生活保護

登録日:2012/09/25 Tue 11:51:51
更新日:2024/03/24 Sun 17:26:25
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(この記事では法律の表記にならい、「障害者」表記を使用します)

【概要】

生活保護とは、国から生活に困った人達に生活の為に税金から給付金を出す制度である。

日本国憲法第25条は、国に、国民は健康で文化的な最低限度の生活を送る権利を有するとしてその生活を保障することを義務付けている。
これを受けて、生活保護について定めているのが生活保護法で、生活保護はこの法律に基づいて支払われる。

大前提として、国民は原則として自分で働いて生計を得るのが常識である。そのため、

「金なくなっちった…そうだ、税金使って助けてもらっちゃおう」

なんていう考え方は通用しない。
どっかの介護のブラック企業の社長が『そんなに嫌なら辞めて生活保護を受けろ』と言った話があるがそんなことはできない。

あくまで原則は自助努力なのである。
しかし、当然そんなことを言っていてはどうにもならない人達もいる。
仕事先が見つからない、体が弱くて働けない…

もしこういう人達を放っておいたらどうなるか?

「お金もない、食べ物もない、養ってくれる家族もいない、どうやって生きていけばいいんだろう…」

……そう、普通に生きることすらできなくなる。

そういう人達にこそ、まさに生活保護が必要という訳だが、今の日本は財政難。
生活保護費だけで年間3兆7625億円(2021年度予算)はあまりに痛く、生活保護にもメスが入るようになった。


◆生活保護受給者になったら


生活保護を受けることになったとしよう。
生活保護は、実は仕事をしていても収入が生活保護の基準に届いていない状態なら足りない部分について受けられる。
支給額がいくらかは人の置かれた状況によって異なるが、医療費もタダになる。
その他にも…

  • 水道代がほぼ無料になる、生活保護の免除制度が自治体によってはある
例えば、東京都水道局はやっているので、東京都の生活保護者ならこれを申請することによって、水道代金を毎月 0円にする事ができる。まだやってない場合はすぐに申請すると良い。

  • ゴミ袋を貰える
自治体によっては、減免対象世帯への指定ごみ袋の配付制度がある。
これは水道無料と同じ種類。
市役所で配布している部署があるので、そこで書類申請後、ゴミ袋の段ボール箱が自宅まで送られてくる。
地味に有料ゴミ袋代は高いので、知らない生活保護者は早めの申請を。

まさしくいいことずくめ、人生一気にイージーモード突入である。







生活保護とは将来への苦労や不安だけを都合よく取り除き、思う存分目先の趣味や娯楽に興じる桃源郷生活へのプレミアムチケットなどでは断じてない。
生活保護になったら支給の条件として、今まで手に入れたものを色々処分するように言われるのだ。



◆生活保護

★確実に売却、処分、解約を命じられる物

1.宝石、貴金属類、金地金
間違いなく「売却して現金に変えて下さい」とケースワーカーに命じられる。
家族などの大切な人の形見の場合はケースワーカーと相談して決まる。
ここで問題となるのは隠す事。
宝石、貴金属類、金地金などは資産に該当するので、銀行預金口座の合計値と合算される。
生活保護制度は資産がなく、収入が少ない場合にのみ、適用される。
もしも大量に隠していてケースワーカーなどに発覚されると、不正申告となり、生活保護受給後にそれが停止になるケースもある。

2.各種保険
意外だが、日本の法律では保険も財産だと見なされる。
少なくともこれ以降払うことはできないし、解約返戻金もある程度の財産だからだ。
ただ、自転車保険などならば少額なので許可が出やすい。

3.クレジットカード、カードローンなど
これも解約、処分を命じられる。
生活保護というのはあくまでも「支給される保護費の中でやり繰りする事」が大前提となるので、
その上で借金するなど到底認められる訳がないからである。
下手に持たせたらカード破産のリスクがますます高まってしまうだろう。所持を許可などされる訳が無い。

当然ながらクレジットカードでしか決済が出来ないサービスやクレジットカード払いの方が支出を抑えられるサービスを利用していた場合も、問答無用で解約となる。

だが、デビットカードならば持てる。これは審査がなく、誰でも作れる。
これは借金ではなく、銀行口座から直接引き落としだからだ。
インターネット上でもデビットカードで支払えるケースが増えてきている。
ネットショッピングをするならば、デビットカードぐらいは無いとかなり不便だ。
また、コンビニ、スーパーなどのショップでもデビットカードは使用できる。

毎月の生活保護が振り込まれる銀行口座の銀行会社のデビットカードならば、そのまま利用できる。
デビットカードはクレジットカード決済と同じように使用できるケースが多い(=クレジットカードが必須のサービスを受けられる)ので、デビットカード未所持の生活保護者は1枚は作ると良い。

4.株、FXなどの金融資産
多額の金融資産があれば、生活保護を申請時に売却をまず求められる。
口座の所持は謎だが、毎月の収入上限が15000円までなので、毎月15000円以下の利益額ならば、セーフかもしれない。
だが、確定申告もあったりして、生活保護なのに確定申告?という謎だ。
よって、確定申告になる、不要特定口座源泉徴収ありの場合は確定申告が不要で、これならセーフかもしれない。
詳しくは各自で調べると良い。ケースワーカーなどに相談しても、これは分からないだろう。


★基本的に処分が前提だが、状況によっては所持を認められる可能性がある物


1.個人所有の自宅、土地
大抵の場合は所持している建物や土地を全て売却を求められる。
その後、賃貸アパートや賃貸マンション、市営住宅などへの転居探しをすることになる。
自治体によって金額に差があって、毎月の家賃上限は約5万円以下となっている(インターネット上に一覧はある)。
ローンの支払いがまだの場合は、弁護士に相談して破産するよう命じられるだろう。
ただし売ってもほとんど価値が無いようなボロボロの家だったり、既にローンを完済していたり、
あるいは仕事場も兼ねていてどうしても必要、というようなケースの場合は、所持を認められることもある。
また、余談的な内容になるがペット不可の住居は一般ペットである犬や猫の飼育は禁止されているので、犬や猫を飼っている場合は別れなければならない。
もちろん捨てるなんて論外。(違法)
引き取ってくれる知り合いがいればよいが、いないなら保健所で殺処分と言う残酷な結末がまっている。
賃貸5万円以下でもペット飼育OKな物件を探してもいいだろう。

2.車、バイク
売っても1円にもならない車であっても、保険料や燃料代が嵩むからである。自転車なら所持はOK(普通の自転車、クロスバイクなど高額過ぎない物)。
仕事で必要だったり、車が無いとまともに生活も出来ない様な超田舎の場合は、所持を認められるケースが多いようだが、それも「持っている車を処分しなくて済む」のが限界。車を新たに買うとなると中古でも非常に困難である。
逆に交通網が発達している都市部などの場合は「車なんか無くても生活出来るよね?」と、確実に処分を命じられるだろう。


★所持が認められるケースが多い物


1.漫画や絵本、雑誌や小説などの書物、囲碁や将棋、カルタやトランプなどの遊具
娯楽品なので持っていてもOK。しかし、部屋が埋まる程大量に所持したり、高額過ぎるモノだとアウトとなる。
少量ならば高額ではないので、マンガ単行本や週刊誌を発売日に購入するなど、新しいものが欲しくなったら買っても良い。
漫画は中古品もあるし、新作漫画を新品で購入して何度か読み終わったら、早めに中古漫画ショップで売却すれば1冊を100円程度で読める。

