柳生十兵衛死す(石川版)

登録日 :2010/06/09(水) 22:50:41
更新日 : 2016/09/22 Thu 12:25:25
所要時間 :約 4 分で読めます




「柳生十兵衛死す」は山田風太郎の書いた小説で、本作はそれをコミカライズした作品。

山田風太郎で柳生十兵衛で石川賢と来たら、一部の人間は否が応にも魔界転生を思い浮かべて不安な気持ちになるが、柳生十兵衛死すは魔界転生みたいに怪物は出てこないし、虚無なルートにも行かないので安心。

本作ではちゃんと刀を活用してアクションを繰り広げるので、その点も安心。

でもまぁ、石川先生だからねぇ……


◆あらすじ

天下無敵の剣士、柳生十兵衛が死んだ。
だが、十兵衛は左の目が潰れていたハズなのに発見された十兵衛の遺体は右の目が潰れていた。これは一体…
以下はこの顛末に至る物語。

十兵衛が地元で能を見ていたら、なんか次元を越えて忍者軍団が攻めてきた。
本人達が言うにはその忍者軍団は徳川軍で、指揮しているのは徳川家康。
そんで忍者と交戦してたら、いつの間にやら忍者達の次元に引きずりこまれた。
なんか周りを見回すと風景がおかしい、どうおかしいかと言うと、 空に木造の巨大戦艦が飛んでたりしてる。

家康曰く
「この時代は!忍びが天下を取った江戸時代じゃあ!!」

なぜ家康が十兵衛の命を狙うのかというと、「二人の」柳生十兵衛がこの忍びの時代を消滅させる男だからなんだって。

時代そのものが敵、生き残れるのか十兵衛!

忍びの江戸時代がどういう物かわかり辛いという人の中で、新ゲッターロボを見ている人がいるならば、黒平安京編を思い浮かべるといい。


……さて、このあらすじのどの辺までが原作通りかと言うと、「能を見ていた」あたりまで原作通り。
物語全体のページ数で比較すると、 約1000ページ中30ページくらいが原作通り。

あとは全部石川先生の創作。

もはや原作ブレイクっていうレベルじゃないが、それでもこの作品はスゴいし面白い。

どうスゴいかと言うと、まず設定が凄い。
柳生十兵衛死すはタイムスリップ、あるいはパラレルワールドの存在が物語の鍵だが、それには時空間移動の為の方法が必要になる。
同じ石川作品でもゲッターロボ・サーガなんかだと、少しでもミスを起こしたら星雲がぶっ飛ぶ!とか言ってるのに、柳生十兵衛死すだとめっちゃお手軽。

本作の方法はズバリ、 である。
「影能」と呼ばれる能を舞うことによって時空間を行き来できるのだ。伝統芸能半端ねぇ

そして登場人物も凄い、どいつもこいつも忍者。家康は言うに及ばず、秀忠や家光も忍者。
それどころか本多忠勝佐々木小次郎まで忍者。


あとこの作品はスーパー山田風太郎大戦。例えば…

甲賀十人衆&伊賀十人衆が組んだスーパーバジリスク軍団vs柳生十兵衛とか無茶苦茶なドリームマッチ組んだり平気でするし、喇嘛(ラマ)仏も出る。
剣鬼・喇嘛仏

技術力もスゴい。ラピュタみたいに浮かんでる江戸城を筆頭に、空飛ぶ戦艦やら爆雷やらガンブレードにガトリングガンまである。
石川作品ならいつもの事だけど。
遥か未来の宇宙戦艦で改造されて、ミサイルやらドリルやらレーザーが付いたメカ宮本武蔵などはもうどういう反応をしていいかわからん。


色々とスゴい所を挙げたが、一番スゴいのは主人公の柳生十兵衛。
何をしても「技」の一言で済ませられる。鉄塊を刀でぶった斬るのも技だし、分身して二人に増えるのも技。
というか単純にめっちゃ強い、不死身の薬師寺典膳も十兵衛の手にかかったら余りの火力に磨り潰された。
「俺の刀切っ先の届く奴はすべて斬る、切っ先の届かない奴も殺す!」と十兵衛が敵の忍者共をバッサバッサ斬り捨てるシーンは爽快。
その無敵の活躍っぷりは岩鬼将造に匹敵するだろう。
「柳生十兵衛死す」ってタイトルなのに全く死ぬ気がしない。



そんな「柳生十兵衛死す」だが、終わり方はいつもの終わり方。
単行本で大量に描き足してもまだ終わらないあたりさすがケン・イシカワ。
ラストで一字一句違わず
「戦いはこれからだ!」って叫ぶ、まさにお手本。


それでもちゃんと最後まで勢いのある面白さは続くので、決して読んで損する事はない。

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