生活保護

登録日 :2012/09/25(火) 11:51:51
更新日 : 2017/08/09 Wed 00:03:38
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生活保護とは、国から生活に困った人達に生活の為に税金から給付金を出す制度である。

日本国憲法第25条は、国に、 国民は 健康で文化的な 最低限度の生活を送る権利を有する としてその生活を保障することを義務付けている。
これを受けて、生活保護について定めているのが生活保護法で、生活保護はこの法律に基づいて支払われる。

もちろん、国民は原則として自分で働いて生計を得るのが原則である。

「金なくなっちった…そうだ、税金使って助けてもらっちゃおう」

なんていう考え方はネット通販人気ランキング1位の激甘スイーツより、はるかに甘い。
どっかの介護のブラック企業の社長が『そんなに嫌なら辞めて生活保護を受けろ』と言った話があるがそんなことはできない。

あくまで原則は自助努力 なのである。
しかし、当然そんなことを言っていてはどうにもならない人達もいる。
仕事先が見つからない、体が弱くて働けない…

もしこういう人達を放っておいたらどうなるか?

「お金もない、食べ物もない、養ってくれる家族もいない、どうやって生きていけばいいんだろう…」

そんな人達が生活保護なしで生きていく一番手っ取り早い方法は、食い逃げとか、万引きとか、空き巣とか、強盗とか、スリとか、恐喝とか、詐欺とか、身代金誘拐とか、麻薬密売とか、違法賭博とか…
要は犯罪に手を染めることである。


そんな犯罪者は刑務所に入れればいい?

その刑務所だって税金で運営されていることを忘れたのか?

刑務所にかかっている費用は施設や人件費などもひっくるめて一人当たり年250万円である。
月に一人で20万円もらえる生活保護者なんてそうそういない。
刑務所の中で働いて、作った物を売ることにはなるが、刑務所の収益は年間約50億円だが、刑務所関係の年間予算は2000億円近い。焼け石に水である。
元々刑務所の受刑者に安定してできる労働は単純作業ばかりなので、収益を増やすのは無理なのである。

そして、そんな犯罪の被害に遭った 被害者に対しては、泣き寝入りしてもらう ことになる。
理屈の上では請求できるが、生活保護の人に被害者に弁済する金なんてある訳がないからだ。

仮に罪を犯さなかったとしても、生活苦から自殺や餓死でもされれば、住んでいた家の大家さんは不動産が事故物件扱いで価格が暴落してしまう。
ブラック企業に入ってしまっても、生活保護がなければそこで働くしかなくなり、法律を無視するブラック企業がのさばる原因にもなる。

生活保護を貰えなくしたところで、刑務所や被害者など、よそにしわ寄せが行くばかり。
生活保護が貰えない、と言うのは、ただ単に「受給者がかわいそう」で済まされる問題ではないのである。

しかし、今の日本は財政難。生活保護費だけで年間3兆7000億円(2013年度予算)はあまりに痛く、生活保護にもメスが入るようになった。


◆生活保護受給者になったら


生活保護を受けることになったとしよう。
生活保護は、 実は仕事をしていても収入が生活保護の基準に届いていない状態なら足りない部分について受けられる。
支給額がいくらかは人の置かれた状況によって異なるが、医療費もタダになるし、まさしくいいことずくめである。





とでも思ったか?

甘い、甘すぎる。ネット通販(ry

生活保護になったら色々処分するように言われる。
車もダメ。売っても1円にもならない車であっても、保険料や燃料代がかさむので、仕事で必要とかでない限り処分。
パソコンは売っても価値がなければ当面持てるだろうが、壊れても次は買えない可能性がある(ここら辺はケースワーカにもよるが、仕事に必要なケース以外ではあまり高額だと認められない)。
ゲーム機やソフト、DVDやCDに関しては、中古に関してはある程度OKだが、新品だったり中古でも品数が増えてくればアウトと考えて良い。
漫画や絵本、小説など書物は持っててもOKだが、新しいものが欲しくなっても次は買えないだろう。
借金が溜まっている場合には、保護費で借金を返さない為に、生活保護は出してあげるけど並行して弁護士の所に行って破産してもらって来てね、という場合も多い。
もしもの時の為に貯めていた貯金や生命保険類も当然解約である。

そして、生活保護を受ける人には担当のケースワーカーがつく。
ケースワーカーは色々なことを細々と指導してくる。
帳簿をチェックしてちょっとでも使い過ぎるとこれは何に使ったと聞いてきたり、働ける人間には仕事を探せと指導。
この時の指示に従わないと、保護を打ち切られてしまう こともある。

◆生活保護受給者の自立


生活保護費は、生活を維持するためのお金である。当然無駄遣いしていいお金ではない。
健康体で働ける人たちならば、仕事を探して早く自立することが求められる。
生活保護は、そんな人たちにとっては大切な自立資金でもある。