2.ネット回線、携帯電話、ルーター
今やスマートフォンは「あれば職探しに便利」「ケースワーカーや病院、警察などへの連絡手段が時に必要」で、電話がなければ連絡手段が限られるので所持は認められている。
むしろ、国やケースワーカーなどからすれば、生活保護者と連絡できない状態になるのは困るので、生活保護者になってスマートフォンを所持してなかったら、すぐにスマートフォンを購入し、契約しよう。
生活保護費からすると比較的安い格安Sim料金プランへ変更した方が良いだろう。だが、これは個人の選択となる。
大体のプランで無料なので、せっかくなら5Gオプションを契約してもいいだろう。
インターネット回線用にルーターの設置も認められている。
インターネット回線は1Gbps~のものを契約しても良いが、その分値段は上がる。
スマートフォンは10万円前後の製品は高額だが、ギリギリ所持を認められている。

3.TV、ラジオ、新聞、BD録画機、スピーカー、アンプ
ニュース/時事/天気予報/災害情報などもあるので、TVやラジオの所持は認められている。
新聞の購読はニュース記事なので、所持が認められている。新聞社と契約して毎日配達してもらっても良い。
娯楽用の新聞は1つが安いので購入が認められている。
BD録画機は所持していいのかは分からない。
スピーカー+アンプなどのSETは高価だが、娯楽品でもあるのでセーフとなりやすいだろう。

4.冷蔵庫、電子レンジ、エアコン、暖房器具、扇風機、洗濯機
これらは生活必需品で健康の維持に必要なので、所持が認められている。
洗濯機の代わりにコインランドリーを使用しても良い。

5.自転車
自転車は移動手段として必要なので、所持が認められている。
基本的に徒歩・自転車・公共交通機関(JR鉄道/バス)を使用することが生活保護制度では想定されている。
バイク・自動車などは高額なので、ケースワーカーと相談して決まる。
高額ロードバイクなどは認められない可能性がある。しかし、クロスバイク程度ならばそこそこの価格で運動にもなるので、所持が認められている。
バイク・自動車のレンタカーなどのサービスならば、毎月の費用を抑えられる。
バイク・自動車のレンタカーなどのサービスを月に10回以下の使用ならば、生活保護者でも認められている。
あくまでも贅沢過ぎるのはアウトという点が問題となっている。
田舎で自宅周辺に公共交通機関が無い、自宅周辺が山で坂が多い、買い物へ行くのに自転車では遠すぎるなどの場合ならば、ケースワーカーと相談すれば車。バイクの所持が認められやすいだろう。
しかし、バイク・自動車は更新費用・燃料・メンテナンス費用などがかかるので、毎月の収入から考えてやりくりしていく事が求められる。

6.服、靴、カバン
服、靴、カバン(バッグ)は生活必需品なので、所持は認められている。
特に服は何種類かあった方が良いし、夏物/冬物がある。服を定期的に交換する事も求められている。
これらは身だしなみなので、しっかりとやっていくと良い。
冬はコート、ジャンパー、マフラー、手袋などの防寒着が必要となり、所持が認められている。
もし、生活保護者で周囲の人達に受給中とバレたくない場合、これら、服、靴、バッグなどをしっかりと揃え、定期的に交換しておくと良い。

7.ゲーム機、ゲームソフト、DVDやCDなど
1と同じように娯楽品で所持が認められている。
ゲームソフトは1万円以下と安く、本体は高額ではあるものの購入も認められている。
映像DVD、音楽CDなどは本体が安いので、所持が認められている。
ブルーレイ映像本体とBDソフトの所持も娯楽品として認められている。

8.映画・ドラマ・動画配信のサブスク(サブスクリプション)
毎月の支払額が500~2000円程度と安い。また、動画は見放題なのでコストパフォーマンスも良い。
これらは生活保護者としてはコスパが良く、安価に楽しめるのでむしろ購入を推奨されていると言える。
複数契約してもいいが、その分費用がアップするのに注意がいる。
ただしdアニメストアは2023年現在、生活保護受給者が所持出来ないクレジットカードでしか決済が出来ないので、dアニメストア for Prime経由で契約するのがよい。

9.楽器
1つ10万円以下なら認められる場合もある。
人によっては趣味が演奏なケースもあるので、ある程度は所持を認められている。
しかし、何十万、何百万もするようなヴィンテージ楽器やハイエンドギターなど高額な物などは売却を命じられることもあるかもしれない。

10.宝くじ
趣味、娯楽なので購入は認められている。しかし、月収上限は15000円までとなっているので、それ以上の当たり券が出たらケースワーカーと相談を。

11.競馬、競輪、パチンコ、パチスロなど
よく問題とされるのは、毎月多額をこれらに費やしてしまう事にある。
生活費を削ってまでやる行為はハイリスク。
だから、生活保護者に対し、これらはグレーゾーンとなってきた。
よって、趣味の範囲として、娯楽として少額でこれらを毎月楽しむ分には何ら問題はない。

12.映画館、遊園地、水族館など
娯楽の1つ。映画館などは割引方法がいくつかある。それらを有効に利用していくと良い。気分転換にもなる。

13.旅行
国内旅行ならばどこでも行ける。国外旅行は禁止されている。しかし、それには毎月の貯金が必要となる。
新幹線、リニアモーターカー、飛行機などを利用しても良い。
宿泊施設として、民宿、ホテル、マンガ喫茶などを旅行で利用しても良い。

14.知人、友人
所持とは違うが、知人、友人などがいた方が良い。
これはむしろ推奨されている。

15.個人HP、個人ブログ、個人SNSアカウント
インターネット上に、HPやチャンネル、ブログを開設したり、ソーシャルアカウントを作っても良い。
インターネット上だが、コミュニケーションにもなる。
アフィリエイト広告も毎月15000円までなら申告が不要で利用できるだろう。もっとも普通にやると申告が必要なほどは利益は出ないが


16.パソコン
かつては数十万円する高級品かつ、まだインターネットが存在しなかった上に仕事探しの際に必須では無かった事から、ほぼ確実に売却を命じられていた代物だった。
だが2023年現在ではインターネットでの求人サイトで職探しが出来るようになっている事も理由の1つだが、何よりもIT化が急速に進んでいる今の世の中において「基本的なPCのスキルを有している事」を採用条件にしている企業も多くなっている事から、これに関してはむしろ生活保護受給者に所持して貰わないと困るレベル。

ここで言う「基本的なPCのスキル」とは以下の通り。
  • マウス・キーボード・ディスプレイ(PCモニター)が、どのような物か理解している。可能であればPCパーツ(CPU、メモリなど)の知識もあると好ましい
  • OSの基本的な知識、基本操作
  • キーボードでの文字入力が流暢に可能。出来れば全ての指を使用したタッチタイピング*1が出来る事が理想
  • Webブラウザを使って、Webサイトを検索・閲覧する
  • ワープロソフトや表計算ソフトの知識、基本操作。データベースソフトやプレゼンテーションソフトも扱えると尚良し。有料のWordやExcelでなくともOpenOfficeなどの無料のソフトでもOK
  • メールソフトでのメールの送受信、設定、ファイルの添付に関する知識、基本操作
  • 各種ファイルの拡張子に関する知識
  • プリンターや記録媒体などの各種周辺機器の知識、基本操作
  • PCが突然フリーズした場合の迅速な対処
  • マルウェア(コンピューターウイルスなど)・情報漏洩の対策・対処。
  • 著作権や肖像権などを理解している。無頓着だと外部向けの広報物などを制作する際に問題になることもある

ここまで自力でスムーズにこなす事が出来て初めて「基本的なPCのスキルを有している」とみなされるので、生活保護受給者にはPCを所持して貰って勉強して貰わないといけないのだ。
この頁の読者…特に(古い業態の)製造業など「PCの知識が基本的に必要無い業種」に長年携わり続けてきた方の中には

「お前さんは何を馬鹿な事を言っとるだ。そんなもんが一体何の仕事の役に立つんや?なんだ?お前さんシステムエンジニアだの事務屋にでもなるつもりなん?wそんな事より目の前の作業を少しでも早く、効率的にこなす事を考えれ」

