になっている。
ブラックジャックやミッドナイトに比べるとコメディタッチなのも特徴。

また、作中では手塚の友人である馬場のぼるの絵本「11ぴきのねこ」の演劇版(井上ひさし作)も題材にしている。
…但し作中では舞台版の黒すぎるオチを子供達に教えていた。
この作品で演劇を知ったちびっ子も多かったと思われる。

メディア化は2000年に「七色インコ」の題で舞台版が制作されている。


【あらすじ】

依頼があればどんな役でもやってのける代役専門の天才俳優「七色いんこ」。
彼の舞台は見る者の心を奪い、熱狂的な支持を受けている。

そんな彼が代役を依頼する条件はたった一つ、「劇場で何があっても見て見ぬフリをすること」

そう、彼にはもう一つ、「泥棒」としての顔があった。
劇場にくる客の金品を盗むのだ。

今宵もどこかで七色いんこの演じる舞台の幕が上がる―――



【主な登場人物】

  • 七色いんこ
老若男女、どんな役でも軽々こなす俳優。
名目上は素人であるが、その実力は天才的といえる。
常に何かしらの変装をしており、普段は独特の眼鏡にロングコート、ステッキを持った紳士風の姿でいる事が多い。
髪もカツラであり、その裏に様々なマスクを仕込んでいるため、どんなときでもすぐに変装ができる。
前述の通り泥棒としての一面もあり、舞台を見に来るVIP客の所持品を狙うが、なんだかんだで獲物が手に入らないことが多い。

名前の由来は「ものまねが上手ないんこ」と本人は言う。
その名の通り他者の模倣は上手だが、自分らしい部分を持たない(演者としてのオリジナリティが無い)という事でもあり、本人もそれを理解している。
そのため、多少演技が拙くともその役者の個性を求める批評家等からは、これ以上ない程の酷評を受けることもある。

その評価に怒って脚本家に仕返しをするという大人げない部分もある半面、自分の演技力には自信を持っている証拠でもある。
また、自信がある分、自分の実力をよく理解しており、時には名優に弟子入りをしようとするシーンも描かれるなど、
演技に対する情熱は紛れもなく本物と言えよう。

舞台版でのキャストはSMAPの稲垣吾郎。

アニメ「鉄腕アトム(1980年版)」にも、シャーロック・ホームスパン役としてゲスト出演した。
その時の声を担当したのは、富山敬氏。こちらでも当然、変装を得意としていた。
なお、アニメ放送時はこの漫画の連載真っ最中でもあり、ファンを驚かせた。
後述のアストロボーイが原作のGBAソフト「アトムハートの秘密」でもゲスト出演している(本作では『七色いんこ』はホームスパンの二つ名という設定)。

「アストロボーイ鉄腕アトム」では爆弾魔カトウ(CV:子安武人)役で登場。

近年では『ヤング ブラック・ジャック』にも登場するも、あるキャラとの繋がりを示唆するだけのファンサービスに留まった。


  • 千里万里子
七色いんこを追う若い女刑事。
非常に男勝りな性格で、SPに憧れて射撃や空手を学んでいた。
最初は「泥棒の張り込みで演劇を見に行く」という仕事に乗り気ではなかったが、いんこを追う内に、次第に彼に惹かれていくようになる。
極度の鳥アレルギーで、フライドチキンを見るだけで幼児体型になってしまう。
素肌の上にコートをきており、一話目でまさかのおっぱいポロリを果たしたヒロインの鑑。

舞台版でのキャストは宮沢りえ。


  • 玉サブロー
いんこが飼っている犬。
以前も名のある役者に飼われていたため、演義をする事ができる。
特に酔っぱらったかのような演技が得意。
ホモ疑惑有り。


  • いんこの本音
いんこにしか見えない彼の本音。
他人からはボロ布に見えるが、いんこの本音をべらべらと口うるさく喋るため、いんこからは疎まれている。
しかし、強引に押さえつけても大量のウサギの糞のようなものをばらまいて爆発してしまう。
本音を押さえてもいつか爆発してしまう、との事。
ちなみにこのキャラ、元々は別作品「シェリ河の秘密基地」のキャラで「ママー」なる名前がついている。