当座の生活費に限らず、就職先の面接に行くためのスーツや履歴書、交通費と言った費用も、早期に自立するためには必要である。
受給開始以降支援施設や障碍者向けの作業所に通わせ、履歴書の書き方を教えたり、面接の突破方法を教えたり、パソコンなどの必要なスキルを身に付けさせるような方向で行政も動いている。
そのための出費はやむを得ないだろう。そういった出費を一切認めずに、いつまでも少額の生活保護を支給するのでは、かえって高くついてしまう。

ただし、生活保護受給者の半数は高齢者。仕事探しは難しい。
残り2割は働きつつ生活保護をもらっている人。もう仕事をしている。
その残りの半数は傷病者と障碍者。これまた仕事探しが難しい。

自立支援が功を奏する可能性があるのは、全体の1割程度である。
傷病者はまだ治れば働けるが、障碍者のほとんどは統合失調症や発達障害などの精神障害を持っている人が多い。
身体障碍であれば、企業側から見てほとんど支障がなく、適材適所の考えでやりやすいので、雇われやすい。
だが、精神障害の場合、ちょっとしたことで悪化して休みがちだったり、精神障害特有の行動パターンで周囲の人が不愉快に思う。
見た目だけでは精神障害だと分かりにくいため、周囲の理解を得ることも簡単ではなく、障碍者雇用がある企業ですら雇わないことが多い。
仮に受け入れたとしても、精神保健福祉士などのアドバイスを受けないといけないので、コストがかかってしまうのである。

受給者の大半が、働きたくても働けない立場の人間であることは、認識しておくべきであろう。


◆困った生活保護受給者


保護費は決して無駄遣いしていいお金ではないのだが、生活保護費を貰うとパチンコや競馬などのギャンブルにつぎ込んだり、中には覚せい剤等の違法薬物を買うのに使う大バカ者も。
生活保護受給者は、もちろん不慮のリストラや会社の倒産、高齢や病気等で働けなくなった人達が多い訳だが、
計画的に金を使っていく習慣が身についていない受給者は、生活保護で追い詰められてもそんな習慣が治らないことが多いのだ。
不正受給の額は2013年度で年間190億。
収入の申告漏れが中心であり、生活保護費をだまし取ろうという悪質なものはそう多くはないのだが、今なお摘発されずにいる件を考えると、
実際にどれくらい不正受給されているのかは正直わからないのだ…。

更には離婚して一方が受給したまま関係を続ける、他人から保護を受けているが黙っているといった方法で不正受給する者もいる。
ケースワーカーがつくので、高齢者所在不明問題のような事にはまずならないのだが…。

◆他にも…


暴力団が、 生活が苦しいことにして収入を隠し、自治体から生活保護費を巻き上げる ということも後を絶たない。
暴力団の組員が暴力団から去り、生活を立て直すためには、仕事が見つかるまでの生活保護は不可欠である。
だが、組員が暴力団から去ったかどうかは明確な記録が残らない。
そのため、暴力団が組員を使って保護費を巻き上げようとしているのか、暴力団から抜けようとしている人が自立するための頼みの綱で生活保護を頼っているのかが分からない。
保護費を出さなければ暴力団員がいなくなるという社会的に望ましいことを邪魔しかねないし、出せば暴力団に金をやりかねないという悩ましい事態が起こっている。

さらには、 生活保護受給者を囲い込んで刑務所以下の施設に放り込んで、生活保護費を巻き上げるという生活保護ビジネス も問題になっている。
生活保護受給者にはこの手の連中に騙されやすい人も少なくないのだ…


◆過熱する生活保護叩き


今、生活保護は、「ナマポ」等と呼ばれてヘイトスピーチの対象になってしまっている。
財政難の現状。
「働かずに暮らせる」ことに対するルサンチマン
しばしば報道される不正受給者や、不誠実な受給者。
人手不足過ぎて制度を回すので手いっぱいの行政。
何より、生活保護制度に対する誤解。

「生活保護を受けている奴は働いてないんだ。働かない奴に出す必要なし。」
→働けるのに求職活動をしていなければ生活保護は打ち切りの対象になります(文字通りのニートは受給できない)し、働いていても保護は受けられます

「生活保護が国の財政を圧迫する。打ち切ってしまえ。」
→生活保護がなくなった場合に予想されるコストは検討しましたか?