などと文句を言う人もいるかもしれないが、実はそんなに簡単な話では無いのである。
何故なら2023年現在では親会社や取引先から電話やFAXではなくメールでのやり取りを要求されたり、仕事の発注や決算などの際に専用のソフトウェアを使用してのオンラインでのやり取りを要求されたり*2、さらには日報や勤怠管理などの記録をPCで入力するよう命じられたり、給料明細さえもExcelのファイルで送付する会社も増えているなど、一見PCの知識など必要無い業種でさえも日常業務においてPCの知識を要求される、というか身に着けていないと全く仕事にならないケースが増えているからだ。

最近は採用試験への応募の際に「履歴書をPDFやWord・Excelなどで読める形式で作成して、メールでファイルを添付して送ってきてね」などと要求する企業も多くなっているのだが、これは暗に「その程度の事も出来ないような人材は必要無い」という事にも捉えられる。

なので「スマホは使えるけどPCは殆ど使った事が無いんですよハハッ」と言う若者や、「これ(スマホ、PC)どうやって使うねん!?く、くりっく?栗の仲間か!?」という高齢の人が増えているらしいのだが、今の世の中においてそんな事では就職活動の際に、面接官から「そんな事も出来ないのか」などと白い目で見られかねない…というより業務に支障が出てしまうのだ。
今の時代、たとえ高齢の作業員などであっても、今開いているソフトを誤って最小化したりするたびに涙目で先輩上司に泣きつくようでは、溜め息と叱責・嫌味(後輩相手でも生暖かい苦笑)のひとつは甘んじて受ける覚悟をせねばならない。

既に所持していた物が壊れた場合は、ゲーミングPCなど高額な物は無理だろうがノートパソコンなら3~5万円前後で買えるものもあるため、許可されるかもしれない。この辺はケースワーカーへの相談が必要になるだろうが。
また自作PCならばそこそこの高性能パーツで組んでも、10万円以下で組め、自作PCは趣味にもなるので所持が認められている。
PCが壊れても自分で修理できるようになるので長期的には安くつく点も大きい。
例えば、ビデオカードが破損後、ビデオカードを交換するなど、知識も付くので選択肢とは有りだろう。


★一時的な生活保護の場合


生活保護と言っても、一時的な失業・収入減少中の生活をしのぐためのもので、仕事さえ見つかれば生活保護も終わることが見込まれるケースもある。
そういう時に自家用車や自営用の器具を「売れる・金がかさむから」と言って処分すると仕事に復帰しづらく自立の妨げになるため、保有を認められることが多い。
特に2020年以降の新型コロナウイルス関係で発生した失業ではそういった点から処分を求めない運用が広がっているようだ。
今後ずっと生活保護に頼らざるを得ない人と一時的な生活保護で済みそうな人では扱いが違うということである。

★生活保護中の生活


生活保護を受ける人には担当のケースワーカーがつく。
ケースワーカーは定期的に訪問し(時に抜き打ちで)色々なことを細々と指導してくる。
帳簿をチェックしてちょっとでも使い過ぎるとこれは何に使ったと聞いてきたり、働ける人間には仕事を探せと指導。
借金が溜まっている場合には、保護費で借金を返さない為に、生活保護は出してあげるけど並行して弁護士の所に行って破産してもらって来てね、という場合も多い。
この時の指示に従わないと、保護を打ち切られてしまうこともある。
無論、所持が認められないものをこっそり隠していた、宝くじが当たったけど申請せず隠していた...といった事がバレようものなら、場合によっては不正受給とみなされて支給額の返還を命じられ、果ては詐欺罪で罰せられる。

ケースワーカーと連絡する方法は三つある。

  • 市役所などで直接会う
これでも良いが、目立つだろう。また、ちょっと時間がかかる。行くのも面倒だ。しかし、書類申請などが必要な場合はこれが最善。
  • 電話
スマートフォンを使用して、電話をかける。担当ケースワーカーの名前がここで重要だ。名前は必ずスマートフォンの電話帳などに記録しておくこと。
電話をかけて、担当ケースワーカーがすぐ出る事があれば、名前を言う必要がある事もある。不在な時は要件を伝えておけばいい。
電話だと労力が少ないし、ケースワーカーとしても電話の方が楽だろうから、なるべく電話での連絡を推奨する。
  • 手紙
手紙などで送る方法。だが、普通は使用しないだろう。

★生活保護受給中の注意点

生活保護は国から毎月の支給しか100%貰えない。
もし毎月支給額全額を使い切ってギリギリの生活を送り(日本経済的には貯金がなく良いのだが)、急な出費が発生したとする。
ここで「困った、どうしよう…?そうだ、ケースワーカーと相談しよう」とケースワーカーに連絡しても…

受給者「あのー、ちょっと生活費が不足してしまいまして。だから、5万円だけでも良いので追加給付をお願いできませんか?」
ケースワーカー「できません。
受給者「そこを何とか!もう私手元に全くお金が無くて、明日の朝食さえ食べられないんです!」
ケースワーカー「だからできません。その旨は申請時に確とご説明した筈ですが?
受給者「わ、分かってますけど...でもこのままじゃ飢え死にするんですって!他に頼れる人も居ないの、ご存じでしょう!?だから今回だけ…」
ケースワーカー「......他に、ご用件はございますか?」
受給者「…いえ、ありません…」

…となってしまう。
そう、生活保護は頼めばいくらでも支給される打出の小槌ではないのだ。

この時、急な出費=電気代の場合、大変な事になる。
電気滞納、そして……

  • 電気停止。
  • 部屋の灯りはつかない。
  • TVもつかない。
  • エアコンも動かない。
  • 電子レンジも動かない。
  • スマートフォンを充電できない。
  • ルーターも動かず、インターネット停止。
これが真冬の場合、かなりツライ生活を強いられる事になるだろう。
特に東方以北の地域だと、仮に若くて健康でもマジで低体温症からの凍死もありうる。

しかも、一度電気停止になると、再契約などが面倒になっている。

  • 賃貸住居費用
  • 電気・ガス・水道
  • 食費
  • お小遣い(貯金)
これらを労働者らと同じように、生活保護者らも考えて毎月費用を出していく事になる。

  • 賃貸住居費用
滞納が続くと追い出される。
毎月ここだけはキッチリ払っていく事。

  • 食費
1日いくら使用するか?ここだ。ここで差が出てくる。
1日1000円ならば、1000円×30日=30000円が、かかる。
1日500円ならば、500円×30日=15000円が、かかる。
毎月の支給日まで残り10日間ならば、1日500円の食費で、500円×10日=5000円が必要だ。
1日1000円の食費で、1000円×10日=10000円あれば足りる。
このように計算していくことも人によっては重要になる。
これら簡単な暗算ができない場合、電卓を使用すると良い。スマートフォンアプリの電卓でも良い。

  • 電気代
毎月変動がある。
だが、いきなり2倍になったりはしないだろう。
半年間ぐらい払い続ければ、おおよそ毎月いくらぐらいの電気代が必要かが分かってくる。
1人暮らしで1時間以上外出する場合、エアコンをOFFにした方が電気代は安くなる。
夏場は扇風機を動かした方が電気代は安い。扇風機+エアコン冷房。
電気代は1ヵ月だけなら、滞納してもセーフ。だが、毎月ハガキで支払う事になる。
支払い方法はデビットカードか銀行口座からの引き落とし。


また、生活保護費の医療扶助。確かに受給者は無料だ。
しかし、これはあくまでも保険適応内の話。
大ケガによる手術費用などは、保険適応外なので、自腹となる。
費用が出せなければ、医療を受けられない事もある。
だから、生活保護中にある程度の貯金は認められている。

これらは本当の話で、生活保護制度は毎月一定の額しか出せない仕組みだ。
それ以上は絶対に出せない。
上記の公共料金の類も、生活保護受給者だからと温情措置がとられる事も無い。