  • 手塚治虫
作者。いんこからは好かれていない。


  • 鍬潟隆介
第一話からちょくちょく登場する大富豪。
裏ではかなり汚い事をやっており、黒い噂の絶えない財界の大物。
息子は家を出たらしいが、まだ未練があるらしい。


  • 男谷マモル
万里子の見合い相手。
彼自身は万里子を気に入っているようで、何度も彼女の前に姿を現す。
鍬潟隆介の息子に非常に似ているが……?






以下、ネタバレ有り!




























【主な登場人物(ネタバレ)】

  • 鍬潟陽介(七色いんこ/男谷マモル)
七色いんこの正体は、鍬潟隆介の息子、鍬潟陽介だった。
また、万里子の前に度々現れた「男谷マモル」も、いんこの変装の一つだったのだ。

かつて子供の頃の陽介は父のゆがんだ教育のせいで孤立していた。
その寂しさを紛らわすために、他人になりきることにハマりだしたのだ。

だが、ある新聞記者に自身の悪事を暴かれそうになった父が、
その家族を暗殺した(しかも、その家族の娘は陽介にとっては唯一の親友にして想い人であった)事により、父との間には埋められない溝が生まれた。
父はそんな陽介の怒りを冷まさせるため、陽介をアメリカに留学させた。

その際に出会った役者「トミー」と仕事をしていくうちに、父に「役者なりの復讐」をすることを心に誓う。
最後にいんこは、これまでの泥棒生活でためた資金をすべてかけて、ある劇場を借り切った。
かつてのトミーと同じ衣装で最後の舞台に向かうところで、この物語は終わりを告げている…


  • 朝霞モモ子(千里万里子)
ごく普通の新聞記者の娘だったが、その父が鍬潟隆介の悪事を暴こうとしたため、一家全員暗殺されてしまう。
その時、彼女は奇跡的に助かったものの、ショックで記憶喪失になってしまった。
やがて遠い親戚であり、現在の父である千里警部に引き取られ、「千里万里子」として生きるようになった。
なお、この時車に鳥が襲いかかったことで事故が起こったため、鳥に対するトラウマを抱えることになる。
万里子の鳥アレルギーによる幼児退行もこの時のショックが原因だったのだ。
陽介のおかげで記憶を完全に取り戻し、最後の舞台に赴く陽介を見送った。


  • トミー
終幕の回想編に登場。
陽介の演者としての師匠。アメリカの場末の劇場で一目置かれる道化姿のコメディアン。なぜかプライベートでも、そのメイクをとかない。
父の監視を振り切りながらも行き倒れた陽介を広い弟子にする。
実はベトナム戦争帰還兵であり非人道的な虐殺兵器を民間人に向かって使うよう仕向けられた過去がある。
そのために報復組織による暗殺対象とされ、顔を隠さねば生活できない身の上となってしまった。
その復讐のために兵器を軍に使わせた張本人である死の商人の本性を「舞台を通して」世間に知らしめた。
それはたちどころに報復組織のしる所となり、件の商人は暗殺されるが、トミーもまた正体が露見したために陽介の目の前で暗殺される。
その生き様は陽介に多大なる影響を与えた。
なお陽介に「七色いんこ」の芸名を与えたのもまたトミーである。

「ヤング ブラック・ジャック」においては、まだ役者を始める前の、ベトナム戦争の悪夢に苦しむ姿が描かれる。
姿だけそっくりな別人である「スターシステム」ではなく、れっきとした本人として登場し、ブラックジャックの世界との関係性を明らかにした。




トミー、これから僕の戦いが始まるぞ
七色いんこの命をかけた追記・修正を見てくれっ

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最終更新:2022年10月13日 12:56