「生活保護は不正受給ばかりだ!!」
→生活保護の不正受給は金額にすれば全体の0.5%程度で、しかも単なる申告漏れで後で調整できているものが大半です

「受給者に車なんて贅沢だ、使わせるな!!」
→田舎ではスーパーまで10キロ以上あるし、受給者は体の弱い人も多いし、就職活動にも車が必要になることも多いです

などなど、生活保護に対する誤解や、生活保護以外の制度への無理解、受給者に対する無茶ぶりからのヘイトスピーチは蔓延している。
こうした誤解や叩きの結果、生活保護を受給できる世帯のうち生活保護を実際に受給している世帯は2割程度とされている。


◆必要になっても生活保護が受けられない…


生活保護を受けているのにきちんとできない者と、生活保護について理解していない人の所為で、本当に生活保護が必要な人が保護されない、ということも起こった。
2007年には、北九州市で生活保護を受けていた人が、体中に病気を抱えている状態のまま「働ける」という扱いにされて生活保護を止められてしまい、ついには

「おにぎり食べたい」

という悲痛な日記と共に餓死しているのが見つかった。(北九州市生活保護受給者死亡事件)

北九州市では暴力団による不正受給が元々酷く、これに激怒した前の市長が「生活保護は人をダメにする」としていたとされ、生活保護を徹底的に削ろうとしていた。
削る方法が就職支援や家族から扶養を受ける仕組みの支援などであれば、何の問題もなかっただろう。
ところが、実際に取られたのは、 生活保護の支給を制限、それも後述する違法なやり方で制限する という方法であった。
その結果「受給しなければ生命さえ危うい人にまで受給させない」事態を生み出し、悲劇につながってしまった。
流石にこのやり口の酷さが報道ですっぱ抜かれて批判が殺到している。

北九州市以外でも、一部自治体や福祉事務所の担当者が生活保護申請にとんでもない対応をしていることが分かってきている。

  • 家族、住居、労働などの生活保護の要件について、嘘を言って申請を断念させる
  • 申請用紙を渡さないで申請を断念させる
  • 申請者を恫喝する

なんて手口が出てきたのである。もちろん、これらの方法は全て違法である。
本当に生活保護を認めるべきでないなら、申請をさせないのではなく申請を受け付けて審査の上でダメだ、と言わなければならないのだ。

こうしたやり方は水際作戦と言われたり、上の事件にちなんで北九州方式と呼ばれることも。
弁護士が申請者について行って監視してなんとか申請にこぎつけることもある。


◆追い込まれるケースワーカー


生活保護受給をチェックし、働ける人たちの立ち直りを支援するのがケースワーカーである。
しかし、このケースワーカーは、自治体によって差はあるものの一人で100世帯以上を受け持つのがザラで、酷いと150世帯を超えることも。
法律で80世帯以下を努力目標とされているのに、それはほとんど守られていない。
しかも、激務になるため若手にケースワーカーを押し付けられることが多く、知識不足に悩まされる。
認知症で自立支援が全く効果を持たない受給者も多い。
生活保護に対するヘイトスピーチの対象にケースワーカーも巻き込まれ、その対処に追われることもしばしばである。
これでは、世帯ごとに行き届いた支援や監督などできるわけがない。

更には、受給者の中には精神的な障害のある人も少なくなく、ケースワーカーの指導に対して暴言を吐いたり、暴力を振るってくる例も少なくない。
もちろんそれを理由に生活保護を打ち切ることもできなくはないが、打ち切れば冒頭で述べた通り犯罪や事故物件ができる原因になるため、簡単にやれない。

こういった背景から、ケースワーカーのストレスはたまる一方であり、逆にケースワーカーが受給者に対してハラスメントをする例も目立っている。
もちろんハラスメントは許される行為ではないが、ケースワーカーの人手不足や多忙はいつ臨界点に達してもおかしくないのである。



「本来必要な人に支給しないで飢死or犯罪させる」
vs
「本来不必要な人に払って税金をムダにする」

と言う対立が起きると、人命がかかっているし、仮に払わないと別口で税金が無駄になる可能性が高い分どうしても後者の方がまだまし、という判断になりやすい。
不正受給を防止する為の制度はあるのに、人手が足りない為に、たまたま見つかった奴を叩く以外ない のが実態なのだ。
また、その人手を養成して、きちんとやっていくにはまた惜しみなく税金をつぎ込まないといけない。
おとなしく 不正受給を見逃して生活保護を払い続けた方が安上がり になりかねないのである。

近頃は、フードスタンプ、つまりお金ではなく商品券の形で渡し、ギャンブルなどに使えなくすることも検討されている。
とはいえ、フードスタンプを安く買い叩いて金に代えさせる連中が現れる可能性もある上、
食費以外の支出(就職活動の交通費など)については結局現金を渡さなければいけない。


行政側には、 人員を拡充するなどして現場の負担を抑えつつ、生活保護費が適切に使われるよう監督する態勢や工夫が求められるだろう。

受給者側は、 不誠実な受給者の存在が本当に困っている人たちの生活までも圧迫することを肝に銘じ、身を慎まなければならない。

一般市民は、 生活保護に関する正確な知識を手に入れた上で、生活保護に頼らず生きていくために何が必要か、
諸々のコストを考えながら、生活保護について考えていくことが必要である。
知識もないままにルサンチマンで生活保護を叩くのでは、北九州で餓死者を出した市長と同レベルであることを肝に銘じるべきだろう。


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