よって、労働者のように収入に対し、適切な支出を行っていくことが生活保護者にも求められている。

生活保護受給者らの一部は、周囲にバレたくないからと、外出回数や外出時間を減らしているケースはあるようだ。
しかし、毎日外出した方が健康に良い。
外出することによって、気分が良くなりやすく、うつ病対策にもなる。
それだけ部屋というものは狭く、ストレスを受けやすいのだ。
病気になれば、その分、医療費も時間も労力もかかってしまう。
日本の社会保障費を軽減するためにも、積極的に外出することが日本国民に求められている。
日の丸は太陽で、太陽は外にある。だから、外出する事は日本国民の義務でもある。

今時は労働者以外でも毎月数千万円以上GETできている者も増えている。
そして生活保護者らは、近隣住民や他人が生活保護を受けているのかどうか、1人1人分かるのだろうか?
余程前時代的かつ閉塞的な村社会でもない限りは分からないでしょう。普通は。少なくとも推測であり、それは憶測である。
自分に分からなければ、他人でも分からないものだ。寧ろ分かる人の方が色々危うい。
だから、気にせずに外出していけば良いだけの話だ。


◆生活保護のお金はどうやって受け取る?

手渡し、というわけではない。例えば、市役所で毎月、現金で受け取るということは無い。それは昭和だろう。
毎月、指定した1つの銀行口座に対し、銀行振り込みが行われる。
スマートフォンの銀行アプリや銀行HPを使用すれば、すぐに振り込まれたかの確認ができて便利だ。
1年間の振込日予定表が毎年配られるので、そちらを参照すれば振込日は分かるようになっている。
現金手渡しではなく、銀行振り込みなので、他人に生活保護者だとここからはバレないようプライバシー配慮は行われている。

振込先の銀行口座を変更したい場合、ケースワーカーと相談し、書類申請すれば変更ができる。

◆生活保護受給中でも働ける?

働ける。しかし、毎月の生活保護者の副収入に上限額が設定されている。
上限 15000円/月
働いていて、毎月の収入が15000円以下ならば、ケースワーカーへの報告義務が生じない。
しかし、働いていて、毎月の収入が15001円以上ならば、ケースワーカーへの報告義務が生じる。
例えば、アルバイトで毎月10000円の収入があるならば、そのままGETして報告しなくて良い。
だが、アルバイトで毎月30000円の収入があるならば、ケースワーカーへの報告義務が生じる。
そして、30000円-上限15000円=15000円を国へ毎月返還する。
ここで、もしも毎月80000円の収入があったら、80000円-上限15000=65000円。
65000円を国へ返還する事になる。
この仕組みは社会保障費を軽減する為に行われてきた。
完全に自己申告だが、生活保護者らは生活保護費を毎月受け取っているので、国へ正しく返還するのが大人としての最低限のマナーだ。
また、ここで申告しない場合、生活保護費の不正受給、とみなされるケースも多々ある。
よって、しっかりと申告していった方が良いのは事実。
あくまでも、国との信頼関係を維持していくのが重要だ。

ボランティア活動だと、収入が発生しない。
だから、申告する必要がないのがメリットだ。
ボランティア活動も立派な社会貢献。
生活保護者の中でボランティアへ参加しても良い、というのならやっていくと良いでしょう。

◆生活保護と家族の扶養

生活保護法上、家族の扶養が優先だという規定がある。
要は、扶養義務のある家族の扶養を受けても生活が成り立たない場合にのみ生活保護を受けるべきであって、生活保護の前にまず扶養を受けることを試みよ、という規定である。
このため、生活保護を受ける前に行政機関が受給申請者の扶養義務のある親族を調べ上げてその親族に一々照会をかける…ということが行われてきた。

しかし、こうした扶養照会の結果扶養が受けられ、結果として生活保護の必要がなくなった事例はごく僅か*3であり、費用の節約には繋がりにくい。むしろ役所職員の手間ばかり食われることになる。
また、こうした照会をされたことで照会された家族と受給希望者の家族関係が決定的に破壊されたり、また虐待やDVを行ってきた毒親や配偶者などから逃げてきた受給希望者が、照会のせいで逃亡先が判明して危険にさらされるケースもある。
それを恐れて申請自体を取下げてしまい、本格的な困窮に陥る申請者も少なくない。

自治体の運用によるが、こうした照会を行わない、という自治体も増えてきている。
(厚労省も、照会を行わなくていい場合を明示し、またそれに当てはまるかは自治体の判断に任せている)

◆生活保護って簡単に貰える物なの?


結論から言うと、現在は昔と比べて受給するにあたっての審査が相当厳しくなっており、また支給額も年々減り続けているというのが実情である。
ぶっちゃけた話、現在は健常者が生活保護で左うちわで暮らすというのは不可能だと思っていい。
その理由として、

1.生活保護の受給者が年々増え続けており、負担する国と地方自治体の財政を圧迫している
2.少子高齢化、団塊世代の大量退職の影響で、人手不足に悩む企業が爆発的に増えている
3.生活保護の不正受給に対する世間の目の厳しさ

などという事情から、生活保護の見直しが進められているからである。
健常者なら受けられないと言うことは決してないが、あくまでも仕事を見つけるまでの一時的なものとして位置づけられる可能性が高い。

もちろん、上記があるからと言って生活保護を健常者が受けることは決しておかしなことではない。
企業が人手不足に悩んでいると言っても、それはあくまでも「企業の条件にあった人手」が足りないだけ。
◯◯の免許や勤務経験が無いと物理的に仕事にならないのにそれを持たない人間に来られても企業側はただの負債にしかならない。
免許が取れるよう教育したり講習試験を受けさせるのだって、中小ならとても負担できないようなカネと人的リソース、何より時間がかかる。
そこそこの難易度がある資格なら、入社段階で学歴など地頭で絞り込まないといくら教育しても資格自体取れない可能性もあるが、受給者せざるをえない立場の人々はそんな地頭がいい人々ばかりではない。
こっそり無免許で従事させるなんて法規的にも倫理的にも論外である。
「生活保護受給者を雇ってくれる企業が増えているか」というとそれは話が別なのである。

また、仮に雇ってくれる企業があったとしてもそれがブラック企業では意味がない。
生活保護を受けるならブラック企業に雇われろ、ということでは、国がブラック企業への就職を推進することに他ならない。
労働者の健康だけではなく、健全な経済競争を害するという意味でも害悪なブラック企業と国が共犯関係になってしまう。

生活保護を「申請する」ことは誰にも認められた権利である。
申請して審査の結果「働いてください」ということで生活保護の受給は認められないことはあるが、だからといって申請そのものを思いとどまる必要はない。
仮に申請が認められなくとも、生活保護を受けないで生活できるアドバイスがもらえることもある。

労働者でも、1人暮らしでアルバイト・パートで月収が10万円以下で生活費が不足している場合、生活保護を申請する価値は高い。
この場合は全額支給ではなく、毎月、給料+生活保護補助費1~10万円という形になる。

厚生労働省のHPでも、「生活保護を申請したい方へ。生活保護の申請は国民の権利です。」と明記してある。
生活保護申請書はインターネットでダウンロード後、印刷するか、市役所などでGETできる。
書類審査があるが、まず生活保護申請書をGETし、記入し、提出までを行うかどうかだ。

世帯全体の収入状況、世帯全体の預貯金が審査の1つになる事も多い。
1世帯の収入だけで不足し、生活費が不足していると考えている場合、
「世帯分離」を行う事で解決できる。
貧困者が世帯分離をし、1世帯になって独立する事で、年収・預貯金などの生活保護受給条件を大きくクリアできる。

生活保護受給の条件はいくつかある。
  • 会社を離職した、会社をリストラされた、面接で会社探しをしている、無職。
  • 年収が約150万円以下で、月収が約12万円以下。
  • 申請者と家族、世帯に資産がない。
  • 申請者の預貯金、銀行口座などの資産合計が30万円以下。
  • 土地・不動産を所持していた場合は全て売却する。*4
  • 収入がある家庭の場合、収入者に書類を書いてもらい、審査時に提出する必要がある。
  • 健康保険証は生活保護受給中は無しとなる。病院へ行く場合はケースワーカーへ連絡する。
  • 年に1回、資産報告書を提出する必要がある。(正しい申告が求められている)
  • 年に1回以上、ケースワーカーが自宅へやってくる。(家庭訪問)
上記の通り、市役所などで生活保護の書類申請を行う事は誰でもできる。
職員でも詳しくない場合もあるので、まず書類申請をするのが大事だ。
会社を離職後、収入がない場合、銀行の預貯金などで生活していく。
そして、その間に職探しを行っていくが、職が決まらない場合、銀行の預貯金が残り20~30万円ぐらいになったら、生活保護の申請を考えた方が良い。
生活保護制度というものは本来このような場面のためにある。
家族に資産や収入がある場合、そちらになるべく頼ってもらうという形だ。
生活費がどうしても不足してしまう、というような場合、生活保護の申請を考えると良い。
証明書としての健康保険証が無いので、運転免許証、マイナンバーカードなどが必要となる。


◆生活保護受給者の自立


生活保護費は、生活を維持するためのお金である。当然無駄遣いしていいお金ではない。
健康体で働ける人たちならば、仕事を探して早く自立することが求められる。
生活保護は、そんな人たちにとっては大切な自立資金でもある。

当座の生活費に限らず、就職先の面接に行くためのスーツや履歴書、交通費と言った費用も、早期に自立するためには必要である。
受給開始以降支援施設や障害者向けの作業所に通わせ、履歴書の書き方を教えたり、面接の突破方法を教えたり、パソコンなどの必要なスキルを身に付けさせるような方向で行政も動いている。
そのための出費はやむを得ないだろう。そういった出費を一切認めずに、いつまでも少額の生活保護を支給するのでは、かえって高くついてしまう。

ただし、生活保護受給者の50%は高齢者。仕事探しは難しい。
20%は働きつつ生活保護をもらっている人。もう仕事をしている。
15%は傷病者と障害者。これまた仕事探しが難しい。

つまり、自立支援が功を奏する可能性があるのは、受給者全体の1割程度である。
傷病者はまだ治れば働けるが、障害者のほとんどは統合失調症や発達障害などの精神障害を持っている人が多い。
身体障害であれば、企業側から見てほとんど支障がなく、適材適所の考えでやりやすいので、雇われやすい。
だが、精神障害の場合、ちょっとしたことで悪化して休みがちだったり、精神障害特有の行動パターンで周囲の人が不愉快に思う。
見た目だけでは精神障害だと分かりにくいため、周囲の理解を得ることも簡単ではなく、障害者雇用がある企業ですら見送られることも多い。
仮に受け入れたとしても、精神保健福祉士などのアドバイスを受けないといけないので、コストがかかってしまうのである。

受給者の大半が、働きたくても働けない立場の人間であることは、認識しておくべきであろう。
またちゃんとした自立支援体制を整えている行政の場合、単なる失職者の方には制限の多い生活保護よりも制限の控えめな自立支援制度や失業年金の方を勧める。
むしろ闇雲に生活保護受給を勧める場合は行政としてアテに出来ない方とも言える。


◆困った生活保護受給者


保護費は決して無駄遣いしていいお金ではないのだが、生活保護費を貰うとパチンコや競馬などのギャンブルにつぎ込んだり、中には覚せい剤等の違法薬物を買うのに使う大バカ者も。
違法薬物が見つかれば、警察署で逮捕されることになる。
逮捕されている間は生活保護は出ない。食事などは警察で出してもらうとしても、家財道具などが置いてある借家をキープするには家賃を自腹で出すしかないことになるので絶対にやらないように。*5
パチスロ、競馬、競輪などは娯楽の範囲として、毎月数千円程度ならば生活保護者でも利用が認められている。
問題なのは多額をつぎ込むケースだ。
その結果、生活保護費が不足したり、借金などを行い、生活が破綻してしまう事も少ないがある。
もし、生活保護費が不足しているからと言って、ケースワーカーなどと相談したとしても、1円も出して貰えません。
だから、上記でちょっと厳しい対応が取られてきた。

生活保護受給者は、もちろん不慮のリストラや会社の倒産、高齢や病気等で働けなくなった人達が多い訳だが、
計画的に金を使っていく習慣が身についていない受給者は、生活保護で追い詰められても計画的に使う習慣が身につかないことが多いのだ。
ギャンブルや覚せい剤の場合依存症になってしまっているケースも多く、ただ単に止めろと叱りつけるだけで止められるような代物ではない場合も多い。叱られるどころか何度刑務所に入って、周囲の支援を得ても止められない人もいるのである。(この人とか)
またギャンブルで稼いだ収入は受給する金額に影響しないので勝てばプチ贅沢が可能という事もギャンブルに金がつぎ込まれる理由の一つ。
不正受給の額は2013年度で年間190億。
家族がバイトしていたことや収入に変動があったことの申告漏れが中心であり、生活保護費をだまし取ろうという悪質なものはそう多くはないのだが、今なお摘発されずにいる件を考えると、
実際にどれくらい不正受給されているのかは正直わからないのだ…。

更には離婚して一方が受給したまま関係を続ける、他人から保護を受けているが黙っているといった方法で不正受給する者もいる。
ケースワーカーがつくので、高齢者所在不明問題のような事にはまずならないのだが…。


◆生活保護を狙う反社会的勢力


暴力団のような反社会勢力が、生活が苦しいことにして収入を隠し、自治体から生活保護費を巻き上げるということも後を絶たない。
暴力団の組員が暴力団から足抜けし、生活を立て直すためには、仕事が見つかるまでの生活保護は不可欠である。
だが、組員が暴力団から去ったかどうかは明確な記録が残らない。暴力団に問い合わせても答えてくれる可能性は低いどころか、足ぬけしようとしたことがバレたらその組員がリンチにかけられる可能性がある。
そのため、暴力団が組員を使って自治体から保護費を巻き上げようとしているのか、暴力団から抜けようとしている人が自立するための頼みの綱で生活保護を頼っているのかが分からない。
保護費を出さなければ暴力団員がいなくなるという社会的に望ましいことを邪魔しかねないし、出せば暴力団に金をやりかねないという悩ましい事態が起こっている。

さらには、住所のない生活保護受給者を囲い込んで刑務所以下の無料定額宿泊所に放り込んで、生活保護費を巻き上げるという生活保護ビジネスも問題になっている。
生活保護受給者は社会生活周りの能力に欠けこの手の情報を調べる能力の低い者が多い為この手の連中に騙されやすい人も少なくない。
役所さえも、彼らの施設を十分に検査できず、反社会勢力の運営する劣悪施設だと認識しないまま受給者にそうした施設を紹介してしまうことさえもある。


◆過熱する生活保護叩き


今、生活保護は、「ナマポ」等と呼ばれてヘイトスピーチの対象になってしまっている。
財政難の現状。
「働かずに暮らせる」ことに対するルサンチマン
しばしば報道される不正受給者や、不誠実な受給者。
人手不足過ぎて制度を回すので手いっぱいの行政。
そういった貧困者や彼らが何の努力もせず(実際には違うが)金を貰えるという制度に反感を持つアンチ
「努力していれば報われる世界なのだから貧乏は自己責任」という公正世界信念
何より、生活保護制度や貧困に対する偏見や誤解。

「生活保護を受けている奴は働いてないんだ。働かざる者食うべからず、という事で出す必要なし!」
→健康で働けるのに求職活動をしていなければ、生活保護は打ち切りの対象になります(ニートは受給できません*6)し、
 働いていても生活保護は受けられます。
 (収入上限は毎月15000円までで、それ以上は申請後、返却となる。毎月10万円分働いていたら、8.5万円を返却。毎月5万円分働いていたら、3.5万円を返却のような形)
 あと先述の通り支援体制が整ってる所では単なる失職者には自立支援や失業年金の方を勧めています。
 ちなみに、働かざる者食うべからず、という諺の本来の意味は全く違っていて、働いてない者でも食べて良い、が正しいです。

「生活保護が国の財政を圧迫する。生活保護受給者なんてほとんど自業自得なんだから、とっとと打ち切ってその分を他の公共事業に回した方がずっと国が豊かになる。」
→生活保護がなくなった場合、困窮から犯罪が増加しかねず、犯罪者を刑務所に収容したり、被害者支援コストなど、生活保護以上の支出を強いられます。
 同時に自殺・餓死者も増えます。アパートなどで自殺や餓死をされれば大家は家が事故物件になって大損させられてしまいます。
 生活保護に頼れずブラック企業がはびこるのでその取締りも大変になります。
 生活保護に金を出さないならば、こうした支出が生じることを覚悟しなければなりません。
 犯罪・自殺・餓死の多い社会が健康的でないことはもちろんですが、それを無視した支出の面で考えてもそれは本当に生活保護より安上がりなのか、考えたことはおありですか?
 また受給者は金を溜め込まずに使う(使わざるを得ない)ので、地域経済の活性化には生活保護の支給は効果があるとも言われています。

「生活保護は不正受給ばかりなんだろ?俺らはそんな連中を遊び呆けさせる為に税金納めてるんじゃねーんだぞ!!警察と連携して取り締まれよ!忘れていたとか抜かすなら問答無用で逮捕して朝のワイドショーとかで見せしめにすれば、抑止力になるだろ?」
→生活保護の不正受給は金額にすれば全体の0.5%程度で、しかも単なる申告漏れで後で支給額を減らすなどの形で調整できているものが大半です。
 無論、職員一同が限られた人出でとりうるあらゆる手段を用いて不正受給の撲滅に務めております。
 もっと人を増やして取り締まれ?不正受給取締りのために人を増やしたところで、減った不正受給の金額を人件費が上回ったら、「弱者を救済して地域経済を活性化させる」という生活保護の意義が揺らいでしまいます。*7またこちらは「公務員多すぎだろ!」という非難に直面しており、それにより役所や官公庁では正規職員が不足し、それを埋める為長くて5年程度で退職してしまう臨時や嘱託などの非正規職員が窓口など前線での肝心要の業務に就く割合が多くなり、そのノウハウを長期的に保てず部署全体の地盤の業務能力の脆さが危ぶまれてもいます。
 警察と連携して取り締まれ?現行犯でもないのに立件し逮捕状を請求するまでにどれだけの手間と手続きが必要になるかご存じの上での発言でしょうか?警察も深刻な人手不足・余裕がないのは我々と同じですし、故意に不正受給していたならまだしも、単なる申告漏れや申告忘れ程度で逮捕なんてしようものなら警察とケースワーカーの信用低下、最悪本来受けられる方の間で「生活保護を受けると捕まる」という風潮が生まれて申請を躊躇い、結果より悲惨な事態になりかねません。
 また、例え検挙して犯人を刑務所に服役させたところで、服役にも多額の税金を支出せざるをえないので、検挙したから税金の無駄が減るとは簡単に言えないという実状もあります。

「俺は生活保護より安い給料で毎日クタクタになるまで働いているってのに、働きもしない奴の方が金持ちだなんて納得いくか!」
→それなら、あなたも生活保護を受けることが可能かもしれません。最寄りの窓口で申請されては如何でしょうか。
 …と言いたいところですが、医師の指示で労働量が制限されている場合を除き、最低賃金を下回っている労働者への給付が行われている事例は極めて少なく、一概に「権利を放棄している」と断ずることはできないのが現状です。*8こればかりはどうしようもないので、転職するか、辞めて失業保険をもらった方が早い可能性もあります。
 また、朝から晩まで働いて生活保護レベルの収入も得られないなら、あなたの仕事先が業務時間や内容と給料が法的に釣り合っていないブラック企業という可能性もあります。生活保護に納得がいかない気持ちは分かりますが、その場合怒りの矛先を向けるべきはブラック企業ではないでしょうか。

「あの受給者自家用車に乗ってるぞ。車なんてぜいたく品の筆頭じゃねぇか。維持費や税金払う余裕があるなら生活保護なんか要らないよなぁ!?」
→都市部の場合は、自家用車を処分しなければ生活保護自体が認められない場合が多く、それでも認められる場合には障害や仕事などの理由があるケースが多いです。
 地方では最寄り量販店まで10キロ以上ある場合も多く、公共交通機関もまともに通っていない場所もあり、自転車でも往復1時間以上必要になることも珍しくありません。
 そういった所では公共交通機関の利用者の絶対数が少なく運営しても赤字になります。赤字の公共交通機関維持に多額の税金を投入するより、車を認めた上で生活保護費を支給する方が安上がりです。そうした環境で生活してる人からすれば、自家用車はもはや必需品なのです。
 受給者側から見ても、自転車では雨や雪になれば買い物に行けない上、帰り道では買った荷物を持ち運ばなければなりません。
 受給者は体の弱い人も多く、買い物にそんな体力を使わせることは物理的に難しいです。
 また、就職活動にも車が必要になることも多いです。

「あいつスマホなんて使ってやがる!どうせ、生活保護で貰った金で気色悪い萌えゲーなんかやって鼻息荒げながらズブズブ課金してるんだろ?気持ち悪い!そんなのやらせるくらいなら、解約させろ!!」
→生活保護受給者にスマホ所有を認めているのは、主に「緊急時にケースワーカーや警察等の公共機関に連絡を取れるようにするため」「職場を探すため」です。
 また、スマホを認めていてもそれらはほぼ料金プランは最低です(尤も、近年は多くの公共施設などでフリーWi-Fiが設置されているのでデータ通信量に於いての制限はほぼ形骸化している所がありますが…)。
スマホゲーム?職探しや働いている人ならそんな余裕なんて全くないですし、仮にそれらに課金をしていたら、「最低限の生活が出来る」と判断されて生活保護も打ち切りになりますが?(こちらも少額なら問題ない可能性もありますし、支払い方法によっては追跡が難しいものがあるのですり抜けられる可能性も否めませんが)

「生活保護受給者なのに太ってるとか意味不明過ぎる。デブはいいメシをたらふく食ってる証なんだ。...つまり、金があるのに更に保護費取ってる不正受給なんだろ!?」
→食料自体が極めて少ない最貧国と言われるような国ならば、貧困者は骨と皮だけにやせ細っているケースが多いですが、そうでない日本の貧困者はむしろその逆です。
 安くて腹の膨れる食品の多くは炭水化物ばかりなので、そればかり食えば簡単に太り、体も壊します。俗に言う「現代型栄養失調」です。
 栄養バランスを考えられた食事ができる裕福な者は肥満にならず、栄養バランスの崩れた食事をする貧困に喘ぐ者が肥満になることは今や世界的にも常識になっています。
 こうした状態でデブになっているのが「健康で」文化的な最低限度の生活とは言えません。

「生活保護受給者が何惣菜なんか買ってんだ?そんな割高なモン買ってないで自炊しろよ?自炊の方が勉強になって、ずっと安上がりだろうが。」
→受給者の中には家に冷蔵庫や調理器具すらない人もいます。働いていたり身体を壊している場合、料理に回す時間や体力も無い場合もあります。
 十分な教育を受けられず、または知的な能力のない受給者の場合料理をするための知識もないケースもあります。
 無理をして料理をした結果火事でも起こされれば目も当てられません。
 また病気の種類によっては自炊調理の方が初期投資もランニングコストも高い場合があり、一概に「自炊の方が低コスト」とは言えません。
 スーパーなどのセール品を逐一チェックしたり、夕方~夜に赴き割引品を購入して節約生活をしている生活保護者も大勢います。

「生活保護受給者に現金なんか渡すから無駄遣いするんだ。商品券やフードスタンプで生活の必要雑貨以外買えないようにしろ!!」
→紙の商品券やフードスタンプを使った場合、それを印刷・発行・換金するための予算が必要になります。
 また、それらを作り、配るのに大勢の労力と時間、手間を必要とします。
 カードや携帯などで電子払いさせたとしても、今度は対応機器を受給世帯に配る必要があり、これも相当な予算がいります。
 対応させられる店舗の負担もあります。現在のクレジットカードや商品券・電子マネー類ですら、運用手数料は店舗の経営を圧迫しており、フードスタンプも同様となることが見込まれるのです。
 対応できない店舗や公共サービスの存在を考えるとどうしてもある程度の現金は必要になりますし、一部だけでも現金を渡すなら結局全部現金・あるいは口座振替で渡すのが安上がりなのです。
 また、そうした商品券やフードスタンプを買い叩いて現金に変えさせる業者が現れる可能性が高く(パチンコ玉の現金化と原理は同じです)、そうすると無駄遣い防止効果もあまり上がらない可能性が高いでしょう。
 簡単に言えば、銀行振り込みをしてお金を配った方が社会保障コストが大幅に安上がりとなるのが大きいわけです。

「生活保護受給者に個別の住居なんてもったいない、行政で用意した建物で共同生活させろ!」
→憲法で居住移転の自由は基本的人権とされており、刑罰でもないのに特定の場所に住むことを強制することは少なくとも行政側から行う事は不可能です。
 仮にそこをクリアしたとしても、民間の賃貸住宅に住んでいる受給者の場合、大家さんを通じて民間に金を回し、経済に貢献しています。共同生活はその経済への貢献を奪い、民業圧迫という結果になりかねません。
 また、共同生活はトラブルが生じやすくなります。精神や身体に障害を抱えた生活保護受給者も多く、その管理のためにそれなりの人手を準備しなければならず、そのためのコストも必要になります。
 加えて、都合の良い共同生活向けの住居を自治体ごとに準備できるかも問題があります。環境を悪くすればそれはトラブル発生の増加や「野宿の方がマシ!」と生活保護を受けない人の増加を招きます。
 地方に空き家が多いからそれ使え?空き家が共同生活向けの建物かどうかは話が別ですし、空き家の大半はすぐに朽廃するので整備・改築のために結構な予算が必要になってしまいます。
 それなら自立すればいい?受給者の9割近くが就職・自立が望めない高齢者や障碍者であることをお忘れですか?

「奴らは生活保護という金を貰ってるんだろ?なら、それに見合うだけの仕事をさせろ!建築業とか農業とか自衛隊とか腐るほど手が余っているだろ?嫌という奴にはこの企業のような労働させてもいいから!
→日本の憲法では「意に反する苦役」は禁止されており、労働者の意思に基づかずに働かせる行為を禁止しています。
また、建築業や農業、自衛隊などは、近年深刻な人手不足こそ事実ですが、知識と経験がなければ仕事にならず、やる気や体力の無い方を雇う余裕がないのも他の企業と同じです。
まして自衛隊は相応のやる気と知識、体力、更にはコミュニケーション能力が必要なので、自衛隊に対して強い意欲のある若い生活保護受給者ならまだしも、それ以外の方の面倒を見る余裕は予算不足も相まってとてもありません。そもそも自衛隊は職業訓練所でもなければ、根性を叩き直す場所でもありませんよ?何か勘違いしていませんか?
役所としても働き口がなかなか見つからない受給者には先述した自立支援やハローワークと言った可能な限りの支援をして生活保護から脱却できるようサポートしています。
その漫画の企業と同レベルの労働をさせろ?それはあの漫画の世界の中だから出来るのであって、現実で行えばどんなに権力を持とうとたちまち人権無視の強制労働、拉致監禁、施設内での私刑等の容疑で大規模な一斉捜査を受けて経営者達が検挙されて終わりですし、そもそもそれを準備するのに生活保護以上の税金が必要だと想像できますか?

…などなど、生活保護に対する誤解や、生活保護以外の制度への無理解、貧困への無理解、受給者に対する無茶ぶり、費用対効果への考えの甘さや否定的な人のあまりに無茶すぎる暴論からヘイトスピーチは蔓延している。
生活保護を受給できる世帯のうち生活保護を実際に受給している世帯は2割程度とされているが、ヘイトスピーチが残り8割が生活保護を思いとどまってしまう一因であることは間違いないだろう。
税金を使う以上、生活保護のあり方を議論するのは必要なことかもしれないが、前提となる制度や事実に誤解がはびこっていては、議論以前の問題である。
また、外国を参考にするにしても、生活保護以外の様々な社会保障との兼ね合いの問題もあり、生活保護制度だけをピックアップして日本に輸入してもちぐはぐになることも忘れてはならない。

◆必要になっても生活保護が受けられない…


生活保護を受けているのにきちんとできない者と、生活保護について理解していない人の所為で、本当に生活保護が必要な人が保護されない、ということも起こった。例を挙げると…。

★「重度の心の病を障害だと認定されない」
大阪の建設会社で働いていた30代の男性が、常日頃から上司に酷い罵声を浴びせられ続けたことで酷い鬱状態になり、会社を退職。
やがて貯蓄が底を尽き、藁にも縋る思いで生活保護の申請をしたものの、肉体的には何の障害も無い健康体だったことを理由に、役場の職員から鬱病などというのは所詮ただの甘え。働いて下さい。などと突き放されてしまう。
この男性は法律事務所に駆け込んで事情を説明し、今度は弁護士を同伴させて役場に再度訪れた結果、弁護士が職員と壮絶な怒鳴り合いを繰り広げた末に、結局渋々生活保護の受給を認めさせたとの事らしい。

この件は中日新聞の社会面で特集が組まれた事があったので、ご存じの方も多いのではないだろうか。

★「全身に障害があるのに障害者だと認定されない」
2007年、北九州市で生活保護を受けていた人が、体中に病気を抱えている状態のまま「働ける」という扱いにされて生活保護を止められてしまい、ついには

「おにぎり食べたい」

という悲痛な日記と共に餓死しているのが見つかった。(北九州市生活保護受給者死亡事件

北九州市では暴力団による不正受給が元々酷く、これに激怒した前の市長が「生活保護は人をダメにする」としていたとされ、生活保護を徹底的に削ろうとしていた。
削る方法が就職支援や家族から扶養を受ける仕組みの支援などであれば、何の問題もなかっただろう。
ところが、実際に取られたのは、生活保護の支給を制限、それも後述する違法なやり方で制限するという方法であった。
その結果「受給しなければ生命さえ危うい人にまで受給させない」事態を生み出し、悲劇につながってしまった。
流石にこのやり口の酷さが報道ですっぱ抜かれて批判が殺到、交代した市長も事件を検証して関係者に厳しく対応した。

★「役場を何度も何度もたらい回しにされ、様々な難癖を付けられて中々受理して貰えない」
2020年4月、三重県桑名市の自動車部品製造会社に入社した20代の男性は、一週間の研修期間を終えた翌日、さあ現場で働くぞ、と意気込んで出社したのだが。

「悪いけど雇えなくなった。コロナで仕事が無いんや。」

と突然解雇を言い渡され、一週間分の研修期間中の給料も全く払って貰えなかった。
この時点で既に労働基準法に2つも抵触している*9のだが、住んでいた社員寮を追い出されてしまったこの男性、いくら会社が悪く、場合によっては裁判をするにしても、それで金銭が手に入るまで生きていける状態ではない。
藁にも縋る思いで桑名市の市役所に事情を説明し、生活保護を申請した。
ところが桑名市の職員は

「うちは小さな町だから…。」
「名古屋で申請した方がいいと思いますよ。」

と男性に告げ、名古屋までの交通費とミネラルウォーター、乾パン一袋を渡しただけで、生活保護の申請を受理してくれなかった。
何故助けてくれないのかと疑問に思いながらも男性は名古屋まで足を運んだのだが、そこからさらに多くの役場をたらい回しにされてしまい、支援団体からの支援を受けながら野宿を繰り返し、辛うじて命を繋ぎながら、最終的に桑名市から遥かに遠く離れた東京で申請して、ようやく受理されたという事例があった。
この男性は中日新聞の単独インタビュー記事において

「一時は本気で自殺を考えました。」

と語っている。


北九州市以外でも、一部自治体や福祉事務所の担当者が生活保護申請にとんでもない対応をしていることが分かってきている。

  • 家族、住居、労働などの生活保護の要件について、嘘を言って申請を断念させる*10
  • 申請用紙を渡さないで申請を断念させる*11
  • 申請に現れたのに「相談」と言う扱いにして生活保護の申請として対応しない。*12
  • 申請者を恫喝する。
  • 生活保護制度について何故か知らない。(無知ってこわいね)
  • このWiki内の記述内容を知らない。

なんて手口が出てきたのである。もちろん、これらの方法は全て違法である。
本当に生活保護を認めるべきでないなら、申請をさせないのではなく申請を受け付けて審査の上でダメだ、と言わなければならないのだ。

こうしたやり方は水際作戦と言われたり、上の事件にちなんで北九州方式と呼ばれることも。
弁護士が申請者について行って監視して上記のような口論の末、ようやく申請にこぎつけることもある。

◆追い込まれるケースワーカー


生活保護受給をチェックし、働ける人たちの立ち直りを支援するのがケースワーカーであり、自治体の職員が担当することが多い。
しかし、このケースワーカーは、自治体によって差はあるものの一人で100世帯以上を受け持つのがザラで、酷いと150世帯を超えることも。
法律で80世帯以下を努力目標とされているのに、それはほとんど守られていない。法秩序の遵守どこいった。
しかも、激務になるため自治体内ではなりたくない仕事のトップに挙げられることが多い。体力勝負であることを理由に若手にケースワーカーを押し付けられることが多く、知識不足に悩まされる。
役所内で行われる異動によってせっかく手に入れた知識が定着せず、新しいケースワーカーが異動で来るたびに一々学び直させなければならない。
と言って、異動させずにずっとケースワーカーをさせようとすれば、今度は退職者が続出しかねない。
認知症や精神の障害で自立支援が全く効果を持たない受給者も多く、節約するよう指示しても聞いてもらうのが難しい。
生活保護に対するヘイトスピーチの対象にケースワーカーも巻き込まれ、その対処に追われることもしばしばである。

…これでは、世帯毎に行き届いた支援や監督などできるわけがない。

更には、受給者の中には精神的な障害のある人も少なくなく、ケースワーカーの指導に対して暴言を吐いたり、暴力を振るってくる例も少なくない。
もちろんそれを理由に生活保護を打ち切ることもできなくはないが、打ち切れば犯罪や事故物件ができる原因になるため、そこまで踏み切るのは非常に難しい。

こういった背景から、ケースワーカーのストレスはたまる一方であり、逆にケースワーカーが受給者に対してハラスメントをする例も目立っている。
女性の受給者に対しては、直喩・暗喩問わず性風俗店への勤務を促すセクハラ案件もある。
少しでも担当世帯を減らしたいからこそ、申請自体を不受理にしたり、余所の役所にたらい回しにしたくなる。
もちろんこうした対応は許される行為ではないが、ケースワーカーの人手不足や多忙はいつ臨界点に達してもおかしくないのである。


そうした中、小田原市生活支援課では所属する職員を鼓舞する目的でユニフォームが作られたが、生活保護受給者に恐怖心を与えるような言葉が書かれていたため問題となった(小田原市生活保護なめんなジャンパー事件)。
そのようなユニフォームを製作・着用することはとても肯定できるものではないが、ケースワーカーにかかる負担のことを考えれば該当の職員を非難すれば解決する問題ではない。

◆終わりに


本当に必要な生活保護を受けさせること、必要のない生活保護を受けさせないという結論の点に異論のある人は比較的少ないのではないだろうか。
だが、現実の運用を考えると必要か不要かを見極めることは非常に難しく、素人考えではとんでもない考え違いをしてしまうし、運用していく側も限られた情報の中で決断していくしかない。

そのため

「本来必要な人に支給しないで飢死or犯罪させる」
vs
「本来不必要な人に払って税金をムダにする」

と言う二律背反が起きやすい。
そうなると、人命がかかっているし、仮に払わないと別口で税金が無駄になる可能性も高く、どうしても後者の方がまだまし、という判断になりやすい。
不正受給を防止する為の制度はあるが、とても人手が足りず完璧とはいかないのが現状である。
不正受給の防止は徹底しければならないし、支援の必要な受給対象者を取りこぼすこともあってはならない…それは確かであるが、現実として行政のリソースは限られており、その中で最善を尽くすほかないのだ。

行政側には、人員を拡充するなどして現場の負担を抑えつつ、生活保護費が適切に運用されるよう監督する態勢や工夫が求められるだろう。

受給者側は、不誠実な受給者の存在が本当に困っている人たちの生活までも圧迫することを肝に銘じ、身を慎まなければならない。

一般市民は、生活保護に関する正確な知識を手に入れた上で、生活保護に頼らず生きていくために何が必要か、
諸々のコストを考えながら、生活保護について考えていくことが必要である。
知識もないままにルサンチマンや思い込みで生活保護を叩くのでは、北九州で餓死者を出した市長と同レベルであることを肝に銘じるべきだろう。


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最終更新:2024年03月24日 17:26

*1 「ブラインドタッチ」とも。キーボードを見ずに文字を入力すること。

*2 トヨタ自動車の最大の取引先である小島プレス工業が有名だが、ランサムウェアによる攻撃を受けて小島プレス工業のPCが全て使用不能になり、トヨタが一時操業停止に追い込まれたというニュースをご存じの方は多いのではないだろうか。

*3 調べた範囲で、5%を超えるという記述は見当たらず。

*4 ただし前述のように、状況によっては所持を認められる事がある。この辺はケースワーカーの裁量次第になるが。

*5 ただし、冤罪事件だった場合でも同様の扱いになっているケースもある。

*6 ニートは就労可能なのに就学・就労・職業訓練していない者を指すので、ニートの定義からすれば本来受給は不可能。

*7 もちろん、不正受給の金額<人件費になること自体は悪いことではなく、ある程度の抑止力であれば必要。

*8 10年ほど前までは最低賃金よりも生活保護の方が高額になるという逆転現象が複数の自治体であったものの、その後是正がなされたという事情も考えられる。ただし、場合によっては今も逆転現象が起こるので完全にはなくなっていない。

*9 解雇通知は最低でも解雇予定日の14日前には従業員に告げなければならず、それまでは雇用を継続しなければならない。さらに研修期間中だろうと何だろうと従業員を拘束した以上は、拘束した時間分の給料をきちんと払わないといけない。

*10 例えば「住居がないと生活保護は受けられない」は嘘だし、親族から扶養を受けられなければ「扶養を受けろ」では生活保護を拒否できない。

*11 申請を役所の所定の用紙で行う義務はない。例え口頭で「生活保護を受けたい」というのでも「生活保護の申請」として認められ、行政は審査をしなければならない。もちろん申請した後の審査にあたって伝えるべきことは多いが。

*12 申請扱いにすると審査をしなければならず、審査結果に対して裁判に持ち込まれる可能性もあるため。